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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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想いが交差する夜

医務室にて・・・

「ひとまず大丈夫みたいだね」
「ホントですか?」
「シェリアの治癒のおかげだね」

戦いでボロボロになったチームカラーの服から黄色のノースリーブのワンピースへと着替えたウェンディ。
それからポーリュシカさんにウェンディのケガを見てもらったがシェリアさんの治癒魔法のおかげで全く問題ないそうだ。
シェリアさんもバトル中に傷がどんどん治ってたし、相当治癒能力が高いことが伺える。

「ていうか・・・シリル!!」
「は・・・はい!!」

ポーリュシカさんに大声で名前を呼ばれ直立する俺。その表情は明らかに怒っている。

「あんたはいきなり医務室から飛び出して・・・ウェンディのおかげでほとんど治ってたからよかったものの、万が一ということがだね――」

ラクサスさのバトルの時に幻のことを確認したくて医務室を飛び出した俺をポーリュシカさんが説教する。確かに悪かったと思ってますけどぉ・・・

「落ち着いてよグランディーネ」
「その名前で呼ぶんじゃないって!!」

ポーリュシカさんをなだめるウェンディとその呼び方が相変わらず気に入らない様子のポーリュシカさん。俺もグランディーネって呼んだらきっと怒られるから呼ばないようにしておこっと。

「あんたが倒れたらウェンディが一番悲しむってわかんないのかい!?」
「わかってます!!ゴメンなさい!!」

取り敢えず頭を深々と下げる俺。そうだよな・・・ウェンディが・・・ん?

「なぜここでウェンディが出てくるの?グランディーネ?」
「あんたわざとその呼び方しただろ!!」

バチーン

俺の頭を平手で思いきり叩くポーリュシカさん。俺はその痛みに頭を押さえる。ちょっとした冗談だったのに・・・

「ウェンディとお前さんは付き合ってるんだろ?」
「「えっ!?」」

いつの間にかポーリュシカさんにまで俺とウェンディが付き合っていることが伝わっていた模様。恐らく話したのはルーシィさんだろうな・・・エルザさんは色恋沙汰は顔真っ赤にして話なんかできないもん。

「一応エドラスのとはいえグランディーネ(ウェンディの母親)だからね。あえて言わせてもらうけど、ウェンディを泣かせたらただじゃおかないから」

そう言ったポーリュシカさんの顔は真に迫るものがある。普段から仏頂面だからかその顔が一番見慣れているきもするが。

「大丈夫です!!今日のことは申し訳なかったですけど、俺は絶対ウェンディを悲しませないし傷つけるようなこともしません!!」
「し・・・シリル/////」

ポーリュシカさんを真っ直ぐに見てそう宣言する俺を見て嬉しかったのか顔を赤くするウェンディ。珍しく良いこと言ったきがするぞ!!

「男に二言はないね?」
「見た目は女の子だけどね~」
「セシリー、少し黙ってて」

ポーリュシカさんとウェンディの様子を見に来ていたセシリーとシャルルがそう言う。

「もちろん!!」

俺が力強くうなずくとポーリュシカさんは満足そうな顔をし、小さく2回うなずき、俺の頭に手を置く。

「よし!これからは無茶な行動するんじゃないよ」

ポーリュシカさんの声のトーンが小さかった時のイメージと重なる。
まだヴァッサボーネとグランディーネがいたときの記憶。よくいけないことをすると怒られ、その後にはこうやって頭に手を置かれ、優しい声をかけてもらった。

「うん!!」

その懐かしさが甦ったのか、いつも目上の人にする返事ではなく、親しい人や一緒にいる時間の長い人にしかしない返事をする俺。ポーリュシカさんはまるで成長した我が子を見るような目で俺を見たあとに頬を緩ませ・・・

「んじゃとっとと帰んな!!どうせマカロフたちと宴会なんだろうから!!」

宴会・・・とは言うものの、なんか毎日やりすぎてもはや普通の夕飯のように感じるから不思議だ。

「よかったらグランディーネも来ない?」
「そうですよ!!皆さんお世話になってますし!!」

ウェンディの提案に俺が乗る。しかし、ポーリュシカさんの答えはもちろんNO。

「バカいうんじゃないよ。私が人間嫌いなの知ってるだろ?」
「「あ・・・」」

最初に会った時に言ってたけどポーリュシカさんは人間が大嫌いらしい。グランディーネは人間が好きなんだけどポーリュシカさん(エドラス)ではそこが反対になっているらしい。

