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英雄は誰がために立つ

作者:昼猫
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Life14 新たなる贋作者

 
前書き
 アキレウスの口調は難しいな。一歩間違えれば光の御子に成りかねん。
 アキレウスはあそこまでチャラくはないだろうけど。 

 
 一誠の下へ急ぎ向かう士郎は、駆け抜けながら焦燥に駆られていた。

 (如何して気づけなかった!)

 山中に近づくにつれて木々も多くなっていったが、そんな事に歯牙もかけないほど自責する。

 ――――なんたる迂闊!

 その考えを中心に自分を責め続ける。
 そんな時でも現実は動き続ける。
 士郎が山の麓まで来ると、爆炎による轟音が耳を打つ。

 「アレか!」

 音を頼りに視線を向けると、空を、山を、駆け抜けている龍王と、常闇の翼で少しづつ羽ばたきながら空中を佇んでいる銀色の鎧に身を包んだ“何か”が激戦を繰り広げていた。

 「――――オオオオオオオオォオオオオオオオオオォオオオ!!!」

 龍王ことタンニーンは、ライダー達の周囲を上下左右と高速で回りながら、威力は低い成れど連撃可能な炎の息吹で攻撃していた。
 因みに、一誠はタンニーンの背中の上で、何とか振り落とされまいと必死に掴まっている状況だ。
 しかし、タンニーンからしてみれば一誠を振り落さない様にと、ギリギリの速度を見極めた上で高速移動していた。
 事実、士郎の何の強化も無しの肉眼での視力で一誠の呼吸の辛そうな表情も伺えた上、タンニーン自身は所々怪我をしていたのも観察できるほどだった。

 そんなタンニーンの包囲砲撃を、銀色の鎧の僅かな隙間から出した常闇を壁状にして全て防ぎきっていく。
 今はライダー達が防戦に回っているが、士郎から見てもタンニーンの方が不利だと言うのが一目瞭然だった。
 だがその状況を何とか打破させようという龍王の苛烈な攻めは止まらない。
 されどその天秤も、タンニーンの必死の攻めが逆効果へと変わり傾いて行く。

 「――――オオオオオオォオオオ、っ!これは!?」
 「ぷはっ!・・・・・・って、タンニーンのおっさん!」
 「漸く捕えたか・・・」

 タンニーンは必至過ぎて迂闊にもライダー達の正面側を通過しようとしてしまい、片腕から出した常闇に拘束されてしまった。
 それからなんとか逃れようともがくが、掴もうとしても空を切り何も掴めないでいた。
 その割には一切タンニーンから離れなかった。

 「クッ!引きはがせん!」
 「此処は俺に任せてくれ!――――ドラゴンショット!!」

 一誠はタンニーンの背中に必死に掴まっている間、何もしていないワケでは無かった。
 自分に出来る事を考えて、取りあえず力を高めるためにBoostをし続けていた。
 いざとなればタンニーンに力を譲渡しようとも考えていたのだ。
 しかし今はそれは無意味だと悟った上で自分自身で攻撃する事にした。
 イメージするは強大な魔力の塊。
 それを左手からライダー達目掛けて打ち出した。
 打ち出された魔力の塊たるや、非常に大きくタンニーンの半分ほどの大きさもあり、これでは流石にあの銀色の鎧に覆われている謎の生き物も呑み込めないだろうと判断したのだ。
 されど、その期待は裏切られはしなかったものの、目標であるライダー達に当たる直前で霧散した。

 「なっ!!?」

 当然一誠は驚いた。
 だが相手は一誠の打ち出した魔力の塊の強さに感心していた。

 「ほぉ、まさか1回分消費されるとは思わなかったぞ?流石は赤龍帝を宿す悪魔と言うところか」
 「何!?」
 「だがこれで終わりなら、止めを刺させてもらうとしよう」

 ライダーは、銀色の鎧に身を包んだ自身の宝具たる謎の幻想種を睨む。
 それを合図に謎の幻想種は口を開くと、見る見るうちに濃密に凝縮された炎――――いや、獄焔とも言うべき魔力の塊を吐き出した。
 それを見たタンニーンは驚く。

