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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―終局―

 
前書き
第三期完 

 
 ――何度か経験した異世界への移動。以前は強制的やエクゾディオスの力であったが、今回の移動は《スピード・ウォリアー》……いや、機械戦士たちによるもの。デュエルディスクに装着された【機械戦士】デッキが守ってくれることを感じながら、俺は異世界の狭間を移動していく。十代に翔、クロノス教諭の存在もそれぞれ近くに感じながら、やがて俺たちは新たな異世界に到着する。

 目を覚ますとそこは、一面が霧で覆われているような異世界。遠くどころか近い距離すらも見えないが、人間の顔だけははっきり見える……不思議な場所だった。十代にクロノス教諭、翔も無事に来ていることを確認すると……それより向こうにいる、二人のことを視認する。

「やあ十代……早かったじゃないか……」

「……ふん」

 対峙するアモンとヨハン。ただしヨハンはかつてのマルタンのように、ヨハン自身の意識はなく、カードの精霊――《ユベル》に乗っ取られている。今にもデュエルが始まりそうな一触即発だったらしく、そこに俺たちが割り込んできた、ということらしい。

「今さらお前らが何をしに来た? 覇王の抜け殻に、何の力もない奴が」

「決まってるだろ」

 エクゾディオスの手のひらに乗るアモンがこちらを睨みつけ、言外にお前らはここに来る資格はない、と見下してくる。その言葉はただの驕りではなく、エクゾディオスの力も相まって、本当の王のようでもある。だが、それに屈することはなくデュエルディスクを構え……俺はここに来た意味を宣言する。

「デュエルしに、来たんだ」

 そう宣言する俺に対し、アモンは失笑で応えた。今さらお前とデュエルする気などないと、言葉を交わさずとも分かる雰囲気だ。……いやそれどころか、むしろユベルとのデュエルの邪魔が入ったことについて、怒りすら感じられるほどだ。

「何を言うかと思えば……」

「いいじゃないか、王様」

 すると、ヨハン――いや、ユベルが予想外にも乗り気な表情で、座っていた椅子から立ち上がってデュエルディスクを展開する。……その視線はただ一点、十代にのみ向けられている。

「さっきまでは君と戦う気だったけど、十代が来たんなら話は別だ。君は後回しだよ、王様……なあ十代?」

「ユベル……」

 怒りや悲しみ、様々な感情をごちゃ混ぜにした十代の瞳が、十代に語りかけるユベルを見据える。もはや話し合いが通じる相手ではないと、十代もまたデュエルディスクを展開する。

「そういうことだそうだが?」

「ふん……確かに、ユベルと戦う前の肩慣らしに、一度負けた借りを返すのも悪くはない。いいだろう黒崎遊矢。真のエクゾディオスの力を見せてやろう」

 以前のエクゾディア・ネクロスのことを言っているのか、アモンはそう言うとエクゾディオスの手のひらから地上に飛び降り、エクゾディオス自体の姿も消えてデッキへと戻っていく。俺にアモン、十代にユベル。それぞれ別々に対峙すると、あとはデュエルを開始するのみとなる。

「翔にクロノス先生は下がっててくれ! ……お前まで消えるなよ、遊矢……!」

「そっちこそ、な」

 短く最後に十代と言葉を交わすと、お互いがお互いのデュエルの邪魔にならぬように、それぞれ一対一で対峙する。そうするとこの世界はよくできたもので、少し離れただけにもかかわらず、十代やクロノス教諭の姿はまるで見えない。

 ……今の自分に見える物は対戦相手であるアモンだけ――

「わざわざ死ににくるとはな……」

 ――いや、そのアモンの先にあるエクゾディオスを見据える。あの力を再び手中に収めることで、みんなを助けて元に戻す。そのためだけに今まで戦ってきたのだから……!

