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遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜

作者:ざびー
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十九話 ー復讐のダーク・ヒーロー、ですー

 
前書き
鉄の意志と鋼の強さを持ったRR(意味深) vs 古き良きHERO……、と思うじゃん?




 

 
 デスガイドと赤馬 零児がデュエルをしているのと同時刻。優希と襲撃犯とのデュエルが行われていた。

「先行は、私が貰う!通常魔法『影依融合(シャドール・フュージョン)』発動ッ!」
「っ⁉︎貴様も、融合使いか……!」

 殺気を放つ男の目の前で、濃密な二つの闇が混ざり合う。濃淡の違う二色の黒が混ざり合い、純黒となり、人型を形作る。

「手札の『シャドール・ビースト』と『E・HERO シャドー・ミスト』を融合!影操りの魔女よ、ここに降臨せよ!融合召喚!レベル5『エルシャドール・ミドラージュ』!」

 黒く染められたドラゴンに騎乗している無機質な表情の少女が敵意ある視線を男へと送る。

「……最初から全力だ。慈悲なんて一片も与えてやらない‼︎」
「それは俺とて同じこと。邪魔するものは、徹底的に排除する!」

 両者の闘気がぶつかり合い、凄まじい緊張感を生み出し大気を震わせる。

「ミドラージュの効果により、互いが行える特殊召喚は1ターンに一度となる」
「ちっ……、小癪な手段を」

 強力なロック効果に、短期間でデュエリストを屠ってきた男も悪態を吐く


「さらに、墓地に送られたビーストとシャドー・ミストの効果発動!
 シャドー・ミストの効果により、『E・HERO エアーマン』を手札に加え、ビーストの効果で一枚ドローする!
 そして、モンスターをセット。カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!手札から『RR(レイド・ラプターズ)ー インペイル・レイニアス』を召喚!さらに召喚に成功したインペイル・レイニアスの効果発動!ミドラージュを守備表示に変更する!」

 機械仕掛けの怪鳥が飛翔すると共に両翼の仕掛けが作動し、放たれたワイヤーがミドラージュを地面へと拘束する。

「くっ……、ミドラージュ!」

 強制的に守備表示を取らされたミドラージュの守備力は僅か800。対する、インペイル・レイニアスの攻撃力は1700あり、攻撃を受ければ破壊されるのは必然である。

「バトルだ!インペイル・レイニアスにミドラージュを攻撃!」

 急降下から速度を増したインペイル・レイニアスがミドラージュを串刺しにせんと迫る。しかし、嘴の切っ先が貫く瞬間、閃光と共にその姿を(くら)ます

「させるかっ!速攻魔法『マスク・チェンジ セカンド』!」
「なにっ⁉︎」

「非道を尽くす悪に正義の鉄槌を!変身、召喚ッ!レベル6『M・HERO ダーク・ロウ』!」
「……」

 ミドラージュと入れ替わり、現れたのは狼のような覆面を被ったヒーロー。優希が絶対的な信頼を置くモンスターだ。

「ダーク・ロウがフィールドに存在する限り、相手の墓地に送られるカードは除外される。
 さらに、墓地に送られた『エルシャドール・ミドラージュ』の効果を発動!墓地から『影依融合』を手札に加える」

「……モンスターの数が変化したことで、攻撃の巻き戻しが発生する。俺はセットモンスターへと攻撃する!」
「『シャドール・ファルコン』のリバース効果発動!」

 カードの裏へと潜んでいた影色の隼が嘶きを上げると、闇が収縮し始め獣の形を成す。

「墓地から『シャドール・ビースト』を裏守備で特殊召喚する!」
「ちっ、次から次へと……!」

 男は舌打ちをし、悪態を吐くものの、一切焦りが見られない。

「俺のフィールドに『RR』モンスターが存在することにより、手札からこいつを特殊召喚できる!来い、『RR ー ファジー・レイニアス』!」

 インペイル・レイニアス同様、鋼鉄の怪鳥が男のフィールドに降り立つ。

「……レベル4が二体!」
「まだだ。俺は速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動し、ダーク・ロウの効果を無効にする。さらに、『スワローズ・ネスト』を発動!ファジー・レイニアスをリリースし、デッキから同レベル・鳥獣族モンスターを特殊召喚する!来い、『RR ー ミミクリー・レイニアス』!
 そして、墓地に送られたファジー・レイニアスの効果で同名カードを手札に加える」

