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RSリベリオン・セイヴァ―

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第二話「男の決断」

 
前書き
ようやく主人公が活躍しますよ?
RSについての詳細はまだ触れられていませんが、きっと次の回で必ず出ますから……(汗) 

 

平凡かつ、不運のドロップアウト・ニート九条飛鳥はあることから謎の少女、天弓侍弥生を助けることとなる。
しかし、彼女を助けた途端、謎のIS集団が現れて彼女らから追われる身になってしまった。

「ちくしょう! 奴ら林の中を余裕で追ってくる!?」
「相手は汎用性に優れた機体です! どこへ逃げようとも、環境地帯を選びません」
「厄介な相手だ……!」
目の前に次々とISが立塞がり、山道を下りられない。まるで、誘き出されているかのように俺たちは道とは言えない林の中を駆け回っていた。
「このままじゃ……!」
このままじゃ、本当に追い詰められてしまう。何とかならないか……
だが、そんな考えもむなしく俺と弥生は崖っぷちへ追い込まれてしまった。崖の底には川が激しく流れているのが見えた。
「覚悟をおし?」
先頭のIS、おそらく隊長機だと思われる機体が銃口を向ける。
「くそぉ……!」
そして、数発の銃声が山に響いた。しかし、俺たちは銃弾に倒れることはなく、気が付くと崖から落ちていたのだった。おそらく、二人とも足を滑らせて崖から転落して銃弾を運よく避けたのだろう。だが、安心などできるはずもない。落ちる場所は流れの激しい川が待ち構えている。
「……!?」
悲鳴を上げながら俺たちは川へ真っ逆さまに飛び込んでしまった。
「……死んだか?」
そんな俺たちの最期を崖から見下ろすISの一人がそう呟いた。
「死んだとはいえ、「RS」を手に入れない限り我々の任務は遂行できない。面倒だが、死体を探すしかないか?」
ISの隊長は部下たちへ次なる命令を与える。
「これより二手に分かれて例の巫女の死体を探すぞ? 念のため共に逃亡を図った男の死体も探せ!」

時を同じくして、死んだと思われていた俺たちは運よく生き延びていた。幸い、川の岩に当たらなかったこともそうだが、なによりも掠り傷一つもなく体が無事である。
「しっかりしろ!?」
俺は、共に岸へ流れ着いた弥生を抱え起こして激しく揺さぶった。
「うぅ……ケホッ……ケホッ……!」
だが、彼女は無事に意識を取り戻し、激しく咳き込んだ。
「よかった……どうやら、お互い助かったようだな?」
「そうですね……でも、ここはどこだか?」
弥生は、なれない風景を目に不安になる。無論、俺だってそうだ。運よく岸に流れ着いたはいいものの、裏山の奥がこんなに深かったとは思ってもいなかった。どうやら気を失っている間に随分と遠くの山中まで流されたのだだと思う。最悪の事態、遭難ってことになるな?
「とりあえず、この川を辿っていこう? 何れは山を下りれることができるよ」
「そうですね? 見つからないうちに早くここから逃げましょう」
「そうだな? けど、そのまえに……」
俺たちはびしょ濡れになった身形を見下ろした。一旦、服を脱いで衣類を絞るくらいはした方がいい。風邪を引いてしまう。
岩陰にそれぞれ入って服を脱いで水を搾り取る。
「……」
あの岩陰に、弥生が裸になっているのかと思いながらも、必死で妄想を振り払った。

