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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ウェンディvs.シェリア

シリルside

「さてさて、何とも後味の悪い結果となりましたが、続いて第四試合、本日最後の試合ですカボ!!」

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の魔導士たちが王国軍に連行されていき、一時は静まり返っていた観客たちもマトー君の声を聞き、一気に盛り上がりを取り戻す。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)A、ウェンディ・マーベル!!』
「着替え完了です!!」

コールを受け、ウェンディが気合い十分な顔つきで拳を体の前で握る。ちなみに衣装は入場の時のノースリーブ型のチームカラーの服ではなく、長袖のワンピースでメインは紫で袖の部分のみ白という配色になっており
黒のニーソを履いている。
なぜ衣装を変えたのかというと、ウェンディの服を見たポーリュシカさんが完全にマスターの趣味だと怒り、露出の少ないものに変えさせたのである。ポーリュシカさんなんか本当にウェンディのお母さんみたい・・・

「「頑張れよ!!」」
「ファイト!!ウェンディ!!」
「うん!!絶対に勝つから見ててね!!」

ナツさんとグレイさん、そして俺がウェンディに声をかけるとウェンディはそう答える。

『vs.!!』

ウェンディの対戦相手をコールしようとするチャパティさんのテンションが突然上がる。

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)シェリア・ブレンディ!!』
「頑張っちゃうよ!!』

コールされたのはレオンやリオンさん、ジュラさんがいる蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の大魔闘演舞出場者の紅一点、シェリアさんだ。
シェリアさんは名前を呼ばれると笑いながら手を振っている。



















レオンside

実況のアナウンスで今日のラストゲームのカードが発表される。シェリアとシリルのとこのチビッ子の戦いか・・・

「奴等はまだシェリアの強さを知らんようだな。グレイの驚く顔が目に浮かぶ」

そう言うリオンくんだがその頭の中に出てきているイメージはなぜかリオンくんの想い人、ジュビアさんの驚いている顔だった。

「違うもん浮かんでるぞ」
「少しでいいからジュビアさんのこと忘れようか?」

ユウカさんと俺はリオンくんに突っ込む。個人的ではあるがシリルとジュビアさんって似てる気がするんだよな、同じ水使いだからかな?

「オオーン!!靴下の仇はラクサスがとってくれたぁ!!」
「いかん。俺としたことが」

トビーさんは昨日のバトルでクロヘビに靴下を破られたのを引きずっていたけど、ラクサスさんがそのクロヘビを沈めてくれたことで感涙している。
リオンくんは照れたように前髪を触りながら反省しているがこの際すごくどうでもいい気がする。シェリアの力に驚くのは誰でも共通して言えることだと思うし。

「思いっきりやってきなさい」
「はい!!」

ジュラさんに声をかけられ、シェリアは手を上げ元気に返事をする。

「負けたら回すよ!!わかってるね?」

オババ様はシェリアに渇を入れている。俺も昔回されたことあるけどオババ様は容赦ないからなぁ・・・まぁ、シェリアか負けることはないし回されることもないと思うけどね。

「それではお待たせしました!!両選手の入場カボ!!」

マトー君がそういい、シェリアとウェンディが闘技場へと向かう。

「じゃ、行ってくるね!!レオン」
「あぁ、わかってる」

シェリアが俺に歩みよりそう言うのでわかってるということを伝えると、なぜか頬を膨らまし怒ったような顔をする。

「「頑張って」は?」
「は?」
「「頑張ってね!!」とか言ってくれないの?」

なんだ、シェリアは声援がほしいわけね。力はあるのにそういうところはまだ年相応ってことか。

「シェリアが勝つって信じてるから、頑張ってね」
「うん!!ありがとう!!」

俺がそういうとシェリアは笑顔になり、闘技場へと走っていく。

「ナイスアドリブだな、レオン」
「今のはレオンにしては珍しくファインプレーだな」
「これでシェリアもいつも以上に頑張れるな」
「オオーン」

リオンくん、ユウカさん、ジュラさん、トビーさんが何か言っているけと俺は気にすることなくシェリアの試合を見るために闘技場へと視線を落とした。






















シリルside

「行ってきます!!」
「頑張れ!!ウェンディ!!」

ウェンディはようやく大魔闘演舞初参戦ということで気合い十分!!急いで闘技場へと向かって走っていく。なんか転びそうな気がするのは俺だけか?
闘技場を見つめる俺たち。最初に姿を現したのは対戦相手のシェリアさん。

