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異世界を拳で頑張って救っていきます!!!

作者:両谷ケン
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遺跡出現までの10日間【1日目】 その2

【1日目】 その2

「はぁ……」

 エルフのおばさんとの言い合いで悲しい気持ちになりながら僕は城下町を出た。城下町はぐるりと高い城壁で囲まれておりどうやら東西南北の4つの大きな門以外からは出ることができないみたいだ。
 恐らく西門と思われる門から城下町を出た僕はトボトボと草原を歩いて行く。10分ぐらい歩いただろうか大きな木がたくさん生い茂った森が見えてきた。

「うわぁ……!」

 ドンドン奥に進んでいくときれいな泉があった。なんだか喉が渇いてきて僕はぞの水を思わず口に含む。

「おいしい……」

 僕は思わずもう一口両手ですくって飲む。すると――――――

「ん……?」

 茂みから緑色の―――――スライムみたいなものがウニョウニョと奇妙な動きをしながらでてきた。

「な、なんだろう……?」

 僕はその物体に恐る恐る近づいて行く。すると緑色の物体は中心にぽっかりと穴が開き僕に向かって体の色と同じ緑色の液を吹き出してきた。

「うわっ!?」

 咄嗟のことに反応できなかった僕はその液体を両手にくらってしまう。

「うわわわわ……」

 ジュウウ……っといやな音を立てながらガントレットの金属部分が解ける。その光景に唖然としていると緑色のスライムがまた液を吐き出してくる。

「うおっと……」

 しかし先ほどの攻撃(?)をくらいスライムから距離をとっていた僕にはその液体は届かない。……あのスライム、頭はあんまりよくないのかな……? というか頭ないし。スライムは僕にどんどん液を吐きかけようとしてくるが僕にその攻撃は届かない。もしかしたらこのスライム、攻撃したらしばらく動けないんじゃ……。そう思った僕はスライムの背後に回る。案の定スライムは全く動かない。液の噴射口も先ほどまで僕がいたところに向けたままだ。

「えいっ」

 とりあえず液体の大きさが僕の膝小僧もなかったので茂みに向かって蹴っ飛ばす。緑色のスライムは全く抵抗せずに放物線を描きながらそのまま茂みの中にダイブした。

「何がしたかったんだあいつ……」

 先ほどのスライムの行動に疑問を覚えながらもここではモンスターらしきものが出ると僕は認識する。

「油断しないようにしないと……」

 どうせ城下町に戻っても変な目で見られるだけだしもうちょっと探検してみよう……。喉も潤った僕は周りを警戒しながら森の奥へと入っていく。

 ☆ ☆ ☆

「王女様」

「どうしました?」

 ケントが出ていった後侍女がエリザベータに声をかける。

「このような物が落ちておりました」

「あら、これは……フフフ」

 侍女は恭しくクシャクシャに丸まった紙をエリザベータに渡す。

「どうされました?」

 突然クスクスと笑い出した王女に侍女は心配そうな声をかける。

「いえいえ、ちょっと面白いものだったので。これは私が預かります、あなたはもう下がりなさい」

「かしこまりました」

 エリザベータの言葉に侍女はお辞儀をすると小さい扉―――――、侍女用の扉へと歩いて行く。

「全くケントさんったら……」

 エリザベータは完璧な微笑みを浮かべながらクシャクシャに丸まった紙を自分の豊満な胸に収めた。


 解析結果 

 名前 ヤマザキケント

 職業 無職

 特技 体術

 戦闘能力 高

 特殊能力 

 身体能力 並

 知力 並

 魔力 なし

 好きな食べ物 果物

 嫌いな食べ物 なし

 好きな言葉 闇の炎に抱かれて消えろ

 好きな異性のタイプ 年上

 趣味 ゲーム、技磨き

 その他
 ☆★童貞★☆

















「あぁ……これ腕の部分また買わないとなぁ……」

 溶けたガントレットを見ながら僕は思わずため息をつく。

「お金はまだあるけど無駄遣いしないほうがいいよなぁ…………ん? あれは……」

 独り言を言いながらテクテクと森の中を歩いて行くとキノコがたくさん生えている木を見つける。その木に生えているキノコをオウムみたいな動物がツンツンとくちばしでつまみながら食べていた。大きさは……あんまり大きくないな……というか鳥ってキノコ食べるのか……。見た感じオウムに似ているけど―――――――あっ!?