『デュエル!』

遊矢LP4000
アモンLP4000

「僕の先攻」

 アモンのデッキは恐らく、先の亮のデュエルの際からあまり変わっていない。完成した《究極封印神エクゾディオス》を特殊召喚し、それらで攻め込んでいくデッキだ。アモンなりのカスタマイズは入っているだろうが、本筋はそうだろう。

「僕は魔法カード《融合徴兵》を発動。エクストラデッキの《クリッチー》を見せることで、デッキから《クリッター》を手札に加えることが出来る」

 融合素材をデッキから直接サーチする魔法カード、《融合徴兵》によってかの《クリッター》が早くも手札に加えられる。もちろんそれを融合召喚に使うことはないだろうが、《融合徴兵》にはサーチしたモンスターを、そのターンのみだが実質使用不可にするデメリットがある。ならば使い道は……

「僕はモンスターをセット。さらにカードを二枚伏せてターンを終了」

 《融合徴兵》で封じられるのは、サーチしたモンスターの効果の発動と召喚のため、セットすることはかろうじて出来る。アモンはこうして挑発しているのだ……エクゾディアが怖くなければ、攻めてこいと。

「俺のターン……」

 フェイクなどと考える必要もない。あのセットモンスターは間違いなく《クリッター》であり、リバースカードはそれを使い回すカードで、速攻でエクゾディアを揃えようとしているのだ。

「……ドロー!」

 ……だからといって、初手からアモンに呑まれてはそこで終わりだ。俺に神のカードに打ち勝つ力を……機械戦士……明日香!

「俺は魔法カード《融合》を発動!」

「……なに?」

 俺のデッキを知らないアモンが眉をひそめる。そんなアモンの探るような視線を感じながら、俺の背後で時空の穴が生成されていく。

「俺は手札の《エトワール・サイバー》と、《ブレード・スケーター》を融合! 現れろ、《サイバー・ブレイダー》!」

 時空の穴から滑るように飛び出してくる銀幕の女王。正確には機械戦士ではないが……彼女のために戦うこのデュエルに、これほど相応しいモンスターはいない。

「なるほど、機械戦士……か」

 俺の【機械戦士】に《サイバー・ブレイダー》が入っていたことを調べていたのか、アモンは合点がいったようにそう呟いた。一度アモンとは【機械戦士】でデュエルしたことがあるため、これでこちらの手の内もあちらにバレたことだろう。

「バトル! 《サイバー・ブレイダー》でセットモンスターに攻撃! グリッサード・スラッシュ!」

「ほう……来るか」

 アモンのフィールドに伏せられたセットモンスター――やはり《クリッター》が《サイバー・ブレイダー》に切り裂かれた。当然アモンには痛くも痒くもなく、その効果が発動される。

「《クリッター》が破壊されたことにより、デッキからデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。僕が選ぶのは、もちろん《封印されしエクゾディア》」

 《クリッター》のサーチ効果が発動し、まずは一枚、といった調子でアモンは《封印されしエクゾディア》を手札へと加える。この結果は覚悟の上だ、今から怖がっていても仕方がない……と、俺はさらにカードを一枚デュエルディスクに差した。

「カードを一枚伏せ、ターンを終了」

「その前に《リミット・リバース》を発動する。墓地から《クリッター》を特殊召喚」

 俺がカードを一枚伏せてターンを終了――かと思いきや、アモンのフィールドに再び《クリッター》が特殊召喚される。攻撃力1000以下のモンスターを墓地から特殊召喚する、という自分も多用するカードのため、効果もアモンの狙いもよく分かるが……それを止める手段は存在しない。《クリッター》が特殊召喚されたことにより、エンドフェイズから巻き戻しが発生するものの、俺にこのターンで出来ることはない。

「……このままターンエンド」

「僕のターン、ドロー」

 アモンがカードをドローし、メインフェイズになるとともに《クリッター》が破壊される。こちらが何をしたわけではなく、もちろんアモンが自発的にやったことだ。

「《リミット・リバース》の効果により、《クリッター》は自壊。さらにエクゾディアパーツを手札に加えさせてもらう」

 《リミット・リバース》は蘇生したモンスターが守備表示になれば、そのモンスターを諸共に破壊する効果があるが、《クリッター》は破壊されるのが仕事だ。さらにそのサーチ効果を発動すると、アモンの手札にまたもやエクゾディアパーツが加えられる。

「モンスターとカードをセットし、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 やはりアモンはまだ動こうとはせず、守備に徹したままエクゾディアを揃える算段だ。セットモンスターが一枚、リバースカードが二枚と、あれらがもしも一枚一枚エクゾディアパーツを揃えるカードなら、俺はこの時点で敗北が決定する。……そうならないところを見るに、そうではないらしいが。