「わかったら早く帰りな。ナツ辺りがお腹すかせてあんたら待ってるよ」
「うん!!」
「お邪魔しました」
「世話になったわね」
「バイバ~イ!!」

ウェンディと俺、シャルルとセシリーはポーリュシカさんに頭を下げ、医務室を後にする。

「それにしてもウェンディすごかったなぁ」
「ホント!?」
「うん!!ルーシィさんとか感動しすぎて泣きそうになってたよ!!」

俺はウェンディが戦っている最中の待機場所のことについて話している。

「シャルルも涙声で「何泣いてんのよ!」っていってたよ~(笑)」
「ちょっ!!泣いてないわよ!!」

セシリーとシャルルがそう言う。シャルルまで感動するってことはそれだけウェンディの頑張りが伝わったってことなんだな。
ウェンディはセシリーに怒っているシャルルを優しい眼差しで見つめる。その視線に気づいたシャルルは顔を背ける。

「ま・・・まぁ頑張ったんじゃない?」
「すごくかっこよかったよ~!!」
「ありがと、シャルル、セシリー」

ツンツンしてるシャルルと素直に思ったことをいうセシリー。ウェンディはニコッと微笑みながら2人にお礼を言う。

「でも驚いたよね~!!まさか天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)なんかがいたなんて~」
「火の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)もいたし、不思議なことではないけどね」

セシリーとシャルルがそう言う。確かにシェリアさんの魔法には驚かされたな。しかも自己回復ができるというおまけ付き。あれが敵だったら勝つのはほぼ不可能だろう。

「私ね、同じ天空の魔法を使うからこそシェリアと出会えた気がするの!!」
「運命って奴だね」

似た魔法を使うウェンディとシェリア。その魔法があったがために2人は今日出会い、拳を交え、友情を深めたのかもしれない。

「俺もそういうのほしいなぁ」
「シリルにはレオンさんがいるじゃん!!」

レオンかぁ・・・確かにレオンは話せるけど、ウェンディたちみたいに戦った訳じゃないからなぁ・・・なんかもっとこう・・・戦ったことで仲良くなれたみたいなのが・・・

「カミューニくんは?」
「「「?」」」

俺が色々と考えてるとセシリーがいきなり何かに気づく。

「シリルのいう関係ってカミューニさんとの一件なんじゃないかなぁ?っと思って~」
「あ!!」

言われてみればカミューニさんと俺って天狼島での戦いで親しくなったんだよな。完全に忘れてた!!

「でもやっぱり年が近い方がいい!!」
「そこ!?」

だってカミューニさん今は10歳以上離れてるんだよ?なんか友達っていうよりお兄ちゃんとか先輩みたいな感じなんだもん!!

「まだ2日も大会が残ってるじゃない」
「そうだよ。そこでレオンさんと戦えればもっともっと仲良くなれるってことでしょ?」
「うんうん!!」

シャルルとウェンディとセシリーがそう言う。

「そうだね!!」

大魔闘演舞はまだ3日目が終了しただけ。明日の競技とバトル、そして最終日はなんでも6人全員参加の競技バトルらしい。
妖精の尻尾(うち)が優勝するためには剣咬の虎(セイバートゥース)はもちろん、そこに3ポイント以内で追いかけている人魚の踵(マーメイドヒール)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)とも戦わなければいけないはず。
つまりレオンやソフィアさん、天馬のタクトさんという各ギルドの若手魔導士たちと戦うこともあるってことだ。

「よし!!俄然やる気出てきた!!」
「私も!!次はシェリアに勝ってみたいな!!」

俺とウェンディは視線を合わせ大きくうなずく。色んな人と戦える大魔闘演舞。一番はフィオーレ一を取ることだけど、その中で強い人戦って関わりを持つのも今後の成長とかを考えたら重要だしな。

「そのためにも!!あの魔法を早く完成させないと」

俺は胸の内ポケットに入れている紙を見る。ウェンディはすでに1つを完成させたけど、俺はいまだに完成できていない。ヴァッサボーネ(お父さん)の残してくれた魔法・・・イメージは掴めてる。後は形にするだけだ。

