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愉悦神父の息子のSAO

作者:神納豆
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鼠と攻略会議

 
前書き
遅れてすみません。
テストやら何やらで執筆できなかったので。
3話目です。
今回主人公あんまり喋んないです。 

 
一ヶ月で二千人が死んだ。






このデスゲームが開始されて一ヶ月。
今だに最下層である第一層すら突破できていない現状。
そんな時俺は迷宮区に一番近い町《トールバーナ》に一人でいた。

デスゲームが始まったその日にはじまりの街を出た俺とキリトは、共にクエストやレべリングを行った。
そして俺がある程度のレベルに達したときにキリトと別れ、ソロとして今まで生きてきた。
迷宮区やその周辺でレべリングをしているうちに攻略会議がトールバーナで開かれるという情報を耳にして、こうしてやってきたのだ。

「さてと、攻略会議まで少し時間があるな」

攻略会議は午後4時から、現在は午後3時、あと一時間ある。
どうやって時間を潰そうか考えていると後ろから——
「それならミネっち。面白い情報があるヨ」
と言う特徴的な声がした。

振り向くと、地味なレザーの装備に金褐色の巻き毛のかなり小柄な女性プレイヤーがいた。
顔にはメーキャップアイテムで両頬にヒゲのような三本線が描いてある。
アインクラッド初の情報屋、《鼠のアルゴ》がニヤニヤ笑いながら立っていた。

「何だアルゴ、面白い情報とは」
そう俺が訊ねると、アルゴは指を二本立てて言った。
「二百コルだゾ。ミネっち」
「ああ、二百コルだな。と言うかアルゴ、あだ名を付けるのはいいがミネっちはないんじゃないのか?」
「それ以外思いつかなかったんだヨ」

そんな会話をしながら二百コル払う。

「それで、面白い情報ってなんだ?」
「ああ、キー坊がね、女の子と一緒に迷宮区から戻ってきたんだヨ。それもかなり可愛い子とナ」
「ふーんあのコミュ障のキリトがねぇ」
「そうなんだよナ。ま、ミネっちも何か情報あったら売ってくれよナ」

アルゴはプレイヤー達に情報を売るほかに、マップデータやクエストの情報を買い取ることもある。
俺もアルゴにマップデータを提供したこともあるし、今みたいに情報を買うこともある。
攻略会議が開かれるという情報もアルゴから買ったものだ。

「それはそうとアルゴ。そろそろ《()()》の情報を売ってくれないか?」

そう言うとアルゴは顔を曇らせた。

「あー、うーん。ゴメンなミネっち。流石にこの情報は売れないヤ」
「そうか。まぁ、いいさ。売る気になったら言ってくれ」

アルゴは俺が欲しがっていた《体術》スキルの情報を持っているらしいのだが、何故か売ろうとしない。
何か理由があるのだろうと思い、気長に待つことにしている。

そうして雑談しているとちょうどいい時間になったので、アルゴと別れ会議が開かれる広場に向かう。
広場にはすでに人が集まっており、自分は端の方に座って始まるのを待つ。
広場に集まったのは自分も含めて45人。
予想よりもいくぶんかは多いが、レイドパーティーを組むには少し足りないが贅沢は言ってられない。

するとよく通る叫び声がしたのでそちらを向く。

「はーい!それじゃ少し遅れたけど始めようか。
オレはディアベル、気持ち的には《騎士(ナイト)》やってます。
こうして集まってもらったのは他でもない、今日オレ達のパーティーが遂にボス部屋の扉を発見した!」

プレイヤー達がざわめく。
俺も迷宮区がそこまで攻略されていることに驚きを隠せない。

「ここに来るまでに一ヶ月かかった。
だけどオレたちはボスを倒して第二層に行かなきゃならない!
はじまりの街に残っている人達に、このゲームがクリアできることを示さなきゃならない!
これはオレたちの責務であり義務だ!
そうだよな、みんな‼︎」

広場に拍手が巻き起こる。
ここまで見事な演説はあまり見ることはない。攻略組プレイヤーの心を一つにできるものだ。
このまま攻略会議も無事に終わると思っていたところに——


「ちょお待ってんか、ナイトはん」


——唐突に低い声がした。


拍手が止み、サボテンのような形をした茶色い髪をした男が前に出てきた。

「わいは《キバオウ》ってもんや。

こん中に、何人かワビ入れなあかん奴らがおるやろ」
「詫び?」
「そうや。今まで死んだ二千人にや。
奴らが全部、何もかんも独り占めしよったから、一ヶ月で二千人も死んだんや!」

ざわめいていたプレイヤー達が一気に沈黙した。
全員キバオウの言う《奴ら》が何なのか理解していた。

「——キバオウさん。《奴ら》とはつまり……()()()()()()()()のことかい?」
「決まっとるやろ。
ベータテスターどもは、このゲームが始まったとたんにはじまりの街から出て行きよった。
何も分からんビギナーを見捨てて、ウマイ狩場やクエストを独り占めしてジブンらだけ強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。
ベータ上がりどもに土下座さして、貯め込んだ金やらアイテムやらを出してもらわな、パーティーメンバーとして命預けられん!」

