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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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GGO編
  第182話 銃と剣・決着



 光剣(フォトンソード)を構えたまま、キリトはそう言っていた。



――眼を使ってくれ、と。



 リュウキは、キリトの提案は想定外のものだと一瞬黙ったが……、直ぐに口を開いた。やや、笑いを浮かべながら。

「キリト。それじゃあ 提案と言うより、……要求じゃないのか?」

 キリトにそう返した。提案をする、言いつつ、実質何かをするのはリュウキだけなのだから。

「はは、まぁ……そうだな」

 キリトも苦笑いを浮かべる。
 だけど、眼を使うリュウキと戦う事に、意味があるのだ。腕の落ちた自分を奮い立たせる為に、これ以上ない相手だから。死銃が一体何者であろうと、この眼を使うリュウキよりも強いとは思えない、とキリトは思っているからだ。

 勿論、あの世界でのリュウキ。……命がかかった剣の世界(SAO)で戦っていたリュウキの力であれば。

「で、返答は? ……まぁ ぶっ倒れるまで無理はしなくていいけど。 オレも本気でお前と戦って、本当の本気のお前と戦って、あの世界を少しでも思い出したいんだ」
「……そうだな」

 リュウキは、そう言うと、左手を顔に宛てがう。宛てがいながら……、ゆっくりと左手を顔を撫でる様に、下へと下ろしたその後、眼を開いた。

 そこから見える眼、眼光。 元々リュウキのアバターの瞳の色は、ワインレッドだ。あの眼を使っているのかどうか、それを判断するのは難しいけれど……、キリトははっきりと判った。


――空気が張り詰めたから。
――雰囲気が明らかに変わったから。


「……喜んで。キリトや皆のおかげで、この眼は不正な力、って思ってたけど、今は薄れてきているからな」

 赤い輝きを放つ眼。
 確かに、隣り合わせで戦うのではなく、敵、対戦相手として対峙してみると本当によく判るというものだ。だが、納得出来ない部分はある。それは、竜鬼という表現だ。確かに威圧感はあるのだが、その様には表現出来ない。見事な輝き。美しささえ醸し出しているのだから。

「そりゃそうだ。……お前が培ってきたモノだろ? それを使わないなんて宝の持ち腐れ、だよ。鍛え上げた能力を。折角見つけた剣、武器を使わないのと同義だ」
「……ま、それもそうだな。だけど、状況による」
「目立つ、とかか? もう無理だろ。……正直オレもだし。リュウキもさ」
「はぁ……まぁ、な」

 確かに、キリトの言う通りだ。
 特にこの世界ではそうだし、あの世界でも色々と言われているから。

 2人は対決をすると言うのに、それを忘れているかの様に、談笑。この戦いを見ているかもしれない観客たちは、フラストレーション溜まっているだろう、と思える。……因みにこの2人は、そんな事判っていない。

 今、この瞬間も待機ドームで大々的に放映されている事を。

 2人ともGGO内では珍しい女性プレイヤーである事、そして片方は剣、片方は拳銃とナイフ(VS戦車の時は別だが)と言う比較的軽量装備。なのに、破竹の勢いで勝ち続けてきての一戦だ。

 シノンが聴けば怒ると思われるが、事実上の決勝戦だと言う声も大きかった。


 そして、ついに……。


「さて、と……じゃあ、そろそろ闘るか」
「ああ……闘ろう」

 互いに示し合わせる様に、そう言うと同時に、場の空気が、更に一段階緊迫し、張り詰めるのだった。




~予選会場~


 待機ドームでの光景。それは、思ったとおりの光景だった。中々戦いを始めない2人を見て、声を荒げるメンバーが多くなりつつあった。だけど、そこは見ている者たちのこともあり、普段の野次程ではない。何故なら、戦おうとしているのは美少女達? だったから。
 それに これまでの戦いでは有無言わさずに、殲滅していた戦乙女(ヴァルキリー)だったと言うのに、立ち上がりが優雅に見えたから、と言う理由もある。