ガッ

「あ!!」

ドタンッ

「きゃうっ!!」

闘技場に走ってきたシェリアさんは足元の石につまずき転んでしまう。それを見た観客たちは大笑いする。

「あ・・・あの、大丈夫ですか~?」

転んだシェリアさんを心配し駆けていくウェンディ。しかし・・・

ガッ

「おっ!!」

バタンッ

「あう!!」

案の定ウェンディも足元にある小石につまずき転倒する。対戦する両者が共に倒れるという珍事が起き、観客たちは笑いが止まらない。
でも大丈夫、まだ何かにつまずいただけ成長している!!昔は何もないところで転んでたからな。

「よ・・・よろしくお願いします」
「うん。よろしくね」

つまずいた2人は体を起こし、相手に挨拶をする。

「大丈夫かしら?あの子」
「どっちも試合前から転ぶなんて~・・・」プルプル

シャルルはドジなウェンディのことを心配し、セシリーは2人ともドジッ子属性を発揮したことに笑いを堪えていた。

「魔力、気合い共充実しているように見える」
「ウェンディなら大丈夫だよ!!」

一方リリーとハッピーは万全な様子のウェンディを見てそう言う。

「あのシェリアという少女の魔力・・・」

そのすぐ近くにいる初代はシェリアさんの魔力に何かを感じていた。

『これはなんとも可愛らしい対決となったぞ!!おじさんとっちも応援しちゃうピョ~ン!!』
『ピョン?』
『アンタキャラ変わっとるよ』

ウェンディとシェリアさんを見てチャパティさんが目をハートにし大興奮。言っておくがウェンディはやらんからな!!

「キャー☆何あれシェリアもウェンディちゃんも超可愛い!!天使!?天使なの!?キャー☆!!」

チャパティさんと同じ・・・いや、それ以上に興奮しているのは人魚の踵(マーメイドヒール)のソフィアさん。もう興奮しすぎてて今にも闘技場に飛び降りて来てしまうのではないかというほどである。

『さぁ!!それでは3日目最終試合!!』

ゴオーン

「開始!!」

銅鑼の音と共に切って落とされる2人の少女の対決の火蓋。

「シェリアの実力を見て驚くがいい、グレイ」
「ウェンディちゃんには悪いけど、勝つのはシェリアだからな、シリル」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の待機場所からリオンさんとレオンがこちらを見ながらそう言う。

「ウェンディを甘く見るなよ、リオン」
「ウェンディもすごく強くなったから、そう簡単にはいかないぞ、レオン」

グレイさんと俺は2人の方を見ながらそう返す。

『実に可愛らしい組合わせです!!おじさんもう嬉しい~☆!!』

チャパティさんは体をフリフリしながらそう言う。確かにウェンディもシェリアさんも可愛いからその気持ちはどことなく分かる。

『1日目のバトルパートでシリルくんが出て来てからずっと思っとったけど、あんな子ら妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいたかな?』
『えぇ・・・私は少しだけ知っているのですが、2人共、とても勇敢な魔導士ですよ』

ヤジマさんの疑問にラハールさんがそう言う。たぶんニルヴァーナの時のことを言っているんだろうな。

(せっかく修行したんだ、頑張らなきゃ!)

