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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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羨望-エンヴィ-part2/ルイズとサイトの離別!?

食事は、貴族であるルイズたちから見るとわびしく見えるものだった。この村はマチルダが土くれのフーケとして金を稼がないと収入がない。子供たちの生活費のためにその大半を消費しているため、あまり多い方じゃない。当然豪勢な料理などでない…しかし、テーブルに並べられたパンやサラダにスープ。他にも近くの森で採れた木の実や果物も並べられているその光景は、見るからにとてもおいしそうな料理だと思わせる。そして、田舎風の味付けならではの味が楽しめる。
「へえ、なかなかおいしそうね。ねえタバサ」
「…ん」
キュルケの故郷ゲルマニアは、儲かりさえすれば平民も領地を買って貴族に昇格できる制度ができており、それもあって子供の頃のキュルケは平民の子供や他の貴族の子供たちと混じって遊んだ経験があるので気にしなかった。タバサも見かけによらず何でも食べることもあって同じだった。
「平民の料理を食べるなんて…」
「う、うむ…」
ただ、豪華な料理しか食べたことのないギーシュも、そして変なところばかり貴族として凝り固まっているルイズはそれ以上に、いつも食べている料理と比べて豪勢じゃないためテファの料理に違和感を覚えていた。
「テファ姉ちゃんの料理を食べない奴は悪い奴だ!」
「ちょ…!!」
テファの両意を食べることをルイズたちが渋っていることに気づいたジムが、二人に罵声を浴びせてきた。いきなり糾弾された二人は固まってしまう。

―――…残してんじゃねーよ。いけないんだー…。

ふと、あの時サイト(実際は彼の口を通してきたゼロ)が思わず口にしたボヤキが脳裏をよぎってルイズはカチンとなった。サイトを召還した次の日に、ニンジンを残した時にクラス全員からまた馬鹿にされた時の悪夢が蘇り、それがかえってルイズに食べる気を起こさせた。
「だ、誰も食べないなんて言ってないでしょ!ちゃんと食べるわよ!」
「れ、レディが用意した手料理を食べないなど紳士の恥!もちろん食べるともさ!」
女性の前で、カッコ悪いところは見せられまいと、ギーシュもまだ慣れていない平民料理に手を付ける決意を固めた。
どうせ平民の料理なんて…。平民の料理は口に合わないかも…そんな不安をよぎらせながら、二人はまず、テファの焼いたパンを食べた。
「おいし……っま、まあ…庶民の料理にしてはまあまあじゃない?」
思わずおいしいと言いかけたルイズだが、これをおいしいと素直に褒めたら貴族の癖にみずぼらしい料理を気に入った…つまり公爵家の癖に意地汚いと呼ばれると思ってしまい、頬を染めながら、本心とは異なるコメントと吐く。
しかし素直じゃないルイズとは打って変わって、ギーシュはおお!と、いつも食っているものとはまた違う味に感嘆した。
「正直庶民の料理には抵抗があった…だが!さすがはティファニア!美しく・可憐で・慈愛に満ちた…彼女の愛がこの料理に詰まっている!この愛…受けとらぬ者は紳士ではない!!」
「あ、ありがとうございます…」
テファとしては全く持って意味が分からない感想だったが、とりあえずギーシュなりに褒めていることがわかった。とはいえ、芝居がかった言い回しについてテファは反応に困った。ルイズも遠まわしにおいしいと言ってくれたこともバレバレだったので、そのあたりはよかった…と安堵する。
「お姉ちゃん。シュウ兄…今日は遅いね」
すると、テファの隣に座っていた少女エマが、未だにシュウが帰ってこないことを気にしてテファにそのことを言う。
「そうね…」
遠い目で、村を囲む森の奥深くを眺めながら、テファはため息を漏らした。