「……眼?」

 この時、シノンはただ集中をしていた。
 ライブカメラは通常通りの戦闘を記録、中継している程度では、あまり音声を拾う程接近したりしない。

 今回は、注目度が高かったのだろうか? かなり近くにまで接近していたようだ。

 その声をシノンが聞きとったのだ。他の観客達はヒートアップしつつあるから訊けてなかった様だが、キリトが言っていた言葉を。

「どういう意味……?」

 そんな中で、シノンの頭の中は急速に回転をしていた。

『その眼、使って戦ってくれ』

 と言う話。


――……を使って。


 即ち、これまでは使ってなかったと言う事。そして、それを使って戦え、と言う事は、1つの解を示していた。

「……アイツはまだ本気じゃなかったって事?」

 そう結論付いた瞬間にシノンの身体に、戦慄が走る。

 これまでの戦いも見ている。さっきの戦いも見ている。あのM1戦車相手に圧倒した力を見ている。それが、更に強くなると言う事だ。

「面白い……じゃない」

 武者震いとも言える震えと共にシノンの眼にも力強さが増した。あの2人、どちらが来ても良い。そして、倒す事ができたなら……。


 シノンは拳を 強く、強く握り締めていた。


 
 そして、もう一方。
 あの時この世界から消え去った筈の男も、群れるプレイヤー達から幾分か離れた所で、戦いを見ていた。

「……鬼、鬼」

 赤い目を収縮させ、排出される息も白く 渦巻いた。ただ、その白い吐息と共に吐き出される単語は《鬼》と言う言葉。

「なる、ほど……、確かに、あの男、だ。あの眼、だ。 それにしても、今回は、運が、良い」

 マスクで表情は見えない筈なのに、その顔は笑っている様に見えた。その表情が見えたとしたら、歪な笑みだと言うのは間違い無い。それ程の不吉を孕んだ笑みだからだ。その笑の中、口元が僅かに動く。

「……も、参戦、してる、からな。イッツ、ショウタイム、だ。……鬼。悪夢、を、思い出させて、やろう。鬼を、生んだ、のは、我々だ。我々が、終わらせて、やる」

 ゆっくりと、指をリュウキに向けた。銃の形を作り、撃ち抜く様に。

「……死銃は、いずれ、お前の、心臓も、止める」

 そう呟くと、再びその身体は消え去っていった。















~予選Fブロック 準決勝~


 場が極限の緊迫に包まれている最中。それは、戦いを宣言したその瞬間から迸っていた。

 リュウキの眼の一点をキリトは見つめている。

 一体どんな行動を、するのか、と。
 その初動の起点となるのが、あの眼からだと言う事は判っていた。何度、見たか、もう判らないからだ。……相対するのは初めてでも、横で、最も近くでその戦いを見続けてきたのだから。

「ふっ!」
「っ!!」

 リュウキの眼が一瞬輝きを増した瞬間、腰からSAAを引き抜いた。腰から引き抜かれ、撃鉄を下ろし、引き金を絞るまでの時間は0.2秒を切る。

 だが、その攻撃の初動を見極めることが出来たキリト。

 反応速度の領域では、リュウキを遥かに凌ぐ。正確に額に届く一撃を何とか弾くことが出来た。……が、光剣は完全に弾丸を飲み込み、消し去る事は出来ず、“ビッ!” と言う音が響いたと同時に、残骸がキリトの頬に掠めた。

「……やるな」

 リュウキは思わずそう呟いていた。
 これだけの距離からの射撃であれば、弾道予測線(バレット・ライン)と実際に弾丸が当たるまでのタイムラグは0に等しいだろう。即ち、キリトは撃った弾丸をシステムアシストなしで、見切ったのだ。

 流石の一言である。

「っつ~。無茶苦茶はえぇっ」

 キリトもキリトで、驚愕した。
 リボルバーに関しては、あの避けゲームの時に体感している。自動拳銃(オートマチック)と違い、1回1回撃鉄(ハンマー)を引かなければ撃つ事が出来ないのだが……、リュウキが構えて、そして弾が発射されるまでの時間が本当に短い。もうほんの刹那、反応が遅れれば、額に直撃していただろう。

「行くぞ!!」

 弾丸を避けた余韻に浸る間もなく、キリトは地を蹴り、リュウキまでの距離を縮める為駆け出した。

 ぎゅんぎゅん、と風を切るかの如き速度で、リュウキに接近する。

 距離にして、5m程まで近づけたその時だ。再びリュウキは、キリトにリボルバーを撃ち放った。
 だが、今回のキリトは冷静だ。

 如何に早くとも、一度でも見れば多少は慣れる。視る、と言う行為はリュウキの専売特許だとは思えるが、この程度であれば自分にも使えるのだ。再び、リュウキの放った弾丸が、キリトの額を捕える。