 「それは俺の炎!まさか、あの常闇の壁は防いでいたのではなく吸収していたのか!?貴様はそれを凝縮させて俺達に放つと!!?」
 「余に代わっての説明、実に結構。では2匹纏めて逝くがイイ」

 ライダーが手で指示を出したところで、謎の幻想種は獄焔をタンニーン達に向けて解き放った。
 それに対してタンニーンは、すかさず一誠を懐に仕舞う為に掴み上げた。

 「タンニーンのおっさん!?」
 「いいから黙ってい、っ―――グッガァアアアァアアアアアアアアアア!!!」

 タンニーンは獄焔を喰らうも、一誠を庇いながら山中に落ちて行った。
 その様はまるで翼をもがれた堕龍の如くに。

 「迷っている暇はないか・・・!」

 遠方から一部始終を見ていた士郎は立ち止まり、ある決心をする。

 「投影、重装(トレース・フルクタル)!!」

 ある宝具を二種類投影する。
 
 「フン!!」

 投影した内の一振りを、魔術と仙術と魔法で強化した力によりやや斜め上に向けて、思いっ切り投げる。
 だが如何やらそれだけでは終わりではない様だった。


 -Interlude-


 「――――おっさん!おっさん!!」
 「グッ、ガッ、ゴッ・・・・・・・・・・・・ゴフッ!」

 何とか一誠を庇いきったタンニーンは、所々黒ずんでいる箇所が多く見られた。
 そして見た目以上に内部のダメージがひどいのか、吐血した血も黒ずんでいた。

 「ふむ、如何やら致命傷には至らなかったか。流石は腐っても龍王よな」
 「ッッ!?――――テメェ!!」

 上空からゆっくりと降下して来たライダーに向けて、一誠は殺気を向ける。
 しかしこの状況では負け犬の遠吠えと何ら変わりなかった。

 「その殺気だけは1人前の様だが・・・・・・魔力も僅かしか残っていないお前に、この状況を如何にか出来ると?」
 「クッ!」

 変えようのない事実を指摘された一誠は、歯噛みするしかなかった。

 「本来は足止めだけで十分だったのだが、お前達のような強力な悪魔を始末できるのであれば越したことは、ない!」

 ライダーの声に応えるように、謎の幻想種は右前脚を禍々しい程に巨大化かつ、凶悪化させる。
 まるで今からお前たちを、これで押し潰すし滅ぼすと言外に宣告するかのように。

 「いくら悪魔とは言え、敵を苦しめる趣向を持ち合わせてはおらんのでな。余がお前たちに送れる唯一の慈悲として・・・・・・せめて楽に滅してやろう」

 狙いを一誠とタンニーンに定めて急降下するライダーと謎の幻想種。

 「クッソォオオオーーーーーー!!」

 瞼を閉じた一誠は、悔しさに溢れながら叫ぶしかなかった。

 (・・・・・・・・・・・・ん?)

 だが巨大で凶悪の常闇の足は、一向に自分たちに降りてこなかった。潰してこなかった。
 確かめるために瞼を開けると答えは直そこにあった。

 「し、しししし、士郎さん!!?」

 自分たちを庇うように、前に士郎は立っていた。
 しかもあろうことか、常闇の足を片腕のみで受け止めていた。
 しかしあまりにも巨大な足のため、針状の部分は士郎に突き刺さっていた――――否、士郎のは届いていたが当たっているだけで士郎の体のどの部位にも刺さってはいなかった。

 「むぅ!藤村士郎!?」
 「どうやって・・・・・・!?」

 よくよく見れば、士郎の体全体が煌びやかに輝いているようにも見えた。

 「一誠は無事だな。タンニーン殿のその姿は・・・・・・一誠を庇ってくれたからか」
 「は、はい。致命傷じゃないから何とか大丈夫だと思いますけど・・・・・・って、そうじゃなくて!何なんです、その体は!!?」
 「後で、話す!!」