 手札消費をモンスター効果により、回復しつつ展開していく様に優希も舌を巻く。

「インペイル・レイニアスの効果発動!墓地よりファジー・レイニアスを特殊召喚する!永続魔法『RR ー ネスト』を発動し、効果発動。デッキより『RR ー シンギング・レイニアス』を手札に加える」

 そして、遂に紅い渦のエフェクトがフィールド中央に現れる。

「俺はレベル4の『RRーファジー・レイニアス』と『RRーインペイル・レイニアス』でオーバーレイ・ネットワークを構築!」
「エクシーズ……!」

「冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!『RR-フォース・ストリクス』!
 そして、フォース・ストリクスの効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ使用し、デッキから闇属性・レベル4・鳥獣族モンスターを手札に加える。『RRーバニシング・レイニアス』を手札に加える。
 さらに、俺のフィールドにエクシーズ・モンスターが存在することにより、手札からシンギング・レイニアスを特殊召喚ッ!そして、シンギング・レイニアスとミミクリー・レイニアスでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!飛来せよ、冥府の猛禽!ランク4『RRーフォース・ストリクス』!」

 二体目となるフォース・ストリクスがフィールドを滞空する。

「さらにフォース・ストリクスのオーバーレイ・ユニットを一つ使用し、効果発動!デッキから『RRートリビュート・レイニアス』を手札に加える。
 そして、墓地に送られたミミクリー・レイニアスを除外し、効果発動!デッキから『RRーバニシング・レイニアス』を手札に加える」
「くっ……」

 連続サーチにより、男の手札は五枚まで増える。手札誘発カードは入れてはいるものの、今はないがために、男のプレイングを見るしかない優希はもの凄く不服そうだ。
 だが次の瞬間、優希は驚愕することになる。

「貴様には、見せてやろう。本家のエクシーズ召喚を!『RUM(ランクアップマジック)ーレイド・フォース』、発動ッ‼︎」
「……ら、ランクアップ⁉︎」

 アカデミアになすがままに蹂躙された俺たちの反逆の意思、と後に語ったこの男の切り札であるランクアップマジック。

 そして、優希はそのカードの発動に動揺を禁じ得ない。まだ此処に来る前は『RUM』カードはOCG化されていたもの、種類は少なかった。しかし、大抵悪さしかしないそれは、優希自身も散々に苦しめられた覚えがある。

「俺はランク4の『RRーフォース・ストリクス』でオーバーレイ・ネットワークを再構築‼︎」

 羽を畳み、まるで一つの鉄塊となったフォース・ストリクスが再構築されていき、その姿を変容させる。

 獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し 寄せ来る敵を打ち破れ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク5!『RR-ブレイズ・ファルコン』!」

 翼を広げ、力強い羽ばたきを見せたそのモンスターは、返り血を浴びたような真紅に彩られた鋼鉄のハヤブサ。
 滞空し、フォース・ストリクスに並ぶと威嚇するかのような獰猛な眼光を優希へと向ける。

「オーバーレイ・ユニットを一つ使用し、ブレイズ・ファルコンの効果を発動する!相手の特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、その数×500ポイントのダメージを貴様に与える。喰らえ、反逆のエアレイド!」

 上空へと昇ったブレイズ・ファルコンの両翼が展開し、そこに仕込まれた夥しい数の爆弾が露見する。そして、たった二体を破壊するが為に投擲されていく。

「アァァァァ⁉︎」

 爆発による衝撃波と熱量が優希を襲い、その体を吹き飛ばす。アクション・デュエルですら感じ得ない本物の痛みに悲鳴を上げる。

「ふん、やはり貴様もこの程度か……」

 男は痛みに呻く優希を見下ろし、ため息を吐く。しかし、それがむしろ優希の反骨精神に火をつける。

「っつ!……この、やろ!」

 鈍痛が引かない体に鞭打ち、無理やりに立ち上がる。既に体には、至るところに擦り傷ができ満身創痍だが、瞳には今まで以上の闘志が滾っている。

「破壊され、墓地に送られた『シャドール・ビースト』の効果により、デッキから一枚ドローする」
「足掻くか……どうやら、お前は今までの雑魚共とは違うようだな。俺はカードを二枚伏せ、ターンエンドだ」