「ふっ!!」

 キリトは、その弾丸を今度は正確に左から右へ、扇状に光剣をスライドさせ、弾いた。“ぶぅんっ!”と言う音と、弾丸と光剣が直撃した時に発した火花、甲高い音がこの場に木霊する。

「(……よしっ! これで間合いを……っっ!!)」

 1発を完全に弾いた事で、心理的にも余裕が生まれ、安堵感も出たキリト。……が、目の前の光景に驚きを隠せられない。弾いた筈の弾丸が、目の前に迫ってきていたのだから。

「くっっ!!」

 キリトは、咄嗟に首を45度傾ける。
 完全に、回避する事は出来なかったが直撃をする事は避けた。掠めた弾丸は、キリトの顔面に新たな傷跡を残した。

「……マジ、か。あれを、あの距離で避けるのか。 ……オレの眼の事、結構言ってきてるけど、キリトの反射、反応速度も十分凄すぎるだろうに」

 リュウキは、そう驚きつつも、喜んでいる様だ。
 いや、喜ぶ、と言うよりは楽しんでいると表現した方が良い。色々と精神を揺さぶられる事があったが、今はそれを忘れてキリトと戦っている。自分の力を惜しむこと無く出して。

「いやいや…… 今のはなんだよ、リュウキ。……剣だから、近づけなきゃ勝てない。やっぱり、圧倒的なのはリュウキの方だ」

 キリトは、後方へと跳躍し、再び間合いを取った。
 言うように剣での攻撃は接近をしなければ出来ない。ゆえに接近する事が最低条件だ……が、今の得体の知れない攻撃を受けて、警戒心が増したのだ。







~予選会場~



 2人の攻防を見ていたシノン。
 キリトは困惑していたが、シノンは今リュウキが撃った弾丸、その技術を看破した。外から見ていたから、判ったのだとも言えるだろう。

隠し弾(ブラインド)。……1発目と同じ軌道上に、もう1発弾丸を撃つ事で 1発目が2発目を隠してくれる技術(テクニック)

 食い入るように、モニタを見つめるシノン。
 普通、弾道予測線を見て回避をする為、同じ軌道に銃弾が来てもさして怖くはない。……それは、勿論十分に回避できる間合いが有ればの話だが、あれ程の距離だと予測線も意味はなさないだろう。そして何よりも、同じ軌道上に撃つ事が出来れば、キリトの様な弾丸を弾くと言う無茶なスタイルを使う相手には絶大だろう。

「……狙撃手(スナイパー)である私も、あの撃ち方は出来なくはない」

 シノンはそうも呟いていた。

 現に、追先ほどの準決勝。
 1度目に発射した弾道を目に焼き付かせ、車両を運転している運転手に弾丸を当てると言う高難易度の狙撃に成功したのだから。

 だが、それは狙撃銃(スナイパーライフル)の様に、スコープがある事が大前提だ。

 拳銃(ハンドガン)にも照準器はある。
 だけど、当然ながらスコープに比べれば天と地程の差はあるだろう。短な間で連射をするとなれば、尚更、セミオートのライフルでも無ければ難しい。それを単発式であるリボルバーで体現したのだ。

「………」

 シノンは、しばらくリュウキから眼を話すことが出来なかった。

 そして、そんな彼女を横目で見る者もいた。彼女の視線を追い、誰を見ているのかを悟る。

 悟ったと同時に、憎悪の炎が再び沸々と湧き出してくるのだった。







~予選Fブロック 準決勝~


 リュウキは、警戒し、下がったキリトを視て リボルバーで、ガンプレイをしていた。指先でくるくる……と回す。決してそれは余裕がある訳ではないが、キリトに言いたかった様だ。