「《サイバー・ブレイダー》でセットモンスターに攻撃! グリッサード・スラッシュ!」

 今はそのセットモンスターを攻撃するしかない。《サイバー・ブレイダー》の二撃目はまたもあっさり決まり、いとも簡単に壁モンスターを破壊する。

「セットモンスターは《冥界の使者》。このカードが破壊された時、デッキからお互いにレベル3以下の通常モンスターを手札に加える。僕は《封印されし右腕》を」

「俺は《チューン・ウォリアー》を……カードを一枚伏せてターン終了」

 《サイバー・ブレイダー》が破壊したカードは《冥界の使者》。お互いにレベル3以下の通常モンスターを手札に加える、というサーチする効果を持っており、アモンはもちろんエクゾディアパーツを。俺はチューナーモンスターである《チューン・ウォリアー》を手札に加えた。そしてそれ以上のことをすることはなく、こちらもカードを一枚伏せたのみで、ターンを終了する。

「僕のターン、ドロー……何を考えている?」

 アモンがドローするとともに、こちらへの鋭い眼光を伴って問いかけてくる。エクゾディアのような特殊勝利デッキを相手にする際は、速攻が最も有効かつ勝てる確率が高い手段。……にもかかわらず、《サイバー・ブレイダー》を融合召喚したのみで、とりたてて動きのない俺に対し、アモンが探るような視線を向けてきていた。

「……まあいい。神の前では無力だ。リバースカード、《ブレイク・ザ・シール》を発動!」

 アモンのフィールドに伏せられていた、二枚のリバースカードがそのかけ声とともに同時に発動する。どちらのカードも同名の《ブレイク・ザ・シール》。その効果は……

「《ブレイク・ザ・シール》をフィールドから二枚墓地に送ることで、デッキからエクゾディアパーツを手札に加える」

 ……エクゾディアパーツ専用のサーチカード。その効果は永続罠という特性上やや遅いものの、エクゾディアパーツを指定してサーチする、という特性だけでその短所を補って余りある。

 そしてこれで、四枚のエクゾディアパーツがアモンの手札に加えられた。一枚ずつしかデッキに投入出来ない、というエクゾディアの特性から、サーチ以外でアモンの手札に加えられていないのは……不幸中の幸いといっていいのか。

 アモンの手札は五枚であり、そのうちの四枚はエクゾディアパーツ。そして残る一枚は不明だが、恐らくはさらに行動する為の布石のカード。このタイミングだ――と、俺は遂に動きだす。

「伏せてあった速攻魔法《手札断殺》を発動!」

「……何?」

 手始めに発動したカードは多用するカードの一つ、速攻魔法《手札断殺》。もはや説明不要ではあるが、お互いは手札を二枚墓地に捨て、さらに二枚ドローするという効果を持つ。これでアモンの手札のエクゾディアパーツは墓地に送られ、完成が遅れることとなる――

 ――などということはありえない。むしろ、エクゾディアパーツの完成を助けることになるのは自明の理だ。わざわざサルベージが容易なエクゾディアパーツを墓地に遅らせてやり、相手の損失もなく手札交換をさせてやるのだから。

「貴様……」

 それが分からないアモンではなく、二枚の手札交換を果たしながら、こちらの目論見を探ろうとする。今の《手札断殺》だけで出来たことと言えば、ただの時間稼ぎに過ぎない――いや、アモン相手なら時間稼ぎにもならない。

「……あんまりカイザーを失望させるなよ、黒崎遊矢」

 命を賭けてエクゾディアに立ち向かった、カイザー――丸藤亮の名をアモンは口に出した。カイザーは俺と十代にメッセージを託して散った。アモンにそう言われるまでもない……!

「その目つき……何か考えがあるらしいが……神の前では無力だ! 魔法カード《究極封印解放儀式術》を発動!」

「――――!」

 これがエクゾディアパーツを墓地に送っても、時間稼ぎにもならない理由――手札と墓地に、それぞれエクゾディアパーツが五枚揃っている、ということが条件の魔法カード。先程までは四枚しかエクゾディアパーツを揃えていなかった筈だが、先の《手札断殺》で最後のパーツを手札と墓地に揃えたのか。

「手札と墓地に五枚のエクゾディアパーツがある時、墓地のエクゾディアパーツをデッキに、手札のエクゾディアパーツを二枚まで墓地に送ることで、デッキから《究極封印神エクゾディオス》を特殊召喚する!」

 遂に降臨する神のカード。厄介な手順はまるで降臨の儀式のようで、かつて俺が使っていた不完全体とは違い、完成した力を纏っている。効果や攻撃力も進化しており、あのカイザーを一手違いとはいえ葬るほどの力。