その後、俺たちは慣れない足でゴツゴツが多い河原の地帯をひたすら進み続けた。
しばし、休憩を挟みながら進んでいくが、どれほど歩いても景色は変わらなかった。
相当流されてしまったのか、それとも道が違うのか、不安になるがそれでも川の流れに沿って河原を歩き続けた。
時期に陽は暮れはじめ、足元がわからなくなった頃には大きな岩場を見つけてそこに寄りかかって座り、一夜を明かすことになった。今夜はここで野宿ってことになる。
慣れない手つきで、弥生と共に火を起こした。時間はかかったが、弥生の知識にフォローされてどうにか焚火を起こすことに成功した。
「本当に、ごめんなさい……あなたを巻き込んでしまって」
そう、罪深そうに謝る彼女だが、俺は別に気にはしていなかった。
「別にいいさ? どうせ、俺なんて……」
どうせ、俺なんて居ても居なくても関係ない人間なんだから……そう、行ってしまいそうになって口を閉じた。
「……どうしてですか?」
しかし、彼女は自分を非難する俺に疑問をかけた。
「だって……その、実はさ? 俺って、こう見えてニートなんだよね?」
誤魔化そうにも、無理だから俺は思い切って自分の正体を言った。
「……?」
すると、少女は首を傾げた。俺はそんな彼女に構わず話を続ける。
「小さいころから何をやっても上手くいかず。高校を卒業してもそれは変わらなかった。結局は、不器用な性格のせいで仕事もロクにこなせず、職場を転々と変えながら、最終的に社会から見放され、今の俺は無職って形になっちまった……カッコ悪いよな? マジで……こんなダメで心の弱い男は、この社会で生きて行く資格はないのかな?」
そうウジウジしている俺を見て、彼女はゆっくりと口を開けた。
「……そんなこと、ありません」
「……?」
そんな弥生に俺は振り向いた。
「だって……あのとき、私の手を握って一緒に逃げてくれたではありませんか?」
「でも、崖から落ちたりして、危険な目に会わせたんだぜ?」
「それは私の台詞です。私のせいであなたにあんな怖い思いをさせてしまったから……それに比べ、あなたは行き倒れになった私を何の疑いも抱かずに助けてくださったではありませんか? 人の価値とは、器用・不器用で決まるものではないのですよ?」
「けど、やっぱ自信がないよ……」
「自信がなければ、今頃私とこの場所にいたりしませんよ?」
と、弥生は優しく穏やかな目で、その柔らかく温かい両手で俺の手を握る。俺は、顔を赤くして目も丸くした。
「何度も言いますが、やなたは逃げるとき、私の手を引いてくれたではありませんか? 本当の臆病者なら、その場ですぐさま私を置いて自分だけ先に逃げ出していたことでしょう? 本当の臆病者というのは、口だけを荒げて威張りながら堂々としている人こそ、本当の心の弱い人間といえましょう」
「……」
俺は、彼女の言葉を聞いて、ふと頭の記憶から今まで渡ってきた職場の上司共のツラを思い浮かべた。どいつもこいつも口だけで裏表のある奴らばかり、どれだけ仕事が出来て真面目でも、威張ったり、変に口うるさく細かいことを言い、口調を荒げる奴らばかりだった。非常識で理不尽な奴らが俺の周りにしか居なかった。そんな奴らばかりしかいないってことは、俺も同レベルってことかなのか……?
「自分をそこまで非難に追い詰めないでください? ``あなたのおかげ``で、今私がこうし無事でいられるんですよ?」
「え……?」
「さて、もう寝ましょ? 明日は早朝に起きて出発です」
そういうと、弥生はすぐさま眠りについてしまった、最後に発した彼女の言葉が妙に気にかかるが、時期に瞼が重くなって、俺も眠りについた。
――もしかして、俺って嫌な奴らにはできない凄いことをしたのかな?
自信はないものの、眠りにつく中で俺はそう心に呟いた。