ウェンディは目を閉じ気持ちを昂らせる。

「行きます!!」
「うん!!」

ウェンディは目を開けシェリアさんを見据える。シェリアさんはそれに対しうなずく。

「アームズ、バーニア、付加(エンチャント)!!」
「お?」

ウェンディは右手と左手からそれぞれ魔法陣を展開させる。これによりウェンディの速度と攻撃力が増加される。

「天竜の・・・翼撃!!」

ウェンディは両手を振るい竜の翼のような風を生み出し、シェリアさんを攻撃する。

「ふっ!!」

しかし、その攻撃をシェリアさんは爆転を織り交ぜた軽やかな動きで交わしていく。

「交わした!?」

驚くウェンディ。シェリアさんはそのウェンディに自らの魔法を放つ。

「北風よ!!神の息吹となりて大地を裂けよ!!天神の北風(ボレアス)!!」

シェリアさんはそう言い、右手に集めた黒い風をウェンディへと放る。

「うわっ!!」
「ウェンディ!!」
「あわわわっ」

ウェンディは黒い風に飲み込まれ、応援席のシャルルとセシリーが心配して名前を叫ぶ。

「黒い風!?」
「あいつ・・・」

ナツさん、剣咬の虎(セイバートゥース)のオルガさんがシェリアさんの魔法に何かを感じる。

バッ

黒い風が晴れる。そこにはシェリアさんの攻撃を無事に交わしたウェンディか立っていた。

「すごい!!これ避けるんだね」

シェリアさんは地面に着地し、ウェンディを見ながら感嘆の声を漏らす。

「だったら!!」

シェリアさんは黒風を出しながら駆け出す。ウェンディはその黒風を自分の風ではね除けている。が!!

「!!」

ウェンディの死角からシェリアさんが前傾姿勢で突撃してくる。

「風よ風よ!!大地を抉り、空に踊らせよ!!」

ウェンディはシェリアさんの接近に気づくがその時にはすでに目と鼻の先に彼女はいる。

「天神の舞!!」
「うわあああああ!!」

渦を巻き空に舞い上がる黒風。ウェンディはそれに飲み込まれ宙へと浮き上がる。

「まだまだ!!」

シェリアさんは空中で身動きの取れなくなっているウェンディに向かってジャンプし次なる一手に出ようとする。

「っ!!」

だがウェンディもそう易々とやられるはずがない。風を操り体勢を立て直し、迫り来るシェリアさんに反撃する。

「天竜の鉤爪!!」
「うっ!!」

ウェンディの蹴りを受け落下するシェリアさん。ウェンディもすぐに重力に従い闘技場に向かって落ちていく。

ダッ

とっとっ

足でうまく着地するウェンディと悪いながらもなんとかバランスを整え地面に降り立つシェリアさん。

「天竜の・・・」
「天神の・・・」

互いに体を反らせ頬を膨らませる2人の少女。

「あのガキまさか・・・」
「ウェンディと同じ魔法を!?」

それによりガジルさんと俺はシェリアさんの扱う魔法の正体に気づく。

失われた魔法(ロストマジック)!!」

パッチリとした目をさらに見開く初代。シェリアさんをよく知る蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオンさんは腕を組み、彼女の魔法の名前をいう。

「天空の滅神魔法」
「咆哮!!」
「怒号!!」

ぶつかり合う両者のブレス。そのあまりの衝撃に会場中をものすごい風圧が襲う。

「のーーー!!」
『おーーー!!』

スカートを押さえる初代とカツラが飛ばされていくチャパティさん。俺たちはその風に飛ばされないように体に力を入れて耐える。

「マジかよ!!」
「すげぇな!!」
「ちょっとぉ!!」
「飛ばされるぅ!!」

エルザさんを除く妖精の尻尾(フェアリーテイル)Aチームがそう叫ぶ。その風力が2人の力の強さを物語っている。

「OH!!猛烈ッ!!」
「やめろよオババ!!」
「夢に出るよ!!」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のマスターオーバさんがスカートを押さえ少しふざけているなをユウカさんとトビーさんが怒鳴り付ける。そんな中、リオンさんとレオンは全く気にすることなく闘技場を見つめている。

「ふっ」
「やっぱりさすがだね」

リオンさんとレオンはそう言う。

「あなたは・・・」

風が止み、2人の姿を確認することができるようになる。そこには力負けしたのか、ボロボロになっているウェンディと、

「天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)
「神殺しの魔法の使い手だ」

無傷で仁王立ちするシェリアさんがいた。

滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)・・・」
「あいつの他にもいたのか」

俺とナツさんはその単語に聞き覚えがある。今から7年前、敵として出会ったある男の使う魔法も同じ名前だった。

「知り合いか?」

エルザさんは俺とナツさんに質問する。

「グリモアの・・・新八郎とか言ってたか?」
「ザンクロウです!!」

ナツさんの口から出てきたどこの誰だかわからない名前に思わず突っ込みを入れる。てかナツさんの方が俺より関わってたのになんで名前を覚えてないんですか!?