「サイト、さっきギーシュさんがシュウを知っているような言い方をしていたけど、もしかして彼を知っているの?」
その問いに対して、サイトは頷く。
「まあ、たまたま知り合ってたんだ。でも、驚いたよ。まさか、あいつも俺と同じだったなんてさ」
「同じ?」
同じ…とはどういう意味だろう。よくわからずテファは首を傾げた。元学院長秘書だったこともあって知っていたマチルダはその意味を説明した。
「この使い魔君はね、あんたと同じように使い魔として召喚されたんだとさ」
「あ、ああ…ルイズに召喚されてね」
証拠として、サイトは自分の左手の甲のルーンを見せた。刻まれた古代ルーン文字を見て、テファは目を丸くした。
「本当だわ。私がシュウに刻んだルーンとよく似ている」
「しかし、ルイズ以外にも人間を使い魔にしたメイジがいるとはね」
キュルケが興味深そうに言った。ルイズが平民であるサイトを召還した時の光景を見たときは、またゼロのルイズがやらかしたとばかり思っていたが、テファがルイズと同様に人間を召還したと知った時の感覚はあの時ルイズに対して言ったような嘲笑はなかった。
「あんた、ティファニアまでゼロだなんて馬鹿にする気?」
「別にそんなことは言わないわ。ティファニアがどんな魔法を使うかまだわからないじゃない。変なところで過敏ね」
さんざん日常的に言われたこともあって、平民であるサイトを使い魔にした途端、いつものように馬鹿にされまくった時のことを根に持っていたルイズは横目でキュルケを睨んだが、そんなことはしないとキュルケは否定した。
一方でサイトは次に、シュウがウルトラマンであることをばれないようにしながらも、どのようにして彼のことを知るべきかを悩んだ。まずは、適当に一つ彼女が彼をどう見ているのかを尋ねてみた。
「あのさテファ、シュウって…君から見てどんな男なんだ?」
キュルケのように、実は恋仲になっているとか、そんな話をふっかけたわけじゃない。ただ、単純に彼のことを彼女がどう思っているのかを問う。
テファは、彼を召還したその日の記憶からこれまで彼が村で過ごしてきた様子を振り返りながら、サイトたちに答えた。
「一言でいえば…不思議、かな。私は同年代の男の人と話したことなかったけど、とにかく彼は、不思議な感じがしたの」
「不思議?」
「うん。私や子供たちは愚か、姉さんでさえ知らないことをたくさん知ってて…元はどこかの軍に属してて、ほんの少しだけ行商の人の話で耳にしたことがあるくらいだけど、巨人や怪物のことを知ってたり…まるで違う世界から来たとしか思えない」
「いや、文字通り違う世界から来たんだよ」
「あ、ご…ごめんなさい!私ったら…」
おいおい、と一言声をかけてマチルダがテファに突っ込むと、テファは少し頬を染めて慌てふためいた。仕草の一つ一つがルイズとはまた違う味を出していてかわいいと、不純にもサイトは思ってしまう。
「最初は…冷たく当てられていたわ。子供たちも、彼の高圧的な態度を怖がってて…やっぱり私が彼を勝手に召喚したせいとか、私がエルフの血を引くからとか…とにかく私のことを怒ってるって思ってた」
それを聞いたときのサイトの脳裏に、自分がルイズに召喚されたばかりのころの記憶が流れる。正直酷い有様だ。特にルイズの自分に対する待遇が。そしてギーシュも今と比べると最低な男だった。今は…まぁそれなりにまともになった…と思う。
わがままで自分勝手すぎて八つ当たりをするご主人様と、口先だけの愛をささやいて二股をかけまくりで、あまつさえその間違いを認めず決闘を吹っ掛けてきたキザ男。もし彼らが今のように少しでも自分の非を認めようともしないままだったら、きっと自分はすぐに学院を離れていたかもしれないと思った。
「仕事でマチルダ姉さんが一度村を離れてから、子供たちの中にもシュウのことをよく思ってない子もいて…このままで大丈夫なのかなってずっと不安だった」
