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乱世の確率事象改変

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星の瞬きは未だ届くことなく

 
前書き
遅れてすみません 

 

 夢を見ていた。

 真黒い麒麟が空を駆ける夢。

 嗚呼、私はアレを知っている。

 何処へ行きたいのか

 何を求めているのか

 一度たりとも大地を見下ろさずにソレは空を駆けて行った。

 不意にふわりと浮いた身体は麒麟を追いかけるように宙を泳ぐ。

 追い掛けたい。きっとこの身体は私の望みのカタチだろう。

 自分勝手に一人で旅立ち、何を求めているのかも教えてはくれない。

 別にいい。したい事があるのならそれでいい。

 共有させろ等とは言わないから……

 唯、側で笑い合えるだけで良かった

 楽しい時間を過ごしているだけで良かった

 くだらない悪戯に呆れたような笑みを向けてくれる……それがどれだけ、心満たしたことか。

 二人で大切な友を茶化すことも

 二人で杯を交し合って月を見上げることも

 二人で夜道をゆったりと歩くことも

 遥か彼方の出来事になってしまった。

 あなたは、今どうしているのか。

 あなたは、今も変わらずにバカのままなのか。

 あなたは、今もからからと笑っているのだろうか。

 胸を焦がす想いが一つ。譲りたくない意地が一つ。

 私は追い駆けたくとも出来ず、違う空へと身体を向ける。

 ほらまた、黒い麒麟はこちらを見もせずに行ってしまった。



 聞こえているよ……あなたの名が。

 あなたが作り上げた……平穏の為の化け物の名が。

 本当は戦いたくなどないくせに……いつもあなたは嘘ばかりだ。

 人を怖がらせようなどと……似合わないことをして……

 そうやってまた、自分自身を傷つけて……



 うそつきの意地っ張りめ

 もう傷つかなくともいいではないですか

 私達と共に家に帰りましょうぞ



 その為に……私も龍となろう。

 嫌でも耳に入る程に名を上げてみせようか。

 麒麟を止められる四霊の幻獣……天高く昇る龍として……



 




 †




「……ん」

 じわりじわり。照らす日差しはなくとも大気から発せられる熱量は変わらず。
 蒸し風呂の中のような暑さで目が覚めた。
 気怠い身体は疲れを取らず、ほんの少しの睡眠では体力の回復もあまり期待出来ない。
 同志も同じであろうと、蒼い髪の美女が目を隣に向ければ、キリと引き締めた表情で麗しい唇を震わせた。

「いい夢は見れたか?」
「……こう暑くては夢見も悪い。それほど良い夢は見れなんだ」

 ため息を一つ。
 細めた眼で日差しを捕え、彼女は黒髪の麗人にひらひらと手を振る。

「何を心配げに見る必要がある?」
「また……あの人の名を呼んでいたからな」

 苦悶の表情で呟いた黒髪の彼女――愛紗に、蒼い髪を揺らして彼女は苦笑を零した。

「くく……そうか。まあ、あんな夢を見れば名も呼んでしまうか」

 心の中にだけ切り取られた笑い声が耳に響く。からから、からからと。
 気温の高さから額に滲む汗を拭って、彼女――星は愛紗と目を合わせずに言葉を紡ぐ。

「……秋斗殿が変わっていようと、我らのすることはなんら変わらん。
 そもそも秋斗殿の行動を頭で理解しようとすることこそ無駄だ。それは良く分かっていように。
 今は目の前の戦こそ最優先……と思うが?」
「それはそうだが……もしかしたら曹操がなんらかの制約を強いているのかもしれないだろう?
 真名開示に血族虐殺。私には秋斗殿がそれを許容するとは思えない」

 目的は知っていた。使う手段が自分達のようなモノでは無いことも知っていた。
 遠く、官渡で終わった戦の結果を耳に挟んだ二人は、肩を並べていたはずの男を思い出す。

――愛紗は秋斗殿だからこそ躊躇いなくする、とは思えないらしい。

 くつくつと喉を鳴らした。
 愛紗の憂いは見て取れる。過去の姿に反した結末を知れば知るほどズレが出て、彼の本当の姿を見失う。

「違うぞ愛紗。曹操の元にいるからこそ出来ることが増えたのだ。
 彼は自身に向けられる評価に拘らんし、自分が悪徳を為して救える命が多くなるならそれでいい、なんて考える。曹操に無理矢理従わせられているなどとは思わぬ方がいい」
「それは違う!」

