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Sword Art Online 月に閃く魔剣士の刃

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14 号外・例外・想定外

 
前書き
 13と同じ時系列だと思っていただければ読みやすいかと思います。 

 
『攻略組PLが突如として行方不明に』

 そんな見出しで始まる有志による情報媒体の記事はSAO史上、例を見ないほどの閲覧数を叩き出し、その情報はまさに光の速さで各PLへと行き渡っていった。
 た掲載されていた記録結晶の画像にはノイズのようなエフェクトを纏っていてボロボロの蒼いクロークを装備した青年が枚数を追う毎に姿勢を崩していき、遂には消えてしまった様子が6枚に渡って記録されており、現在のSAOでの結晶系アイテムの希少性からガセではないだろうと推測するものも多かった。

 書かれている内容によると、消えてしまっていった彼は攻略組の中でもソロプレイヤーとして名を馳せていた"蒼の剣士"であるシュンというPLだったようだ。
 特に彼が交流していた他PLの中に"ビーター"のキリトがいた事が分かった事も話題として一役買っている側面があり、更に記事の投稿者があの"100コルの魔術師"の異名を取るほど広大な情報網を持っているとされる鼠のアルゴの名を騙っている事から本人や攻略組への情報要求が殺到していた。
 攻略組も答えられる範囲での応答や情報共有はしていたが、肝心のアルゴとキリトは煙の如く姿を眩ましていたために低層・中層PLら、更には当の攻略組までもが、さながら阿鼻叫喚の様相を呈していた。

「と、まあこれがオレっちの情報網で集めた大体の現状なんだガ、キー坊はこれからどうするつもりなんダ?」

 少し煤けたアンティーク調の机に頬杖をついて、右手で100コル硬貨を弄びながらアルゴはニャハハハ、と他人事かのように笑った。
 周りに人気はあまりなく、それでいて少し薄暗いバーの店内にくぐもった笑い声が広がる。
 咄嗟に顔を隠し、それとなく周囲を見渡してバレていないのを確認すると、キリトはため息とともに苦笑いを浮かべた。

「……突っ込みどころ満載なのは置いとくとしてもな、アルゴこそこれからどうするつもりなんだ? 超絶爆弾記事を落として、更に情報提供者に俺を匂わせて話題性を煽ってまで拡散を急がせて」
「もしミーちゃんの言っていたことが事実ならかなり現状はかなり危険だからナ。そ れ に、キー坊は分かってないナ。女の子の予定はそう気軽に効くものじゃないモノなんだゾ?」

 深刻そうな話を敢えて茶化して軽口で話すのは、スムーズかつ冷静にに話を進めるためのアルゴ流の処世術だ(少なくともキリトはそう聞いている)。
 しかし、流石にそれすら通じない程度には現状は切羽詰まっていた。

「いや、真面目にな? それに、俺らの居場所もいい加減にバレそうなものだし、本気で身の振り方を考える必要性が出てきたな」

 神妙な面持ちでキリトが言った。
 ちなみにアルゴとキリトが会っているのは第一層の始まりの街の中にある隠れ家的なバーだ。
 宿も始まりの街内の宿屋に部屋を借りている。
 これだけ騒がれていて二人の行方が一向に分かっていないのは、正に『灯台下暗し』という他になかった。
 ちなみに二人共、フレンド欄から居場所がバレないように了承してくれ、という趣旨のメッセとともにフレンドは全て切ってある。
 故に文字通り彼らは生きていること以外は知られておらず、攻略ペースの低下から攻略の鬼であるどこかの細剣使いが既に沸点を余裕で振り切っているのを彼らが知る術はない。

「まあ、まずは事の真相を洗いざらい売り捌いてからその資金の還元法でも考えるかナ」

 "鼠の"という二つ名を取っている割には、どちらかと言うと猫のように欠伸をしながらアルゴが適当さを隠そうともせずに言った
 ちなみに今の時間はそろそろ深夜の1時。
 流石にそろそろ眠気がピークとなる時間ではあるだろう。

「中層PLへの支援貢献度で言ったら正真正銘ぶっちぎりの癖によく言うぜ。まあ、SAOでバグは無い……と信じたいが、ネトゲにバグなんて俺らが呼吸するくらい自然な事だからなぁ……。どうにかして発生条件と意図的な再現方法の有無、回避方法くらいは探っておきたいな。一応、生命の碑を見る限りではシュンは生きているし、案外現実世界に戻れているのかもしれないな」

 勿論、現在進行形で普段とは比べ物にならない程の戦闘狂(バトルジャンキー)っぷりを発揮していることも彼らは知らない。

「まあ、シュー君なら多分大丈夫だろうしナ。ゲーム慣れしてる度合いならキー坊がぶっちぎりだけど、判断力ならシュー君のが頭抜けてるしネ」
「なんか聞き捨てならないな? まあ、それはどうとして生命の碑だけ確認して解散するか」

 若干眠そうな様子のキリトの言葉にン―、とアルゴが相槌を打った。それを合図に二人で席を立つ。電子の世界で特に体が凝るはずはないのに、二人揃って伸びをしてしまう。
 欠伸を噛み殺しながらキリト達は生命の碑へと歩いて行った。

「はてさて、Sは……っとあった」

 夜も更けてきた中で真っ黒な生命の碑から名前を見つけるのは中々に難儀である。
 十数秒を費やしてようやくキリトがシュンの名前を見つけた。
 そこに書かれていたのは、

 Shun: -/-/- 【Signal lost】

 Signal lost。概ね接続の消失。つまり現在ログオフ状態。

「…………は?」
「ン? どーしたキー坊。どれどれ…………エ?」

 二人揃って絶句した後、どちらからともなく叫び声を上げた。そして運悪く広場でそれを聞きつけたPLに見つかってしまった。
 数分後。後の二つ名である"閃光"に恥じない早さで駆け付けた攻略の鬼にたっぷりと怒られたのは言うまでもない。 
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