「私のターン、ドローッ!」

 優希の覇気に呼応したのか、優希を中心に風が渦巻く。

「真澄を、私の親友を雑魚といったお前は許さない!発動、『影依融合』!」
「ふん、またそれか……」


「『影依融合』のもう一つの効果!相手のフィールドにエクストラデッキから召喚されたモンスターが存在するとき、効果範囲はデッキまで及ぶ!」
「なにっ⁉︎」
「『シャドール・ドラゴン』と『エフェクト・ヴェーラー』を融合!」

 優希の頭上で闇と光が混じり合い、黒く輝く漆黒を生み出す。

「光臨せよ、神の写し身!レベル8『エルシャドール・ネフィリム』!」

 鮮烈な輝きと共に影の人形を統べる女王が光臨する。絶大なプレシャーが男へと襲いかかる。

「墓地に送られた『シャドール・ドラゴン』の効果により、伏せカードを破壊する!」
「『RRーレディネス』を発動する。この効果により、このターン『RR』モンスターは戦闘では破壊されない!」

「ネフィリムの効果により、デッキから『シャドール・ハウンド』を墓地に送る。そして、『シャドール・ハウンド』の効果発動!フォース・ストリクスを攻撃表示に変更する!」

 地面から伸びた影糸がフォース・ストリクスを空中に縛り付ける。

「カードを三枚伏せ、手札から『E・HERO エアーマン』を召喚し、効果発動!デッキから『E・HERO バブルマン』を手札に加える。さらに、手札がバブルマンのみの時、このカードは特殊召喚できる!カモン、バブルマン!」

 ネフィリムに続いて、エアーマン、バブルマンの二体が優希のフィールドに現れる。ステータスこそ、ネフィリムには敵わないものの長年一緒に戦っている頼もしい仲間だ。

「私はレベル4の『E・HERO エアーマン』と『E・HERO バブルマン』でオーバーレイ!満たされぬ魂を乗せた方舟よ、光届かぬ深淵より浮上せよ!S・H・Ark Knight!」

 煌めく光の中から現れたのは荘厳な雰囲気を放つ方舟。その異様なプレシャーに息を呑む。

「Ark Knightの効果発動!オーバーレイ・ユニットを二つ消費し、相手の攻撃表示モンスターを吸収する!サイレント・ソウル・アサイラム!」
「っ⁉︎フォース・ストリクス!」

 深蒼の光を受けたフォース・ストリクスは光の球体へと変えられ、S・H・Ark Knightの周りを浮遊する。

「さらに、伏せておいた『貪欲な壺』を発動!デッキにモンスター五体を戻し、二枚ドロー!
 バトルだ!『エルシャドール・ネフィリム』でブレイズ・ファルコンを攻撃する!」
「無駄ッ!『RRーレディネス』の効果により、戦闘では破壊されーーーなにっ⁉︎」

 目の前で悲鳴を上げ、細切れに寸断されたブレイズ・ファルコンを見て、言葉を引っ込める。

「ネフィリムは特殊召喚されたモンスターを問答無用で破壊する!そして、お前のフィールドに守るモンスターはいなくなった‼︎行け、Ark Knight!ミリオン・ファントム・フラッド‼︎」
「墓地のレディネスを除外し、戦闘ダメージを0にする。…ッア⁉︎」

 S・H・Ark Knightから放たれた無数の弾丸が、男を襲う。ダメージこそ、無効にしたもののその衝撃までは軽減できずに直接攻撃をモロに喰らう羽目になる。

「……っ、やってくれる!」

 ヨロヨロとダメージから立ち上がると、変わらない敵意を優希へと向ける。

「ちっ、防いだか。私はこれでターンエンド」
「エンドフェイズ時、リバースカードオープン!『RUMーラプターズ・フォース』!」
「なっ⁉︎」

 優希の目の前で、倒された筈のブレイズ・ファルコンが全身に炎を纏い、空を駆ける。

「敗れた者達の意思を継ぎ、全ての敵を殲滅せよ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!ランク6『RRーレヴォリューション・ファルコン』!」

