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真田十勇士

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巻ノ十三 豆腐屋の娘その五

「ご母堂は助かる、薬を飲めばな」
「お薬をですか」
「すぐに治る、厄介な病にしても」
「それでそのお薬は」
「色々と集めて調合するものであってな」
「すぐに作ることは出来るのでしょうか」
「都にありそうなものもあれば」
 その薬の素がというのだ。
「山にあるものもある、しかし都には多くの人やものが集まっておる」
「それじゃあ」
「全て見付かるやもな」
 この都においてというのだ。
「まずは都を回ろう」
「ではじゃ」
 幸村は筧の娘への言葉を聞いてすぐに言った。
「これより我等で薬の素を探そう」
「それで素はどうしたものか」
 霧隠も幸村に問うた。
「一体」
「これから言う、ではこれより」
「そうじゃ、我等で集める」
 また幸村が筧に言った。
「都にないものなら都から出てな」
「そうされますか」
「では言うのじゃ」
 由利は笑って筧に自分から言った。
「すぐに集めようぞ」
「ではな」
 こうしてだった、すぐに。
 筧は老婆の病を治す薬の素を一行に話した。全て聞くと。
 幸村達は店を出てだった、風の様に動き。
 次の日の朝にはだった、店に戻って来た。そうして夜通し待っていた娘と彼女の母と父、それに兄に対して言った。
「待たせたな」
「あの、もうですか」
「素は全て集めた」
 幸村は優しい笑みで娘に答えた。
「だからこれよりじゃ」
「拙者が薬を作る」
 筧も娘に言う。
「暫し待たれよ」
「それでは」
 こうしてだった、筧はその薬の素を使ってだった。そのうえで。
 薬を作ってだ、それを老婆に飲ませた、すると老婆の顔は瞬く間に血色がよくなってきた。その老婆の顔を診てだ。
 筧は微笑んでだ、こう言った。
「これで大丈夫じゃ」
「ではおっかあは」
「この薬を朝晩一週間飲めばな」
「それで、ですか」
「後は起き上がって歩ける様にもなる」
「そこまでですか」
「よくなる」 
 そうなるというのだ。
「安心せよ」
「すいません、ここまでして頂いて」
「だから我等に礼は不要じゃ」
 筧もまた微笑んで娘に述べた。
「これは当然のことだからな」
「人を助けることはですか」
「武士は義に生きるもの、殿のお言葉である」
 幸村を見ての言葉だ。
「そして拙者もその通りと思う」
「だからですか」
「礼は不要じゃ」
「いやいや、そう言われてもです」
「そういう訳にもいきませぬ」
 ここで父と兄が言って来た。
「何かお礼を」
「させて下さい」
「娘も女房も助けてもらったことは事実」
「お礼をせねば我等も困ります」
 人としてというのだ。
「ですから」
「何かお礼をさせて下さい」
「あの、よければ」
 ここで娘が一行に申し出た。 
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