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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―真実を語る者の謎―

 
前書き
四期開始 

 
『……矢……遊矢……!』

 暑くて寒くて痛くて苦しい異世界。自分の身体がどうなっているかも知れない、まさにこれが『地獄』と呼ばれるような場所。そこに倒れ伏していた俺の耳に、その声が響きわたっていた。

『今か……お前をアカデ……に戻す。だから、あの世……を守っ……』

「三、沢……」

 そうだ、この声はあの親友の声だ。声はすれども姿は――いや、そもそもこの異世界に光はない。見えるようなものなど何もないのだ。

 ……だが、その世界に光が差し込まれる。その光に世界が割れるように両断されていき、その光の向こう側には、あのデュエル・アカデミアが――

『守ってくれ……ダークネスから……』

「――――」

 その三沢の言葉を最後に、俺はそこから飛び起きる。視界に映ったのは知っている天井――今までに何度も利用していた、デュエル・アカデミアの保健室の天井。今の時間は真夜中なのか、島中からまるで光は発せられていない。

「ここは……俺は……?」

 まだ混乱する自分を落ち着かせるために、今までに起きた覚えている限りのことを反芻する。十代が昔に使っていた精霊《ユベル》の計略により、異世界に送られた俺と明日香は、闇魔界の軍勢に囚われてしまった。そこで明日香は……《邪心経典》と呼ばれるカードの生け贄となり、俺はそのカードの効果で神のカードたる《究極封印神エクゾディオス》を手に入れた。

 そしてその神のカードの力を持って、この異世界で起こったことをなかったことにしようとしたが、亮に命を賭けて阻止されアモンに神のカードを奪われた。だがまた奪い返すべくアモンにデュエルを挑み、機械戦士たちと共に勝利はしたものの、そこで俺も力尽きてしまった。

 そこから再び謎の異世界に送られ、『他の異世界に囚われている仲間たちを救いに行く』と言っていた、三沢の声が確かに聞こえて……

「それ以上は忘れていただこうか」

「……誰だ!」

 虫の音しかしなかったその静寂を、いつの間にかそこに現れていた人物が遮った。部屋の扉を開けるような音はせず、先程からここにいたという訳でもない。その黒いサングラスをかけた人物は、文字通り闇の中から現れていた。

「これは失敬。自己紹介がまだだったね。私は真実を語る者、トゥルーマン。ミスターT、とでも読んでもらおうか」

「ミスター……T……」

 明らかに本名ではない……というよりも、俺たちの常識の枠内に収まるような人物なのか。異世界で出会った敵のモンスターたちと、同質の違和感を感じさせるその人物に、俺は身体の痛みを抑えながら警戒の意を示す。……平和的に解決出来るような存在ではないと、身体中が警鐘を鳴らしている。

「君の持つ真実は私たちにとって不都合だ。……消えてもらうとしよう」

 ミスターTと名乗る男はそう言って腕を突き出すと、その腕が黒く染まったデュエルディスクへと変化していく。やっぱりこうなるのか、と内心苦々しげに思いながら、俺はベッドから起き上がる。その近くに置いてあったデュエルディスクを装備し、差してあるデッキが自身の【機械戦士】であることを確認し、デュエルの準備を終わらせる。

「出来るかな? 今の君のデッキの状態で」

「何……?」

 デュエルディスクを展開させたものの、ミスターTと名乗る男はこちらを値踏みするように薄く笑う。【機械戦士】がデュエル出来るような状態か、という謎の問いが発せられる。

「君は感じられるか? 機械戦士たちの存在を。共に戦ってきた仲間たちの鼓動を」

「――――」

 ――デュエルモンスターズの精霊、などというオカルト的なものとは関係なく、デュエリストとデッキには信頼関係がある。自身が組み上げたデッキに対する信頼感、それがなければどんなに強いカードがあろうと、その真の力を発揮することはない。加えて、カードの精霊の存在……俺にその力を感じることは出来ないが、その存在は俺を支えてくれていた。

 ――それが、まるで感じられない。

「異世界で死んだのだよ。君と機械戦士は」

「う――」

「私は真実を語る者。そこから目を背けることは出来ない」

 嘘だ、という前にミスターTから痛烈な宣言が響く。その言葉は事実とともに俺に刻まれていき、デュエルディスクに差し込まれている機械戦士を見ても、そのデッキは何も応えてくれない。俺は――

「遊矢!」

 ――その叫びとともに、保健室の扉が無理やり開かれる。ミスターTは素早く俺からその乱入者へと対応を変え、俺とのデュエルの準備は中断される。

「十代……?」

 その乱入してきた人物は、あの遊城十代そのものだった。変わったところと言えば、背丈と真紅に染められたデュエルディスクのみ。それでも俺の言葉の最後に疑問符がついたのは、今までの十代のイメージと目の前の十代が異なっていたからだ。具体的にどことは言えないが、強いて言うならば。