「……例え銃弾を弾いたからといって、予測線を見たからといって、努々油断しない事だ」

 そう言うと同時に、リュウキは、リボルバーをホルスターに収めた。

「お前に言われると、心底そう思うよ。……目が、覚めてきた」

 あの銃弾の事も、はっきりとリュウキから聴いたわけではないが、同じ弾道にもう1発放ったのだと言う事は判った。そして、それがどれだけ難しく、困難なのかと言う事も。

 同じハンドガンを撃っている者として、判らない筈がないのだ。ファイブセブンを購入後、試し撃ちをした時も、狙った場所に当てる事すら叶わなかったのだから。

 キリトはニヤリと笑いつつ、高揚感が湧き出てくるのを感じた。


――やはり、凄い。……強い。


 ネットゲーマーである自分は当然それ相応の誇りを持っている。
 SAOは、遊びではなかったとは言え、あの世界で生き残り、そしてALOでの世界でも戦い……腕には自信も出てきている。が、それでも純粋に上だと認めている相手の力を改めて判り、燃えてきた様だ。


――……強いな。この短期間で、一日で銃の世界で、剣でここまで出来るのか。


 そして、リュウキもキリト同様だ。隠し弾(ブラインド)は、先ほどのシノンの解説でもあった様に、キリトの様に弾丸を弾く相手には効果的な一手だ。弾いた裏に、もう1発あるのだから、通常では直撃をしてしまうだろう。だが、キリトの恐るべき反射神経、反応速度はそれをも躱してしまうのだ。

「(……銃撃戦では、埓があかない、が。剣と銃の違いを、っと言った手前だ)」

 リュウキは、リボルバーを構えた。

 キリトは、それを見て腰を落とし、剣を再び構えた。自然体の構え、いつ、如何なる弾丸にも反応出来る様に。

「もう1つ、小細工を弄するぞ。キリト!」

 リュウキはそう言うと、リロードを終えたリボルバーを再び撃ち放った。数発の弾丸が、殆ど同時に発射される。

「なにッ?」

 そして、放たれた弾丸を見てキリトは困惑した。何故なら、自分の身体には当たらない。それも掠りもしないからだ。さっきまでのリュウキの恐ろしいまでの射撃スキルを目の当たりにした手前、思わず反応が遅れた。

 ……そう、遅れてしまったのだ。

「がッッ!!!」

 反応が遅れた次の瞬間、有り得ない所から衝撃が走った。それは、背中……右肩甲骨辺りに、そして背中の中心、腰付近に、連続して受ける衝撃。思わず前屈みに突っ伏してしまいそうになるのを辛うじて踏ん張る。

 背中の為、確認は出来ないが……、間違いない。銃撃を喰らったのだ、と言う事は理解できた。






~予選会場~



 場に再び響めきが沸き起こる。

 その根源は決まっている初撃が漸く決まったのだから。

 この戦いが始まってまだ数秒~1分程の攻防で何度沸き起こり、そしてしん、と静まり返ったか判らない。それ程までに、息を飲む展開だった。未だ嘗てこれほどまで緊迫した予選がこれまでにあっただろうか?経験者達は、頷くことが出来ない。
 それは勿論、シノンもだ。

「……っ、今のは……一体どうやって」

 再び目を奪われたのは、キリトの背中に当たった銃撃の事。1対多数ならまだしも、1対1なのに、正面での戦いなのに、背後からの攻撃を……と。

 だが、幸いな事に先ほどの一撃のリプレイ映像が流された。

 だから、リュウキが一体何をしたのか、が判明した。撃たれた銃弾は、直接相手に当たらない。当たったのは、ビルとビルを繋ぐ橋の鉄骨部分だ。そこに当たった銃弾は……。

「り、跳弾(リコシェ)……??」

 シノンは、何度驚けばいいのか? と疑問すら浮かべる。有り得ない事に、彼は跳弾を利用し、キリトに攻撃をした様だ。


 だが、まさに『言うは易し、行うは難し』だ。


 そもそも跳弾と言う現象は室内戦で起きやすく、着弾した面が強固な物質であり、弾丸先端の角度より、浅い射入角で命中する。それらの条件が満たされば起こる。……回避しなければならない現象でもある。跳弾した弾丸が自分に返ってくる可能性もあるし 映画、アニメ等の様に都合よく行かないからだ。
……流石にこの世界はゲームだから、そこまで細かく設定されているとは思えないが、現実では、砕けたコンクリートや岩盤の破片も弾丸同様に凶器に、危険なものになるらしい。