翌早朝、俺たちはまだ朝日の昇らないやや薄暗さの残る空の真下を歩いていた。
時期に河原から再び林に戻り、俺たちは険しい足場をゆっくりと慎重に降りていった。
「気を付けて? 足元にコケが多いから……」
「は、はい……」
よろよろとゆっくり降りる彼女を見守りながら、俺は目の前の道のりを宥めた。先は、まだまだ遠い。追手のことも気になる。死んだと思い込んでくれればいいが……
険しい足場が徐々に穏やかになって、長い道のりの果てようやく峠道の道路を見つけることができた。
「やった! これでどうにか遭難はせずにすんだか……」
「あと、もうひと頑張りですね?」
「うん、頑張ろう!」
希望が湧いた俺たちはそのまま疲れることなく道路を歩いていった。歩いていけばきっと山から抜け出せるだろう。
しかし、そんな俺たちの元へ予期せぬ事態が襲い掛かった。
「随分と手こずらせてくれたわね?」
「!?」
その背後からの声に俺たちは振り向いた。昨日、俺たちを襲ったISの連中だ。
「こちら、第二捜索隊。ようやく目標を発見できた。これより射殺する」
『待て、私が行くまで目標を拘束して待機だ!』
「チッ……了解」
仲間からの返事が納得できずに舌打ちするそのISの女、頬に傷を持つその女は、命令とは対照的に俺たちへ銃を向けだしてきたのだ。もちろん、周囲の仲間のISらも一斉に銃口を向けだした。
「気が変わった。やっぱりアンタ達を殺すことにするわ?」
「くぅ……!」
まさに絶体絶命であった。だが、そんな俺の前に弥生が出ると、IS集団に向けて両手を広げた。
「この方は関係ありません。殺すのなら私だけにしなさい!」
「や、弥生……」
「フン! なら、お前から先に死ねぇ!」
一斉に銃声が響いた。しかし、弥生は銃弾に倒れることはなかった。彼女の前には、青い光が壁となて彼女の身を護っていた。
「何だコイツは!?」
「やはり、RSとやらの力か……」
周囲のISがざわめきだすが、しかし傷の女は残忍に笑んだ。
「なに、無抵抗のまま死なれてもこちらとて面白くない……オラオラァ!!」
傷の女は、再びアサルトライフルを乱射しだす。しかし、その弾はあっけなく弥生を守る光の枠の防壁に跳ね返されてしまう。
「お前ら! 一斉に発砲しろ!?」
傷の女の指示に従って周囲のISも同時にライフルの引き金を引いた。
「くぅ……九条さん! 今のうちに、お逃げください!?」
「え、でも……」
「私に構わず、早くお逃げください!?」
「……」
「九条さん!?」
「……ッ!」
次に気付いたころ、俺は彼女に背を向けて走っていた。彼女の姿が見えなくなるまでひたすら逃げ続けていた。
――どうして、体が勝手に動くんだ。
俺は、逃げるなんて思っていない。ただ、あの状況で何とかしなくてはと思っていた。けど、現に俺は走って逃げていた。体が、反射的に「死」を予測して勝手に反応したのだ。
――どうしてだ? 俺は、逃げたくはないのに……!
逃げたくはない! ここで、逃げたら俺は本当の臆病者になってしまうじゃないか? 負け犬、軟弱者、小心者、嫌な奴らの同類じゃないか?
「止まれ!」
俺は自分の逃げる足に言い聞かせて、その場に立ち止まった。
「ここで……逃げちゃいけない!」
ここで逃げたら、本当の自分を見失ってしまう。けど、はやく山を下りて助けを求めに行くのが先決だ。だけど、それじゃあ間に合わない!
「……くそっ」
――弥生は、俺よりも先に手を引いて共に逃げてくれた。最初に俺を見捨てずに助けたのは弥生だ。最初に、俺に勇気を与えたのは彼女なのだ。俺は、それに反応して手を握り返したのに過ぎないのかもしれない。
「……ッ」
俺は力いっぱい拳を握りしめた。
何をしたい? 俺は心の底から叫んだ。彼女のところへ戻りたいと。
けど、怖い。戻ったら必ず殺される。生きて戻れない。あっけなく殺される。
――怖い。でも、だからって……
……だからって、俺はこのまま今の自分に負けて逃げるのは嫌だ。自分の中に巣食う恐怖に負けるのだけは嫌なんだ!
――勇気を出せ! 俺は……俺は……!
「俺は……」
そして、叫んだ。
「俺は……漢なんだ!!」
次に気付くと、俺は元来た道に向かって走りだしていた。今は勇気という皮を被った無謀なのかもしれない。だけど、今の俺に取ってどんな無謀でも、恐怖に負けない心全てが勇気に感じられた。

「うぅ……」
光の防壁の力が弱り、ついに銃弾が貫いて弥生の体を掠ってしまった。彼女は、その場にへたれ込んでしまう。
「よく頑張った……しかし、ここで終わりだ?」
傷の女は至近距離で銃口を向けて弥生に向けて引き金を引こうとした。
「……ッ!?」
弥生は、咄嗟に瞳を固く瞑った。
――九条さん……!
どうか、あの人だけは無事に逃げ切ってもらいたい。その願いだけを抱いて、彼女は自分の死を認めた……が、
「やめろぉ!!」
ある叫びが周囲に聞きわたり、ISの集団はその叫んだ主の元へ目を向けた。
そこには、息を荒げて立ち止まっている巫女と共に青年がいたのだ。
「何だい坊や? まさか、ここでナイト気取りかい?」
見下すように傷の女は勝ち誇っていた。
「うるさい! 俺は……俺は、もう逃げはしない! 死んだって構うものか、ここで……臆病な自分に打ち勝つんだ!!」
「へぇ~威勢だけは大したものだよ坊や? けどね、アタシらにはアンタのその「男の意地」ってもんがバカバカしくてこれ以上見てられないのさ? わるいけど、早いとこ死にな!?」
傷の女は弥生から俺に銃口の照準を定めた。
「くぅ……!」
――このまま死ぬのか? 彼女を守ることなく……嫌だ! 相手に……立ち向かえ!!
「こんのぉー!!」
俺はIS達に向かって走りだした。そして俺に向かった数発の銃声が鳴りだす。