『デュエル!』

 ――その戦士のような眼光か。

十代LP4000
ミスターTLP4000

「私のターン」

 そして俺などもはや眼中にないかのように、十代とミスターTのデュエルが開始され、ミスターTが先手を取る。あのミスターTと呼ばれる人物は何者なのか、十代に一体何があったのか――それらはまだ俺に知る由はないが、どうやら二人は敵対しているようで間違いない。

「私はモンスターをセット。さらにカードを一枚伏せてターン終了」

「オレのターン、ドロー!」

 その不気味さを表すように、ミスターTはモンスターと伏せカードをセットしたのみで、特に動くことはなくそのターンを終了させる。

「オレは《E・HERO スパークマン》を召喚し、バトル!」

 対する十代は颯爽と切り込み隊長を召喚すると、即座にその謎の布陣に攻撃をかける。雰囲気は変わろうと十代のデッキは変わらず【E・HERO】であり、闇のフィールドにスパークマンは雷光を放つ。

「セットモンスターは《ジャイアントウィルス》。破壊されたことにより、その効果を発動する」

 セットされていたモンスターはあっけなく破壊されるものの、その正体は俺もよく知る《ジャイアントウィルス》。破壊された際に相手ライフに500ポイントのダメージを与えつつ、さらにデッキから二体の《ジャイアントウィルス》を後続として特殊召喚する。

十代LP4000→3500

「……カードを一枚伏せて、ターンエンド」

「私のターン、ドロー」

 スパークマンの攻撃は《ジャイアントウィルス》が増殖したのみに終わってしまうが、まだデュエルは最序盤。ここでミスターTの手の内を見られると思えば悪くはない。二体の《ジャイアントウィルス》をどう使ってくるか、普通に考えれば最上級モンスターの召喚だが……

「私は《マリスボラス・スプーン》を召喚する」

 予想に反して召喚されたのは、かの食器を持った小さな悪魔。これでミスターTのフィールドには三体のモンスターが揃ったものの、いずれもスパークマンにすら攻撃力は届かない。

 ――その共通点と問われれば、どのモンスターもレベル2ということ。

「あいにく、私のデュエルは常識に囚われないことが持ち味でね。私はレベル2のモンスター三体で、オーバーレイ・ネットワークを構築!」

「なっ……!?」

 ミスターTの唱えたその文言とともに、《ジャイアントウィルス》二体と《マリスボラス・スプーン》が、フィールドに開いた穴へと消えていく。融合召喚とはまた違う、黒い光と星が集まっては消えていき、一際巨大な爆発が起こると、そこには新たなモンスターが現れていた。融合でもシンクロでもない、その新たな召喚方法――

「エクシーズ召喚! 漆黒の闇からの使者、《No.96 ブラック・ミスト》!」

 ――エクシーズ召喚。

 同じレベルのモンスターを用いたその新たな召喚方法をもって、ブラック・ミストと呼ばれるモンスターは――恐らくエクストラデッキから――特殊召喚される。十代は今までにも戦った経験があるのか、エクシーズ召喚に対してはさほど驚かず、あくまで警戒を強めるのみだった。

「さて……戦闘だ。ブラック・ミストでスパークマンに攻撃。ブラック・ミラージュ・ウィップ!」

 名は体を表すというが、その《ブラック・ミスト》と呼ばれるモンスターは、まさしく影のようであった。周囲を旋回する三つの星々が輝いていたが、黒い靄のような弱々しい外見の通りに、攻撃力は僅かに100ポイント。エクシーズ素材にしたモンスターたちと同様に、スパークマンの攻撃力にすら及ばない。

「迎撃だ、スパークフラッシュ!」

「ブラック・ミストの効果発動。 オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで、相手モンスターの攻撃力を半分にし、その増減分をこちらの攻撃力に加える。シャドーゲイン!」

 スパークマンが十代の指示に従って反撃するものの、ブラック・ミストの周囲を旋回していた星々の一つが砕かれると、その影はスパークマンが放った電撃を吸収していく。さらに吸収した分だけ影は人型の姿に近づいていき、スパークフラッシュをそのままスパークマンへと返す。

「スパークマン……!」

十代LP3500→3400

 相手モンスターの攻撃力を半分にする能力と、相手モンスターの攻撃力の半分を自身の攻撃力に加える能力。よってスパークマンの攻撃力は800に、ブラック・ミストの攻撃力は900になり、スパークマンは簡単に破壊されてしまう。

「オーバーレイ・ユニット……」

 先程ミスターTは、『オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで』と宣言し、ブラック・ミストの効果を発動した。数を一つ減らした周囲を旋回していた星々を見るに、アレがオーバーレイ・ユニット……そして、恐らくエクシーズ召喚の素材となった、《ジャイアントウィルス》たちの成れの果て。

「スパークマンが破壊されたことにより、リバースカード《ヒーローシグナル》を発動! デッキから《E・HERO クレイマン》を特殊召喚!」

「クレイマン……なるほど。私はこれでターンエンド」

 俺がエクシーズモンスターに対して考えている間にも、デュエルはさらに進行していく。モンスターが戦闘破壊された時、デッキから新たにヒーローを特殊召喚する罠カード《ヒーローシグナル》により、新たに土人形のヒーローが特殊召喚される。

