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serial experiments S. A. C

作者:藍色
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イドの昇華 -Sablimatin of Id- Collective unconscious
  プロローグ

「ワイヤード?」
「知らないのか少佐。あれだよ。ティーンエイジャーが主要層となっている電脳システム」
「ああ……あれね」

ワイヤード。
それはティーンエイジャーが主な使用者である電脳システム。
システム内にはチャットやブログのようなSNSからオンラインゲームまで幅広いカテゴリが搭載されている。

「で、そのワイヤードがどうしたの?」
「ワイヤード内のとあるゲームのプレイヤーが、次々に死んでいる」
「死んでいる……って、電脳ウイルスか何かのせいじゃ」
「死んだ人間の電脳からは、ウイルスの痕跡は見あたらなかった。つまり……」
「我々9課の出番って訳ね」
「うむ。この事件を迅速に解決しろ」
「了解、課長」

[お前ら聞いたか!トグサ。お前は被害者について聞き込みを行え]
[了解]
[イシカワ、ボーマ、パズ。お前達はワイヤードに潜入し、情報の収集をしろ。間違ってもまだ渦中のゲームなんかするんじゃないぞ]
[了解]
[了解]
[そのゲーム以外は潜っても大丈夫なんだよな?]
[ああ。しかし他のプログラムでも被害者が出るかもしれない。充分に気を付けろ]
[了解]





被害者の家にて。
ピンポーン、とインターホンを押した音が響いた。
バタバタと慌ただしい音が玄関に近づき、ドアが開いた。

「こんにちは。警察の者なんだけど、ちょっと聞きたいことがあるんだ。いいかい?」
「何?予定があるから聞くことあるなら早くしてね」

出てきたのはティーンエイジャーらしき男の子。
イヤホンとマイクが一体となっている機械をつけたままだ。

「君のお兄さんが亡くなってるよね。何か心当たりはないかい?特に電脳関係で」
「電脳関係でって言われてもなぁ、ああ、兄貴ならワイヤードの中でも特にヤバいって言われてるゲームにこの頃のめり込んでたよ」

少年の喋るスピードが早い。

「何て言う名前?」
「"デスゲーム"。まあこうやって死人が出ちゃったから、もうレインが出てくるかも」
「レイン……?よかったらそのレインっていうの、教えてくれないかい」
「もう無理、本当に無理!あと30秒しかないんだってば、レインのことなら調べればわかるよ!じゃあね!」

トグサの目の前で勢いよくドアが閉められ、バタバタと駆ける足音が遠ざかっていく。

「はあ……。"デスゲーム"に"レイン"、ね」

ガシガシと頭を掻いた。





ワイヤード内のとある場所にて。

『よっぴー☆:連続怪死事件発生~なんちゃって☆』
『パンダ:不謹慎だよWWW』
『エア:でもさ、警察の見解では事故死ってなってんだろ?』
『フェンネル:警察なんてまだまだ無能だからしゃーない』
『パンダ:一応国家権力なんですがそれはW』
『フェンネル:というか原因なんて判りきってるじゃん』
『よっぴー:まあね~☆』
『パンダ:デスゲーム内のデスゲーム!』
『パンダ:駄洒落かよWWW』
『パンダ:まあこんなことになっちゃったし、lainが黙っちゃいないだろうな』
『エア:lainって?』
『よっぴー☆:エアさん、最近ワイヤード始めたの?ならしょうがないよね。説明しようか☆』
『フェンネル:lainっていうのはワイヤードの管理人。普通だとこれだけコンテンツあると複数で管理するんだけど、ここの管理人アカウントはlainしかない。一人万能説と複数人単アカウント説がある。ちなみに俺は複数人単アカウント説を支持してる』
『よっぴー☆:ロマンを追い求めるのも大事だよ!一人万能説を支持☆』
『パンダ:まあ実際はどちらなのか明らかではあるんだけど、ロマン重視だからWWW』
『エア:どちらにせよlainはプログラミングが上手いってことか』
『フェンネル:そうだね。ワイヤードのプログラム見てみたか?あんなの俺には不可能だね。次元が違うよ』





「デスゲームってのは、いわゆるサバイバルゲームの一つだ。ワイヤード内ではマイナーながらも好事家が集まりやすいみたいだな」
「少佐はサバイバルゲーム得意そうだな?」
「あら。電脳空間でのサバイバルゲームなんて、ただの電脳戦にすぎないわ。」
「おっ、えらく殊勝なこと言うじゃねえか少佐」
「現実を話したまでよ。デスゲームをプレイしたらバトー、貴方、イシカワとボーマに負けるんじゃない?」

うっ、と言葉に詰まるバトー。
バトーの特技は肉弾戦であり、電脳戦ではない。
得手不得手は通常の組織よりもずっと極端なのが公安9課の面々なのである。
勿論、他の組織より明らかにハイエンドのレベルではあるのだが。

「それはともかくとして、俺はレインというのが気になるな」
「それは何故?」
「レインという人物。一時期は表に出ていなかったようだが、最近また出てきているんだ」
「それがこの連続事故死に関係あると?」
「ああ」
「そうね……。まだ証拠には至らないけれど、そのレインという人物が事件を調べている、ということは事実のようだし。わかったわ。トグサ、貴方はレインについて調べなさい」
「了解」

トグサはレインについての調査を行うことにした。
イシカワ、ボーマ、パズは引き続いてネットでの調査を行う。
そして、

「少佐ー、9課らしくドンパチする事件にならねえか?」

一方で暇なのが荒事専門のバトーとサイトーである。

「そうね。武力制圧のときは呼ぶわよ?今回は無さそうだけれど」
「なんでだよ」

「私のゴーストがそう、囁くのよ」

草薙はにこりと笑った。
 
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