あいつも苦労してたんだな。きっと周囲の環境がガラッと変わったから、この村に適応するのに手を焼いてたんだろう。サイトはラグドリアン湖にて、シュウを改めて会った時の彼の言葉遣いや態度を思い出す。あの時のルイズは惚れ薬のせいで自分にべたぼれ状態にあったせいか彼を怖がっていた。しかし、もし本来の彼女のままで彼と会っていたら、彼のことを「平民のくせに生意気よ!」と言うに違いない。
その時の様子が用意に想像できた。子供たちから怖がられ、警戒され、遠ざけられている彼の姿が真っ先に見えた。もし俺がルイズじゃなくてテファに召喚されていたら、同じことが起きていただろうか。
「あたしもなんとかテファや子供たちと仲良くしてほしいとは言ったけど、ああいう手合いは人付き合いが不得手な類だからね」
「ひねくれたやつね」
(ひねくれてるって…お前が言うか)
当時を思い出してやれやれといった様子のマチルダの一言に、ルイズはばっさりとシュウを言い捨てたが、サイトは彼女の一言に突っ込みたくなる。
「確かに、勝手に召喚して契約して使い魔にした私に責任があるけど、だからってこのままではいけないと思って、彼と話をしようとした。でも…」
「そのシュウって男はなかなか打ち解け会おうとしなかったということね?」
「はい…」
キュルケがそう言うと、テファは頷くとそのまま俯いた。ルイズはそれを見て、表情が憂い顔になる。強く、何かを不安がっているのが目に見える。
「やれやれ、こんな麗しいレディがいるというのに冷たく突き放すとは、紳士とは程遠いな…」
(このキザ野郎はまったく…)
ギーシュは違う方向でシュウに呆れていた。が、寧ろこんな話ばかり持ちかけてくるギーシュの方に呆れてしまうものである。
「でもね、シュウ兄って悪い人じゃないんだよ」
「うん、だっておうちのお手伝いを手伝ってくれたし、悪い人に連れ浚われたお姉ちゃんを一人で助けてくれたんだもの!」
女性や子供に対しても冷徹な男かと思わせる話が並んでいたが、その想像を砕くかのようにエマが、そしてサマンサが口々に言いだした言葉に、サイトたちは目を丸くした。
「悪い人たちにって?その時の事、聞かせてくれるかしら?」
「うん、いいよ!」
キュルケがそう言うと、サマンサは頷いた。
それからシュウがこの村で何をしていたのか、どんなことをしてくれたのか、元はどこの人間だったのかとかさまざまなことを聞くことになった。とはいえ、そのすべてを理解できたのは地球人であるサイトだけで、ルイズたちは主にこの村に召喚されて以降の彼のことしか理解できなかった。



その日は、皆は村で休むことになった。サイトは夜の闇に包まれた村の庭に出て、テファたちが自分たちにしてあげた話を思い出した。
「…」
浚われた少女を颯爽と助けに現れ、見事その窮地を救った男。さっきテファや子供たちが話してくれたシュウの話は、まるで漫画とか、物語の世界の話のようであった。冷たそうに見えて意外と子供たちの面倒をしっかり見てあげたり、文句を言わずに家事も熟したり、主人であるテファを助け守り抜くなど責任を全うしている。ただ、笑ったことはないのを除けば…とは子供たちの話である。
ウルトラの力の用いようも完璧だ。最初にモット伯爵の屋敷に現れた怪獣と戦った時は思った通りのサイズになれず、チビトラ状態のまま戦い負けそうになったところで彼が助けに来てくれた。二度目は、フーケ事件の時。元は怪獣に殺されかけたフーケを助けるべく現れ、自分と各個撃破の形で怪獣を倒すことが出来はした。ゼロに決定的な失望を抱いた三度目の…ラ・ロシェールの戦い時、ゼロ=自分がラフレイアが体内に可燃性ガスを孕んだ花粉をたっぷりため込んでいたにもかかわらず、火に油を言葉通り注ぐかのように炎を纏った蹴りで大爆発が起こったところ、彼は己のみが傷つくのをいとわず、身を挺して街を守ったことで、街の被害を抑えた。
(それに引き換え、俺は…)
なんてダメな奴なのだろう。今回の旅で俺は一体何をしていた?何もこなせず…何も守れず、ただそこにいただけじゃないか。