「オレのターン、ドロー!」

 ミスターTのフィールドには《No.96 ブラック・ミスト》に、リバースカードが一枚。ブラック・ミストがその効果を戦闘時――つまり、十代のターンにも使えるのであれば、戦闘破壊は困難だ。だからこその、《ヒーローシグナル》によってのクレイマンの特殊召喚だろうが……

「魔法カード《O-オーバーソウル》を発動し、墓地からスパークマンを特殊召喚! さらに《置換融合》を発動!」

 墓地のE・HEROを特殊召喚する魔法カード《O-オーバーソウル》により、再びスパークマンがフィールドに舞い戻ると、二体のヒーローが早速融合を果たしていく。魔法カード《置換融合》はフィールドでしか融合素材を使えない、というデメリットがあるものの、代わりに通常の《融合》には持たない追加効果を持つ。

 いずれにせよ、融合召喚されるという事実は変わらない……!

「融合召喚! 《E・HERO サンダー・ジャイアント》!」
 そして融合召喚される、クレイマンとスパークマンの融合体、《E・HERO サンダー・ジャイアント》。効果破壊をすることが珍しい十代のデッキにおいて、その効果はコストがかかるとはいえ有用だ。

「サンダー・ジャイアントの効果を発動! 手札を一枚捨てることで、このモンスターより攻撃力が低いモンスターを破壊する! ヴェイパー・スパーク!」

「リバースカード、オープン! 《ナンバーズ・ウォール》」

 しかしてその雷も、標的であるブラック・ミストに届く前に、ミスターTが発動したリバースカードに阻まれてしまう。ブラック・ミストの前にバリアのようなものが現れ、サンダー・ジャイアントの雷撃を弾いたまま維持される。

「永続罠《ナンバーズ・ウォール》は、私のNo.に効果耐性とNo.以外のモンスターからの戦闘破壊耐性を付与する。つまり……No.はNo.でしか倒せない」

「…………」

 効果耐性を用いてサンダー・ジャイアントの効果を避け、さらにはNo.以外からの戦闘では破壊されないようになった。謎の召喚方法であるエクシーズ召喚によって現れる、No.と呼ばれるモンスターが十代のデッキに――俺の知っている十代ならば――入っている訳もなく、十代も苦々しげに口を閉ざす。

「カードを一枚伏せて……ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー」

 サンダー・ジャイアントは戦闘をすることもなく、十代はそのターンを終了する。恐らくミスターTが用いるNo.と呼ばれるモンスターは、あのペンデュラムと同様に異世界の力……十代が持っていることはないだろう。

「バトル。ブラック・ミストでサンダー・ジャイアントに攻撃。ブラック・ミラージュ・ウィップ!」

 ブラック・ミストがスパークマンの攻撃力の半分を得たとはいえ、サンダー・ジャイアントの攻撃力に及ぶべくもない……が、その戦闘の結果は目に見えている。サンダー・ジャイアントの放った雷撃を再び吸収していき、ブラック・ミストはさらに先鋭的な外見に近づいていくとともに、サンダー・ジャイアントの攻撃力をも奪い去っていく。

「オーバーレイ・ユニットを一つ使い、ブラック・ミストの効果発動。シャドーゲイン!」

「くっ……!」

十代LP3400→2300

 剣のようになった影を突き刺され、サンダー・ジャイアントはその巨躯に反してあっさりと倒れ伏す。その余波は十代にダメージを与えていき、しっかりと、加えて着実に十代のライフが削られていく。……ミスターT自体のライフポイントは、まだ微動だにしていないにもかかわらず。

「私はこれでターンエンド」

「……オレのターン、ドロー!」

 十代のフィールドにはリバースカードが一枚、ミスターTのフィールドには攻撃力2100にまで成長した《No.96 ブラック・ミスト》に、No.に耐性を与える永続罠《ナンバーズ・ウォール》。ブラック・ミストのオーバーレイ・ユニットは一つ残っており、その効果はまだ使用可能なのだろう。

 そのオーバーレイ・ユニットの件も含めて、まだまだ余裕があるようにも感じるミスターTに対し、十代が打つ新たな一手は。

「通常魔法《コンバート・コンタクト》を発動! 自分のフィールドにモンスターがいない時、デッキと手札から一枚ずつネオスペーシアンを墓地に送ることで、カードを二枚ドローする!」

 E・HEROではなく十代の使用するもう一つのカテゴリー、ネオスペーシアン。そのサポートカードである《コンバート・コンタクト》により、手札を交換しつつ十代の反撃が始まる。

「オレは《N・グロー・モス》を召喚し、魔法カード《NEX》を発動!」

 召喚されるはネオスをサポートする仲間、ネオスペーシアンの一員であるグロー・モス。さらにネオスペーシアンを進化させる魔法カード《NEX》を発動し、グロー・モスは進化を果たしフィールドに現れる。《N・ティンクル・モス》――

