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オオバコ

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2部分:第二章


第二章

 二郎も傷を受けていますがそれでもです。太郎のよりはましでした。この日も決着はつきませんでしたがそれでもなのでした。
 太郎の方が不利になってきました。二郎もそれがわかっています。彼はとても嬉しそうな声でこう太郎に対して言うのでした。
「明日こそ決着がつくね」
「ふん、負けないぞ」
 太郎は言い返します。けれど声も明らかに弱っています。
「絶対にね。負けないからな」
「その傷で言うのかい?」
 けれど二郎の言葉は余裕のあるものでした。
「僕はまた傷を癒せるけれど君は無理だろ」
「ふん、それは」
「いいや、そうだね」
 その誇らしげな声での言葉でした。
「明日こそは僕がね」
「絶対に負けないからな」
 太郎はその二郎に言い放ってそれで別れます。しかしです。
 不利は明らかでした。太郎も実際弱っています。
 明日は本当に負けるかも知れない、そのことを思いながら家に帰ります。そうして帰り道を歩いているとです。急にお腹が空いてきました。
「ええと、何かあるかな」
 蜜を探しますが周りにはありません。その代わりです。
 木の下のところに広い葉っぱが生えてきました。それを見るとです。
 何か食べられそうな気がしてきました。太郎はふらふらとその葉っぱのところに来てです。そうしてその葉っぱを食べるのでした。
 葉っぱを食べるとです。傷が見る見るうちに治ったのです。本当にあっという間に治ってしまったのです。
 これには太郎も驚いてです。こう言うのでした。
「うわ、これは凄いや」
 このことに大喜びです。そうして傷が癒えたことを喜んでそのまま寝たのです。
 そして次の日喧嘩の場所に行くとです。二郎はもう来ていました。
 彼は太郎の姿を見るとです。今度は彼が驚きの言葉をあげました。
「えっ、まさか!?」
「あれっ、何かあったのかな」
「まさか君もオオバコを食べたのかい?」
「オオバコって?」
「あの草のことは僕だけが知ってる筈なのに」
 こう言うのです。
「それでどうして。君が」
「ああ、成程ね」
 二郎の言葉を聞いてです。太郎もわかったのです。
「君もあのオオバコを食べていたんだね」
「そうだよ」
 二郎は忌々しげに太郎に対して答えます。
「その通りだよ」
「やっぱりね。そうだったんだね」
「まさか君もなんて」
 また言う二郎でした。
「傷が治るなんて」
「いや、偶然食べたけれど」
 太郎は傷が治っただけでなくて二郎が慌てているのを見てです。笑顔になります。
 そうしてそのうえで彼に対して言います。
「さて、それじゃあね」
「喧嘩の続きをするんだね」
「これで負けないからね」
「ふん、傷が治ってもだよ」
 二郎もその太郎にムキになって言い返します。
「それでも僕だって」
「負けないっていうんだね」
「負けてたまるか」
 負けじ魂も見せます。
「君が悪いんだからね」
「いいや、僕は悪くないよ」
 口で言い合いながらまた喧嘩をする彼等でした。そしてです。
 一週間も続けたところで。二郎が言ってきました。
「もういいんじゃないかな」
「喧嘩?」
「そうだよ。どっちがいいか悪いかなんてさ」
「どうでもよくなってきたんだね」
「そうだよ。だからいいんじゃないかな」
 こう太郎に対して言います。
「もうさ」
「そうだね。そもそもだよ」
「うん、そもそも?」
「喧嘩の理由覚えてる?」
 太郎はこのことを二郎に尋ねました。
「君、覚えてる?」
「あれっ、そういえば」
 言われてみればです。二郎もです。
 どうして喧嘩になったのか覚えていません。すっかり忘れてしまっていました。
 そのことに気付いてです。あらためて太郎に言います。
「覚えてないよ、僕も」
「そうだよね、それじゃあ」
「もういいか」
「そうだね」
 お互い言い合うのでした。
「もう喧嘩は止めて」
「仲直りしようか」
「そうしよう」
 こうして彼等は喧嘩を止めて仲直りをしたのでした。そして仲直りをしてから二匹でオオバコを食べて傷を治したのです。そのオオバコはとても美味しいものでした。


オオバコ   完


                  2010・11・4
 
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