「相棒」
「…んだよ」
鞘から顔を出してきたデルフがサイトに話しかけてきたが、サイトはそっけなく返した。
「なんでい、冷てえな。おめえさんにそんなクールなキャラは似合わねえぞ」
「ほっとけ…」
サイトは、シュウが羨ましかった。自分…いや、自分たちとは違う。自分たちのような情けない失敗なんて犯していないと言う事実を羨んだ。
「城で起こったことはおめえさんのせいじゃねえさ。ゼロがラ・ロシェールの街であんなことをしちまったんだ。そりゃ、おめえさんが変身を拒むのも無理はねえ。誰のせいでもねえよ」
「違う、デルフ…俺のせいだ…何もかも…」
ゼロは自分を認めさせようとするために、街の被害を顧みずに戦った結果、ラ・ロシェールの人たちに多くの犠牲を出し、生き残った街の人たちからから死神・悪魔・疫病神のように罵倒された。
自分は、そんなゼロを見限って意地を張り、ゼロの力に頼らず自分だけで何でもやろうとしていた。たった一人で、それも元はただの一般人の高校生だった自分ごときが、怪獣や星人と言った人外を相手にしようとしたところで、冷静に考えれば結果など目に見えているはずだった。なのに、俺はそのくだらない意地と憤りに拘って…皇太子様やグレンたち炎の空賊たちが…。
ニューカッスルの教会で、ワルドがジャンバードを操って攻撃を仕掛けために命を散らし、死体の山となってしまった王党派の者たちのことを思い出す。思い出すと、胸が締め付けられる。俺がゼロに対して失意からの意地を張っていなかったら、あの時仲間たちの前だったとしても変身して、あのジャンバードを止めることで皆を助けることもできただろうし、ウェールズを人質にとられて王党派を壊滅させられることもなかった!
「城の皆も、皇太子も…しかも、ワルドに……」
しかも、ルイズたちの前で無様に、あの薄汚くて卑怯な裏切者に決闘を申し込まれ、ボロ負けしてしまった。危うく、ルイズたちさえも死なせてしまうところだった。自分だけではどこまでも非力だと言うことを思い知らされた。
皮肉にも、ワルドの言う通りだ。俺のせいで、王党派側の皆の努力が無駄になった。それどころか…。
「そりゃあ…娘っ子たちの前で負けたのは悔しいだろうし、王子様たちがあんなことになっちゃあな。けど、あんまり落ち込むなよ。俺っちまで悲しくなるじゃねえか…っておい!ちょっと待っ…」
サイトは最後まで話を聞かなかった。無理やりデルフを鞘にしっかりしまいこんで黙らせてしまった。
『…サイト』
久しぶりに聞いたような気がした。一か月や一年も経った後で聞いたような感覚だった。ゼロの声が、頭の中に聞こえてきた。ラ・ロシェールへの旅の道中でのワルドの言い分に憤りを覚えていたゼロだが、今はもうすっかり落ち着いていた。冷静になった今なら、あの時の自分の思い上がりが大きな間違いにつながったことを理解した。
そして…彼が『以前に侵していた大罪』の重さも…。
『どうして、お前は他人を守ることに拘ってたんだ?なんで、ルイズたちを守ろうと思っていたんだ?』
サイトと同化し、彼の行動と人となりを知っていくうちに、疑問に思っていたことだった。こいつは別に、自分とは違い生まれながらのウルトラマンでもなければ地球防衛軍の隊員でもない。にも拘らず、今まで彼は危険を顧みず、体を張って星人や怪獣と対峙し続けてきた。その行動の原動力になっているものを、知りたくなっていた。
「…俺さ、四年前の中学一年の5月20日に家族を失ったんだ」
サイトは、物語を読み聞かせるように、昔のことを静かに語り始めた。
『…』
「あの日、ボガールって怪獣が現れて町が大騒ぎになって、街がぶっ壊されてさ。何度もウルトラマン早く来てって、あの時は何度も叫んだ。でも…来てくれたってのに」
サイトの表情が歪み始めていた。
「大事なものを全部…奪われたんだ。ウルトラマンに」
『え…!?』
大事なものを…ウルトラマンに奪われた!?