 遮る声は大きく、愛紗は立ち上がった星を見上げた。

「何が違う?」

 まさか愛紗が此処まで秋斗を庇うとは思わず、星も不思議に思った。
 眉を顰めて問いかけると、愛紗はギリと歯を噛みしめた。

「星……分からないのか?
 彼が今していることは……無辜の人を生贄に捧げているに等しい。袁家だからと言っても罪無き人々はどうなる? 子供達も大人も老人も女も子供も、袁家だからと斬って捨てる? 私達はそんな世を変えたくて、秋斗殿もそんな世界を変えたいと言っていたのだ。
 だから……だから家全てで連帯して責任を取れなどと……戦の対価の為に命を捧げろなどと……“あの秋斗殿”が認めるなんて……私には思えないんだ……」

 泣きそうな声で消え入るように呟かれた。
 愛紗の記憶にあるその男は、無辜の民が傷つけられる事に憤り、単身で命を使い捨てるようなバカ者で……それなのに今回の結果を聞いてしまえば、あの頃の彼が一つも感じられない。

 桃香達の理想とは余りにかけ離れたその姿。
 自分達とは違うとは思っていたが、秋斗がそれをして当然だと語られることも嫌だった。
 確かに……と呟いた星は指を一つ顎に当てた。思考に潜っても、やはり真実は当人しか分からないのだが。

――彼はいつでも矛盾だらけだ。捉われ過ぎる方が危うい。

 小さな切片に頭を悩ませてばかりでは先に進めない。星はため息を一つ落として思考を切って捨てた。

「……愛紗は彼と戦えるか?」

 問いかけは突然に。全く別の質問を与えて話題を無理やり変えた。
 じ……と交差する視線。耐えきれず切ったのは愛紗だった。

「……私と彼が戦えばコロシアイになる。どちらかが死ななければ終わらない戦いになるだろう。
 彼が敵として刃を向けてくる場合、私は加減など絶対に出来ない。勝利の可能性を捨てず、“絶対に最後まで抗って来るだろう彼”を殺さないよう戦うなどと……そんなモノは彼と徐晃隊に対する侮辱に等しい」

 全身全霊の力を以って当たらなければ負ける敵。共に戦ってきたから良く知るその相手。
 星や鈴々が相手ならこうは言わない。彼女達なら一騎打ちで負ければまだ交渉の余地はある。しかしその男だけは別なのだ。

 事前に約束を取り付けておこうと軍の勝利を確信したならそんなモノはゴミのように捨てると知っている。
 自身が死んでも何か役に立つのなら汚名など安いモノと考えていて、武人の誇りなど無に等しい。
 敗者となっても言う事は聞くこと無く、目的の為なら手段は択ばない。

 追随する兵士達は狂信に従って彼と共に殉死する。
 戦に綺麗も汚いも無いとその男は言って退け、等しく命を賭けているのだから戦えと自らの舞台に誰も彼もを引き摺り込んで来る……そんな最悪の敵。
 愛紗は彼と戦いたくない。戦場で敵として出会ってしまえば、彼女はその敵を殺すしかなくなる。“叩き伏せる方法”はあろうとも、“説き伏せる言葉”は持ち合わせていない。
 何より、愛紗の胸には冷たい棘が刺さっていた。ソレがあるから話し合いの余地など最初から無い。

――まず第一に……彼を信じなかったのは自分達だ。我らはあの時……彼が敵になると疑ってしまったのだ。

 仲間に信じられず、主にも信じられず、それでも尚その男が自分達と共に戦ってくれるなどと、愛紗は思えなかった。
 自分であっても彼と同様の選択をしたはずで、自分の身一つで仲間が救われるなら命すら差し出しただろう。
 愛紗自身が取れたはずの行動を彼は理解していたのだ。だからこそ、あの場で愛紗が彼を一番に信じなければならなかった。

――もし私があの時から今までの彼の立場になったら、それでもと桃香様や私達に信を貫けるか……? 話し合いに耳を傾けられるか?

