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異界の王女と人狼の騎士

作者:のべら
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第四十一話


「あらら、漆多君。また振られちゃったんだ。可愛そうだね~寧々ちゃんにフラれ、こんどはチビちゃんにもフラれたんだ。……おっと全部、月人君が唾つけた女ばっかりなんだね。あはは、残念」
 連中の中ではどうやら一番年少の奴が面白そうに指さす。

「うるせぇ……お前らに何が分かる」
 唐突に漆多が怒鳴った。怒りに狂いそうな眼をしている。

「フルチンで怒鳴られてもね。……でもなんかすげーむかついた、俺。真っ先にあいつ殺す事にしよう」
 一人がそう宣言すると、他の連中も「そりゃいいや。でももう一回あいつのケツ掘っておきたいかな」と異様な台詞と一緒に同意する。
「そうだな、おれも、も~一回ウルシダを掘っておこうか」
 気持ち悪いことを二人の男が言う。まだあの二人は中学生になったばかりじゃないのか? 幼さを残した容貌をしているが、中身はかなり壊れている感じがする。町であったら避けておいた方が良いタイプだよ。人を殺しても重罪には問われないから何でもやりそうな雰囲気を充満させていやがる。欲望のままになんでもやりそうだ。

「ヒッ……そ、そんなあ」と、本気で怯えた表情を見せ、情けない声を漆多は出した。「俺じゃなく、月人を先に殺せば良いじゃないか。俺は何も悪くないだろう? 何も喋ったりしないよ。俺は被害者なんだ。頼むよ、せめて、せめて俺だけでも助けてくれ」

「フンお前、やっぱり最低ね」
 王女が吐き捨てるように呟く。

 確かに自分だけが助かればいいって考えにはむかつくけど、今の俺たちの置かれた状況を考えればそれも分からなくもないんだ。相手は武装した男が7人。辺りには誰もすんでいない廃ビルの地下に拉致された状態でこれから殺人ゲームを始めるって宣言されたら、どう考えたって異常な状況だって分かる。おまけに彼は手錠をはめられ足も縛られている。俺たちの中で一番サバイバルのチャンスが無い人間だ。助かろうって思ったらどんな手も躊躇ってはいられないだろう。そもそも普通なら全員生存の可能性は無い状態なんだから。
こんな人気のないビルのしかも地下室なんか誰も来ないだろう。俺たちは白骨化してもしばらくは放置されるはず。取り壊し工事とか再開発計画が進み出さない限り、こんな不便なところに出入りする奴はこいつら以外はいないからな。安心して【ゲーム】を楽しめるってことだ。
 彼らの口ぶりからして、過去に何度かそのゲームが開催されたようだし。

「さあ、あと4分を切ったぞ。さっさと逃げないのか」
 あまりにトロトロしているせいでいつもと訳が違うようで、あいつらも少し困惑している。まあ困惑したところで俺たちを逃がしてくれるもんでもないのだろう。生け贄が必死で逃げ、命乞いする様を楽しみたいんだろう。そうやって生け贄達を蹂躙し殺戮することでこいつらの欲望は満たされているんだ。 
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