「ウェンディが頑張ったんだ。俺も頑張らないと」

今日はエルザさんとタッグだったから勝てた気もする。でもウェンディは1人で強い敵と真っ向からぶつかった。俺は大魔闘演舞では単独で戦ったことがまだない。
明日以降、1人で戦える時があったらどんなに部が悪くても正面からぶつかってる。ウェンディに負けてられないし、ウェンディを守るためにも、それは必要なことだから・・・

















その日の夜・・・

「「「「「「「「「「ワハハハハハハハッ!!」」」」」」」」」」

クロッカスにある居酒屋、『BAR SUN』。そこでは笑い声が外まで響くほどのバカ騒ぎをしている人たちがいる。

「「「「「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」」」」」

その大騒ぎしているのはもちろん俺たち。俺たちはそれぞれコップにビールやらジュースやらを入れて乾杯する。

「今日は気持ちよかったなぁ!!」
「あい!!」

テーブルの上に立ち両手に骨付き肉を持っているナツさんとハッピーが叫ぶ。

「ここギルドじゃないんだから物壊しちゃダメよ!!」

はしゃいでいるナツさんにルーシィさんがそう注意する。まぁ、注意してもナツさんじゃあどうせ物壊すだろうけど。

「見たかい?私の実力」
「あんなのチートじゃねぇか」

酒樽を抱えテーブルに胡座をかいているカナさん。今日の妖精の輝き(フェアリーグリッダー)でMPFをカンストさせたことを自慢気に話していたが、ワカバさんのいう通りだと俺は思う。

「グレイ様!!今日も素敵でした!!」

ジュビアさんが目をハートにし、可愛らしいポーズでグレイさんにそう言う。だけど・・・

「俺・・・何もしてねぇけど・・・」

グレイさんは冷静にそう返す。グレイさん1日目の競技パート以降ずっと出てないですが、そんなことはジュビアさん的には関係ないんだろうなぁ・・・
今日の圧勝に昨日までよりもさらに騒ぐ俺たち。そんな中俺とウェンディ、そしてガジルさんの滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が集まっているテーブルでは反対に落ち込んでいる者がいた。

「せっかくシリルとエルザさんが快勝したのに、私勝てなかったなぁ・・・」
「あれ!?さっきまでそんなに落ち込んでた!?」

ウェンディがジュースの入ったグラスを両手で持ちながらため息混じりにそう言う。ドムス・フラウから出るときはシェリアさんと仲良くなれて嬉しそうだったけど、今はギルドのみんなが祝勝会的なノリになってるせいで勝てなかった自分を責めているんだろうか。

「何言ってんの!!よくやったわよ!!」
「ウェンディだからこそ引き分けだったんだよ~!!」

そんなウェンディを励ますようにシャルルとセシリーがそう言う。

「皆、驚いていたぞ」
「うん!!すごかったよ!!ウェンディ」

リーダスさんの絵のモデルになって剣を掲げているリリーとレビィさんがそう言う。ちなみにガジルさんはイビキをかいて眠っているので話に交じってきません。

「そうだよウェンディ。仲間のために頑張ったんだもん!!今日はウェンディが一番輝いてたよ!!」
「そ・・・そうかな/////」

俺も今日のウェンディの戦いを見ての感想を述べるとウェンディはみんなに誉められ嬉しくなったのか、頬を赤くしながらモジモジする。やっぱりこういうところがウェンディはかわいいなぁ・・・

「それにしてもすごい回復力ね、エルザ」
「ウェンディとポーリュシカさんがいるからな。さっき、シリルにも治癒魔法をかけてもらったし」

ルーシィさんが椅子に足を組んで座っている包帯だらけのエルザさんを見てそう言い、エルザさんは目を閉じながらそう答える。

「シリルもケガ、もう大丈夫なの?」

ウェンディがしたから覗き込むように俺にそう言う。

「うん!!ウェンディたちのおかげでケガは完璧に治ったし、一眠りしたから全然問題ないよ!!」

今俺は包帯も全て外して万全な状態になっている。元々回復は人より早い方だったし、何よりウェンディとポーリュシカさんがケガを治すのがうまいからまったく体に痛みも違和感もない。なんなら今すぐ戦えるくらいまでになっている。