「エクゾディオスは墓地のエクゾディアパーツの数×1000ポイントの攻撃力アップさせる。よってその攻撃力は2000」

 俺が使っていた不完全体は出した当初は攻撃力が0だったが、《究極封印解放儀式術》を介して特殊召喚したことにより、その攻撃力は最初から2000。さらに攻撃する際、エクゾディアパーツを墓地に送ることで攻撃力がアップし、墓地に揃えることで特殊勝利が確定する。

「――対策もなく出させるほど、俺だって馬鹿じゃない」

「何……?」

 確かに神のカードの力は偉大だ――そもそもそれを得るために、俺はこうして立っているのだから。だが神のカードとて穴はあるのだ、と……それを証明するように、俺はアモンに一枚の伏せカードの存在を示す。

「俺はリバースカード、《リバイバル・ギフト》を発動していた!」

 相手フィールドに二体の《ギフト・デモン・トークン》を特殊召喚することで、墓地からチューナーモンスターを蘇生する罠カード。その効果が適応されたため、俺のフィールドには《手札断殺》で墓地に送っていた《チューン・ウォリアー》、アモンのフィールドには二体の《ギフト・デモン・トークン》が特殊召喚されていた。チューナーモンスターを蘇生出来るとはいえ、相手フィールドに二体のトークンを出す、という普通に使うには割に合わない効果だが……このカードこそが、俺がエクゾディオス攻略に賭けた一枚。

「そのカードが何だか知らないが、エクゾディオスにカード効果は通用しない!」

「その効果が無効化されてなければな……《サイバー・ブレイダー》の効果が既に発動している!」

 アモンのフィールドには《究極封印神エクゾディオス》と《ギフト・デモン・トークン》が二体。相手フィールドに三体のモンスターがいる時、《サイバー・ブレイダー》は第三の効果を発動する。

「《サイバー・ブレイダー》は相手フィールドのモンスターが三体の時、相手のカードの効果を全て無効化する! パ・ド・カトル!」

「だが、エクゾディオスはその効果すら――!」

 確かに《究極封印神エクゾディオス》の効果耐性は、《スキルドレイン》のような効果を無効化するカードも受け付けない。……だが、それも後出しした場合の話だ。エクゾディオスがフィールドに召喚された瞬間、あるいは召喚された前から発動していたカードの効果は無効化出来ない。

 二体の《ギフト・デモン・トークン》がいるフィールドに特殊召喚されたエクゾディオスは、《サイバー・ブレイダー》第三の効果によってその効果を無効化され、力を失い膝をついて倒れ伏す。

「そのまま倒れてろ……エクゾディオス!」

「くっ……!」

 かつて砂の異世界で戦ったプロフェッサー・コブラの切り札、神と同等の耐性を持ったモンスターたる《毒蛇神ヴェノミナーガ》を破った際の経験から来た一手。そして……明日香の力を得れたこその一手。

 アモンのフィールドのモンスターの数が増減するだけで、打ち破られてしまう脆いコンボではあるが……《リバイバル・ギフト》で特殊召喚したモンスターは、全て守備表示のためこのターンで自爆特攻は出来ない。まだ通常召喚はしていないが、下級モンスターを召喚させられたならば、その隙を突くことが可能となる――むしろ、ここでの適当な下級モンスターの召喚の誘発が真の狙いだと言っていいほどに。

 力を失ったエクゾディオスを眺めながら、アモンはかけている眼鏡を一度だけ上げると、ほんの少しの時間だけ考えながら……あくまで冷静に、次なる手段を打ってきた。

「よくやる……が、ここまでだ! 僕は二体の《ギフト・デモン・トークン》をリリース!」

「……最上級モンスター!?」

 ……その打った手は完全なる予想外の一手。下級モンスターの召喚ならば、まだエクゾディオスではない的が増やすことが出来た。だがアモンが取ってきた手段は、二体の《ギフト・デモン・トークン》のリリース――アモンのデッキはエクゾディオスに特化したデッキだと、俺は勝手に勘違いしていたのだ。

「来い! 《霧の王》!」

 俺が送りつけたトークンを利用して現れたのは、霧のような身体に鎧と槍を持った、一見矛盾したような姿の戦士。『王』として『神』であるエクゾディオスに従い、俺の前に立ちはだかった。