「その人が滅神魔法を?」
「はい。それとかなり強くてナツさんがかなり苦戦してましたからね」

ルーシィさんに俺がそう答える。ナツさんより力のある炎を扱い、ナツさんのほのおもペロリと平らげることができるザンクロウ。さらに、ザンクロウの火はナツさんは食べることができなくて圧倒されていた記憶がある。

「何言ってんだシリル!!全然大したことなかったし!!圧勝だったし!!」
「そうですか・・・」

負けず嫌いのナツさんは俺の前言に食って掛かる。ナツさんがそう言うならそう言うことにしておきましょうか、今はこの話、全然重要じゃないし。

「相手が何者であれ、今ウェンディは1人で立ち向かわねばならん。ここからがウェンディの正念場だ」

エルザさんの言う通り、俺たちにはここからウェンディに向かって声援を送ることしかできない。だけど、ウェンディなら大丈夫だと俺は信じてる。だから頑張れ、ウェンディ。

「驚きました」

ウェンディは立ち上がり、シェリアさんを見据える。

「リオンから聞いてたんだ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)にあたしと同じ魔法使う子がいるって」

シェリアさんは余裕の表れなのか、手を後ろで組みウェンディに話しかける。

「ちょっとやりすぎちゃったかな?ゴメンね、痛くなかった?」
「平気です。戦いですから・・・」

そうは言うもののウェンディは傷を押さえ、肩で大きく息をしている。相当疲労とダメージが溜まっているのが遠目からでも伺える。

「せっかくだからもっと楽しも!!ね?」
「私・・・戦いを楽しむって・・・よくわからないですけど・・・ギルドのために頑張ります!!」

ウェンディは背筋を伸ばし気合いを入れ直す。その表情からはやる気が満ち溢れているのがわかる。

「うん!!それでいいと思うよ。あたしと“愛”とギルドのために頑張る!!」

ウインクしながらそう言うシェリアさん。
ウェンディ同様にシェリアさんも気持ちを昂らせていく。

『なんと!可愛らしい見た目に反し2人共すっごい魔導士だぁ!!』
『あんたカツラ・・・』

2人の魔力を見てチャパティさんがそう言うが、変に興奮しててなんだかいけない香り(パルファム)を感じる!!ウェンディはやらんぞ!!

「とぉっ!!」
「きゃっ!!」

シェリアさんの腕から出された黒風の渦に押されるウェンディ。そこから体勢をなんとか持ち直しシェリアさんに風を纏った腕で反撃に出るがあっさり交わされ、逆に黒風の餌食になってしまう。

『あっと!!同じ風の魔法を使う者同士!!シェリアたんが1枚上手か!?』
『シェリア・・・たん?』
『正スくは天空魔法な』

既にキャラが崩壊しているチャパティさんとそれに対し引き気味のラハールさん。ヤジマさんも呆れた様子でチャパティさんのちょっとしたミスを訂正する。

「うぅ・・・」

黒い風の押収に完全に飲まれているウェンディ。大丈夫なのか?



















第三者side

(みんなが・・・みんながここまで繋げてきたんだ!!)

シェリアの風に押し負けないよう、小さな体に目一杯力を入れて踏ん張らせながら耐えているウェンディ。その頭の中には今日までの大魔闘演舞に出場した仲間たちの姿が浮かんでいる。
オープニングゲームで惨敗し、悔しさを露にしていたグレイ。
大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の卑劣な反則行為の前に涙を流したルーシィと悔しさを溢れ出させていた恋人のシリル。
7年間辛い思いをしてきた仲間のために乗り物酔いになんとか耐えてチームに初のポイントを入れたナツ。
その直後に序盤こそ苦戦を強いられたもののその実力で反撃の起爆剤となったエルザ。

(シリルはあんなにボロボロになりながら、みんなのために戦ったんだ!!)