 幾度となく考えてきたもしものカタチ。
 思い浮かぶ答えはいつも……

――……否だ。敵になるかもしれないから……などと信頼している主から疑心を突き付けられたら……耐えられない。耐えられる、はずが無い。

 ふと、絶望の底に堕ちた秋斗に向けて憐みと同情を向けた夏候惇の隻眼を思い出す。
 もどかしいというように歯噛みしていたその目は、秋斗が倒れて直ぐに愛紗を射抜いたのだ。

――敵意と殺意を交えた視線。愚か者を見下す侮蔑の眼。曹操軍の将の方が彼のことを理解していたということ。何が……何が背中を預け合える仲間。私には、その価値すら無かった。

 ジクジクと苛む自責の感情が湧くも、愛紗は無理やり押し留めた。
 それでも、と。
 桃香の言う話し合いなど欠片も通じない相手……ではあっても、通じるとすれば……劉備軍には二人だけ。

 ただし、その二人と彼が刃を向け合うこと自体、どれだけ哀しいことであるのか愛紗に分からぬわけも無い。

「星は……戦えるのか?」

 彼と……言う前に彼女がまた喉を鳴らした。愚問だ、というように。

「くく、当たり前だ。目的がそもそも違うのだから戦うというのもおかしい。彼を引き摺ってでも白蓮殿の元に連れて行くだけで、その為に刃を交えることが必要だと言うならするさ」

 楽しげに語る星は心が傷ついているようにも見えない。
 まるで恋人との逢瀬を楽しみにする少女のように熱っぽい吐息を吐き出した。
 直ぐに悪戯好きな猫のような笑みを浮かべ、彼女は片目を閉じた。

「武で勝ち、信念で勝ち、親愛で勝ち、想いの強さで勝つ……なに、女に此処までさせるのだ、臆病者の彼であれ男なのだから逃げはすまい。というより、私が勝負を挑めば徐晃隊の兵達は秋斗殿に断らせることはしないだろう。友であるが故に避けられぬ戦いがある、だから私と秋斗殿の勝負に水を差さん……白馬義従に帰参してきたモノと同じならそういう輩だ、あ奴等は。
 まあ、勝った暁には……雛里や徐晃隊の前で口付けの一つでもさせて貰うが」

 胸にある想いは愛紗も知っている。
 しかし、愛紗が心配しているように、愛しいからこそ辛いというモノでは無かった。
 まだ納得し兼ねると眉を寄せた愛紗に、仕方なし、と星は小さく息を吐いた。

「趙子龍として徐公明に勝ち、そうして初めて星として私の隣に来いと言えるというもの。そうだろう?」
「そういうモノ、なのか?」
「あくまで私はだ。愛紗がどう思うかとか、他がどうのは知らんな。ああ……白蓮殿は私と秋斗殿が戦う事を憂いているが、コロシアイにならないと信頼してもいるぞ」

 隣に居て欲しいと願った。寄り掛かりたいとは思わなかった。友のまま、家族のまま、その延長線上で隣に立てればいいと思った。

――わがままも、意地っ張りも、悪戯も、呆れたように苦笑して付き合ってくれるから……。

 微笑みは穏やかさが宿り、どれだけの想いが其処にあるのかを愛紗も読み取る。

「私と彼が戦うとしてもそれはただの意地の張り合いに過ぎんよ。いうなれば喧嘩だ。
 愛紗や桃香殿のように思想や考え方を変えたいのではないし、彼の遣り方が間違っていると言うつもりも無い。それは白蓮殿とて同じかと思うが」