「《霧の王》の攻撃力はリリースしたモンスターの攻撃力の合計。よって3000となる……エクゾディオスだけが勝利の手段だと思わないことだ」

「……《サイバー・ブレイダー》第二の効果! 相手フィールドのモンスターが二体の時、その攻撃力を倍にする! パ・ド・トロワ!」

 しかし不幸中の幸いとでも言うべきか――《霧の王》の召喚によりアモンのフィールドは二体のため、《サイバー・ブレイダー》第二の効果が発動し、その攻撃力を倍である4200にまで上昇させる。その数値は《霧の王》の3000、《究極封印神エクゾディオス》の3000となる攻撃力では及ばない数値である。

「ふん、悪運の強い奴だ……だが、エクゾディオスでチューン・ウォリアーに攻撃! 天上の雷火 エクゾード・ブラスト!」

「ぐっ……!」

 ただし《リバイバル・ギフト》で特殊召喚されていた、《チューン・ウォリアー》は守備表示だろうとそうはいかない。エクゾディオスは攻撃と同時に、エクゾディアパーツを墓地に送ることでその攻撃力を上げ、特殊勝利へのカウントダウンを進めていく。

「あと二回……か。カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 先のエクゾディオスによる《チューン・ウォリアー》への攻撃――守備表示のためにダメージはなかった筈だが、その雷撃は俺に直接ダメージを与えていた。このまま食らっていては、ライフポイントよりも自分が参ってしまう……

「俺は《チューニング・サポーター》を召喚!」

 ならばそれより先に倒すしがない。幸いなことに、俺の手札も攻撃する準備は整っている……予定は狂ってしまったが、あの《霧の王》へと狙いをつける。

「さらに《機械複製術》を発動! デッキから二体増殖せよ、《チューニング・サポーター》!」

 中華鍋を逆から被ったようなモンスターが、魔法カード《機械複製術》により増殖していく。……以前デュエル・アカデミアで戦っていた時には、まるで毎度のように使っていたが……などと、感傷に浸っている暇はない。その日常を取り戻す為に、今戦っているのだから。

「さらに装備魔法《リビング・フォッシル》を発動! 墓地からモンスターを蘇生し、このカードを装備する。蘇れ、《チューン・ウォリアー》!」

 装備魔法《リビング・フォッシル》の効果により、《チューン・ウォリアー》が再びフィールドへ蘇生される。装備魔法《リビング・フォッシル》は、蘇生させ装備したモンスターの攻撃力を1000ポイント下げ、その効果を無効にしてしまうが……シンクロ素材にするには、何の制約もない。

「永続魔法《コモンメンタルワールド》を発動し、俺はレベル2にした《チューニング・サポーター》に、レベル1の《チューニング・サポーター》、レベル3の《チューン・ウォリアー》をチューニング!」

 永続魔法《コモンメンタルワールド》を発動した後、《サイバー・ブレイダー》以外の四体のモンスターがシンクロ召喚へと移行する。《チューニング・サポーター》はシンクロ素材になる際、任意でレベルを2に変更できる効果を持つ。三体の内一体だけレベルを上げると、他のレベル1の二体、さらにレベル3の《チューン・ウォリアー》でシンクロ召喚の素材にならんと、天空で光り輝いていく。

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! ……シンクロ召喚!」

 光の輪となった《チューン・ウォリアー》が三体の《チューニング・サポーター》を包み込み、一際強く光輝くとともに新たなモンスターが現れる。そのシンクロ素材のレベルの合計は、《チューニング・サポーター》の効果により、7――

「現れろ! 《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 黄色のボディを持つ機械竜がシンクロ召喚され、その中に巣くう竜が雄叫びを放つ。自分がシンクロモンスターの中で最も信頼しているカードであり、その信頼に違わぬ安定性を持った効果を持っている。まずはその効果を発動する……前に、シンクロ素材となった《チューニング・サポーター》の効果が発動する。

「《チューニング・サポーター》はシンクロ素材となった時、カードを一枚ドロー出来る。よって三枚のカードをドロー! ……さらに《コモンメンタルワールド》の効果を発動!」

 《チューニング・サポーター》それぞれの効果が発動することで、三枚のカードをドローしながらも、間髪入れずに《コモンメンタルワールド》の効果の発動を宣言する。この永続魔法はシンクロ召喚に反応して発動する……!