 その台詞と共にブレイズ・ファルコンを覆っていた炎は消滅し、より戦闘へ特化した姿へと昇華させる。

「さぁ、次は俺のターンだ!ドロー!『RRーレヴォリューション・ファルコン』の効果発動!『エルシャドール・ネフィリム』を破壊し、その攻撃力の半分を貴様に与える!」
「させるかっ!手札から『エフェクト・ヴェーラー』を捨て、効果発動!レヴォリューション・ファルコンの効果を無効にする!」

 レヴォリューション・ファルコンがネフィリムへと照準を定めるがそれをエフェクト・ヴェーラー放つ光が邪魔をする。

「これも防ぐか……ならば!手札から『RRーバニシング・レイニアス』を召喚!そして、効果により、もう一体のバニシング・レイニアスを特殊召喚!さらに、バニシング・レイニアスの効果発動!手札から『RRートリビュート・レイニアス』を特殊召喚!
 トリビュート・レイニアスの効果により、デッキから『RRーレディネス』を墓地に送る」
「またそれか……」

 擬似的な『ホーリライフ・バリア』のような効果を持つそれが墓地へと送られ、思わず顔を顰める。常時なら、マジ堅すぎっよー、などと愚痴を零しただろうが今はそれすらも余裕はない。

「永続魔法『RRーネスト』の効果によりデッキから『RRーシンギング・レイニアス』を手札に加える。そして、レベル4のバニシング・レイニアスとトリビュート・レイニアスでオーバーレイ・ネットワークを構築!散っていった仲間達よ、俺に力を‼︎エクシーズ召喚!ランク4『零鳥獣シルフィーネ』!」

 氷のような衣に身を包んだ半人半鳥の女性が猛烈な吹雪と共にフィールドを舞う。

「さらに俺のフィールドに、『RR』モンスターとエクシーズ・モンスターが存在することにより、手札から『RRーファジー・レイニアス』と『RRーシンギング・レイニアス』を特殊召喚する」

 レヴォリューション・ファルコン、シルフィーネと二体のエクシーズ・モンスターに引き続き、バニシング・レイニアス、ファジー・レイニアス、シンギング・レイニアスと計五体の鳥獣族モンスターが男のフィールドへと揃う。

「『零鳥獣シルフィーネ』のオーバーレイ・ユニットを一つ使用し、効果発動!相手フィールド上の表側で存在するカードの効果を無効にし、さらにフィールド上に表側に存在するカード一枚につき、攻撃力を300ポイントアップする!パーフェクト・フリーズ!」

 猛烈な吹雪と共にネフィリムとArk Knightが氷像へと変えられ、同時にシルフィーネの攻撃力が上昇。攻撃力が2000から4100までアップする。
 さらに効果を無効にされたことで、ネフィリムの持つ破壊効果も方舟のもつ耐性も封じられてしまう。

「まだだ!俺はレベル4のバニシング、ファジー、シンギングの三体でオーバーレイ・ネットワークを構築!
 散っていった同胞よ、俺に力を‼︎エクシーズ召喚!星々の護り手!『星守の騎士(テラナイト) プトレマイオス』!」
「なっ……⁉︎」

 鳥獣族の連続召喚から一転、星座の護り手プトレマイオスの登場に驚愕する優希。

「俺はプトレマイオスのオーバーレイ・ユニット3つ取り除き、効果発動!このカードを素材としてランクが一つ上のエクシーズ・モンスターへと書き換える!オーバーレイ・リライト!現れよ、機械の叡智!ランク5!『サイバー・ドラゴン ノヴァ』‼︎」

 プトレマイオスを構築する情報が星々の力により、書き換えられ、鋼の翼を持った機械のドラゴンと成る。

「そして、俺は『サイバー・ドラゴン ノヴァ』一体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズチェンジ‼︎現れよ、サイバーの無限の可能性!ランク6『サイバー・ドラゴン インフィニティ』!!」
「……やっぱりっ!?」