 士郎はもう片方の手も使い、足から力を送り出し背筋から両腕部まで力を流して筋力を増幅させた上で、両掌から相手を突き飛ばすような衝撃を飛ばす。

 双纏手

 主に相手の防御をこじ開ける技として使用される、八極拳の一手である。

 「ぬぅ!?」
 『!』

 その威力により前足が一瞬浮いた。
 その隙を逃さぬ様に懐に飛び込んで人間で言う鳩尾部分に掌を向ける。

 「劣化・絶世の名剣の嵐(デミ・デュランダルロヴェーショ)!!」

 言うと同時に、煌びやかに光り輝く士郎の掌から幾本もの絶世の剣(デュランダル)に似た西洋剣を顕現させて叩き込む。
 その光景はまるで豪雨の様だった。とは言え、横向きなのでこの場合ガトリングの方が適切かもしれなかったが。

 『!?』
 「大した威力だが、その程度でこれ(・・)に聞く筈も無――――」
 「壊れ乱れる幻想(ブロークン・ファンタズム・チェインバースト)!!」
 「な!?」
 「士郎さん!!?」

 内包する神秘を爆発させて叩き込むのが壊れる幻想(ブロークン・ファンタズム)だが、複数の爆発をつなぎ合わせて威力の範囲を増加させるのが壊れ乱れる幻想(ブロークン・ファンタズム・チェインバースト)だ。
 その結果、ライダーの宝具たる謎の幻想種はダメージこそ無いモノの、爆発の威力により距離を離された。
 そしてもう一つ、当然その場で爆発させたので士郎自身にもその爆発の威力が纏わり付く事となった。
 一誠が驚いたのは、この事だ。
 こんなミスを士郎がするはずがないと思っていたので、余計に驚いていた。
 しかし爆発による煙が晴れた時には、士郎は無傷で立っていた。

 「無傷!?」
 「ほぼ零距離の筈だぞ?」

 先ほど以上に驚く2人の反応にも歯牙にもかけず、ライダーに向かって行く。

 「正面!?舐められたものだ!!」
 「アレはタンニーンのおっさんの!?まだ残しといたのか!」

 ライダーの手の合図により、謎の幻想種の口からはタンニーンに食らわせた時よりも3回りほど小さい焔の玉を吐き出して、士郎にぶつける為に放つ。
 されど士郎は躱すそぶりを見せずに、自ら当たりに行った。
 そして無傷のまま突破した。
 この事にまたライダーと一誠(2人)は大層驚く。

 「えぇええ!!?」
 「あり得ん!龍王の焔なのだ、むぅう!!?」

 自分が跨いでいる宝具の意図も無い行動と言うか衝撃に、慌てる。
 何が起きたかと言えば、士郎が自ら焔の玉にぶつかる直前にライダーの意識の死角を突いて、謎の幻想種の口内に向けて先ほどの劣化・絶世の剣を2本ほど投擲させた後、壊れた幻想を用いて体内にて爆発させたのだった。
 しかし謎の幻想種は中も外も強度が高いのか、大したダメージは無いが衝撃だけは凄まじかったようで、大きな隙が自然と発生する。
 そんな敵の隙が見えている処に、空から岩が落ちて来た。
 いや、よくよく見れば斧の形状にも似ていて、手で掴み携える事の出来る柄の部分まであった。
 それを士郎は警戒する事も無く掴む。
 瞬間、その岩斧は、士郎と同じく煌びやかな輝きを放つように変化した。
 その変化にも構わずに、斧を振るための最適な姿勢で構える。

 「――――投影、装填(トリガー・オフ)。――――全工程完了(セット)

