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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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再会-リユニオン-part3/獅子との遭遇

謎の石碑に刻まれた謎の文字、サイトはそれを見事に解読した。
「読めるの!?」
ルイズたちが目を丸くする中、サイトは読める理由を告げる。
「日本語…俺の故郷の文字だ。それにこのフルハシって人…俺も名前を聞いたことがある。俺の…義理の母親の同僚だった人だ」
「「「「…!!」」」」
その言葉にも、一同は驚愕する。サイトはすぐにシエスタの方を振り向く。
「シエスタ、その羽衣のところまで案内してくれ!」
「は、はい!こっちです」
驚くべき事実が発覚したが、今は他にも知ることがある。シエスタの案内で一同は龍の羽衣の場所へ向かう。
その先には変わった建物が建てられていた。その建物と、その前に佇んでいるものにサイトは目を丸くした。
「奇妙な建物ね。トリステインやゲルマニアどころか、ハルケギニアの文化に沿ったものじゃないわ」
キュルケがそれを見て呟く。その赤赤とした脚長の門を見上げながらギーシュも頷く。
「門にしては、足が長すぎるな。侵入者よけのものではないようだね。……サイト、どうしたんだ?そんなにこの門のようなものが気になるのかい?」
「…ここって…神社?」
その建物は、まさに地球で幾度か目にしたもの…神社とその鳥居だった。なぜこんなものが、日本でも…ましてや地球でもないこの異世界に?サイトはドクン、と心臓がなるのを感じた。
「竜の羽衣は、あの建物の奥の通路の先にあります。暗いので足元にお気をつけてきださい」
シエスタが先頭に立ち、一行はお堂に向かう。お堂の賽銭箱を横切りシエスタが扉を開くと、地下へ続く階段が口を開けていた。中が真っ暗だったため、松明を灯してその地下へ向かう一行。階段の下を降りると、その先に扉が見えた。
「ここです。インチキ扱いされてますから、本当は期待しないようにって忠告を入れるつもりだったんですけど…」
シエスタはちらとサイトを見る。サイトが自分の曾祖父の墓やこの建物に想像以上の反応を示したことから、不思議と大きな期待が湧き上がっていた。
「そうね。ダーリンがあそこまで驚いていたんだもの。なんだかワクワクしてきたわ」
「あのな…遊びに来たわけじゃないんだぞ…」
くねくねしながら扉の向こうに期待を寄せるキュルケを見てサイトは呆れる。
「しかしサイト、君も不思議とワクワクしているのではないか?」
「それは、まあ…」
ギーシュの言うとおりだ。インチキ扱いされているとは言え、空飛ぶと伝わっている竜の羽衣、日本形式の墓石とその墓に刻まれた名前…フルハシ・シゲル。
もしかしたら…この扉の先にあるのは…。
ルイズは、そんなサイトの顔を再び見てみる。好奇心にあふれた目をしている。
シエスタが扉を開く。暗かった空間に光が差し込んだ。神々しくも感じるまばゆい光の先を、サイトは眩しさのあまり閉じたまぶたをゆっくりと開きながら確認した。
…思った、通りだった。扉の先に見えたのは、まるで山岳地帯の内部をくり抜いて作られた、外の景色がクッキリ見える格納庫と…。
「これが…竜の羽衣?どうみても鳥の形をしたおもちゃじゃない?いや、鳥っていうのも変な気がするけど」
「ふむ。確かにな。全体的に鉄の塊でできているようだが、こんなに見た目からして重いものでは、とても空を飛ぶことなんてできない。それにこの翼も羽ばたくように作られていない」
サイトとは対照的に、扉の奥に見えた大きな『それ』を見たキュルケとギーシュは気の抜けたコメントを呟く。ルイズもまた、その反応は同様だった。
「これ、本当に飛ぶの?あんたのさっきの反応だと、実はすごいものだって今でも思いたくなるんだけど」
「………」
「サイト?」
ルイズからの言葉は、今のサイトには届いていなかった。竜の羽衣をじっと眺め、左手でそっと翼に触れると、彼のガンダールヴのルーンが青く輝いた。
ルーンが光る光景を目にしてルイズは目を丸くする。かつてワルドは、ガンダールヴとはあらゆる武器を操る力を持っていたと説明した。サイトのルーンが光ったということは、この竜の羽衣は武器としてカウントされるということ。
