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正社員

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第四章

「ああ、君達がアルバイトをしているファミレスか」
「一日十何時間も働いたりとか」
「残業なんてものじゃなくて」
「それも週六日勤務ですよ」
「残業代も出ていないみたいだし」
「あと資格とか取らされて」
「お家でも休む暇ないみたいなんですよ」
 二人は先生に職員室で話した、職員室の中では先生達がそれぞれの仕事をしている。その中での話である。
「シェフの人なんかもっと凄くて」
「店長さんなんてもう」
「今にも倒れそうで」
「あそこはどうなってるんですか?」
「あのファミレスはチェーン店でね」
 そしてとだ、先生は二人に話した。
「経営している企業に問題があるんだよ」
「あの、その企業ってまさか」
「まさかと思うけれど」
「社長が昔ながらの体育会系って言えば聞こえがいいけれど」
 しかしというのだ。
「実際はもうお金のことと社員を使うだけの、完全に下と見ていてね」
「そこまで働かせてですか」
「普通だって思っている人なんですか」
「そうだよ、所謂あれだよ」
 その『あれ』とは何かというと。
「ブラック企業なんだよ、あそこは」
「まさにですか」
「それなんですか」
「実は最近問題になっている企業の一つなんだよ」
 そのブラック企業として、というのだ。
「超過勤務とかでね、社員の人への待遇が問題になっているんだ」
「あの社員の人は」
「やっと正社員になれたからって」
「そう仰ってです」
「必死に働いておられますけれど」
「正社員ね。確かに立場は保障されるけれど」
 それでもとだ、先生は二人に言った。
「どうなるのかな、それだけ身体を酷使したら」
「何かもう」
「どの人も倒れそうですけれど」
「一体どうなるんでしょうか」
「お店の人達は」
「人には限界があるんだよ」
 先生ははっきりと言った。
「それがね」
「ええと、働き過ぎですよね」
「過労ですよね」
 二人もすぐにわかった、その限界が何かということを。
「あのお店確かに」
「もうどの人も凄いことになっていて」
「店長さんやシェフの人なんかお顔が紫になってて」
「もう今にも倒れそうで」
「多分他のお店でもそうだよ」
 二人が働いている店だけでなく、というのだ。
「そうした状況だよ」
「じゃあ何時でも、ですか」
「倒れる人が出てもですね」
「おかしくない」
「そんな状況ですか」
「まあ君達はそこまで酷使されていないみたいだけれど」
 先生は二人の顔色を見てそのことはわかった。
「それでも正社員の人達は危ないね」
「何時誰が倒れてもおかしくない」
「そんな状況ですね」
「先生はそう思うね、だからね」
 それでとだ、先生は二人にこう言った。
「そのお店は辞めるべきかな、折角入ったけれど」
「今のうちに辞めた方がいいですか」
「お店を」
「社員の人達がそんな状況なら本当に誰か倒れてもおかしくないし」
 それにとだ、背んせいは二人に話した。 
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