「……もう、何しても驚かないつもりだったけど」

 シノンは、深くため息を吐いた。そう言えば、あのリュウキと言う男は。

「アイツの身内……だったんだ」

 あの初老のアバターの姿を持つ男の身内。なら、これくらい、簡単にやりかねない、と何処か納得してしまえる自分もいたのだ。

「それに、キリトの方も……」

 シノンが次に目がいったのはキリト。
 確かにリュウキの技術は凄い、を通り越して有り得ない。隠し弾(ブラインド)跳弾(リコシェ)……、拳銃(ハンドガン)では、いや 機関銃(マシンガン)でも操るなんて事、はっきりいって無理だろう。だけど、その無茶苦茶な技術を受けながらもキリトは戦い続けている、張り合い続けている。

 凄まじいまでの反射神経、反応速度。

 跳弾(リコシェ)に関しては、勿論回避するのが相当高難易度であるが、それ以上に厄介なのが、弾道予測線(バレット・ライン)が、表示されないという事だ。発射されて、着弾するまでのラインしか、軌道上では現れないのだ。

 なのに、彼は躱している。
 一度は受けたものの 次弾からは、最小限度しか受けていない。幸いしたのは、一度何かに接触した弾丸は著しく威力を削ぐモノだということと、リボルバーと言う比較的攻撃力の低いハンドガンだと言う事だろう。

「(……わたしは、アイツ等に勝てる……?)」

 シノンはへカートを、この場には出していないが、あるものとして、利き手である右手でへカートを握る様な仕草をした。


――……この2人の強さは、ゲームの枠を超えている。


 シノンの頭の中で、いや 頭の先から足先までに戦慄とは似て非なる感覚が貫いたのだ。だけど、判らない事はある。


――なんで、あの時 あんな表情をしていたの? あなた達は……。


 そう考えると……、シノンの中にあった驚愕した感覚が消失していく。確かに衝撃映像はまだ続き、有り得ない攻防が続いているけれど、その疑問がシノンの中に沸き起こってくる。

「………なんで?」

 聞こえる筈も無いのに、シノンはきいていた。震えている彼と自分が重なって見えたのも、なんでだろうか?幾ら考えても、判らない。だからこそ。

「……相対した、その時に」

 そう、強く望んでいた。

 ……聞いてみよう、と。








~予選Fブロック 準決勝~



 リュウキの弾丸、攻撃はキリトにとって驚異だ。
 正面から撃ち放たれるだけの弾丸なら、回避も出来るし、弾き返す事も出来る。……だが、跳弾(リコシェ)隠し弾(ブラインド)を併用され、折り交ぜられてしまったら、そうはいかない。

「うぐっ……」

 こうなってしまうのだ。
 キリト自身のHPはまだまだ大丈夫なものの、神経をごっそりと削られるのだ。だから、相手が撃ち、自分が躱す。……傍から見ればいい勝負なのかもしれない。が、一方的に撃たれており、こちらはまだ近づけない。一太刀も浴びせる事が出来ていない。

「ここまで躱すのかよ……、オレもしんどくなってきた」

 リュウキは苦笑いをしていた。
 キリトもそうだが……、リュウキ自信も同じ事だった。接近を赦せば、あの光剣でダメージを受けるリスクが発生する。あれは、超近距離でしか当てられない変わりに、そのダメージ量は凶悪であり、一撃でHPを奪うのだから。