サイトは、竜の羽衣の船体を見渡す。全体的にシルバーのカラーリングが施され、黒いラインで型式番号と模様が刻み込まれている。推定20mほどの大きな船体だった。
「サイトさん、すみません。やっぱり、竜の羽衣ってインチキ「インチキなんかじゃないよ。シエスタ」…え?」
やはり期待に添えるようなものじゃなかった、そんな不安を抱くシエスタだったが、サイトが彼女の言葉を遮ってきた。
「これは、本当に飛んだんだよ」
「サイト、どうしてそう言い切れるんだ?この竜の羽衣の構造をどうみても飛べるようなものじゃないぞ」
「それはこの世界の主観での話だろ」
サイトは竜の羽衣の船体の真下の隙間に入る。ちょうど船体の真下は、竜の羽衣の翼が斜め下を向く形だったため、ちょうど真ん中あたりがトンネル状に出来ていた。サイトはそこをくぐると、天井もとい船体の下にバルブ栓のついた扉があるのを見つけた。バルブを回して扉を開くと、船内と中へ続くはしごが現れる。
「ちょっと待ってよダーリン!」
「サイト!」「サイトさん」
キュルケが最初に追いかけ、続いてルイズとシエスタが彼を追って竜の羽衣の船体の下に向かう。
「ぼ、僕も行くぞ!」
ギーシュも追いかけて、ちょうどルイズが梯子を登ろうとしたところで彼女がギーシュに振り返る。
「あんたは数秒待ってなさい」
「な、なんでだ!?我が友と認めた男の様子がおかしいのを気にするなと!?…あ、なるほど」
納得できないと声を上げるギーシュだが、すぐにルイズが梯子を登っている最中にスカートの中を覗かれるのを恐れての忠告だったと理解した。
サイトは操縦室にたどり着き、竜の羽衣の計器を調べてみた。これが飛ばなくなった理由は、エンジントラブルや燃料切れのどちらかに予想されたが、後者の方だった。証拠に、残り燃料を知らせる計器の指針が0 の一辺りに達している。なんにせよ、燃料たるガソリンの調達は異世界であるこの世界では出来そうにない。
けど、これではっきりした。見た目からしてそうだと思えたのだが、紛れもなく本物だった。間を置かず仲間たちがサイトに追いついてきた。
「サイトさん、もしかして…竜の羽衣のことを知っていたんですか?」
シエスタから尋ねられたサイトは、「ああ」と窓ガラスに触れながら肯定した。
「これは…『ウルトラホーク3号』。怪獣や侵略者と戦うための…兵器だ」



ひとまず竜の羽衣…もとい、ウルトラホーク3号から降りたサイトたち。
「驚きました…まさか、竜の羽衣が怪獣と戦うための武器で、ひいおじいちゃんがこれに乗って戦ってたなんて…」
ホーク3号の脇にあつまり、自分の曾祖父が乗ってきたとされる村の遺物にそんな秘密があったことにシエスタは驚いていた。
「だとしたら、これはアカデミーに引き渡して解析させるという手もあるんじゃないかしら?」
キュルケがホーク3号を見上げながら残念そうにつぶやいた。
「それはできればやめてほしいんですが…」
どうして?とキュルケが尋ねる。
「ひいおじいちゃんは、遺言で残していたんです。『もし自分と同じ国の人間が現れたら、その者に竜の羽衣を譲り、故郷に返して欲しい』って」
「あたしとしてはアカデミーに売るなりゲルマニアで引き取るなりしてお金を貯めた暁に、ダーリンに貴族になって欲しかったんだけどね。そしてあたしのプロポーズしてもらうのよ」
「な、何言い出すのよあんたは!そんなのこの私が納得できるわけないじゃない!金で貴族になるだなんて、それだからゲルマニアは野蛮なのよ!」
それを聞くやいなや、ルイズは声を上げた。独占欲の強いルイズは、ヴァリエール家が犬猿の仲であるツェルプストー家の女に何かを取られてしまうのは我慢ならない。
「『メイジでなければ貴族にあらず』なんて、伝統やしきたりで国力を弱めているトリステイン人に言われたくないわね」
「なんですってえええ!!!」
「だめだめだめだめだめです!サイトさんと結婚するなんてダメです!サイトさんは私の村でブドウ畑を耕すんです。そして二人で素敵なワインを作るんです!銘柄は名付けて『サイトシエスタ』!!」
シエスタもキュルケの言い分に反対したが、ちゃっかり自分までサイトを懐柔しようとしている思惑があったことを路頭している。
「メイドも変なこと言って人の使い魔を篭絡しようとしてんじゃないわよ!サイトは私の使い魔なんだから!」
「あ~ら、そのサイトとあなたは今喧嘩中みたいだから別にいいんじゃない?」