 士郎は今だ態勢を整えていないライダーを一瞥して、敵の宝具たる謎の幻想種に狙いを定める。

 「―――――是、射殺す百頭・不滅(ナインライブス・ブレードワークス・イモルタル)!!」

 ライダーの宝具である謎の幻想種は、先の衝撃で躱す動作も出来ずに、煌びやかな美しさを纏った岩斧による神速の九連撃を余すとこなく受ける羽目になった。


 -Interlude-


 時間を少し遡る。
 此処は旧首都ルシファードの北の門前。
 そこにはサーゼクス・ルシファーを始めとするセカンドにベオに炎駒がいた。
 彼らの目の前には駿足のアキレウス(レウス・クロス)が後にするところだった。

 「いやーすまないね。君のおかげで助かったよ。レウス」
 「別に構いやしませんよ。俺は士郎の奴い頼まれて来ただけでね」

 最初祐斗と炎駒を連れてきた時は、非常時だったので警戒されたが、炎駒が事情説明をして警戒を解除されて祐斗は治療のためにメディカルセンターに運ばれて行った。
 因みに祐斗からも事情を聴くために、沖田総司が同伴している。
 そして本人からも聞くためにレウスと直面しているのがサーゼクスと言うわけだ。
 魔王が直々に。人払いしてまで。
 この事がグレイフィアにばれたらと内心では恐々しているのは、サーゼクスに同伴している眷属たちだった。
 因みに軽口を叩き合っているのは、本人同士が敬語は要らないと提案しあったためである。

 「それでも報酬を貰えるって言うなら、今回の俺とあっちに居る俺と同様に士郎に頼まれた奴の不正の入界を何とかして欲しいって位だな」

 士郎は今回、独断でフィリップ作の特殊転移魔法陣により、援軍――――と言うより保険のために何の理も無く2人に来てもらっていたのだった。
 もしこれで何かあれば士郎に全責任が課せられてしまうのだった。
 しかしサーゼクスは、これをあっさり許す。

 「今回は緊急時だったからね。何とか出来るだろうし、その様に手配しておくよ。それにしても、君と士郎は如何いった関係何だい?」
 「ん?それは――――てっ、タンマ」
 「うん?」

 サーゼクスの疑問に虚実を織り交ぜて応えようとしたレウスだったが、士郎から念話が届く。
 この念話は、叛逆の騎士モードレッド(モード)に一方的に伝えてから送ってきているモノだ。

 「――――――は?おい、ちょ・・・・・・こら!あっ!?切りやがった!」
 「如何したんだい?今の感じは誰かからの念話だと思ったけど?」

 如何やら士郎は、レウスにも一方的に言いたい事を告げて念話を切った様だ。
 それに対してレウスは露骨に憤る。

 「――――ああ、士郎の奴からだよ。暫くの間此処で護衛してくれって頼んで、一方的に切りやがった!アレが物を人に頼む態度かってんだっ!」
 『護衛?』

 レウスの護衛と言う言葉に反応するサーゼクスの眷属らは、疑問を呈する。
 その疑問に答えるレウスだが、1人サーゼクスは別の疑問が胸中を満たしていた。

 (如何いう事だ?確か士郎の念話に関する魔法の才能は残念だったはずなのに・・・」
 「旦那、思った事が途中から口に出てますぜ?」
 「え?・・・・・・あ!」

 セカンドの言葉に我に返るサーゼクス。
 実を言えば、ほぼ聞こえていたのだが。
 それを聞こえていたのはレウスも同様だったので疑問に答える。

 「それに関しちゃあ・・・・・・まぁ、おれ(達)と士郎は特別だからな・・・」
 「・・・・・・・・・・・・え?」

 レウスの口から出た言葉を反芻させる。

 ―――――特別ーーー、特別ーーー、特別ーーー親友・・・・・・・・・・・・!?!?!?

 如何やらいつもの暴走が始まった様だ。

 「―――――な・・・んだ・・・・・・と・・・!!!」

 ――――私に対しては今でも敬語なのに、レウス()とはため口で肩を抱き合うほどの仲なのか!?歳は同じ位じゃないか!!