そして、今日の競技パートで無謀すぎる挑戦を試み、仲間たちのために傷つき、その後倒れるまで消耗しながら戦ったシリルとエルザ。

(私は・・・戦いは好きじゃないけど、ギルドのために戦わなきゃいけない時は・・・)

「っ!!」

シェリアの猛攻に耐え抜いたウェンディ。彼女は仲間のために、目の前の敵を倒すために顔をあげる。

(私だって本気でやります!!)

腕を大きく広げ、小さな体全体で大気中の空気を食していくウェンディ。

「あ!!やっぱり“空気”を食べるんだね!!」

そう、ウェンディは天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。彼女の魔法は空気を・・・いや、天を食らうことによりその威力を増すことができる!!

「じゃああたしも!!いただきまふぅぅっ!!」

シェリアもウェンディと同様に空気を吸い込んでいく。

「なんと。戦いの中でシェリアが空気を食すとはのぅ、それほどの相手と認めたか」
「真面目にやれよ!!靴下片方なくなった!!」
「キレんなよ。そして靴下は関係ねぇだろ」

ジュラがシェリアが空気を食べ始めたことに驚き、トビーとユウカは相変わらずの漫才を繰り広げている。

「シェリアがすごいのはここからだ」

リオンは2人の少女たちを見つめながらそう言う。そんな中レオンだけは、静かにシェリアの姿を見つめている。

『こ・・・これはウェンディたん、シェリアたん、何をしているのでしょう!?気のせいか、酸素が少し薄くなってきたような気がします』

気のせいなんかじゃない。2人のこの行動によって空気は間違いなく薄くなっている。それに比例するように、2人の魔力は高まっていく。

「滅竜奥義!!」

空気の吸収が終わったのか、両手を広げるウェンディ。その足元には巨体な魔法陣が展開されている。

(すでに片方を修得していたのかい!?)

ポーリュシカはウェンディが発動しようとしている魔法を見て驚きを隠せない。

「キタキタ!!」
「出るぞ」
「いっけぇ!!」

シリル、ナツ、ルーシィがそう言う。

「ウェンディが奥義だと?」
「すごいんだよ!!」
「これは決まるぞ~!!」
「勝ったわね」

ウェンディの奥義を見たことのないリリーに対し、ハッピー、セシリー、シャルルは得意気にそう言う。

「何・・・これ・・・風の結界!?」

シェリアは自分の周囲を見渡す。シェリアとウェンディを囲むように、風の結界が敷かれているのだ。

「閉じ込められた!!」
「照波!!天空穿!!」

結界により身動きの取れないシェリア。ウェンディはそんな彼女に手から台風のごとき風を放ち、シェリアを飲み込む。

バタンッ

宙を舞い、地面に倒れ込むシェリア。

「なっ・・・」
「シェリア!!」

動けなくなったシェリアを見て目を見張るレオンと叫ぶリオン。

「よっしゃー!!」
「やったー!!」
「わーい!!」

そんなレオンたちとは正反対に妖精の尻尾(フェアリーテイル)Aチームのナツはまるで自分のことのようにガッツポーズし、ルーシィとシリルは手を取りあって小躍りしている。

「ハァハァハァ・・・(ミルキーウェイはまだ修得できてないし、これが今の私の全力。全魔力!!)」

大技を繰り出したために疲労が伺えるウェンディ。このウェンディが使った魔法は以前、ポーリュシカがウェンディの母、天竜グランディーネの声を元に作った魔法書の中にあった滅竜奥義である。彼女はこの数日の間にその魔法を見事、会得することに成功していたのだ。

「こ・・・これは・・・」

ウェンディの大技の前に自分の仕事も忘れ、立ち尽くすマトー君。
シェリアが倒れたことで叫んでいたリオンたったが、それと同時に7年前、初めてあった時には何もないところで転び、オロオロと自信がなさそうにしていた少女の成長に思わず頬を緩ませる。

(よくやった・・・ウェンディ)

ポーリュシカもリオンと同様に、成長したウェンディの姿に笑みを浮かばせていた。それはまるで我が娘を見るような、優しい表情で。

(やりすぎちゃったかな?)