「シンクロ召喚に成功した時、相手ライフに500ポイントのダメージを与える!」

 《パワー・ツール・ドラゴン》のシンクロ召喚時に発生したエネルギーの余波が、刃となってアモンを襲う。それをアモンは避けようともせず、刃はアモンの頬を切った。

アモンLP4000→3500

「まさか、こんなバーンを繰り返す気じゃないだろう?」

「……《パワー・ツール・ドラゴン》の効果を発動!」

 アモンの挑発には応えず、俺は《パワー・ツール・ドラゴン》の効果の発動を宣言する。俺がデッキから三枚のカードを抜き取ると、それに呼応するかのように、アモンの前に三つのカードが裏側で現れる。

「相手がランダムで選んだ装備魔法を手札に加える。パワー・サーチ!」

「……右のカードだ」

 《パワー・ツール・ドラゴン》の効果により、アモンが選択した右のカードを手札に加え、残りのカードをデッキに戻しシャッフル。さらにその手札に加えた装備魔法は、そのままデュエルディスクへと差し込まれた。

「《パワー・ツール・ドラゴン》に《ダブルツールD&C》を装備する!」

 《パワー・ツール・ドラゴン》の右手なドリル、左手にはカッターが装備されていき、その攻撃力を1000ポイントアップさせる。これでアモンのモンスターの攻撃力を超えた上に、《ダブルツールD&C》の真の効果は戦闘する相手モンスターの効果を無効にすること。神のカードたるエクゾディオスの効果は無効に出来ないが、《霧の王》ならば問題はなく、効果を無効にした《霧の王》の攻撃力は0……!

「バトル! 《サイバー・ブレイダー》で《究極封印神エクゾディオス》を攻撃! グリッサード・スラッシュ!」

 まだ《サイバー・ブレイダー》はその第二の効果により、攻撃力は4200のまま――要するに《究極封印神エクゾディオス》の攻撃力よりも高い。相手が神のカードだろうと恐れずに、氷上の舞姫は華麗にフィールドを疾走していく。

「だが《究極封印神エクゾディオス》は、あらゆる手段だろうと破壊されない」

「それでも戦闘ダメージは受けてもらう!」

 エクゾディオスが破壊できないことなど百も承知。それでもまだその攻撃力は3000に過ぎず、攻撃をすれば神のカードだろうとダメージはある。《サイバー・ブレイダー》がエクゾディオスに攻撃を仕掛けようとしたその時、アモンのフィールドに発生した壁が、《サイバー・ブレイダー》の攻撃を弾き返した。

「なっ……!?」

「お前のモンスターに神へ触れる資格などない。リバースカード、《究極封印防御壁》を発動した」

 俺がエクゾディオスの力を使っていた際にも使用した、エクゾディオスの専用サポートカードである《究極封印防御壁》。自分のフィールドにエクゾディオスがいる時、相手が攻撃宣言をした瞬間にそのバトルフェイズを終了させる、という相手の攻撃を全てシャットアウトする強力な効果。

 《究極封印防御壁》によりバトルフェイズが終了した今、《サイバー・ブレイダー》も《パワー・ツール・ドラゴン》はどちらも攻撃は出来ない。これで俺は攻撃宣言を封じられたに等しく、そのターンに出来ることはなかった。

「俺は……ターンを終了する」

「ふっ……僕のターン、ドロー!」

 《リバイバル・ギフト》からの戦術も、《パワー・ツール・ドラゴン》の一撃必殺も、正面から打ち破ったアモンが余裕そうにカードをドローする。その神のカードを伴った圧倒的な威圧感に、勝てないのか――という疑念が一瞬だけ浮かぶ。

「僕は魔法カード《アームズ・ホール》を発動。デッキトップを墓地に送り、このターンの通常召喚を封じることで、デッキから装備魔法を一枚サーチする。僕は《王家の剣》をサーチ」

 通常召喚を封じるという重いデメリットはあるものの、デッキか墓地から装備魔法を手札に加える、という有用なサーチカード《アームズ・ホール》。自分も装備魔法使いとしてよく知っているが、アモンがサーチした装備魔法自体は知らなかった。

「《王家の剣》を《霧の王》に装備し、バトル!」

 《霧の王》の武器が槍から装飾過多の槍に変化し――恐らくは、《霧の王》専用の装備魔法――アモンはバトルフェイズへと移行する。俺のフィールドには攻撃力4200の《サイバー・ブレイダー》と、《ダブルツールD&C》を装備した、攻撃力2300の《パワー・ツール・ドラゴン》。