 鋼の巨躯に沿うように描かれた紅いラインは、不気味に輝きそのモンスターの存在を主張する。

「……サイバー、ドラゴン、インフィニティ」

 反芻するように口にすると、緊張故かたらりと冷や汗が頬を伝う。
 プトレノヴァインフィニティとその凶悪さで知られたコンボを今、目の前で使われる。今、こんな緊迫した状況でなければ、嬉々として心を躍らせただろうがこのデュエルだけは、勝たなければならないのだ。

 ーー真澄の仇を討つために‼︎

 自分が着いた時にはすでにボロボロになった親友の姿を思い出し、その時感じた怒りと殺意がぶり返す。

「いくぞ、『サイバー・ドラゴン インフィニティ』の効果発動!ネフィリムをオーバーレイ・ユニットとして吸収する!エナジー・ゲイン!」
「……っ!」

 インフィニティの放つ紅い閃光がネフィリムを呑み込まんと放たれる。

「リバースカードオープン!速攻魔法『超融合』、発動‼︎」
「っ!それは……!」

 そのカードを目にした時、男が大きく目を見開く。初めて動揺の色が浮かんだ。

「私は『零鳥獣シルフィーネ』と『エルシャドール・ネフィリム』を融合‼︎」

 敵味方関係無く、呑み込み、新たな存在へと昇華させる究極の融合。それが今、ネフィリムとシルフィーネを呑み込んでいく。

「させるか!『サイバー・ドラゴン インフィニティ』の効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ使用し、発動を無効に……!」
「無駄だッ!『超融合』は如何なるカードの効果の干渉を受けない‼︎」

 ギリッと音がする程に男は奥歯を噛みしめる。

「さぁ、現れろ!神の写し身よ!その力で世界を閉ざせ‼︎融合召喚!『エルシャドール・アノマリリス』!」
「貴様ぁ……!」

 男は自身のモンスターを取られた事か、単なる融合召喚への嫌悪か目に見えて怒りを露わにする。

「ネフィリムが墓地に送られた事で墓地の『シャドール・フュージョン』を手札に加え、さらに手札コストとして墓地に送った『E・HERO シャドー・ミスト』の効果により、デッキから『E・HERO ブレイズマン』を手札に加える」

「ちっ、手札を増やされたか……。
 バトルだ!『サイバー・ドラゴン インフィニティ』でArk Knightを攻撃する!レヴォリューション・インフィニティ・バースト‼︎」

「くぅぅ……」

 インフィニティから放たれた螺旋の波動が方舟を襲うと同時に、優希に鈍器で殴られたようか衝撃が襲う。
 僅か200ポイントのダメージでも、既に大ダメージを受けた身体には堪える。

「くぅ、はぁ……。やってくれるね、ホント!」

 額に冷や汗を浮かべ、悪態を吐く。だが、その姿も辛く苦しい。

「ふ、強がりか……。俺は一枚伏せ、ターンエンド」

「ちっ、私のターン、ドロー‼︎『E・HERO ブレイズマン』を召喚し、効果発動!」
「『サイバー・ドラゴン インフィニティ』の効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、その発動を無効にする!」

 インフィニティから放たれた緋色の閃光がブレイズマンを包み込み、跡形もなく消し去る。

「なら、『影依融合』発動!デッキの『シャドール・ドラゴン』と『マスマテシャン』を融合!来たれ、神の座より!神の現し身よ、大地を震わせ敵を蹂躙しろ、レベル10『エルシャドール・シェキナーガ』‼︎」
「また、融合を……!」

 大気を震わせる程のプレッシャーを放ち、新たなエルシャドールが地上へと降り立つ。
 何度目かわからない融合召喚に男の表情が歪む。

「墓地に送られた『シャドール・ドラゴン』の効果発動!その伏せカードを破壊する!」
「く、レヴォリューション・ファルコンをリリースし、『ゴッドバード・アタック』発動!アノマリリスとシェキナーガを破壊する!」

 レヴォリューション・ファルコンが紅い燐光を纏うと決死の特効をアノマリリスとシェキナーガに仕掛ける。爆発音と共に三体が消し飛び、爆風が優希に襲いかかり硬い地面へと引き倒す。