両手を膝につき、ピクリとも動かないシェリアを見て心配するウェンディ。

(でもこれで・・・)

シェリアの状態を確かめるためにマトー君が駆け寄っていく。

「シェリアダウーンッ!!勝者!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)A!!」

対戦相手のシェリアが戦闘不能になったと判断し、マトー君がウェンディの勝利を宣言しようとし、ウェンディが笑顔を浮かべたその時だった。

「あぁっ!!ゴメンね!!ちょっと待って!!まだまだこれからだから!!」
「!?」

倒れたはずのシェリアが立ち上がりマトー君にそう言う。そして彼女に起きていることを見て、ウェンディは大きな瞳をさらに大きく開かせる。

「ふぅー。やっぱすごいね!!ウェンディ!!」

立ち上がり笑顔でウェンディを褒めるシェリア。その体についたはずの傷がみるみるうちに消えていく。

「え?」
「こ・・・これは失礼しました!!試合続行ですカボ!!」

マトー君はウェンディの勝利を宣言しようとしたことを謝罪し、2人の戦いの続きの邪魔をしないために距離を取る。

「なんだ?あいつ・・・」
「見て。傷が消えてる」
「一体何が起きているでしょうか?」

ナツ、ルーシィ、シリルもウェンディと同じように、なぜシェリアが無事なのか理解することができない。

「天空の滅神魔法はウェンディやシリルができなかった自己回復ができる。悪いが、勝ち目はないと思え」
「よく言うぜ。さっきまで慌ててたくせに」
「貴様が言うな!!貴様が!!」

ドヤ顔のリオンとそれに突っ込むレオン。それを聞いたシリルたちはますます驚愕する。

「なんという少女だ」
「リオンめ、こんな隠し玉を・・・」
「とんでもない人が出てきちゃいましたね」

感心するエルザと表情を歪ませるグレイ。そして平静を装うシリル。しかし実際はシリルの心の中は自らの傷を癒すことのできるシェリアと戦わなければならないウェンディのことでいっぱいだ。

(シェリアさんにどうやったら勝てるんだ?自分の傷を回復されるんじゃ・・・為すすべがない)





「思いきりやれと言ったのになぁ」
「まだ本気出してねぇな、あいつ」
「どんだけ強ぇんだよ!!」

ジュラとユウカがそう言い、トビーがキレる。

「さすが私のいとこですわ!!」
「あんたより遥かに強いよ!!」

自分のいとこの強さに惚れ惚れしているシェリーとそれに対して指をクルクルさせながらそう言うオーバ。

「シェリアは昔から何をやっても優秀だった。俺と違って魔法学校を飛び級で卒業。今はジュラさん、リオンくんに次ぐ蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のNo.3だからね」
「・・・」

嬉しいのか、悔しいのかわからないような表情と声でそう言うレオンを隣で見ているリオン。

「(こいつはずっとシェリアに負けてると思ってるけど、本当はレオンがうちのNo.3なんだがなぁ・・・)言わなくていいか」
「え?何が?」

リオンの独り言に思わず反応するレオン。しかしリオンに「気にするな」と言われ、「そう」とだけ答え素直に闘技場に視線を戻す。

「うぅっ・・・」

対戦者のシェリアに向き合うとするが魔力の消耗が激しくふらつくウェンディ。

「大丈夫?もう降参しとく?」

それに対し余裕綽々のシェリア。対照的な2人の少女。果たしてこの勝負、どうなってしまうのか。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
この話を書きながらも結局2人の戦いに目を奪われて進めるのが遅くなるという感じになってきてます(笑)
2人共可愛すぎるんですハイ!!
次回はもっと2人が頑張ってくれます。2人のファンとしてここだけは足りない脳ミソを絞ってうまく作りたいと思います。
次回もよろしくお願いします。 
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