「バトル! ティンクル・モスでブラック・ミストに攻撃! ティンクル・フラッシュ!」

「…………」

 攻撃力は僅か500ながら、ティンクル・モスは果敢にも成長したブラック・ミストへと挑んでいく。ミスターTもその戦闘に対してはブラック・ミストの効果は使わないでいると、ティンクル・モスの頭部が三色に光り出す。

「攻撃する時、ティンクル・モスの効果発動。シグナルチェック!」

 赤、青、黄色。三色に輝いていたティンクル・モスの光は、十代がカードをドローすることによって決定する。ティンクル・モスは戦闘時にカードを一枚ドローし、そのドローしたカードの種類によって効果が決定する。

「オレが引いたのは魔法カード。よってティンクル・モスの攻撃は、ダイレクトアタックになる! いけ、ティンクル・モス!」

ミスターTLP4000→3500

 十代が魔法カード《スペーシア・ギフト》を引き当てたことにより、ティンクル・モスの頭部は青色に光り出し、ダイレクトアタック効果を得る。光の槍を生み出しミスターTにぶつけるものの、その攻撃力からではダメージも微々たるものだった。

「メインフェイズ2、オレは今引いた《スペーシア・ギフト》を発動! フィールドのネオスペーシアンの数だけ、よって二枚ドロー!」

 さらにティンクル・モスの効果でドローした、《スペーシア・ギフト》を発動してさらにドローする。フィールドのネオスペーシアンの数だけドローする魔法カードであり、グロー・モスの進化系であるティンクル・モスは、《N・グロー・モス》と《N・ティンクル・モス》の二つの名前を持つため、一体で二枚のドロー源となることが出来るのだ。

「そして墓地から魔法発動!」

「墓地から魔法……?」

 十代が宣言したその魔法カードの発動に、初めてミスターTが少なからず疑問の声を漏らす。十代のフィールドに半透明で浮かび上がる、墓地に送られていた魔法カード――《ギャラクシー・サイクロン》。

「《ギャラクシー・サイクロン》は墓地から除外することで、相手の魔法・罠カードを破壊できる!」

 《E・HERO サンダー・ジャイアント》の効果は無駄ではなく、墓地に《ギャラクシー・サイクロン》という布石を打っていた。突如として墓地から巻き起こる旋風に巻き込まれるのは、もちろんミスターTのフィールドにある《ナンバーズ・ウォール》。モンスターに強固な耐性を付与するそのカードでも、そのカード自体に耐性は何もなく、《ギャラクシー・サイクロン》により破壊される。

「さらにカードを一枚伏せてターン終了!」

「……私のターン、ドロー」

 ただしバトルフェイズを既に終えている十代に、そのターンで出来ることは既になく。……ただ、効果破壊耐性を付与する《ナンバーズ・ウォール》が無くなったことにより、十代のリバースカード二枚がミスターTにプレッシャーを与える。わざわざ《ギャラクシー・サイクロン》を用いてまで、このタイミングで《ナンバーズ・ウォール》を破壊したのだから、十代のリバースカードには《No.96 ブラック・ミスト》を破壊する手段があるのではないか。

 ――そう対戦相手に思わせる。ただ攻撃しなくては、ティンクル・モスの効果で十代は手札を補充していく。

「私は《マリスボラス・ナイフ》を召喚」

 十代らしからぬ心理戦を見せた後ミスターTは新たなモンスターを召喚する。ブラック・ミストをエクシーズ召喚する際にも現れた、銀食器の名を象った悪魔と同種のモンスター。

「《マリスボラス・ナイフ》は召喚に成功した時、墓地からマリスボラスを特殊召喚する。《マリスボラス・スプーン》を特殊召喚」

 やはり同じカテゴリーのモンスターだったらしく、墓地から先の《マリスボラス・スプーン》が特殊召喚される。《マリスボラス・ナイフ》自体にはそれ以上の効果はないようではあるが、その効果により――ミスターTのフィールドに、同じレベルのモンスターが二体揃う。

「レベル2の《マリスボラス・ナイフ》と《マリスボラス・スプーン》で、オーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 再び行われるエクシーズ召喚。三体のモンスターではないため、少なくともフィールドにいる《No.96 ブラック・ミスト》ではないが、むしろその召喚は変幻自在。同じレベルのモンスターを二体並べるだけで、エクストラデッキのモンスターの数だけ選択肢が生まれる……それが、エクシーズ召喚という召喚方らしい。

「呪われし裁きの執行者。《No.65 裁断魔人ジャッジ・バスター》!」

 闇のオーラを纏ったハサミ。第一印象はその程度だったものの、そのハサミが変形していき悪魔の顔が姿を現し、最終的にはハサミを持った悪魔にまで変形を果たす。その攻撃力は1300とブラック・ミスト同様に控えめだが、どのような効果があるかはまだ分からない。

「バトル! ジャッジ・バスターでティンクル・モスに攻撃!」

「ティンクル・モスの効果発動! シグナルチェック!」

 そしてバトルフェイズへと移行すると、新たに召喚されたジャッジ・バスターがティンクル・モスを狙う。だがティンクル・モスもただでやられることはなく、効果を発動してその戦闘の結果を操作しようとし――