一体どういう意味だ。サイトはウルトラマンに対して強い信頼と憧れを抱いているはずなのに、逆にウルトラマンを憎んでますみたいなことを言いだしている。ゼロは、密かに話を聞いていたデルフもまた驚いていた。
「青いウルトラマン『ヒカリ』、その時はツルギって違う名前だったけど、あいつが怪獣を倒すために撃った光線が空振りして町に当たって…その時の爆発と建物の崩落に俺の両親が巻き込まれたんだ」
『ヒカリ…!』
ゼロも、ウルトラマンヒカリのことは知っている。光の国では主に科学者で占められているブルー族の中で数少ない宇宙警備隊員であり、初のウルトラ兄弟入りを果たした青いウルトラマンの名前だ。かつて、これまでのウルトラ兄弟が命を失いかけた際にその復活の技術として、『命の固形化』…つまり新たな命を生物に吹き込む術を編み出したとも言われている。その功績を認められて胸にウルトラ兄弟No.1『ゾフィー』と同様にスターマークを胸に刻まれた偉大な功績者。
しかし、地球では最初からよい目で見られていたわけではないのは、ご存じの人もいるだろう。
「ツルギは、同胞であるメビウスさえも巻き添えにボガールを倒そうしやがった。普通考えられないよ。自分の仲間ごと敵を殺しにかかるウルトラマンだなんて。だから、俺はツルギをもっと憎んだ…」
かつてのサイトの家族に起った悲劇を、彼の口から語られたエピソードを聞いていたゼロとデルフは、決して聞き逃すことはなかった。
(そのこともあって、トリスタニアの市街地の戦いの時から俺に反抗してやがったのか…)
ここまでの話だけでもゼロは、自分のこれまでの戦い方をサイトが頑なに認めなかった理由の一端が理解できた。両親の仇であるツルギのよって植えつけられた当時のトラウマがそうさせていたのだと。ゼロとしても、もしサイトの立場だったら同じことを考えずにいた、なんて考えられなかったと悟った。
「でもある日、ツルギが急に鎧を解いた姿を現して、メビウスやGUYSと一緒に地球を守るようになったんだ」
その話もゼロは知っている。一時、ボガールへの復讐心に支配されていたツルギは、ついにボガールを倒したと同時に力尽きたところ、かの『ウルトラの母』から慈愛の光を浴びせられたことで蘇り、復活してからはウルトラマンとして地球で戦ったと聞いている。
「最初は人の大事なもの奪ったくせにぬけぬけとって腹が立ってたよ。だから新しい母さんに拾ってもらった後もしばらくツルギを恨んだ」
その後も、サイトは己の過去のことを明かして言った。その過去をネタとして狙ってきたヒルカワに付け狙われたこと、同時に似たような理由でウルトラ戦士たちを貶めるための餌としてバルタン星人に狙われたことを明かしたところで、ゼロが驚いたように声を上げた
話した内容は、今朝夢の中で見たものとわずかな相違を除けば全く持ってその通りだった。
『ば、バルタン星人だと…!?』
地球人だけでなく、ウルトラマンたちでもその名前はかなり有名だった。宇宙忍者バルタン星人。初代ウルトラマンが最初に戦った異星人で、当時彼と戦った因縁から十年以上にもわたってウルトラマンたちと地球を巡って争うこととなった。
初代ウルトラマンが地球を守っていた当時、彼らバルタンはある科学者の実験の失敗によって母星が爆発してしまったため、地球人から地球を奪い取ろうとした。その時の敗北がきっかけで、その後もジャックや80に6代にもわたって挑戦してきた侵略者だ。
『…何となく流れが読めてきたな。お前の、ヒカリに対する憎しみをバルタンが利用したってことか』
勿論ゼロもバルタン星人のことは何度も訓練生だったころに聞いていた。彼らの持つ、ウルトラ族をも凌駕する強力な能力には幾度もウルトラマンたちは苦しめられてきたのだ。