 素早いキリトの速さを見極め、視続ける。これ程までに、早い相手はキリトしか知らない。これまでも、恐らくこれからもそうだ。

 だから……。

『今のこの相手より、強い者などいない』

 死銃と接触した時に、確かに精神にくるものは互いにあった。

 過去の亡霊が姿を現したと言う事。自分達の実践が明らかに不足している事。

 そして……あの男はこの世界でも 殺人をし続けている。今の戦闘に対する心構えが圧倒的に違うと言う事。

 ……互いに足りないモノは沢山ある。それを補うのが、戦友だった。


「リュゥゥキぃ!!」
「キリィィトォ!!」

 
 そこからの攻防は時間にして10秒にも満たない。だが、互の力量、精神、の高揚と相あまり、この瞬間、数え切れない程の火花を散らせていた。

 そして……遂に。


『おお!!』


 予選会場での歓声が、この準決勝の舞台にまで響いている気がした。キリトは、遂に、リュウキの銃弾の結界とも言える空間を切り裂いたのだ。

 リロードの最中は銃撃は止む、それが絶対の銃の弱点であり、突破口。キリトは、身を盾にし続けながら、遂にたどり着いたのだ。

 後は、リュウキまでのほんの2~3mを詰めるだけ。

 リュウキは、リボルバーの弾数である6発を撃ち終えている。
 如何にリボルバーの高速リロードが可能であるスピードローダーを使用したとしても、キリトの一閃の方が早くリュウキに当たる。これまでの対戦相手を、その武器と一緒に切り裂いてきた光剣。
 切れ味は、間違いなくSAO時代のそれよりはるかに上だ。

「おおおっ!!」

 キリトは、右手を振りかざし、右上から左下へ、袈裟斬りを放つ。挑み、挑み……、そしてたどり着いた。光剣がリュウキの身体に触れるその刹那。

「ッ!!」

 凄まじい閃光が周囲に迸る。
 そして、その同時に金属音。弾く音が耳に響いた。

「……ふん!!」
「ぐっ!!」

 リュウキは、怯んだその瞬間を狙って、もう1つの武器、メインアームであるデザートイーグルを撃ち放った。

 先ほどとは比べ物にならない一撃。だが、当たったのが、肩だった為 強烈なノックバックが発生したが、HPが全損する事は無かったが、折角接近出来たのだが思わず間合いを取り、離れた。

「……折角近づけたんだがな」

 キリトは苦笑いをしながらそういった。強烈な一撃を貰ったのに、訳が判らん、とまで思ったのに、笑えるのは大したものだと言えるだろう。

「もう、慣れただろ? 所詮は銃弾だ。剣閃と違って、太刀筋と違って、狙った所にしか飛ばない。慣れたキリトなら、もう直ぐに近づけるだろうさ」

 リュウキは、デザートイーグルを軽く構えつつ、そういった。
 
「近づけたら、そこにもサプライズかよ。……まるで、BOSSキャラだな」
「BOSSもなにも、切り札ってのは、隠しておくモノだ。当然、だろ?」
「はは……、だけどこの光剣を弾いたのは驚いた。……一体何したんだよ、リュウキ」

 片手で、肩を抑えながら、キリトは聞いてしまっていた。

 正直疲れてしまったから、一服といったところだ。それは、リュウキも同じだった。本当に神経を使う戦い、厚みがある戦いは、2人とも本当に久しぶりだった。

「はは、オレに訊いてるみたいだが、キリトも判ってるんじゃないか?」
「……認めたくなかった、ってのもあるからかな? 正直」
 
 キリトは、苦笑いをした。
 そう、確かに見た。剣がリュウキの身体に当たる寸前に間に入った鈍く銀色に光る何かを。

「そんな、リーチの無いナイフで弾いたって言うのか?」

 キリトは、指をさしてそう言った。
 リュウキの右肩の鞘に収められていたコンバットナイフ。それがいつの間にか、銃と共にリュウキの手に握られていた。

「まぁな。近接戦闘じゃ、銃よりナイフが必要な場合がある」
「……だけど、ナイフで光剣を弾けるか? 逆に斬り裂くだけの威力は有りそうなんだが」

 そこが少し納得が行かなかった。
 これまでの対戦相手が装備していた防弾アーマーや武器、それらを容易く斬り裂き一撃でHPを吹き飛ばした光剣の威力はよく知っているつもりだったからだ。あの様なリーチの無い貧弱な武器に弾かれた事に驚いたのだ。

「……まぁ、そう思うのも無理は無いな 実際にはキリトの言うとおりだろう。……だが、ナイフには特性があるんだ」
「特性?」
「リーチも短く、GGO内で手に入る全武器の中で最弱。……だからこそ持つ性質、それは《無限》だ」
「……無限?」
「それなりにボーナスがあるって事だ。最弱なりのな。……武器の耐久度などはなく、強度もこの世界で最高のもの。これは、決して壊れない破壊不可能武器なんだよ」

 そう、ナイフは剣よりも更にリーチが短く攻撃力も殆ど皆無だ。

 特性とすれば、決して壊れる事が無いから、弾切れ、武器破損等が会った時に重宝される武器とも言えるだろう。勿論、それは対人戦には使え無いから、そこまで有能、という訳でもない。