 む……と少し考え込んだ愛紗もその違いに気付く。何も言わず、彼女の話に聞き入っていた。

「勝った方が正しいなどと言ってしまえば我らの言の葉は届かなくなってしまう。人々の心に届かぬ理不尽な押し付けを、どうして……人々の為にしか生きられぬ彼に投げられよう?
 それでいて、していることと言っていることが矛盾しつくしてしまう乱世では、話だけでも何も変わらぬ。力はどうしても必要だろう。
 ただし秋斗殿の厄介な所はな……曹操ならば力で示せば折れることがある、孫策や白蓮殿なら愛しい地の安寧の為に諦めるかもしれない……だが、彼にとって、諦観の二文字は己の死でしか現れない」

 何か言いたげに口を開いてもそう思っているから口を挟めず、愛紗はゴクリと生唾を呑み込んで押し黙った。

「夢と未来を語る愛紗や桃香殿が相手であれば……ではあるがな」

 目を伏した星の横顔に一滴の汗がたらり。
 大変な男に惚れたモノだと苦笑を零しそうになるもどうにか噛み殺した。

「……急ぎ過ぎている、と白蓮殿は言っていた。秋斗殿は乱世に生き過ぎているのだよ。
 人の心にするりするりと入ってくるくせに、自分の悩みなど一つも話さず。乱世でなくとも世界は変えられると知っているくせに、乱世で無理やり変えてしまおうとする。
 だから私と白蓮殿が彼に説くのは幽州で彼が言っていたことだけでいい。心を折るのではなく諦めでもなく、ただお茶や酒を飲んで話そう……私と白蓮殿が秋斗殿と共有したい夢や未来は、声を荒げ拳を振りかざして語るモノではない、それだけのこと」

 皮肉に聴こえる言い方。星と白蓮の二人は愛紗達とは少しばかり違った。

「……そうか。お前にはそう見えるんだな」
「ああ、桃香殿と愛紗には悪いが……二人が彼相手に語れば、その夢と未来は押し付けにすり替わる。押し付けるつもりなど無いはずなのに、な。決定的な違いはきっとこれだろう」

 ふむ、と顎に指を当ててから、納得といったように星は一つ頷いた。

「……極論、私と白蓮殿は彼と分かり合えなくてもいい。ぶつかり合うほど譲れない所はあるし、何かしらの落としどころを見つけるくらいしか出来んが、我らの言い分も何処かは必ず通して、彼の言い分もどれかは必ず受け入れる。
 しかし桃香殿は……良い人だから必ず分かってくれると言っていた。それはつまり、桃香殿と同じ夢を見て欲しい、ということだろう? 
 そこが違う。拳と拳でぶつかり合うような意見の押し付け合いは、曹操や秋斗殿のしていることと変わらない。
 益州の平定案と同じ事が出来ない相手だ。だからといって直ぐに相手の舞台に上がれば、その矛盾を彼は決して認めん。
 故に、彼と“話し合い”が出来るのは我らだけなのだ」

 言い方に違和感を覚えた。なにか違う。話し合いなんて高尚なモノではない。
 少し考えて、納得したのか掌をポンと鳴らした。喉が自然と震えていた。可笑しくて可笑しくて。

「くくっ……“話し合い”、ではないな。やはりこれが一番しっくりくる。
 私と白蓮殿が彼とするのは……」

 僅かな間。じ……と絡んだ視線の先、黒髪が風でゆらりと揺れる。

「ただの“宴会”だ。互いの腹の内を割って話して、泣いて怒って笑ってふざけ合う、それだけの」

 そうならなかったことなど過去には見当たらなくて、これから先も彼と白蓮と寄れば真面目な話など空の彼方に消えてしまう気がした。
 余りに抜けた答えにがっくりと力の抜けた愛紗は、呆れのため息を零しながらも何処か納得した様子。

「……乱世での大事を宴会と言って退けるのはどうかと思うが……すまない。彼のことは……任せる」
「なに、いいさ。愛紗も桃香殿も夢を追いかけるべきだ。私達はそんな二人が好きで、側に居たいと思えるのだから。夢を追いかけるのを応援し、支えるのが友の役目。
 出来ることを出来る範囲で、不足はそれぞれが助け合うべし……なんと、私は最初から劉備軍の在り方にばっちり嵌っていたようだ」
「意地っ張りな部分さえなければ、だろう?」
「ふ、わがままと言い換えればお前達と同類ではないか」
「ああもうっ、ああ言えばこう言うっ!」