「大当たりだよ。俺の…俺の弱い心のせいで、バルタンたちに付け込まれたんだ」
当時、バルタンに襲われた時のことを思い出したサイトは顔を俯かせて肯定した。
(そんなんで、よく相棒は助かったよな…)
デルフも大きな声こそ出さないが驚いていた様子だった。
「あの時は流石に死ぬんだって思ってた。あの時、あいつらが俺の体を操って、GUYSとウルトラマンを一網打尽にする…それが今度あいつらが取った作戦だった」
つまり、サイトの命を盾にした、典型的な卑怯者の作戦だった。
「といっても、俺も半ばあいつらに手を貸したようなもんだった。あいつらは俺に憑依して俺の心を操って、今まで以上にツルギを憎む心を膨らませたんだ」
憑依…つまりウルトラ戦士同様体を一体化させられたのだ。
サイトがすでに自分以外に憑依されたと言う点では前科持ちだったこともそうだが、まさかあのバルタンにこのような形で狙われていたとは思いもしなかった。
『その後、一体どうやって助かったんだ?』
「もちろんウルトラマンに助けてもらったよ。よりによってツルギ…ヒカリだったけどね」
脳裏に、ヒカリの金色に輝く剣がバルタンを真っ二つに切り落とした姿は今もなお覚えている。一度間を開け、サイトは告げた。
「あの事件の後、ツルギ…ヒカリは仇ではあるけど、俺に大切なことを気づかせてくれた命の恩人にもなった。憧れさえも不思議と沸いてきて、いつかGUYSに入って、返しきれない恩を返していきたいって思ってた。けど…」
俯いてギュッと手を握ったサイトは、悔しさをそのまま口に出した。
「俺は……思ってるだけで結局そのままだった。学校の成績、あんな事件があったのに全然はかどらなくって…。GUYSに入るなんて無理な話になってた。
ルイズに召喚されて、ゼロと同化してガンダールヴの力も手に入れて…。俺は何でもできるんじゃないかって、心の中で舞い上がって、お前に偉そうな口だって遠慮なく叩いても…。もうお前に頼りたくないから結局自分で何とかするしかないんだって、俺一人の力…ガンダールヴの力だけでワルドに勝って、家族を失ったあの時の俺とは違うんだって、成長したんだって証明したかった。
でも…結局自分の力を測れなくなって突っ走って、結局思いこむだけのド素人の高校生一人じゃ、怪獣をどうこうできるはずもなければ、王党派の人たちを守ることだってできやしない。ましてや…ワルドに勝つことだって…」
夜空を見上げるサイト。ラ・ロシェールを訪れたあの日の夜は二つの月が重なった日。その日にアルビオンはハルケギニアに最接近する。その日は過ぎてしまったため、わずかに二つの重なり合っていた月は別れようとしている。地球の月のように青白い輝きから、元の赤と青の輝きに戻ろうとしている。サイトは思わず手を伸ばしそうになった。その手に掴まなければ、元の世界に戻れないような気がした。月が重なった時の輝きが、地球の月のように見えていた。二つの月が離れようとしているのは、まるで自分の世界が遠のいてしまうかのように思えた。
ああ…話をしているうちに、故郷を思い出さずにはいられなくなった。下らないことだらけだがやりたいことだってたくさんある。インターネットや漫画とかゲームだってまだやり足りない。ハンバーガーをたらふく食いたい。
義母は元気だろうか。クラスメートは、この世界に来る直前まで一緒にいた高凪さんは無事だろうか。地球は平和でいてくれているだろうか。強すぎるホームシックを抱き、サイトは涙さえ流しかけた。
「サイト」
後ろから声を掛けられ、サイトは振りかえる。声をかけてきたのはルイズだった。
「何泣いてるのよ」
「泣いてなんかねえよ」