三人揃って勝手な事を言い合う中、男性二人は触らぬ神に祟りなし、ということで無視した。ちなみにタバサは男性陣の方が静かなので、彼らの傍らで本を…珍しく読まなかった。その視線の先に見えるのはホーク3号の船体。タバサから見てもこのホーク3号は非常に興味深いようだ。
「結局動かなかった理由はわかったかい?」
「ああ、この世界の空飛ぶ船って、確か風石ってのを使うんだろ。それと同じようなものがほとんど空っぽになってたから飛べなくなったんだ」
「なるほど。この兵器は君の故郷のものだからね。必要な燃料が存在しないハルケギニアで二度と動かないままになっては、長い時を経た果てにインチキ扱いされても致し方なかったというわけか…」
と、その時だった。
「足音が聞こえる」
タバサが杖を構えて、入口の方を向いた。それを見たサイトたちは直ちに構える。
「誰か来たってこと!?」
ルイズの問いに、タバサはいつもどおり無言のまま頷いた。しかしその目はまっすぐ入口の方を見つめている。
「火の匂いがするな。多分、こいつは火のメイジみたいだぜ」
「火なら負けないわよ」
サイトによって鞘から引き抜かれたデルフが相手がどんなものなのかを感じ取ると、キュルケは勝ち誇るように口を曲げて笑った。
「な、何奴!?ことによっては容赦しないぞ!」
ギーシュがバラの造花の杖を向けて、入口の方から漂う気配に向けて怒鳴った。対する気配もまた警戒して、物陰から言葉を発する。
「何者だ!?命が押しくば立ち去りなさい!貴重な歴史的遺物を狙う盗掘者め!」
「…あら、この声どこかで…」
物陰から聞こえてきたその声を聞いて、キュルケが警戒心を解いた。すると、杖を構えた中年の男…いや、見覚えが有るどころかこの場にいる全員が面識のある人物が顔を出してきたのだ。
「み、ミスタ・コルベール!?」
その男は、なんと魔法学院の教師、コルベールだったのだ。
「おや…君たちは!?」
コルベールも、まさか自分の教え子たちがいるとは思っていなかったのか目を丸くした。
「一体どうしてここに!?」
ギーシュが驚きを隠せず、コルベールに尋ねる。
「竜の羽衣という秘宝があると聞いて発掘のためにここに来たのですよ」
コルベールは学院でも授業の合間に自分用の研究室で、魔法の新たな可能性を探るために日々研究に勤しんでいる。そのため学院でも自分が認めるほどの変人としても扱われていたのである。今回のその一環で来たのだ。
「しかし、全く君たちは感心しないな。今頃ミセス・シュヴルーズたちはかんかんに怒っておられるぞ」
「す、すみません…」
思えば、自分たちはアンリエッタ姫の任務を終えた以上とっとと学院に帰らなくてはならない身。立派なサボりである。教師が怒らずにいられようか。
「まあ、その話は学院に帰ってからにいたしましょうか。それよりも、今はこの竜の羽衣のことですな」
しかし、コルベールはルイズ達のサボりのことを重要視しなかった。それ以上に、この竜の羽衣に強い興味を惹かれていたのである。コルベールはホーク3号に近づきその目でチェックし始めた。



その日はシエスタの紹介で、一同は彼女の家でご馳走になった。余談になるが、村名物の『ヨシェナヴェ』という料理の正体も、実は日本の『寄せ鍋』をハルケギニアの具材で再現したものだったことも明かされた。
シエスタは8人兄弟の長女で、両親や祖父母はそれぞれの子供たちとの年齢差が大きくなく、実年齢よりも若く見られる人たちばかりだった。
彼女の両親や7人もの弟妹たちは貴族の一行が自宅を訪ねてきたことに驚き、さらにはシエスタがやたらサイトを気に入っていることに気が付くと、マルトーがサイトを気に入ったときのように彼をたいそう気に入り、いつまでも滞在しても構わないというほど。久しぶりの家族とのふれあいを楽しんでいたシエスタを見て、サイトと、彼の中にいたゼロは羨ましくなっていた。あの旅で何もこなせず何も守れなかった自分の存在を無意味に感じる時にホーク3号を見て、さらに望郷の思いが強まっていた。
ルイズはシエスタを見ているサイトに話しかけることなく、ただ彼をじっと見ていた。シエスタに気があるのではと最初は不機嫌に思っていたが、その目がどこか悲しげに見えていることに気がつく。自分やシエスタには家族がいる。だが、彼の家族は遠い世界にいる。会えない寂しさを押し殺そうとしているのがなんとなく理解できた。昨日は、アンリエッタからの任務の失敗・ワルドの裏切り・ウェールズたちの王党派の壊滅のショックで、同じ痛みを抱えているサイトに、内心では慰めて欲しかった。けど、同じ痛みを抱えていたからこそサイトも自分を責めていた。それに自分が勝手に苛立って彼を突き放すような言い方をしてしまったことを後悔した。