「《霧の王》で《パワー・ツール・ドラゴン》に攻撃! ミスト・ストラングル!」

「……すまない、《パワー・ツール・ドラゴン》……!」

遊矢LP4000→3300

 《パワー・ツール・ドラゴン》は、自身に装備された装備魔法を墓地に送ることで、いかなる破壊をも無効にする効果がある……が、今回はその効果は使わない。《霧の王》の振るう《王家の剣》の一閃に、《パワー・ツール・ドラゴン》は一刀両断されてしまう。

 たとえ破壊耐性効果を使ったとしても、後続の《究極封印神エクゾディオス》の的になるだけだ。それでもすまない、と謝ると、《パワー・ツール・ドラゴン》は言葉を発することなく破壊された。

「《王家の剣》の効果。《霧の王》が戦闘した時、紋章カウンターを一つ乗せる。そして、紋章カウンターの数だけその攻撃力を800ポイントアップさせる!」

 そして発動した《王家の剣》の効果により、《霧の王》の攻撃力は3800となる。あのアモンがわざわざサーチした装備魔法だ、まさかそれだけの効果とは思えないが……?

「さらに《究極封印神エクゾディオス》で《サイバー・ブレイダー》に攻撃! 天上の雷火 エクゾード・ブラスト!」

「……反撃しろ、《サイバー・ブレイダー》! グリッサード・スラッシュ!」

 《サイバー・ブレイダー》は第二の効果が発動しているため、その攻撃力は4200。たとえエクゾディオスが攻撃前に自身の攻撃力を上げても、僅か200ポイントだけだがその攻撃力は及ばない……それでも、アモンは攻撃を宣言した。

 エクゾディオスが放った雷撃をサイバー・ブレイダーは何とか避けてみせ、その際に発生した衝撃波はアモンを襲う。

アモンLP3500→3300

 もちろんエクゾディオスはあらゆる手段だろうと破壊されず、アモンへのダメージも僅かに200ポイント。それでも攻撃してきた理由は決まっている……次のターン、エクゾディオスが攻撃してきた瞬間、俺の敗北は決定するからだ。これで墓地に送られたエクゾディアパーツは四枚、次のターンで最後のパーツが墓地に送られれば、《究極封印神エクゾディオス》の特殊勝利効果が発動する。

「ターンエンド」

「俺のターン……ドロー!」

 俺の次なるターンでの敗北を回避するには、《究極封印神エクゾディオス》を攻撃させなければいいのだが……いかなる効果も通用しないエクゾディオスを止めるカードは、数あるカードの中でも数種類に限られる。……もちろん、その数種類のカードが都合よく手札にある、何てことはなく。

「俺は装備魔法《シンクロ・ヒーロー》を《サイバー・ブレイダー》に装備!」

 ――逆転のカードがないならば引くまで。

「さらに魔法カード《アドバンスドロー》を発動! レベル8となった《サイバー・ブレイダー》を墓地に送ることで、カードを二枚ドローする!」

 装備モンスターのレベルを1上げる装備魔法《シンクロ・ヒーロー》により、レベル8となった《サイバー・ブレイダー》を《アドバンスドロー》――レベル8モンスターをリリースして二枚ドロー――のコストにさらにドローする。心中でこのターンまで耐えてくれた《サイバー・ブレイダー》に礼を言いながら、明日香を心に思いカードを二枚引く。

「俺は……」

 ……二枚引いたドローの中には、《究極封印神エクゾディオス》の攻撃を封じるカードは存在しなかった。もちろん効果を封じるだとか、フィールドから排除するとか、そういうカードもなく――

「通常魔法《異次元の指名者》を発動!」

 ――あるのはただ、逆転のカードのみ。

「《異次元の指名者》……だと?」

「このカードはカード名を一枚宣言し、そのカードが相手の手札にあった場合、そのカードを除外する!」

 《異次元の指名者》――このカードは、先の《リバイバル・ギフト》と同じく、《究極封印神エクゾディオス》対策に投入されたカード。その効果を聞いたアモンからは失笑が漏れた。

「何を狙っているか知らないが、ここまで来て『神』頼みとはな……」

「神頼みなんかじゃない……その神を従えるために、俺はここにいる!」

 もちろん神頼みなどではない。アモンは《クリッター》や《冥界の使者》のサーチ効果により、高速でエクゾディアパーツを手札に揃えていた。こちらがわざと攻撃していたとはいえ、《究極封印神エクゾディオス》の降臨を待つまでもなく、そのまま《封印されしエクゾディア》の効果で特殊勝利を狙えそうなほどに。