「ティンクル・モス……!?」

 ――十代がカードをドローするより早く、ティンクル・モスはジャッジ・バスターのハサミに両断されていた。

「ジャッジ・バスターはオーバーレイ・ユニットを二つ取り除き、相手のカード効果を無効にし、相手ライフに500ポイントのダメージを与える。……加えて、戦闘ダメージを受けてもらうとしよう」

 ティンクル・モスが発動しようとした効果は、ジャッジ・バスターの効果によって無効化されることとなり、結果としてティンクル・モスは非力なまま戦闘に臨むこととなった。当然ながら適う訳もなく、ジャッジ・バスターの効果によるバーンダメージに加えて、ティンクル・モスが破壊されたことによる戦闘ダメージが十代を襲う。

十代LP3400→2100

 ……そしてその十代のライフポイントの数値は、狙いすましたかのように、現在の成長したブラック・ミストと同じだった。

「さぁ、トドメだ遊城十代。ブラック・ミストでダイレクトアタック。ブラック・ミラージュ・ウィップ!」

「いや、まだだ! 速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》を発動! デッキから《ハネクリボー》を特殊召喚する!」

 十代のフィールドに伏せられた二枚の伏せカードのうち一枚、デッキから《ハネクリボー》を特殊召喚する速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》が発動され、十代の相棒がブラック・ミストの前に立ちはだかる。これで一ターンの壁になる、そう思って安堵した俺を後目に、十代はさらにリバースカードを発動させた。

「さらに速攻魔法《進化する翼》!」

 その速攻魔法の発動コストは手札を二枚墓地に送り、指定したモンスターをフィールドから墓地に送ること、という規格外の発動条件を誇る。ただその厳しい発動条件を満たした時、フィールドに現れるのはその指定したモンスターの最強の姿――つまり、《ハネクリボー》の文字通り進化した姿である。

「手札を二枚捨てることで、《ハネクリボーLV10》を特殊召喚!」

「ぬ……」

 十代の手札二枚を養分に進化したハネクリボーに、ミスターTも小さく呻き声を鳴らす。その効果を防ぐ《ナンバーズ・ウォール》は先のターンに既に破壊され、《No.65 裁断魔人ジャッジ・バスター》の効果は《N・ティンクル・モス》に発動済み……もはや止めることは出来ない。

「《ハネクリボーLV10》は自身をリリースすることで、相手モンスターを全て破壊し、攻撃力の合計のダメージを与える!」

 十代の起死回生の一手。自身を犠牲にしたハネクリボーの最強の一撃の前に、《ナンバーズ・ウォール》という文字通り壁を失ったナンバーズたちは、あっさりと瓦解していく。……ただ、十代が想定した通りには、ダメージは与えられなかっただろうが。

「ブラック・ミストの元々の攻撃力は100。よって《ハネクリボーLV10》の効果で受けるダメージも、元々の攻撃力分だ」

ミスターTLP3500→2100

 本来は一撃必殺の威力を誇る《ハネクリボーLV10》ではあるが、元々の攻撃力が僅か100のブラック・ミスト、高いとは言えないジャッジ・バスターが相手では、本来のポテンシャルは発揮しきれない。ライフポイントを互角にするだけが精一杯であった。

「おっと……私のメインフェイズ2。カードを二枚伏せ、ターンを終了しよう」

「オレのターン、ドロー!」

 これでミスターTのフィールドには、二枚のリバースカードのみ。ここぞと攻め込みたいタイミングではあるが、十代の手札も《進化する翼》の効果によって心もとない。

「墓地の《置換融合》の効果を発動! このカードを除外し、墓地の融合モンスターをエクストラデッキへと戻すことで、オレはカードを一枚ドロー!」

 《E・HERO サンダー・ジャイアント》の融合召喚に使用された、特殊な融合魔法《置換融合》の効果。自身を除外することで、墓地に送られた融合モンスターをエクストラデッキに戻して再利用を可能にし、さらにカードを一枚ドローさせる。これで十代の手札は三枚……十代には充分な枚数である。

「そして墓地の《E・HERO ネクロダークマン》の効果を発動! このモンスターが墓地にある時一度だけ、リリース無しでE・HEROを召喚出来る! 来い! 《E・HERO ネオス》!」

 《進化する翼》で墓地に送っていたのであろう、E・HEROのアドバンス召喚のリリースを不要にする効果を持つヒーロー、《E・HERO ネクロダークマン》の力を借り……今、十代の主力ヒーローがフィールドに降臨する。光の巨人のような姿をしたそのヒーローは、ミスターTのがら空きのフィールドに飛び込んでいく。