キバオウのその言葉に誰も声を出そうとしない。
今声を出せば自分がベータテスターだと思われるかも知れないからだ。
さっきまで拍手や歓声で満ちていた広場が静まり返ってしまっていた。


「発言、いいか」

そんな時に、低いバリトンボイスが響いた。

前に出てきた人を見てまず思ったのは、大きい。
百九十はあるだろう身長に、スキンヘッド、茶色い肌と日本人離れしている。

「オレはエギル。キバオウさん、あんたは元ベータテスターがビギナーを放っておいたから、多くの人間が死んだ。
だから責任を取って謝罪しろ、そういうことだよな?」
「そ……そうや。
あいつらが見捨てへんかったら、こないたくさんの人が死ぬことはなかったんや。
アホテスターどもが、金やら情報やらアイテムやらを分け合うとったら今ごろもっと上の階層に行けたはずなんや!」

キバオウは未だ出てこないベータテスターに対して糾弾の声を強める。
だがエギルはその声に臆することなく続ける。

「だがなキバオウさん。情報はあったと思うぞ」

そう言ってエギルは腰のポーチから羊皮紙をとじた簡易な本を取り出す。
表紙には丸い耳に左右三本ずつのヒゲを表した《鼠のマーク》がプリントされていた。

「このガイドブック、周辺の地形に出現するモンスター、そのモンスターからドロップするアイテム、クエストの詳しい解説まで書いてある。あんたも貰っただろ。
各地の村や町の道具屋で無料で配布してたからな」
「…何?」

そのエギルの言葉に俺は反応する。
あの攻略本は一冊五百コルだったはずなのだ。
キリトも俺と同じ値段で買っており、攻略本のいくつかはアルゴから直接買っていた。
後でアルゴを問い質すとして、目の前の会話に集中する。

「貰たけど何や」
「これはオレが新しい村や町に着くと道具屋に必ず置いてあった。
だが情報が早すぎる。
こいつに載ってる情報を情報屋に提供して、ガイドブックを発行させたのは元ベータテスター以外に考えられない」

広場のプレイヤーが一斉にざわめく。
キバオウは言葉に詰まり、ディアベルは納得したようにうなずいていた。

「オレが言いたいことはそれだけだ」

そう言ってエギルは自分がもといた場所に戻っていった。
今度はディアベルが前に出た。

「キバオウさん、君の意見を全て否定はしない。
俺だって何度も死にかけた。
だからって全ての責任をベータテスター達に押し付けてはだめだ。
ボスを倒すためには、それこそベータテスター達の力が必要なんだ。
それでも元テスターと一緒に戦えないって人は抜けて構わない」

ディアベルはプレイヤー達を見渡して、最後にキバオウを見詰めた。

「ふん…ここはナイトはんに従うといたるわ」

キバオウもまた自分のいた場所に戻っていった。
ディアベルはもう一度周りを見渡して口を開いた。

「それじゃあ、会議を再開しようか。
まずはレイドを組むためにパーティーを組んでくれ!」

そう言われて周りを見てみると早速7人ずつでパーティーを組んでいるようだった。
この場にいるのは45人、6人パーティーが7つで三人余るはずだ。
余りのもう二人を探していると見覚えのある顔があったのでそちらにいく。

「おい、キリト」
「コトミネか、一週間ぶり」
「ああ。ところでお前パーティーはどうした?」
「俺とそこのフードの人の二人だけだな」
「なら、俺も入れてくれ。俺たちが余りの三人みたいだからな」
「分かった」

キリトにパーティー参加申請を出して、受諾された瞬間に自分の視界の左側に、HPゲージが2つ現れた。
【Kirito】に【Asuna】の名前。あのフードの人はアスナというらしい。
名前からして女性なのだろうと思い、あいさつをする。

「よろしく頼む」
「……よろしく」

最低限の言葉をかわす。

ディアベルはパーティーを人数を入れ替えて役割を与えると、俺たち三人パーティーのところにきた。

「君たちはボスの取り巻きを潰すために、E隊のサポートを頼むよ」
「ああ、了解した。任せてくれ」

ディアベルは広場の中央に戻って行った。


その後の攻略会議は各部隊長の短いあいさつと、ドロップ品やお金(コル)の配分を決めて、「頑張るぞ!」「オー!」といったかんじで解散となった。

キリト、アスナ、俺の三人パーティーは再度集まり、この後どうするか話していた。

「コトミネ、俺はこの後はこの人にいろいろと説明することになるけど、お前はどうする?」
俺は少し考えて。
「いや、確認したいことができた。また明日ここで会おう」
「そうか、気を付けてな」

それで俺たちは別れて、各々の目的のために動き出した。 
 

 
後書き
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