 妄想がふつふつと暴走しだしたサーゼクスは、士郎とレウスとフィリップ(3人)が仲良くため口で語り合っている所を、自分だけのけ者にされているヴィジョンが脳内を埋め尽くされつつあった。

 「・・・・・・・・・・・・はっ!?――――――――――クッ!!」

 漸く現実世界に戻って来たサーゼクスは心底悔しそうに、そして自分だけ士郎から差別されていることに悔しそうにレウスを睨み付ける。
 外見年齢は確かに同じ位だが、正確な実年齢では天と地の差があるのだが、サーゼクスの頭の中にはそんな事実を消し飛ばしているらしい。

 そんな嫉妬に駆られたような視線を受けるレウスは、先程まで普通に話していたはずなのに何故か殺気を向けられている現実に困惑した。
 この事実こそ、正式な理不尽と言えるのではないだろうか。
 因みに眷属らは、レウス以上に困惑していた。


 -Interlude-


 「―――――クッ!!」

 自分の宝具が受けた敵の攻撃のあまりの衝撃さにより、ライダーは落馬の様に転がり落ちた。

 (拙い!!)

 転がり落ちたライダーは、咄嗟に自身の宝具の状態を見るために起き上がる。
 ライダーの視界に入った光景は、危惧通りのモノだった。
 人間で言う上半身部分の鎧はボロボロ状態であり、半壊していた。
 あの銀色の鎧はライダーの宝具の一部では無く、レヴェルのさらに上の者からの協力者と名乗る研究者、Mr.TEA(ミスター・ティー)と言う男が制作したものだった。
 これによりライダーの最強宝具であるそれ(・・)は、特性上制御が不完全なのを完全な形に仕上げる事に成功したのだ。
 但しメリットだけでは無く、デメリットとしてランクがEXからA⁺⁺に落ちてしまったのだ。
 痛し痒しではあったが、不確定要素を取り除けるのであれば仕方がないとも納得したが。
 後、これは正面に居る士郎しか解らない事だが、兜は完全に崩れてほぼなかった。
 そして、それ(・・)を見据える士郎は困惑に囚われていた。

 「コイツは何だ(・・)・・・!?」

 士郎の見たモノは、深く深くただ深く――――。重く重くただ重く――――。暗く暗くただ暗く――――。濃く濃くただただ濃い――――――――――。

 黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒―――――暗黒なる闇・・・・・・だった。

 それ以外は赤く鋭い双眼だけだった。
 そしてそれ(・・)は、顔を士郎から背けてライダーへ向き、口を大きく開く。
 その現実を目の前に、即座に掌を前へ向けて躊躇いなく宝具を展開する。
 ライダーの宝具は全部で三つあるのだが、二つの内一つは僅かに間に合わないと判断してもう一つを使う事を決めた。
 ところでライダーの最強宝具には重大な欠点がある。
 それは、ライダー自身が跨がっていなければその宝具を仕舞う事も操る事も出来なくなると言う、重大過ぎる欠陥だった。
 それはつまり、ライダーの最強宝具(それ)は自らの意思で敵を決めると言う事だ。
 勿論その中にはライダーの仲間や部下、ひいてはライダー自身(・・)も含まれている事だった。

 「死苦痛死苦痛死苦痛死苦痛死苦痛死苦痛死苦痛死苦痛(ルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオオオ)!!!」

 まるでライダーを飲み乾さんばかりに吐き出される深く重く暗く濃い―――――闇。

 「仲間割れ!?」
 「ライダー・・・・・・に向けて放った?」

 ライダーの宝具のそれ(・・)の行動に一誠は驚き、士郎は怪訝な表情を作った。
 そんな敵2人の反応をよそに、それをライダーは、回数制限のある宝具を躊躇いなく使う事で迎撃する。

