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閉店

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第一章

                        閉店
 オウム真理教、現在はアレフという宗教団体が数々の問題を起こし世を騒がせていた時のことだ。
 高校生の眞鍋友はゲームに熱中していた。
 太い一直線の眉に奥二重のやや切れ長で垂れも加わっている目、赤い真一文字の唇に形のいい鼻。癖のある縮れ気味の黒髪を少し伸ばし右で分けている。背は一七四程だ。
 部活は軽音楽部でバンドではギターだ、そして趣味はその音楽とゲームという訳だ。
 ゲームが好きなのでそうした店にもよく通っている、しかしだ。
 彼は世の中の状況が状況なのでオウム事件の話もよくした、それは学校でも家でもだった。そしてそうした店の中でもだ。
 店員、眼鏡をかけた彼にだ。話をしている時に言った。
「オウムですけれど」
「ああ、あの連中」
 店員も彼の言葉に応えた。
「今大変だよな」
「とんでもない連中ですね」
「いや、俺はな」
 友にだ、店員はこう言ったのだった。
「いいと思う」
「えっ!?」
 友は店員の言葉に一瞬目を瞬かせて問い返した。
「それどういうことですか?」
「俺は過激派でもそうだけれどな」
「左翼のですか」
「ああ、権力に反対するんだったらな」
 それならとだ、店員は真面目に言うのだった。
「いいと思う」
「そうですか」
「ああ、俺はな」
 こう友に言ったのである、店員とそうした話を聞いてだ。
 そうしてだ、店で品物を幾つか買ってだった。
 家に帰った、そして夕食の時に父の為景にこの話をした、そして。
 彼はここでだ、こう言った。
「そうした考えもあるのかな」
「そんな店員がいるのか」
 父は箸を御飯を入れた碗を手にしつつだ、まずは。
 眉を顰めさせた、そしてだった。
 友にだ、こう言った。
「その店潰れるな」
「えっ、何で?」
「はっきり言うぞ、店員はな」
 友が話した彼はというのだ。
「馬鹿だ」
「えっ、馬鹿なんだ」
「これ以上はないまでに馬鹿だ」
 口を苦く歪ませての言葉だった。
「どうしようもない位にな」
「何で馬鹿なのかな」
「権力に反対するのならと言ったんだな」
「そうだよ」
 このことは事実だとだ、彼は答えた。
「過激派にしても」
「オウムのやったことを知っていてだな」
「まあそれはね」
 言うまでもないとだ、友も答えた。
「今その話ばかりだからね」
「弁護士さんの一家を殺してサリンを撒いて沢山の人を殺して拉致をしてまた殺して信者も殺してだ」
 為景は言っていく。
「自分だけ美味いものを食って金を溜め込んで愛人を大勢囲って子供を何人も作っている」
「あの尊師はね」
「そんな奴等だ」
 それがオウムだというのだ。
「過激派も沢山の人を殺している、ましてやオウムはな」
「連中は?」
「権力に反対していたんじゃない」
 その店員の言う様ではないというのだ。
「自分達が反乱、テロを起こして権力の座に座ろうとしていたんだ」
「そんな計画立てていたね」
「そもそも反権力でもだ」
 その店員が言う様にというのだ。
「大勢の人を殺したり贅沢をしたりしていいのか」
「それはね」
「違うな」
「うん、絶対にね」
「つまりその店員はだ」
 即ちというのだ。 
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