完全弾き用(パリィ)装備、といった方が判りやすいか?」
「つまり、掻い潜って、攻撃を1発入れても、そのナイフも見極めなきゃいけない。……しくじったら、そのでかい銃でぶっ飛ばされる、と?」
その通り(Exactly)
「……ひでぇゲームだ」
「アホ言え。……お前の速度だって十分酷いって。これまでの対戦相手の気持ちが判る。こんなにしんどいのは初めてだ」

 つまり、お互い様なのだろう。

 だけど、決定的に違う事がある。それは、2人のHPの差。精神の削り合いこそ、甲乙をつけがたいと言った所だが、現時点でのゲーム的な優劣はリュウキだ。

 弾丸を弾き続けたキリトだが、攻撃を当てた訳じゃない。方やリュウキは、何度か命中させており、その分は減らしている。決定的な差が浮き彫りになったのは、あのデザートイーグルでの一撃だ。
 それも、威力を上げたカスタム・マグナムだ。

 それが、肩でなく体幹部に当たれば、その時点で終了しているだろう。

「ちっ……」

 キリトもそれは理解している。視界に見えているHPが嫌でも目に入るから。

 そして、リュウキが言っていた言葉を思い出していた。

『銃と剣は違う。……キリトにはまだ絶対的に実戦経験が足りない。オレにはまだ届かない』

 そのセリフを。だけど……。

「(正直詐欺臭い……、幾ら実践積んでも、あんな攻撃してくるヤツいないだろ)」

 そうも思ってしまっていた。銃による攻撃でHPが減った事は間違いないけれど、何処か納得し兼ねる、と言うものだ。

「キリト」

 考え込んでいたキリトに、リュウキが声をかける。そして、答える様にキリトがリュウキの眼を見た。

「そろそろ、決着だ」

 銃とナイフを同時に構えた。近づけばナイフ格闘、離れれば銃撃だと言う事は理解出来る。そして、何よりも、最初のSAAを中心に戦っていたスタイルよりも、強力だと言う事が判った。

「……ああ!」

 キリトは光剣を自在に操る。

 ぶぅん、ぶぅん、と身体を剣閃で包むかの様に。全方位の攻撃を弾くかの様に。


 そこからの攻防は、決着だと言ったのにも、関わらず 時間にして1時間以上に及んだ。

 
 キリトが接近、剣を放ち、リュウキがナイフで弾き返しながら、銃を撃つ。

 それが延々と続くかのように続いたのだ。
 リュウキのナイフは正確にキリトの剣を捉えているが、流石にリーチの差もあり、身体に致命的な直撃こそ、決して許さなかったが、その身体に切創は増えていった。キリトも次第に、ファイブセブンによる銃撃も折交ぜ、接近する為のバリエーションを増やしつつ、リュウキのHPを削っていく。




 決着は……。




「……まだ、届かない、とか偉そうに言ってたのが恥ずかしいよ。キリト」

 リュウキは苦笑いをしていた。



《地に伏しているのはキリト》


 リュウキは、キリトの光剣を足の裏で踏みつけ抑え、そして右手に構えたナイフを首にあてがっていた。

「何言ってるんだよ。……実際に届かなかった。……くそぅ! もちっと行けると思ったんだけどなぁ……」

 空を仰ぎながらキリトはそう叫んだ。

 リュウキのHPを半分以上削ったキリトだったが……、最後の最後で競り負けた理由は、リュウキの持つ近接戦闘(CQC)スキルにあった。

 ナイフで受け止めた光剣をスライドさせて、キリトに超接近。光剣を握った右手を極め、投げたのだ。投げたと同時に、剣を抑え、完全に無力化し今に至る。リュウキの様なALOやSAOで言う体術のスキルを持っていないキリトには、どうする事も出来ないだろう。

「……それで、どうする?」
「どうするもこうするも、何もないだろ? ……正直、ナイフで斬られるのも、こんな至近距離で撃たれるのも嫌だし。 『降参(リザイン)』 だ」

 倒れ伏したまま、空高くに響くように大声で叫んだ。
 





 試合時間:1時間22分。

 
 第3回BoB予選トーナメントFブロック決勝進出 RYUKI


 
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