 「二十の秘術(イブリース・カーノーン)!!!」

 ライダーの宝具の展開により、あれだけの密度を誇る暗黒が一瞬にして霧散する。
 その迎撃に間髪入れずに、先程は間に合わないと判断した宝具を顕現させる。

 「敬虔なる悪縛(シーダースプ)!!」

 ライダーの真名解放と声とほぼ同時に彼の周りの空間が数か所ほど歪んだ後に、瞬時に穴が開き、そこから幾つもの鎖が出現して、反逆行動をした謎の宝具(それ)に向けて殺到する。

 「苦苦苦死死死死死死死死死死(ルォオオオオオオオオォオオオ)!!?」

 ライダーの宝具たる鎖を全体に巻き付けても直にはは大人しくならない“常闇の何か”だが、徐々に抵抗を弱めていく。
 ライダーの最強宝具は、本来使う場合はこの鎖――――敬虔なる悪縛(シーダースプ)を使い、無理矢理に操作させなければ操れないのだ。
 その為、最強宝具を使う場合は敬虔なる悪縛(シーダースプ)は事実上使用不可となる。
 そう言う理由もあってか、Mr.TEA(ミスター・ティー)の作成した鎧はメリットの方が多かったのだが、この程度では今後にも支障をきたすので強化を要請しようと心に決めたライダーだった。

 「漸く大人しくなった、なっ!?」

 やっとの思いで大人しくさせたライダーの最強宝具(それ)が、地面から宙へと吹き飛んでいった。
 その原因を作ったのは敵である藤村士郎だ。
 考えなくともこんな大きな隙を逃す馬鹿もいるまい。

 「お、のれっ!」

 しかし道理と感情は別であり、忌々しげに舌打ちをしながらライダーの最強宝具(それ)に再度跨る為にその場を跳躍する。
 確かにライダーは生前、王ではあったが今のその身は英霊である。
 故に、生前と同じく白兵戦のレベルは高くはないが、身体能力はそこらの下級悪魔や中級悪魔を遥かに凌ぎ、才能に溺れて胡坐を組んでいる上級悪魔程度の身体能力も超えている。
 そんな運動能力を駆使すれば難しい事では無いのだが、またもやここで邪魔が入る。
 敵がいるのだから当然だが。

 「フン!」
 「ゴハッ!?」

 目標を捉えるために隙を作ってしまったライダーに、士郎の正拳が炸裂して吐血しながら吹き飛んでいく。
 しかし不幸中の幸いな事に、既に手元の鎖とライダーの最強宝具(それ)を拘束した鎖を繋げていたので、吹き飛びながらも如何にかまたがることに成功した。

 「チッ」

 それを見た士郎は即座に追撃に入ろうとしたが、ライダーは撤退する事を既に決めていたのか、未だにライダーの最強宝具(それ)と共に宙を吹き飛んでいながら転移魔法陣を出現させる。
 そもそも、士郎が自分の下にこうして来ているのが何よりの証拠だとも考えていた。

 (余を此処まで追い詰めた称賛と共に、今日の屈辱は忘れぬぞ!藤村士郎!そして悪魔共っ!)

 悔しげな表情を作りながら転移して消えて行くライダー。

 「逃したかっ!」

 自慢の視力で辺りを見回すも、視認できない事に士郎も悔しげにした唇を噛む。
 しかしいつまでも名残惜しんでもいられないと考えて、自身の状態を平常に戻して重傷を負っているタンニーンの元へ急ぐ。

 こうして、敵サーヴァント達による冥界襲撃を撃退する事には一応成功したのだった。
 しかしこの襲撃などは、まだまだ黒幕たちの思惑――――掌上の許容範囲でしなかった。
 そんな事を知らぬ若者たちは今日も必死に生きていく。 
 

 
後書き
 士郎の新技の詳細につきましては、最低でも原作5巻終了位に載せようと思います。多分。
 この新技のリスクやリミットばかり思い付く今日この頃。

 魔法先生ネギまに出て来る術式兵装の士郎バージョンです。
 士郎のためにと言う建前を下に、興味と好奇心からゼルレッチが改造した士郎の新しい戦闘方です。
 上記で載せてるようにリスクやリミットが先行して思いつきました。 
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