急いで目尻を拭ってサイトは誤魔化した。ルイズたちに、こんな姿を見られたくなかった。
「気に病んでるんでしょ。あの城で起こったこと…」
ルイズの言うことは的を射抜いていた。サイトは、ニューカッスルで起きた悲劇を引きずり続けていた。
「一人で抱えないでよ。私だって同じよ…」
そもそも今度の任務は、本来ルイズが率先して請け負ったものだ。ワルドが裏切者と知らずにその狼藉を許したこと、アンリエッタの手紙を二通とも奴に奪われてしまったこと、そして王党派の壊滅…m全ての責任は自分にあるとルイズは受け止めていた。幼き日の自分との思い出を大事にしてくれていた姫様の期待を裏切ってしまい、果てはそんな人の大切な想い人をみすみす、自分の婚約者であった裏切者の手に落とされるのを許してしまった。トリステインに帰ったら、死罪であろうと、自分なりに相応の罰を受ける覚悟をしていた。なのに、使い魔がこうして自分だけが悪いと言わんばかりに泣いていた。それが、ルイズには耐えられなかった。
サイトは、ルイズから目を背けてぶっきらぼうに言った。
「…帰りたいって思ってただけだ」
それは確かに本当だが、ニューカッスルでの出来事が自分のせいだと思っていることを少しでの悟られないための、悪あがきに近い誤魔化しだった。
「…悪いとは思ってるわよ」
ルイズは俯きながらそう言った。
「…どうだろうな。泥棒討伐とか姫様のお願いとかで頭がいっぱい見たいだろうし」
今はほっといてほしい。遠回しに言うつもりでサイトは突っぱねるように言った。
「それはその…貴族には外聞ってものがあるの。それに、帰る方法なら責任もって私が探すわよ。嘘はつかないわ。
…それまでの面倒もちゃんと見てあげるわよ」
ルイズは最後のあたりでわずかに頬を染めながら言った。
「俺みたいな役立たずの面倒を見なくたっていいだろ…」
しかし、サイトは随分と卑屈なコメントで返してくる。
「呆れた…そんなにワルドに負けたことが悔しかったの?仕方ないじゃない。…悔しいけど、あんたと比べてワルドはトリステインでその名を轟かせたスクウェアクラスのメイジなんだから、負けたって恥じゃないもの」
「気にしてなんかいないっての…」
それはまるっきりのあからさまな嘘だった。これ以上先日の任務失敗の時のことを上げても話が進まない。ルイズは明日からの予定の話に切り替えた。
「…とにかく、明日にはトリステインへ戻って任務のことを報告するわよ。そのあとも、あんたにはわたしを守ってもらうわ。その代わりちゃんとしたご飯用意するから…いいわね?」
「…いいよ。別に。お前はキュルケたちと一緒に学院に帰れ。俺は、トリステインに戻ったらひとりで旅に出るよ」
「な!?」
サイトの口から信じがたい言葉が飛んできた。頭の中でいくつも解釈が飛び交ったが、結局答えは一つしかない。
サイトが、事実上自分の元から離れるということだ。
「何を言い出すのよ!あんたは私の使い魔なんだから勝手なこと言わないで!帰れる方法を見つけるまでは守ってもらうわよ!」
「俺じゃお前を守れない」
「え?」
「俺は伝説の使い魔『ガンダールヴ』の力を持っているとかウル…常人離れした力を手にした身だけど……結局は何一ついいことない。俺一人じゃ何もできやしないってわかった。闇雲に無意味な意地を張って足掻くことしか能がない。そんな俺が、何を守れるって言うんだ?」
その結果が、あのニューカッスル城の教会での悲劇じゃないか。
サイトの言葉を聞いている間のルイズは、ワルドとの結婚式前夜のとき以上に、サイトに対する怒りを募らせていった。見るからに、その手が震えだしている。
「俺はラ・ロシェールについたら一人で旅に出る。お前とは、そこで別れるよ。今まで世話になったな」
バシン!!
