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moon light fantasy

作者:ケンケン4
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紅い眼

 
前書き
…ちゃうねん。 

 
「大変!ゼツ君!」

フォルツとゼツが別れた夜。
ニナが慌てふためいて酒場に来ていた。そこにいるのはゼツとリナとラン。どうやら今後のラクーアのギルドや自治についての話し合いをしてたらしかった。
ニナはそれを見てホッと胸を撫で下ろす。

「良かった…。ランちゃんとリナちゃんは無事だった。」
「何かあったのー?」

ランはそう言いながらフライドチキンを齧りながら聞いてきた。ちなみにフライドチキンの骨はもう数十本になっている。リナはキョトンとした顔でゼツとのカップルジュースを飲んでいた。
そんな中、ニナは未だ慌てふためいて。

「フォルツを止めて!」

その言葉を聞いた3人はすぐさま話し合いを止めて自分の武器を用意し始めた。当然だ。ニナがそういうことを言う時は一つしかない。

吸血衝動による暴走。

そしてゼツは冷静にニナに質問する。

「ニナ落ち着け。フォルツがどうしたんだ?」
「フォルツが急にベッドから起き上がって『アリスの血を吸いたい』って言って…。」
「アリスは大丈夫なのか?」
「僕が部屋に行ってまだいたからとりあえず『誰が来ても絶対にドア開けないでね!』とは言っておいたけど…。」

ゼツはそれを聞いて少し考えるとテキパキとみんなに指示を出す。まずはランの方を向いて。

「とりあえずランは街中を見て来てくれ。」
「えー!こんなか弱い乙女を吸血鬼のいる街に一人ポイ捨てしちゃうのー?ダメだよ!ポイ捨ては良くないよ!」
「ポイ捨てはともかく、お前がか弱かったら全世界の人々がか弱くなるだろ…。頼む。戦力的にも機動力的にもお前しか頼めない。」

ゼツがそう言うとランはどうやら適任だと分かってたらしく、すぐにいつも通りのハイテンションではい!と答える。
するとゼツ今度はリナの方を向いて。

「リナは俺と一緒にアリスの部屋まで来てくれ。ニナも頼む。」
「了解!ゼツ!」
「了解。」

そこからの四人は直ぐにその行動へと移した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

コンコン。

「アリス…。いる?」

正気を失ったフォルツはいたって冷静を装いながら軽くノックを入れる。
返事はない。だけどヴァンパイアの力が冴え渡っている。
いる。愛しい、愛しいアリスが。
…乾きが喉を疼く。

「ニナに頼まれた。お前を守れとさ。
…ったく面倒だ。」
「…面倒なら帰ればいいじゃないですか。」

するとアリスはボソッと扉越しに話しかけて来た。俺ははあ、とため息をつきながら答える。

「帰りたいのは山々だかな。
…お前には貸しがあるからな。」

そう、貸しがある。この前、血を飲ませてもらった。だから…!
するとふいにアリスが俺にポツリと。

「あの…フォルツ。」
「何だ。」
「こんな事はあまり言いたくないのですけど…。
…私の血を吸いに来たのですか?」
「…。」

俺はその問いにただ黙る事しかできなかった。その問いからしばらくすると。

ガチャン。

鍵の開ける音と共にアリスがチラッとドアの隙間から見て来た。

「…入って下さい。」
「…。」

俺はふらふらとアリスの部屋に入る。そうして俺はベッドに座るアリスを見る。
俺はそれを見てボソッと。

「…怖くないのか?」
「そうですね。怖いと言われたら怖いですね。
貴方の眼も紅いですし。」

アリスはそう言って俺をジト目で見る。とても綺麗だ。そのシルクの陶磁器の様な綺麗な首元もその整った顔立ちも。早くそれをグチャグチャにして台無しにしたい。
…頭が真っ白になりそうだ。
そして俺の渦巻く狂気にアリスは気付いてないのかジト目で話を始めた。

「では怖くない様に血を吸われる前に話をしましょう。
…そういえばヴァンパイアって貴方だけなんですか?あのアスモディウスというのもヴァンパイアですけど…。」
「…。ヴァンパイアは分類として2種類いる。
一つはピュアブラッドと呼ばれるヴァンパイアだ。これはアスモディウスと他に世界に7種類いると言われている。それらを総称して『七つの大罪』と言われている。これは元々最初からヴァンパイアだった者たちだ。」
「もう一つは…?」

そうアリスが言うとフォルツが紅い眼でアリスを睨んでベッドに押し倒す。

「…!」
「2つ目はアナザーブラッド。普通、男がヴァンパイアに血を吸われるとグールになるが…。例外もある。
…それが俺だ。」

そうしてフォルツはアリスの首元に口を寄せる。押し倒された時に女の子特有の甘い香りがする。
アリスは少し身体に力を入れる。

「あ……。」
「…力は入れないで…。すぐに終わります…。」

もう、フォルツは最後に残っていた正気も消えて虚ろな紅い瞳でアリスの首元を愛しそうに舐める。

「……きゃあ!」

いきなり首元を舐められて一気に力が抜けるアリス。そして最後にフォルツに呼びかける。

「…最後に教えて下さい。
何で扉を壊さなかったんですか?」
「…は?」

アリスはそう言って俺の肩を押し、一回引き剥がす。その問いに少しだけ正気に戻った。
力は俺の方が強いのに何故か引き剥がされた。

「あの時あんな無駄に下手に正気の演技をしないでヴァンパイアの力を使ってこじ開ければ良かったじゃないですか。」
「それは…。」

なんでだろう。そう言えば俺はあの時無駄に部屋に入る前に演技をした。正気の俺を。
するとアリスは俺の顔を見て少しだけ微笑んだ。

「…フォルツ。まだ貴方は人間でいたいんですよね?」

そう言ってアリスは自分の意思でそのシルクの陶磁器の様に綺麗な首元を曝け出した。

「…飲んでください。
私は貴方を受け入れますから。」
「⁉︎」

俺はそれを見て勢い良くアリスの首元に口を近づけた。  
 

 
後書き
そう言えば…。もうすぐ秋ですね。
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