「バトル! 《E・HERO ネオス》でダイレクトアタック! ラス・オブ・ネオス!」

「リバースカード、オープン! 《ガード・ブロック》!」

 ただしそう上手くいくわけもなく、ネオスの攻撃は惜しくもカードの束に防がれ、ミスターTに一枚のドローを許してしまう。

「……メインフェイズ2、カードを二枚伏せてターンエンド!」

「私のターン、ドロー」

 ネオスの召喚に加えてカードを二枚伏せたことで、十代は持ち得る手札を全て使い切る。フィールドのネオスを前面に押し出し、このまま押し切るつもりか。

「私は魔法カード《ダーク・バースト》を発動。墓地の《マリスボラス・スプーン》を手札に加え、そのまま召喚する」

 攻撃力1500以下の闇属性モンスターを回収する魔法カード《ダーク・バースト》により、これまで二体のナンバーズのエクシーズ素材となってきた悪魔が、再びフィールドに召喚される。闇属性、低レベル、低攻撃力とサポートカードが潤沢なマリスボラスたちに、再びエクシーズ召喚するのは容易だろう。

「さらに伏せてあった罠カード、《エンジェル・リフト》を発動。墓地から《マリスボラス・ナイフ》を特殊召喚」

 その考察は残念ながら現実になってしまうようで、レベル2以下のモンスターを蘇生する罠カード《エンジェル・リフト》により、あっさりと二体のマリスボラスが揃う――が、まだ終わることはない。

「《マリスボラス・スプーン》の効果発動。このモンスターの他にマリスボラスモンスターが特殊召喚された時、墓地からレベル2の悪魔族モンスターを特殊召喚する。蘇れ、《ジャイアントウィルス》!」

 今までエクシーズ素材となっていただけで、効果を使わなかった《マリスボラス・スプーン》が遂に牙を剥く。連鎖的に反応するように墓地から《ジャイアントウィルス》を蘇らせ、あっけなくフィールドに三体のレベル2モンスターを揃わせる。

「レベル2の《マリスボラス・スプーン》、《マリスボラス・ナイフ》、《ジャイアントウィルス》でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 またもや行われる、三体のモンスターを素材としたエクシーズ召喚。三体の悪魔の力を一つにしていき、さらなる悪魔の力を呼び覚ます。

「エクシーズ召喚。死者の眠りを妨げる冒涜の化身、《No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》!」

 そしてエクシーズ召喚されるは、同じエクシーズ素材を要求している――と思われる――《No.96 ブラック・ミスト》ではなく、新たなナンバーズである《No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》。人形使いのような外見に反することはなく、その指からは人形を踊らせる糸が垂れている。

 ――そしてそのナンバーズの登場とともに、十代のフィールドにも新たなモンスターたちが現れていた。

「そのモンスターは……」

 十代のフィールドに現れていたのは、ネオスペーシアンたちの幼生体である《コクーン》モンスターたち。まだ成長しきっていないため、ネオスペーシアンたちの能力を使うことは出来ず、ステータスもネオスペーシアン以上に低いが……それらが四体、いつの間にか十代のフィールドに揃っていた。

「リバースカード、《コクーン・パーティー》を発動した。墓地のネオスペーシアンの数だけ、デッキからコクーンモンスターを特殊召喚する」

 ソウル・マリオネッターを警戒してか、伏せてあった罠カード《コクーン・パーティー》から四体のモンスターが守備表示で現れ、先に召喚していたネオスも含めて十代のフィールドを埋め尽くす。《コンバート・コンタクト》に《進化する翼》で、ネオスペーシアンたちは充分なほど墓地に溜まっていたため、《コクーン・パーティー》は十全に威力を発揮する。

「……まあいい。ソウル・マリオネッターの効果発動。このカードのオーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、墓地のナンバーズをこのカードに装備する。私は《No.96 ブラック・ミスト》を装備」

 最初にエクシーズ召喚されたナンバーズである、ブラック・ミストが操り人形のように扱われながら、ソウル・マリオネッターに装備される。ただし、その装備によって攻撃力や守備力が増減することはなく――相変わらず、ソウル・マリオネッターの攻撃力は不気味に0を保っていた。

「ソウル・マリオネッターはナンバーズを装備している限り、戦闘、効果では破壊されない。さらに魔法カード《三位一択》を発動!」

 ソウル・マリオネッターのナンバーズ装備効果は、かの《ナンバーズ・ウォール》のような破壊耐性付与効果。そちらも充分に厄介ではあったが、ミスターTのさらに発動した魔法カードに目を凝らす。

「《三位一択》はエクストラデッキのモンスターの種類を選択し、その種類のモンスターが多かったプレイヤーは、3000ポイントのライフを回復する。私が選択するのは、もちろんエクシーズモンスター」

 エクストラデッキにあるモンスターの種類。融合、シンクロ――そしてエクシーズ。そのモンスターの種類の数によって、勝ったプレイヤーは3000ポイントのライフを回復する……などと言えば聞こえはいいが、発動したプレイヤーの回復が目に見えた出来レース。十代のエクストラデッキにはもちろん融合モンスターしかなく、ミスターTのエクストラデッキには黒いカード……エクシーズモンスターだけだ。よってミスターTがライフを3000ポイント回復し――