タバサはやたらとたくさん食べ、ギーシュは村の娘たちを口説こうと、キュルケは美味しい特産品は他にもないのかとか、コルベールはホーク3号を観察したりと一時の安息に浸っていた。
サイトはその一方で、シエスタから二人で草原に出かけようと誘われ、早速草原にやってきた。ちなみにデルフはシエスタの家に用意された客室に置いてけぼりになった。自分の村ながらとても綺麗な景色だから、まっさきにサイトに見せておきたかったのだと彼女は語った。
確かに、これだけの広大な天然の美しさを持つ草原は外国の景色で、日本暮らしのサイトにはとても新鮮な光景だった。吹き抜けるかぞも心地よく、この草原なら野宿することになっても文句ない。夜には星空も見えるほど空も綺麗だった。
「ミスタ・コルベールはしばらくこの村に泊まり込むそうです。サイトさんから燃料さえあれば竜の羽衣をもう一度動かすことが出来るって聞いたときは、『この炎蛇のコルベール、燃えてきたぞ!』って張り切っておられましたよ」
「そっか…」
コルベールは貴族平民とかその隔たりにいちいちこだわらないし、それどころか誰にでも分け隔てなく接するところは教師の鏡だと思った。さらに彼は研究者としての顔も持ち、日々新しい発見に目を向けているという。あの人は変わった人だ。でも、サイトはコルベールの人柄には好印象を抱いていた。今頃ホーク3号のもとで、まだわずかに数滴残っていた燃料の解析と調合に当たっているだろう。
「サイトさん、ひいおじいちゃんの名前を知っているって言ってましたよね。ひいおじいちゃんって、どんな人だったんです?」
「…俺さ、怪獣災害で家族を亡くしてるんだ」
それを聴くと、シエスタは驚いて隣に立つサイトを見た。
「その時、新しく俺を引き取った母さんが…シエスタのひいじいさんの元同僚だったんだよ。若かった頃は何度も一緒に、地球の平和を守っていたって、何度か母さんから聞いたことがあるんだ」
「そうだったんですか!?ひいおじいちゃんって、そんなにすごい人だったんですね!」
学院を襲ってきたクール星人やトリスタニアを襲ったディノゾール…怪獣の恐ろしさはシエスタもすでにわかっているつもりだった。そんな凶悪な存在と自分の曾祖父が戦っていたなんて、自分の祖のなんと勇敢なことだろうと思わずにはいられなかった。
「しかも、私のひいおじいさんとサイトさんのお母さんがお知り合いだなんて…もしかして私とサイトさんって、運命の何かで結ばれているのでしょうか!?」
シエスタにとって、サイトが教えてくれた事実は嬉しいものだった。義理とは言え想い人の母と自分の曾祖父がかつての仲間で、その家族である自分たちがこうして巡りあったことに運命めいたものを感じずにはいられなかった。
「あの…サイトさん」
シエスタは意を決して、胸を高鳴らせながらもサイトに言った。
「もしよろしければ、私とこの村で暮らしませんか?」
「え…?」
その意図が理解できないほどサイトは鈍感ではなかったようで、思わぬ告白を受けたサイトはシエスタを見る。
「サイトさんと出会ったとき、ああ…これってきっと運命の出会いっていうものなんだって。これまでサイトさんの姿は、貴族様たちの影に怯えていた私たちにとって輝いて見えていました。もう…サイトさんへの思いを抑えられないんです。だから、教えてください。サイトさんのお気持ちを…」
シエスタは確かにかわいい。家事全般は得意な上に…脱いだらすごい。フルハシから受け継いだ、懐かしい黒い髪と瞳。こんな子に好かれたと、もし故郷のクラスメートたちが聞いたら、『平賀の裏切り者!』と羨ましさのあまり罵ってくるだろう。けど…。
サイトは思い出した。アンリエッタの依頼を受けて旅に出たこれまでの経緯を。ラ・ロシェールで、自分が変身したゼロが街の被害を顧みない戦いをしたせいで、怪獣を倒すことはできても街は壊滅的な被害を被り、彼とゼロの間にも深い亀裂が生まれてしまった。その亀裂が災いし、サイトはゼロに頼ることを渋った。だがそれも結果として間違いだった。ゼロに頼らず自分の力のみで守るといきがっていたが、ちょっと特殊な力が使えるだけのガキである自分に守れるものなんて限られていることも忘れて、既にレコンキスタに寝返っていたワルドの突然の裏切りと愚行を許しウェールズと手紙は奪われ、炎の空賊たちは散り散りになり、王党派は壊滅してしまった。