ニューカッスルの時と同様…いや、それ以上にルイズからの手痛すぎるビンタが飛んだ。しかし、あの時と違ってサイトは動揺しなかったうえに痛がる素振りさえ見せなかった。あらかじめ殴られたって構わなかったかのように。
「この意気地なし!馬鹿犬!馬鹿使い魔!!馬鹿サイト!!あんたなんか…使い魔にするんじゃなかった!」
ワルドに裏切られ、ウェールズたちを守れず、姫から請け負った任務を全うできない悔しさや悲しさを、ルイズは使い魔である…いや、他の誰でもないサイトに慰めてほしかった。心の奥底ではひどく落ち込んでいた自分を、励ましてほしかった。素直にそんな部分を見せられなかったが、察してほしかった。どうせ学院に戻ってもサイト以外に心を許せそうな相手がおらず、ゼロのルイズといつものように馬鹿にされて一人ぼっちになった自分を優しく包んでほしかったのに…。
今まで…ギーシュとの決闘でシエスタを助けるばかりか自分の名誉を取り戻そうともしてくれたくせに!フーケが盗んだ破壊の杖を取り戻す任務の時に現れた怪獣から助けてくれたくせに!!姫様の前で任務を受けたあのときだって、それなりに頼もしい言葉を言ってくれていたのに!
それなのに……肝心の彼がこのありさまだった。その不満と憤りが、本来の自分でも心無さすぎて無責任にも思わる言葉を吐いてしまった。
「…じゃあ…」
彼女のその言葉が、さらにサイトにとっての、二人の溝を深めるだけに十分な起爆スイッチになってしまった。
「最初っから召還魔法なんか使うんじゃねえよ!!この胸無し!暴君!!糞餓鬼!!最低主人!!『ゼロ』のルイズ!!」
以前、使い魔を召還しなければ留年してしまうとか、主人となるメイジは使い魔を選べないとか言われているがそんなこと関係ない。こんな言葉を掛けられたサイトにとって、これほど屈辱的で自分をより悲観的に思わせる言葉はなかったかもしれない。
ありったけの思いを爆月させるかのように子供じみた罵声を浴びせられたルイズは、目尻に溜めた涙を抑えきれなくなり、踵を返してサイトの元から走り去っていった。
「………相棒」
デルフは、途中で何度も言葉を書けようとも考えていたが、自分が言ったところで火が付いた二人を止めようにも止められず、ただ二人を悲しそうに見つめることしかできなかった。
サイトは、はあ…とため息を漏らした。
今まで帰りたいと本気で思わずにいたのは、この世界に及び始めている脅威がまさに自分が暮らしていた地球そのもの。それを無視したくはなかった。
でも………もういいんだ。きっと今のやり取りで、ルイズは俺を見限っただろう。キュルケたちも、きっとルイズから話を聞いて自分のことを見損なうに違いない。どうせこの星にいたって俺は何の役にも立たないんだ。
もう、ルイズを守る必要なんかないんだ。これでよかったんだ。
雨が降っているわけでもないのにサイトの足元にぽたぽたとしずくが落ちて地面に染み込んでいくその時、ゼロは気づいた。サイトは、情けない自分への自己嫌悪のあまり泣いていた。
「なんだよ…なんでなんだよ……」
目から、涙がとめどなく、抑えきれずに溢れ続けていたのだ。
胸が苦しい、喉の奥がカラカラで、指先がちりちりして、目の奥が熱すぎる。最低ってなんだよ?一番最低なのは、俺じゃないか…。
たった今だってルイズに…。
ゼロのことも、最初に会った頃のルイズのことも笑う資格なんて何一つない。
これまでさんざんカッコつけたセリフをほざいておきながら、結局自力では何もできやしない情けない口先だけの男。



「は、はは……笑えるだろ、ゼロ?これが…………………」







―――――本当の俺だああああああああ!!







近くにあった木を殴りつけ、サイトは泣き崩れた。 
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