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真田十勇士

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巻ノ十二 都その九

「ましてや己より弱い者をいたぶるなぞ」
「その様なことは外道のすること」
「武士や賊、ならず者には興味がありますが」
「民や降った者には興味がありませぬ」
「当家では民を傷付けたり降った者に手を出すことは許されておらぬ」
 幸村も二人にこのことは強く言う。
「若しそうしたことをすれば」
「はい、その時は」
「我等も」 
 二人もわかって答える。
「覚悟はしております」
「どうか首をお打ち下さい」
「そこれがわかっているのならよいがな」
「確かに兄上は暴れ好きですが」
 伊佐はその清海について述べる。
「間違っても民や弱い者に手を出すことはありませぬ」
「そうして何が面白い」
 清海はその弟にも言った。
「弱いものをいたぶって」
「それが兄上ですな」
「強い者を相手にしてな」
 そのうえでというのだ。
「暴れてこそじゃ」
「楽しいと」
「幾ら酒で酔っていてもじゃ」
 酒乱のことは自覚している、しかしというのだ。
「わしは自分より弱い者をいたぶることはない」
「それはまことか?」
 霧隠は清海の今のことばに眉を顰めさせて問い返した。
「酒に酔っておってもか」
「うむ、自分より弱い者にはな」
「暴力は振るわぬか」
「それは伊佐がよく知っておる」
「まことか?」
 霧隠は清海のその強い言葉を受けて伊佐に顔を向けて彼に問うた。
「この者は実際に酔ってもか」
「はい、ご老体やおなご、子供にはです」
「手出しはせぬか」
「一切」
 伊佐もはっきりと答える。
「兄上は」
「ふむ、まことにそうなのか」
「わしは弱きを助け強きを挫くじゃ」
 清海はまた言った。
「その様なことは断じてせぬわ」
「そうしたことはしっかりしておるのじゃな」
「左様、あとものも奪わぬ」
 それもしないというのだ。
「銭はしっかりと己で稼ぐしな」
「ならよいがな、しかしな」
「しかし。何じゃ」
「御主相当飲むな」
 霧隠は清海のその巨大な体格を見て述べた。
「そうじゃな」
「うむ、食いもするしな」
「そうじゃな、ではこれからか」
「夜は飲むぞ」
 実際にというのだ。
「盛大にな」
「その分の銭は稼ぐ様にな」
 根津はこう清海に忠告した。
「さもないと銭がもたぬぞ」
「わかっておる、見世物をしてな」
「そうせよ。わしもそうして銭を稼ぐ」
 根津にしてもというのだ。
「刀を使ってな」
「そうするか」
「この刀は実は業物なのじゃ」
 腰の刀を外して右手に持って顔の前にやってだ、根津はまじまじと見つつそのうえでこうしたことも言った。
「斬れぬものはない」
「そこまで斬れるのか」
「うむ、戦の場でも何十人と斬れる」
 筧にも答えた。
「それこそな」
「左様か。しかし普通は刀は二人か三人斬れば斬れぬぞ」
 そこはだ、筧はしっかりと言った。
「血糊が付いたり骨を切って刃がこぼれたりしてな」
「しかしじゃ」 
 根津の刀はというのだ。 
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