「…ごめん」
サイトは、自分にはシエスタを守ることができないと悟った。シエスタは自分を思ってくれているその気持ちが嬉しくても、同時にいずれ彼女を不幸な結果に招くに違いないと思ってしまう。それに地球には帰りを待っている人たちがいる。母さんや高凪さん…学校の友達が…。だから、サイトはその言葉を受けることはできなかった。
「シエスタのひいじいさん、フルハシさんがそうだったように、俺もこの世界に居着くとは限らない。なのに君の気持ちを受け入れたら、別れが辛くなる…。俺は、いずれ地球に帰らないといけないんだから」
「…そう、ですか」
シエスタは目を伏せて、残念そうに俯いた。
「なんとなく、断られるような気がしました。サイトさんって、まるで鳥の羽のように、私の手の届かないどこかに飛んでいってしまうのですね」
空を見上げ、儚げな眼差しでシエスタは、もう日が沈んでオレンジ色に染まり始めた空を見上げた。
「でも、サイトさん。私はまだ諦めません。サイトさんがもしこの世界にいてくれるって決心したら…今言った私の言葉を、思い出してくださいね。本気ですから」
悲しそうな顔から、ころっと笑顔に表情を変えたシエスタはそう言い残して、先に自宅へ帰っていった。
「……」
サイトは、草原から歩き出した。シエスタの家ではない。向かっている先は、ホーク3号が置かれた神社のすぐ近くにある、墓所。
『驚いたもんだ。まさか、俺たちやあいつ(シュウ)より先にこの世界に来てた奴がいたなんてな』
ゼロがふと、彼の目を通してフルハシの墓を見ながら言った。
「…ああ。今でも歴史関係の資料で名前が残っていることがあるほどだし、シエスタがフルハシさんの子孫だったなんて。通りで、初めてあの子を見たとき懐かしい感じがしたんだ」
母のかつての戦友だった男、フルハシ。ウルトラ警備隊の肉体派で、豪快な性格だったと義母は語っていた。もし話す機会があったら、同じ地球人同士話が合っていただろうし、もしかしたら、帰る手立てを彼から聞くことだって出来たかもしれないのに。
「…フルハシさん、あなたと話をしたかったな…」
どんな人だったのだろう。是非ともあって話をしたかったのだが、それができないことに残念に思わざるを得ない。
彼はフルハシの墓の前を見て、一人ポツっと呟いた。
すると、シャン…っと背後から音が聞こえてきた。何の音だろうと思い、サイトはその秋風がよく似合う音の正体を探ろうと振り向いた。
後ろに立っていたのは、壮年の渋いオーラをまとった男だった。
その男の格好を見て、サイトは絶句した。昔の日本人が旅の際に身につけていた傘帽子に、喪に服した人や寺で今日を唱える僧が着込む黒い和服。そしてシャンシャンと風になびきながら鳴る錫杖。
「…!!?」
この人は一体…?
手に持っていた白い花束を、フルハシの墓に添えたその僧は膝をつき、合掌する。
『サイト、気をつけろ。こいつは…』
ゼロも警戒しろ、とサイトに忠告する。確かに警戒したくもなる。こんな異世界で、坊さんの服を着てる人間なんて、良くて自分たちと同じ地球人か、または…『地球の日本を知っている異系の何か』のどちらかしかない。
『…いや、まてよ…この気配どこかで感じたことがあるような…?』
しかし、忠告を入れてきたはずのゼロは違和感を覚えていた。まるで以前にもあったことがあるような口ぶりだった。
「ゼロ」
「!!!」
壮年の男の口から突如ゼロの名前が明かされ、サイトは思わず後ずさった。
「K76星以来だな」
かぶっていた傘を取ると、その男は立ち上がってサイトの方を振り返った。男から放たれるそのプレッシャーは、いくつもの修羅場をくぐってきた、戦いの年季というものを物語っていた。左手の中指には、エメラルドに輝く目を持つ獅子の顔をかたどった金色の指輪が身につけられていた。
『!…そうか、あんたは…!』
「知っているのか?ゼロ」
サイトはゼロに尋ねる。次に彼から語られた言葉は、サイトをまたしても驚愕させることになる。

『こいつは…ウルトラマンレオだ!』
「…!!」

サイトとシエスタ、二人の運命が混ざり合ったこのタルブ村で、この男…『ウルトラマンレオ』の人間としての仮の姿『おおとりゲン』との再会が新たな運命を紡ぎ出すことになることを、サイトもゼロも知る由はなかった。
 
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