 ――ソウル・マリオネッターがその回復に反応する。

「ソウル・マリオネッターの効果発動。私がライフを回復した時、そのライフを回復した分を攻撃力とし、さらに相手にその分のダメージを与える!」

ミスターTLP2100→5100

 ミスターTが回復したのは3000ポイント。よってソウル・マリオネッターの攻撃力は3000ポイントとなり、十代には3000ポイントのダメージが与えられる。攻撃力をこれ以上ないほど増したソウル・マリオネッターが、そのエネルギーをそのまま十代へと向かって放つ。

「リバースカード、《コクーン・ヴェール》を発動! フィールドのコクーンをリリースすることで、このターンの効果ダメージを無効にする!」

 十代が伏せていたもう一枚のリバースカードの効果により、四体のうち一体のコクーンをリリースすることにより、何とかバーンダメージによる敗北を避ける。さらに《コクーン・ヴェール》はバーンダメージを防ぐだけではなく、さらにコクーンたちを進化させる機能も備えていた。

「さらにリリースされたコクーンに記されたモンスターを特殊召喚する! 現れろ、《N・グラン・モール》!」

 リリースされたコクーンは《C・モーグ》。よって、本来は《C・モーグ》の効果によって呼び出されるネオスペーシアン、《N・グラン・モール》が特殊召喚される。ネオスペーシアンの中でも一際強力な効果を持つモンスターだが、それを見てミスターTは小さく笑う。

「なるほど、グラン・モールか……そのモンスターは厄介だ。先に消させてもらうとしよう。速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動し、バトルに入る」

 十代のエースカードであるネオスよりも、グラン・モールを警戒してかミスターTはそちらを優先する。そしていくら強力な効果を持っていようとも、効果を無効にされては発動することは出来ず……《禁じられた聖杯》の対象となったグラン・モールは、その効果を失ってしまう。

「ソウル・マリオネッターでグラン・モールに攻撃。ブラック・ミラージュ・ウィップ!」

 ミスターTが宣言した攻撃名と、実際に攻撃するのは操り人形と化しているブラック・ミスト。それをソウル・マリオネッターは器用に動かしていき、効果が無効となったグラン・モールに痛烈な一撃を加えた。

「ぐああっ……!」

十代LP2100→400

 皮肉にも《禁じられた聖杯》の攻撃力上昇効果によって、十代のライフポイントは何とか首の皮一枚繋がった。それでも大ダメージであることに変わりはなく、十代はそのダメージに息も絶え絶えといった様子で堪えている。

「私はこれでターンエンド」

「……オレのターン、ドロー!」

 十代のフィールドはネオスにコクーンが三体、リバースカードは使い切ってもはやなく、ライフポイントは400残った。対するミスターTもフィールドは《No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》のみで、魔法カードも装備カードとなった《No.96 ブラック・ミスト》のみだ。先のターン多く展開したことによる弊害だろうが、ライフポイントは圧倒的な差である5100。

「オレはネオスを守備表示にし……ターンエンド」

「フッ……私のターン、ドロー」

 ミスターTの攻勢に対し十代は、ネオスを守備表示に変更することがやっと。壁モンスターは大量にいるものの、まだ攻勢に出られそうではなく……よしんば攻勢に出たところで、5100ポイントのライフを削りきれるか。

「バトル。ソウル・マリオネッターでネオスに攻撃。ブラック・ミラージュ・ウィップ!」

 操り人形と化したブラック・ミストがネオスをあっさりと破壊し、その衝撃がフィールドを震わせていく。守備表示のためにダメージは受けないものの、これで残るはコクーンモンスターのみ。

「カードを一枚伏せてターン終了」

「オレのターン、ドロー!」

 ……確かに十代は、ソウル・マリオネッターが召喚されてから防戦一方だった。だが、それから二回のドローを果たし――十代が逆転するのに充分な、それだけの隙を与えたミスターTのミスだ。

「オレはフィールド魔法《ネオスペース》を発動!」

 フィールドが闇夜の保健室から、ネオスペーシアンたちの生まれ故郷である宇宙へと変化していく。闇と影が薄くなったことにより、ソウル・マリオネッターの姿がより鮮明になるとともに、十代のフィールドのコクーンモンスターたちが震え出す。

「コクーンモンスターは《ネオスペース》がある時、自身をリリースすることで、それぞれのネオスペーシアンを特殊召喚する! 現れろ、ネオスペーシアンたち!」

 生まれ故郷と同じフィールドてなったコクーンモンスターは、急激に成長し本来の姿を取り戻していく。それぞれ効果を発動していくと、十代のフィールドには三体のネオスペーシアン――《N・アクア・ドルフィン》、《N・エア・ハミングバード》、《N・ブラック・パンサー》――が集結する。

「さらに魔法カード《セメタリー・リバウンド》を発動! このカードは墓地の魔法カードの効果をコピーする!」

「コピーだと……?」

 墓地の魔法カードと同じ効果を発動することが出来る――と、まさしく魔法カードをコピーすると言うに相応しい効果。十代がそう宣言するとともに、《セメタリー・リバウンド》のカードが墓地の《スペーシア・ギフト》へと複製されていく。