「!?」

 オウムの観察に夢中だった僕は近くにあった枝を踏んでしまうするとパキッといういい音がし、それが聞こえたのかオウムがバッと凄いスピードでこちらを振り向いてきた。

「ど、どうもぉ……」

 目があってしまった僕は苦笑いをしてその場から立ち去ろうとするが――――――――――

「グギュルギャアアアアアアアアアアア!!!」

「ッ!?」

 とんでもない声を出しながらオウムが羽ばたいたかと思うと僕に向かって一直線に飛んでくる。

「イアアタタタタ痛いってアタタタタ!」

 その鋭い付き橋で僕の頭や顔やらをつっついてくる。僕は両手で必死に防ぐが防ぎきれない。

「こいつめッ!」

 少しイラついた僕は顔を腕でガードしながらオウムの動きをガードの隙間からじっと観察し――――――――――

「ハッ!!!」

 鋭い気合いとともに手刀で飛んでいたオウムの首筋を思いっきりたたき地面にたたきつける。

「グギャッ!?」

 オウムは変な声を上げたかと思うと地面に倒れこみうんともすんとも言わなくなる。……どうやら地面に頭を強く打ち付けて死んだようだ……。

「どうしようこれ……」

 殺してしまったことに少し罪悪感を覚えながら僕はそのオウムみたいな鳥を武器屋のおじさんがくれた麻袋の中にいれる。

「き、キノコもとっておこうかな……」

 オウムが食べていたので恐らく毒はないだろうと判断した僕はキノコをオウムを入れた麻袋に入れれるだけ入れる。なんて名前何だろうこのきのこ……シイタケっぽいけど……。

「よし、今日はもう戻ろうかな」

 キノコ採りに夢中になっていたら日が傾いていた。僕はオウムときのこの入った麻袋を持ち城下町がある方へ歩いて行く。


「もしかして森の中に入られましたか?」

 西門と思われる門をくぐろうとすると門を守っていた気の良さそうなエルフ兵士に声を掛けられた。

「はい、あまり奥にはいきませんでしたけど……」

 僕の言葉に気のよさそうなエルフの兵士さんはホッと胸をなでおろす。

「それならよかった、あんまり奥の方に行かないようにしてください。最近オーガの目撃情報が入ってきましてね……私達も捜索しているんですけどなかなか見つからないんです……もしであったら刺激しないようにそっと逃げてください」

「わかりました。教えてくださってありがとうございます」

「いえいえ、いい旅を」

 僕は兵士さんに一礼すると城下町の大通りを目指して歩き出す。もうすでに日は落ちており少し薄暗くなっている。周りに人影はなく僕をジロジロと見るエルフもいない。しかし僕は一つの問題に直面していた………。

「どこに……泊まればいいんだ……」

 そう、泊まるところがない。野宿という手もあるけどなぁ……風邪とか引きたくないし……。

「ん?」

 大通りを少し歩くとおいしそうなにおいが漂ってくる。臭いに釣られて歩いて行くとガヤガヤと喧騒も聞こえてきた。

「セリムの宿……か」

 明るい光があふれている入口に張ってある看板の文字を僕は思わず言葉に出す。

「すいませ~ん……」

 僕は恐る恐る少し大きな鉄で作られた扉を開ける。

「あ、いらっしゃい……ませ………」

「あ、昼間はお世話になりました……」

 なんと僕の前に現れたのは昼間に武器屋までの道を教えてくれた茶色の髪をポニーテールにしたエルフの女の子だった。

「えっと、ここ宿屋……ですよね?」

 一応僕は確認をとる。

「は、はい。ようこそセリムの宿へ。一泊銀貨2枚となっておりま―――――――――」

「アカリちゃ~ん、そんなとこで話してないでお酒お酒~」

「あ、は~い、ただいまお持ちしまーす! お会計はあそこで済ましてください! では!!」

 奥の方に食堂があるのか大きな声が聞こえてきた。アカリちゃんと呼ばれた茶色の髪をポニーテールにした少女は細身の男の子が立っているレジを指さすと一礼してスタスタと声がしたほうへ走って行った。

「い、いらっしゃいませ、一泊銀貨1枚となっております。食堂での食事は別料金になっておりますから気を付けてください……」

 気の弱そうな10歳前後の白髪のエルフ君は上目使いに僕を見上げながら値段のを言ってくる。

「あ、9泊10日でお願いしたいんですけど」

「!?」

 僕が言葉と同時に出した金貨に白髪のエルフ君は目を見開く。

「あ、金貨だめでした……?」

「い、いえ!」

 僕の質問に白髪のエルフ君はフルフルと首を震わせる。

「ぎ、銀貨9枚になります」

「これで……」

「! は、はいお釣り銀貨91枚になります!」

 とりあえず僕は腰のポーチからとりだした金貨を白髪のエルフ君に渡すと、白髪のエルフ君は急いでレジから銀貨を取り出す。うーん、また手持ちが増えたな……。

「お、お部屋を案内しますね、朝食は食堂で購入できます」

「あ、わかりました」

「ではお部屋を案内しますね」

 白髪のエルフ君に連れられてレジの近くにあった階段を上る。

「お一人様ならここになります」

 階段を上がって10mほど歩くと沢山の扉がある廊下に出る。その沢山の扉の一番手前の部屋を指さすと僕にその部屋のカギを渡してきた。

「では、何かあったら言ってください」

「ありがとうございました」

 小さいのにしっかりしてるなぁと思いながら僕は部屋の扉を開ける。扉の中はベットが一つとタンス、テーブルが一つづつ置いてある簡単なワンルームだった。

「ふぅ……つかれたぁ」

 歩き疲れた僕は思わずそのベットに寝転がる。気持ちいい……。あれ……だんだん意識が……。
 急に押し寄せてきた眠気に僕は勝つことができず、僕の意識はだんだんと薄れていった。


 
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