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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第二十五話 父親

全達が道なりに進んでいく。

「どうやら、ここで行き止まりのようだな……」

全は目の前にあるとブラを見つめながらそう言う。

「じゃあ、さっきの人はこの中に……」

るいも手で胸元を押さえながらそう呟く。

恐らく、緊張しているのだろう。この先で先ほどの写真の真相が分かるかもしれないのだ。

「準備はいいか?」

「「………………うん」」

全はアリシア達に準備は出来たかと質問すると少しだけ間をとってからうん、と返事をする。

「それじゃ……開けるぞ」

全はそう言って扉の取っ手に手を掛けてから、力を入れてすぐに開ける。

全は部屋の中に懐に隠し持っている銃を向ける。

部屋の中は真っ暗だった。しかし全の視界からも、聴覚や嗅覚からも異常はないと判断する。

「いいぞ、入って来い」

その言葉を受けてアリシア達も部屋の中に入る。

と、次の瞬間

パパッ

「「「「っ!?」」」」

四人が入るのと同時に電気がつく。

「やあやあ、諸君。よくあのキメラ君を倒せたね」

先ほどの男が奥からやってくる。

あの部屋は薄暗くて分からなかったが、この男はここの研究者だったのだろう。

スーツの上から白衣を着ている。

瞳の色は透き通るような蒼色で髪は金色だ。色合い的にはアリシア達の髪色に似ているだろう。

「貴様、あのキメラに一体いくつの生物のデータを入れた?」

全は男にそう問いかける。あの時見た色は真っ黒だった。真っ黒になるには最低でも十色以上は必要だ。

素体となったのはあの時のこの男の発言から予測出来る。

問題はあの体に表れていた他の動物達の特徴だ。そしてあの体には様々な動物達の特徴があった。

それはつまり……それ程の動物達をあの体に融合させたという事だ。

「うぅん……覚えてないや、君は自分が踏み殺してしまったかもしれない蟻の数を数えているのかい?」

「お前……!」

その言葉を聴いたるいは怒りに身を震わせる。

この男は命をその程度にしか感じていないのだとはっきりとわかった。

「なんだい、何でそんなに怒るのか。僕には訳が分からないね」

「お前ぇぇぇぇぇぇぇ!!!「待ってっ!!!!!」……アリシア?」

るいが怒り任せに向かおうとした瞬間、それよりも大きな声でアリシアが止める。

「ねぇ、貴方……母さんと、プレシア・テスタロッサとどういう関係なの?」

「ん?君のお母さんとかい?そうだねぇ……」

男は少し考える素振りをすると

「僕は……彼女の夫だよ♪」

「……………………え?」

その言葉に男以外の全員が思考を停止させる。

るいは恐らくプレシアの夫がこんな所にいたという事に。

アリシアとフェイトはまだ自分達の父親がまだ生きていたという事実に。

全は、ありえない事に。

(バカな……一度俺は彼と会っている……あの人はこんな性格ではなかった、それに……)

「そ、そんなの……嘘、だよね?貴方が?お父さん?」

「嘘じゃないさ。事実だよ、僕の名前はアリット・テスタロッサ。正真正銘、君たちの父親さ」

「な、なんでこんな事っ!?」

「なんで、か……研究者としてはね。一度始めた研究は完成させるまで退けないんだよ、それが研究者の性。だから……プロジェクトFの完成を目指しているのさ」

アリットは腕を広げながらそう言う。

まるで、これは壮大な計画だと揶揄しているようだった。

「完成させるには色々と犠牲にしなきゃいけなかった……プレシアと縁を切ったのもその一つさ。彼女は最終的に研究を頓挫させたけど、僕が引き継いで彼女の分まで完成させてあげるのが今の目標かな?」

「……………………」

「だ、だからってこんな事していいわけない!」

るいは慌てて反論するが

「これはこれからの未来に必要な研究なのさ。それにこんな事していいわけないって……それじゃ君はフェイトの存在を否定するんだね?」

「えっ?」

「フェイトはプロジェクトFの成功体だよ?プロジェクトFを否定するって事はフェイトの存在も否定するって事さ」

「そ、それは……」

るいも何も言えなくなってしまう。

「さあ、二人とも。未来の為にも、僕ら家族の為にも僕の手を取ってくれ」

「と、父さん……」

「お父さん……」

二人は恐る恐るといった感じでアリットの手を……取れなかった。

「「え??」」

「取る必要はない」

二人の手を止めたのは全だった。

全はすぐさま動いて二人の手を止めたのだ。

そして全は右足を軸にして後ろ回し蹴りをアリットに喰らわせる。

「ぐっ!?何するんだい、僕と娘との交流を邪魔するなんて……」

全に吹っ飛ばされたアリットはそう言ってもう一度手を伸ばそうとするが

「そんな汚らわしい手で、二人に触れるな!!」

全は吼える。

「なあ、そろそろ下手な芝居は止めてさっさと本題に入らないか?ほしいんだろ、プロジェクトFの成功体であるフェイトとそのオリジナルであるアリシアが」

「一体何を」

「もうお芝居は止めにしようって言っただろ?アリット……いや、()()()・カルヴァドス」

「っ……いきなり何を……?」

スバル・カルヴァドス。全は確かにアリットの事をそう呼んだ。

「スバル・カルヴァドス。アリット・カルヴァドス、現アリット・テスタロッサの弟であり同じく研究者。兄の後を追うように研究者になり、兄と共に研究を進めていた。しかし、プロジェクトFをプレシアが提唱した直後、違う研究所に引き抜かれその後の動向は不明」

「へぇ、弟の事をそこまで……もしかして、弟の知人とか?」

「ええ、アリットさんとは()()()()()で親しくしていましたから。貴方の事も高く評価していましたよ「よく出来ていた弟」だとね」

「だから、僕はアリット」

アリットは反論しようとするが

「だが。貴方は模倣するにはいくつか足りなかったみたいですね、まず一つ、アリットさんは俺と出会った時には既に一人称を『俺』に変えていました。貴方がアリットさんの下を去る頃に変えたそうです。二つ目、いくら兄弟でも声帯までは変えられない、アリットさんはもうちょっと低い声でしたよ」

そこまで言うと、アリット……いや、スバルは喉を抑える。

「そして三つ目……正直、これで分かったといっても過言じゃない……アリットさんは自身の目の色……つまりはその蒼色の瞳をひどく嫌っていた。人前ではカラーコンタクトを使う程だ。そしてそれは家族であっても例外ではなかった。蒼色の瞳である事を知っているのは……今ではプレシアさんと俺位だろう」

「っ!!???」

その言葉を聞いた瞬間、うろたえ始めるスバル。

「さすがに家族ぐるみで知らないってのは知らなかっただろう?お前がどこでその情報を知ったのかは知らないけどな」

「た、橘……?」

「橘……?」

フェイトとアリシアは気が動転してしまっている。

それもそうだろう、目の前の人物が父親ではないと分かった上に全の発言。

『家族ぐるみで親しくしていましたからね』

それはつまり……過去に出会っているのではないかという事だ。

しかし、自分達にそんな記憶はない。

「……くっくっく……あーはっはっは!!!」

すると、スバルは突然、笑い出した。 
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