「《スペーシア・ギフト》はフィールドのネオスペーシアンの数だけドロー出来る。よって三枚のカードをドロー!」

 先のターンで発動していた《スペーシア・ギフト》を発動することにより、さらに三枚のカードをドロー。ネオスペーシアンたちから受け取った、三枚のドローしたカードを十代はさらに展開させていく。

「先に発動していた《ネオスペース》を墓地に送ることで、フィールド魔法《摩天楼2―ヒーローシティ》!」

 十代自ら発動していたフィールド魔法を貼り替えると、ネオスペーシアンたちの宇宙から、ヒーローたちの守る聖地へと形を変えていく。十代がこのアカデミアに入学する前から使っていた、以前のスカイスクレイパーではなく、あの旧友から受け取った第二の摩天楼――

「《摩天楼2―ヒーローシティ》は一ターンに一度、戦闘で破壊されたヒーローを墓地から特殊召喚出来る! 蘇れ《E・HERO ネオス》!」

 十代の墓地に現在存在する、戦闘破壊されたヒーローは一種類だけ。先のターンで破壊されたネオスが、摩天楼2から帰還したことにより、フィールドにネオスとネオスペーシアンが揃う。

「オレはネオスとエア・ハミングバード、アクア・ドルフィンを、トリプルコンタクト融合! 《E・HERO ストーム・ネオス》!」

 ネオスにエア・ハミングバード、アクア・ドルフィン。三種のモンスターが宇宙で一つになっていき、新たな英雄となってこのフィールドに舞い戻る。灼熱、混沌、旋風――それらを司るトリプルコンタクト融合体の中で、フィールドに降り立ったのは旋風を司るネオス。

「ストーム・ネオスは一ターンに一度、フィールドの魔法・罠カードを全て破壊出来る! アルティメット・タイフーン!」

 耐性を付与するためにカオス・マリオネッターが装備していたブラック・ミスト、新たに伏せられていたリバースカード、ヒーローシティ。三つのカードがストーム・ネオスの効果で破壊されていき、旋風が去った後には何も残ることはなく。フィールドはネオスとソウル・マリオネッターが睨み合う。

「……ありがとな、隼人……《コンタクト・アウト》を発動! ストーム・ネオスの融合を解除し、融合素材をデッキから特殊召喚する!」

 役目を終えてもろともに破壊することととなった、《摩天楼2―ヒーローシティ》について小さく呟いた後、十代はさらなる魔法カードを発動する。コンタクト融合体専用の《融合解除》であり、デッキから再びネオスにエア・ハミングバード、アクア・ドルフィンがフィールドに揃う。もちろん、ただフィールドに戻した訳ではなく。

「さらにネオスとエア・ハミングバードをコンタクト融合! 《E・HERO エアー・ネオス》!」

 息も吐かせぬ連続コンタクト融合。ストーム・ネオスでフィールドの魔法・罠カードを破壊した後、本命のエアー・ネオスがフィールドに融合召喚される。その効果は限られた条件下でのみ、十代のデッキの中でも最高の攻撃力を発揮する。

「エアー・ネオスは、相手とのライフポイントの差分だけ攻撃力をアップする!」

「なっ……!」

 ミスターTのライフポイントは5100ポイント、十代のライフポイントは僅か400ポイント――《三位一択》で大きくライフを回復したミスターTと、ビートバーンでライフを削られ続けた十代。そのライフポイントの差は歴然であり、歴然であれば歴然であるほど、エアー・ネオスはその攻撃力を上げていく。

 その差分、4700。よってエアー・ネオスの攻撃力は、ソウル・マリオネッターの攻撃力を軽々と越え――7200。

「バトル! エアー・ネオスでソウル・マリオネッターに攻撃! スカイリップ・ウィング!」

 エアー・ネオスの翼による強烈な一撃が、先のストーム・ネオスの効果によってブラック・ミストを失った、直にソウル・マリオネッターに炸裂する。ソウル・マリオネッターは一撃で消し飛び、その衝撃波はカマイタチとなって無防備なミスターTに襲いかかる。

「ぐううっ!」

ミスターTLP5100→900

 ミスターTのライフポイントが一瞬にして削られていき、ブラック・ミストを装備していないソウル・マリオネッターは、あっさりとエアー・ネオスに破壊されていく。……そしてまだ十代のフィールドには、攻撃していないモンスターが残っている。

「トドメだ! ブラック・パンサーでダイレクトアタック! ダーク・クロー!」

「――――!」

ミスターTLP900→0

 ブラック・パンサーの一撃がミスターTに炸裂し、そのライフポイントが消え去るとともに、ミスターTの姿自体も消えていく。そこにはカードが一枚だけ――《No.96 ブラック・ミスト》のカードだけが残されており、デュエルの後は不気味なまでの静寂だけが残されていた。
 
 

 
後書き
祝、エクシーズ解禁。その理由は次話以降おいおいと…… 
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