「その3人の力で回復しないエルフマンって・・・」
「情けないわねぇ・・・」

笑顔のミラさんと頭を悩ませるように額に手を置いているリサーナさんがそう言う。2人のきょうだいであるエルフマンさんは昨日のバッカスさんとの戦いでいまだにドムス・フラウに入院中である。俺とウェンディもなんとかしようとはしたんだけど、さすがにダメージが大きすぎてなかなか回復しないんだよねぇ・・・

「あれ?そういえばエバーグリーンさんがいないような・・・」
「そういえば見てないね」

俺とウェンディは辺りを見回しながらそう言う。

「エバーグリーンならエルフマンの看病をしているみたいだぞ」
「「え!? 」」

エルザさんのまさかの発言に俺とウェンディは顔を見合わせる。天狼島の時から思ってたけど、あの2人ってやっぱり・・・

ゴロゴロゴロゴロ

俺たちが妄想していると何かが転がってくる音がする。

「酒樽サーフィンだぁ!!」
「あいさー!!」

音がする方を向くと、そこでは空になった酒樽を何個も置き、その上を店のオススメメニューの書いてある看板をサーフィンに見立てて遊んでいるナツさんとハッピーがいる。

「危ねぇ!!」
「やめろナツ!!」

周りなど見えていないのかナツさんは周りの人にぶつかりながらゴロゴロと転がって来る。しかもこっちに向かって。

ドカッ

「ぶほーっ!!」
「うぎゃ!!」
「きゃーー!!」
「どひゃっ!!」

ナツさんは止まることが出来ずに眠っていたガジルさんや俺とウェンディのテーブルに突っ込んできて、俺たちは避けることが出来なくて飛ばされる。
俺やウェンディ、シャルルとセシリーは横に押し出されるように飛ばされたが、ナツさんはガジルさんに頭突きをした形になっており、2人は壁に激突していた。

「何すんだてめぇ!!」
「危ないじゃないですかナツさん!!」

ガジルさんはナツさんの胸ぐらを掴み、俺はウェンディに上から乗っかられている状態で叫ぶ。

「うぷっ・・・お前らもやるか?」
「酔ってまでやるか!!」
「今ので乗り物酔いですか!?」

顔を青くし、口元を押さえるナツさん。まさかサーフィンでも乗り物酔いしてしまうのか?厳しいなぁ、真の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)って奴は・・・

「おし!!俺がやる!!」

すると今度はグレイさんが酒樽サーフィンをやり始める。

「グレイ様!!がんばって!!」

グレイさんを応援するジュビアさん。バランスをうまく取り得意気なグレイさんだかやはりナツさん同様止まることができずに、

「ぐはっ!!」

お店の壁へと突っ込んでしまう。なぜかさっきまで着ていたはずの服が全て脱げており、パンツ一丁になってしまっているが。

「どうなってんだお前の服!?」

何をどうやれば壁にぶつかって服が脱げるのかよくわからない。でもほぼ裸のグレイさんを見てジュビアさんはやっぱり嬉しそうに目をハートにしてたりする。

「ならば!!」

エルザさんがそんなグレイさんを見て何を思ったのか、酒樽の上に乗せられたメニューの看板に飛び乗る。

「次は私がやろう!!」
「だから危ねぇっての!!」
「誰かやめさせろ!!」

ジェットさんとドロイさんがさっきのナツさんの時のように大慌てで避けている。というかエルザさんは大丈夫なのだろうか?エルザさんの服装は白のワイシャツに黒のミニスカート・・・そう、スカートなのである。あれで壁にぶつかったら色々と問題になりそうな気がするんだが・・・

「ナツさんたち、楽しそうだね!!」
「それはいいんだけどさぁ・・・」

ウェンディは酒樽サーフィンを楽しんでいる妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チームを見て嬉しそうにしている。だけど・・・

「そろそろ退いてもらっていいかな?お尻が・・・」
「え?・・・ハッ!!」

ウェンディはうつ伏せに地面に倒れている俺の上に腰かける形で落ちてきたのだが、背中からウェンディのお尻の感触が伝わってきて理性が飛びそう。

「ご・・・ゴメンシリル!!」

ウェンディは慌てて俺の上から退けてくれる。むしろありがとうと言いたいけどたぶんウェンディには意味わかんないだろうから言わないでおこう。

「うわっ!!」

エルザさんもやはり酒樽サーフィンでは止まることができず、壁にぶつかっていたりする。
その後も俺たちは今日の大勝利を祝して大騒ぎしていた。
食べて踊って、歓喜にあふれた3日目の夜。

















