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ペナルティ

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3部分:第三章


第三章

 そして二人で割ってしまった。瞬間接着剤で着けたままの壺を出してです。こう皆と、そして二人の横に立っている先生に対して言うのでした。
「すいません、昨日の放課後ですけれど」
「僕達クラスでボールを投げ合って遊んでいました」
「その時に壺にボールを当てて割ってしまいました」
「本当に御免なさい」
 こう言ってです。二人でなのでした。
 皆に対して深々と頭を下げました。そしてです。
 先生に対してもです。こう言うのでした。
「本当にすいません」
「御免なさい」
 二人は先生に怒られることを覚悟していました。そのことがわかっていて謝るのですから。
 けれどそれでもです。先生はです。
 優しい笑みになってです。そしてなのでした。
「二人共よく素直に言ってくれましたね」
「すいません」
「本当に」
「若し二人が黙ったままだったら」
 その時はというのです。先生は。
「先生は二人を怒っていました」
「えっ、黙ったままだったらって」
「それは」
「君達は確かにクラスでボール遊びをして皆の壺を割りました」
 先生はこのことは確かに言うのでした。
「けれどそれを認めて正直に言って謝りました」
「そのことは」
「一体」
「そのことはとてもいいことです」
 これが先生の言葉でした。
「何かを壊すことは悪いことですがその悪いことを隠すことはもっと悪いことなのです」
「あの、もっと悪いことですか」
「それは」
「はい、そしてです」
 先生の言葉は続きます。
「正直であることは何よりもいいことなのです」
「何よりもなんですか?」
「正直なことは」
「はい」
 その通りだと。微笑んで答える先生でした。そして。
 その話をしてなのでした。先生は二人に言いました。
「先生は今回は怒らないです」
「悪いことをしたのにですか?」
「それでも」
「悪いことをしたことを正直に言って謝ったからです」
 だからだというのです。
「ですから」
「わかりました。正直に悪いことを認めることはですね」
「とてもいいことなんですね」
「その通りです。壺は校長先生にお願いして新しい壷を貰います」
 このことはこれで終わりでした。そして。
 二人にでした。先生は最後にこう言いました。
「これからも正直でいて下さいね」
「は、はい」
「わかりました」
 二人も先生の言葉にすぐに頷きました。こうして二人は怒られませんでした。ですが怒られる時以上に大切なことをです。先生から教えてもらったのでした。


ペナルティ   完


                     2011・12・28
 
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