しかし、その刹那。銃が彼に着弾する刹那にある奇跡が起こった。命を捨ててまでも立ち向かう彼の勇姿に反応して。彼を一瞬の光が包み込んだ。

――RSが!?
弥生の懐から一筋の閃光が、銃弾を浴びる寸前の飛鳥に向かい……

「!?」
刹那、俺はそのままISの銃弾をものともせずに突っ込んで傷顔のIS乗りをぶん殴っていた。
「こ、これは……!?」
俺は自分の両手を見つめた。気付くと、腰回りに二刀の真剣が取り付けられ、鞘に納められていた。
「な、何だ! コイツはぁ!?」
傷の女はジンジンと晴れる頬を抱えて立ち上がった。
――こいつを、抜けばいいのか?
俺は、双方の腰からゆっくりと二刀の刀を鞘から引き出した。鞘から姿を見せる刃は光と風を巻き起こし、俺の髪を激しく揺らす。
「こ、コイツ!」
ひとりのISが、俺に銃を発砲した。だが、
「……!?」
目の前に向かう銃弾が途端に止まって見えた。俺はそれを潜るように避けると、その発砲したISの懐へ迫って、刀を振り下ろした。
「ぐあぁ……!」
そして周囲が気付いたころには、そのISは腹部を斬られて倒れている。
「こ、これは……!?」
傷の女は行き成り死んだ同僚に目を丸くした。
「これなら……」
何が起こっているのか、俺にはわからないが……
「いける!」
何となくに感じたコツを頼りに、俺は再びISへ突っ込む。
「う、撃てぇ!」
しかし、迎え撃っても奴らにとって俺は肉眼には捉えにくいスピードで移動し、背後や真横を狙い、斬り捨てていく。また、そのスピードについてこれずにお互いで同士討ちしてしまうことも。
そして、最後に残ったのは傷の女、ただ一人だ。
「そ、そんな……!?」
ここまで来てまさか、こんな展開になるとは彼女とて思いもしなかったろう。
そして、肉を絶つ音と共に血が噴き出て傷の女は即死した。
戦闘が終わった途端、緊張から解かれると、俺はとっさに方膝を落として激しく呼吸を荒げた。
「ハァ……ハァ……!」
「九条さん!?」
そんな疲れ切った俺の元へ弥生が駆け寄ってくれた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ……多分……」
「……」
彼女は、そんな疲れ切った俺の顔を見上げた。
――どうして、RSが彼に反応したのかしら?
しかし、これで一安心できたかに思えたが……
「ったく! アマンダの第二捜索隊は全滅したってことかい? それにしてもRSっていう代物を使って返り討ちにするとは……やるじゃねーか、あのガキ……」
隊長のISは、地上の飛鳥を宥めて笑みを浮かべた。

「あれは……!?」
弥生が叫んだ。目の前に再び同じISの集団が飛来してきたのだ。
「まだ、追手が居たのか……!?」
だが、今は激しい疲労によって立っているだけでも精一杯だというのに……!
「ま、そのようすだとエネルギー切れってやつかい? アマンダがちょうどいいところで捨て駒になってくれたおかげで助かったよ?」
IS隊長は二人に銃を向ける。
「ちくしょう……!」
身を震わせて悔しがる俺に、隊長と思われるISは笑みを浮かべて宥めた。
「さぁ……仲良くあの世へお行き? 坊やたち!?」
だが、その瞬間だった。彼女たちの周囲に一瞬の風が巻き起こったのだ。
「そうはさせっか!」
見知らぬ男の声と共に、前の前のISらは一斉に血を噴出すと、糸の切れた人形のようにバタバタと倒れていった。
「ど、どうなってんだ……!?」
疲労の限界でこれ以上意識を保つことはできない。ただ、目の前に見えたのは長い太刀を担ぐ男の姿であった。
「……ッ!」
ついに疲労は限界に達し、俺は倒れた。
「九条さん!? 九条さん、しっかりして!?」
「弥生、そいつか? RSを起動したヤツは……」
と、男は彼女の元へ歩み寄った。弥生のことを知っているとなると、おそらく仲間だろう。そんな彼は、弥生の次に足元に横たわり意識を失った飛鳥を宥めた。
「そうですけど……どうしてここへ!?」
何故、この位置がわかったのか、弥生は男に問う。
「博士がRSに発信機を取り付けいたらしくてな? 一様追跡させてもらったのさ。それよりも、怖い思いをさせたな……何分、こちらもファントムタスクの連中から足止めを喰らっていてな?」
「いいえ、それより危ないところをありがとうございます。それと、この方を運ぶのを手伝ってください?」
「ああ、それなら俺がやる。弥生は無理しなくていい……」
と、男は飛鳥の片腕を担いで持ち上げた。
「ありがとうございます……蒼真さん」


 
 

 
後書き
予告
RS、それはISを倒せすことのできる唯一の剣だ。だが、そんなRSの新型を飛鳥って言うヤツが起動させちまったらしい。やれやれ、面倒なことになったぜ?

次回
「RSリベリオン・セイヴァー」
  
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