第三者side

クロッカスガーデンにて・・・

「スティング君、眠れないのですか?」

剣咬の虎(セイバートゥース)の全メンバーが泊まっているクロッカスガーデン。そこのある一室のベランダで月夜を眺めているブロンドヘアの青年に眠たげな目を擦りながら赤茶毛の猫が話しかける。

「レクター」

青年はレクターという猫を振り向いた後、再び青く光る満月を見上げながら笑みを浮かべる。

「明日はナツさんと戦える気がするんだ。この時を待っていたんだよ、7年も」

スティングは自分が憧れ、そして幼き日から倒したいと思っていた火竜(サラマンダー)、ナツ・ドラグニルと戦えることを予感し、嬉しさと楽しみで眠れなくなっていたのだった。
そんなスティングを見てレクターは笑顔になり、体の前で両手の拳を握る。

「スティング君なら絶対勝てますとも」

レクターはスティングこそが最強の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だと信じて疑わない。スティングを信じて疑わないその言葉に嘘偽りなどありはしなかった。
そのスティングと同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であり、三大竜と呼ばれるローグも目を開けていた。相棒のフロッシュは横になり、頭の後ろで手を組んでいるローグに寄りかかって気持ち良さそうに眠っている。
一方のグラシアンは2人ほど自分の求める相手に深い思い入れがないのか、それともただ体調を万全に整えるためなのか、静かに寝息をたて、相棒のキセキを抱き抱え眠っていた。

「キセキ・・・応援しててな・・・」
「グラシアンなら大丈夫だよ・・・」

同じ夢を見ているのか、2人の寝言はまるで会話をしているようだった。




















人魚の踵(マーメイドヒール)の泊まっている宿では・・・

シャワーを浴びる音が聞こえてくるある寝室。銀髪の少女はそのシャワー室へと入ろうかと扉に手を掛けた・・・が、思い止まってドアノブにかけた手を離す。
少女は外の空気を吸いたいと思い、ベランダへと窓から移動する。そこにはすでに先客がいた。

「ミリアーナさん」

ベランダの柵に体育座りしている猫耳の女性、ミリアーナ。少女は満月を見ているミリアーナにいたずらしようかと思ったが、昼間のことを思い出してやめる。

「どうしたの?そんなところで」
「ソフィア」

ミリアーナはソフィアに気づき声をかける。ソフィアは夏の暑さを凌ぐためか、白の薄手のミニスカワンピースに黒のニーソを合わせて着ている。ソフィアはミリアーナのそばに歩み寄る。

「これからリズリーさんとお出かけするんだけど、よかったらミリアーナさんもどう?」

ソフィアの手には水着を入れるような袋が握られている。ミリアーナはそれを見た後首を横に振る。

「私はいい。今そんな気分じゃないから」
「そう」

顔を伏せ、暗い顔をするミリアーナ。ソフィアは小さくため息をついた後、話を続ける。

「さっきはびっくりしたよね。だってジェラールとそっくりな人が妖精さんにいたんだもん」
「あれは本物のジェラールだよ。私にはわかる」
「・・・」

ソフィアは気を遣って言ったつもりだったのだが、今のミリアーナには逆効果だったようだ。

「でもやっぱ―――」

ギュッ

ソフィアが反論しようとするが、それはミリアーナにいきなり抱きつかれ、驚きのあまり言葉を止める。

「大丈夫。私もカグラちゃんも落ち着いてるから。心配しないで」
「ならいいんだけど・・・」

自身を抱き締めるミリアーナの腰に手を回し、自らも抱き寄せるソフィア。ついでにここぞとばかりに胸に顔を埋もれさせるがミリアーナは何も言ってこない。
ミリアーナは気持ちを落ち着けるためか、しばしの間ソフィアを離そうとしない。ソフィアも同様に、ミリアーナの気持ちが落ち着くまで、そのまま体を寄せていた。











 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
本当はもう1人のオリキャラその日の夜も書きたかったけど色々あってやめておきました。誰だかはご想像にお任せします。
次は待ちに待った『ドキドキ・リュウゼツランド』です。
ついにソフィアの魔の手がウェンディとシリルに・・・
次回もよろしくお願いします。  
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