「……く、はぁはぁ」

 既に度重なるダメージで身体は悲鳴を上げているが、それでもなお立ち上がると変わらない、むしろより一層闘気を滾らせる。

「……魔法カード『ミラクル・フュージョン』発動!墓地にいる『E・HERO シャドー・ミスト』と『エフェクト・ヴェーラー』を融合!」
「く、デッキの次は墓地で融合か……」

「来い、光の英雄よ!『E・HERO Theシャイニング』‼︎」

 直後、眩い光が夜の帳を切り裂く。
 背中に後光を負った純白のHEROが優希のフィールドへと降り立った。

「バトルだ!シャイニングでインフィニティを攻撃する!喰らえ、オプティカル・ストーム‼︎」
「ちっ、墓地の『RRーレディネス』を除外し、効果発動‼︎このターンのダメージを0にする!」

 シャイニングから閃光が奔り、サイバー・ドラゴンの鋼鉄のボディを穿つ。ダメージこそ無効にされるも、物理的なダメージは防げず、男は苦痛に顔を顰める。

「私はこれでターンエンド」

 手札は回収した『影依融合』ともう一枚だけ。そして、体力も底を尽き疲労困憊しており、立ち姿も今にも倒れそうで危うい。だが、それでも刃向かってくる姿に数多の修羅場をくぐり抜けてきた経験のある男でも、ある種の危機感を感じる。

「…………。俺のターン、ドロー‼︎」

 一度、呼吸を整え、デッキからドローする。そして、今引いたカードを見、思わずほくそ笑む。

「これで、終いにしてやろう。ライフを半分支払い、魔法カード『RUMーソウル・シェイプ・フォース』を発動する!」
「……また⁉︎」
「墓地から『RRーレヴォリューション・ファルコン』を特殊召喚し、オーバーレイ・ネットワークを再構築‼︎」

 散った逝った筈のハヤブサが紅い光の残滓を振りまき夜空を駆ける。そして、光が渦巻く中へと飛び込んでいく。


「勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!飛翔しろ!ランク8、『RR-サテライト・キャノン・ファルコン』!」
「……っ!」

夜空を照らす閃光と共に純白のハヤブサが空を駆け抜ける。そして、まさしく敵を殲滅する事のみに特化した装甲に驚愕する。


「サテライト・キャノン・ファルコンのオーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、効果発動!シャイニングの攻撃力を墓地の『RR』モンスター一体に尽き、800ポイント下げる!」

サテライト・キャノン・ファルコンに装備された砲台がシャイニングをへと照準を定める。

「喰らえぇ!」
「シャイニングッ⁉︎」

その号令と共に幾筋の光線が放たれ、シャイニングを貫き、力を摩耗させる。

サテライト・キャノン・ファルコンの効果により、シャイニングの攻撃力は0。そして、優希のライフは2800。この攻撃が通れば、真実優希の負けとなる。

「貴様はよくやった方だ。だがこれで、終わりだ。行け、サテライト・キャノン・ファルコン‼︎」
「く……」

悔しげに奥歯を噛みしめる優希の視線の先には、遥か上空へ駆け上がっていくハヤブサの姿がある。そして、この攻撃だけはヤバイと本能が警鐘を鳴らす。

(耐える手段は、……ある。けど……)

空を見上げれば、ーー点としてしか見えていないがーーいまだ高度を上げ続けるハヤブサの姿が見て取れる。

「その身に受けよ、俺らの怒りの炎を‼︎エターナル・アベンジッ‼︎」

「っ……ぁぁ……」

男の宣告と共に、夜空の一点が輝く。そして、優希とその傍にいるシャイニングを目掛け、極光が大地を衝く勢いで降りてくる。その眩しさに目を瞑る。
そして、衝撃の直前ーー

「優希さんッ‼︎」

自分の名前を呼ぶ声と共に暖かな抱擁に包まれる。





 
 

 
後書き
鉄の意志と鋼の強さRR(意味深) vs 古き良きHERO
実際は……↓
特殊召喚絶対殺すマンなRR vs 血も涙もない全盛期シャドール&HERO


次回、優希vs不審者 決着‼︎ 
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