 いつも通り飄々とした態度で茶化す星に、愛紗は不機嫌そうに眉を顰めた。ただ、別に本気で怒っているわけではないのも星とて分かっていた。
 話も丁度区切れた。今は彼のことはおいておこうと愛紗が思考を切り替えようとした時……僅かに空気が変わった。

「ただなぁ……」

 遠く、星は木々の切れ間から見える空を見上げていた。何かを思い悩むように。
 数瞬の沈黙は言葉を選んでいるのかいないのか、星は額から汗が一滴落ちてから漸く口を開いた。
 瞳に浮かぶのは淡い色……では無く、激情の宿る炎だった。

「……彼は張コウの願いの為に命を賭けたと聞く。たった一人で、敵の罠があると分かっていながら、裏切られぬやも知れんというのに」

 愛紗は茫然と、行き場の無い怒りを浮かべる星を見つめた。

――普段からこんな感情を出さない星が、何故これほどまでに……。

 愛紗は知らない。
 もう二度と戻ってこない一人の少女が、彼のそんな生き方を許さなかったことも、二人で咎めたことも。

――牡丹の代わりという訳ではないが……

「二度も同じ事を繰り返すような大バカ者は引っぱたいてやらねば気が済まん」

 命を賭けることと、命を使い捨てることは違う。
 彼の在り方は後者、それも星は知っている。

 いつでもバカばかりな彼のことを胸に仕舞って、彼女はまた苦笑を零した。

「……さて、些か無駄話が過ぎたようだ。白蓮殿に先を越されぬよう、我らも我らの仕事を終わらせてくれよう」

――真名の通りに、瞬く光を見せつけなければならんのだから。

 眩しい木漏れ日と湿気の深い森の底。
 彼女の心の奥を読み取れるモノはまだ遠くであった。











 深く険しい山々に囲まれている益州は守るに易く攻めるに難い土地として智者に広く知れている。
 しかしながら、その土地を攻めるのが容易な場所もあるのだ。
 それが南蛮。五胡とは少しばかり毛色の違う異民族の暮らす土地である。

 独自の文化で生きているその土地には大王と呼ばれる統率者が君臨し、その政治形態も何もかも謎に包まれていた。
 ただし、益州の南西に位置する都市には定期的に攻撃を仕掛けてくると噂され、その狙いは専ら食物であった為、食糧生産技術が発達していないのではないかと言われている。
 益州と南蛮の関係は非常に芳しくない。使者が赴いても帰って来ず、軍を派遣しても追い返されて来る。
 敵の様相を聞いても答えようとしない兵士達。さらには、南蛮に遠征に赴いた兵士達は皆、気力を無くして兵士を止めて行く。

 零す言葉は決まって……自分達はもう兵士として生きていけないとかなんとか。
 意気消沈した姿から止めるモノはおらず、頑なに話そうとしないその姿はなんともモノ寂しいものであったらしい。

 そんな南蛮に向けて、劉備は防衛を命じられていたが、交渉せねばならないと劉璋を説き伏せて軍を遠征させていた。
 出立した将は関羽、趙雲、張飛の三人。劉備自身はまだ劉璋との蟠りが解けていない為に軍師である徐庶や友好的関係にある黄忠や厳顔と共に居残り、益州の変革に向けての行動を進めていた。






 一人の少女は、侵攻の報せを聞いてため息を吐いた。
 純粋に自身の生を謳歌していた少女は……自信満々と言った様子で呆れ果てる。
 南蛮を治める王である少女は大きな肉球でふにふにと腿を抑えながら笑った。

「いつも通り奪ってやればいいにゃ。叩き潰して、追い返して、弱り切った所でたっぷりと美味しいモノを頂きにいくじょ」

 
 

 
後書き
読んで頂きありがとうございます。

遅れた上に短くて申し訳ありません。

星さんと愛紗さんの考え方の違いとかを。
次は本格的に南蛮。桃香さん無し朱里ちゃん無しの南蛮戦です。

ではまた 
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