 そこを妨害したのが俺の《手札断殺》だった。アモンは二枚以上のエクゾディアパーツを墓地に送れざるを得なくなり、それを利用することで魔法カード《究極封印解放儀式術》を発動し、エクゾディオスを降臨させた。

 《究極封印解放儀式術》の発動条件は、手札か墓地にエクゾディアパーツが五枚あり、手札のエクゾディアパーツを二枚まで墓地に送り、墓地のエクゾディアパーツをデッキに戻すこと。つまり《手札断殺》の効果で墓地に送られたパーツはデッキに戻り、手札に残った三枚のパーツのうち二枚が墓地に送られる。

 ――よって。アモンの手札には、まだ一枚エクゾディアパーツが残っている。

「お前の手札にあるカードは……」

 ……アモンは無駄なプレイなどしない。墓地に送るのも、デッキに戻すのも、サーチとサルベージをしやすい通常モンスターだろう。すなわち、アモンの手札に一枚だけ残ったエクゾディアパーツは……

「――《封印されしエクゾディア》だ!」

 俺の宣言とともに《異次元の指名者》から放たれた光弾が、アモンの手札を直撃して一枚のカードを奪っていく。もちろんそのカードは《封印されしエクゾディア》――流石のアモンも、手札のエクゾディアパーツが除外されることは想定していなかったのか、苦々しげに顔を歪めていた。

「これでエクゾディオスの効果は封じた!」

「《手札断殺》からずっとこれを狙っていたのか……!」


 《手札断殺》から《リバイバル・ギフト》に《異次元の指名者》まで。全ては《究極封印神エクゾディオス》の、デッキと手札からエクゾディアパーツを墓地に送る、という手段による特殊勝利をを封じるための戦術。先の《サイバー・ブレイダー》の効果を封じるため、《封印されしエクゾディア》をフィールドに召喚するもよし。

 ……炸裂したのは、次善策の《異次元の指名者》。流石のエクゾディオスと言えども、除外ゾーンまではその効果の範囲外だ。

「これでエクゾディオスは、ただの神のカードだ! ……俺はモンスターをセットし、カードを二枚伏せてターンエンド!」

 とにもかくにも、エクゾディオスの最も警戒すべき特殊勝利は封じた。後はどうとでもやりようはある……!

「啖呵をきっておいて守備重視か? ……ナメるなよ! 僕のターン、ドロー!」

 冷静さと余裕さを崩すことはなかったアモンが、初めて声を荒げながらカードを引く。恐らくそれは、俺をただの獲物ではなく、敵対するデュオリストと認めた証拠。今まで手加減をしていたわけではないだろうが、ここからが本当の勝負だといって差し支えないだろう。

 アモンのフィールドは攻撃力4000の《究極封印神エクゾディオス》に、装備魔法《王家の剣》を装備した攻撃力3800の《霧の王》。さらにエクゾディオスがいる限り、こちらの攻撃を全てシャットアウトする永続罠《封印防御壁》で、ライフポイントは残り3300。

 対する俺のフィールドには、セットした守備モンスターにリバースカードが二枚。さらに永続魔法《コモンメンタルワールド》で、ライフポイントは偶然にも同じく3300。

「僕は魔法カード《ダブルアタック》を発動! 《霧の王》よりレベルが高いモンスターを墓地に送ることで、このターン《霧の王》は二回攻撃が可能となる!」

 こちらのモンスターはセットモンスター一体だけにもかかわらず、アモンは《霧の王》に二回攻撃を付与する。攻撃回数を増やすことで、《王家の剣》にカウンターを増やすことも目的のうちだろうが、そもそもその攻撃力は俺のライフを超える。

「バトル! 《霧の王》でセットモンスターを攻撃! ミスト・ストラングル!」

「セットモンスターは《マッシブ・ウォリアー》! このモンスターは一ターンに一度だけ、戦闘では破壊されない!」

 セットモンスターとして現れたのは、要塞の機械戦士こと《マッシブ・ウォリアー》。その効果は戦闘ダメージのカットと一度きりの戦闘破壊耐性で、《霧の王》からの攻撃にも耐えてみせる。

「だが二回攻撃は受けてもらう! ミスト・ストラングル!」

 《王家の剣》に二つ目のカウンターを乗せながら、《霧の王》はさらに攻撃を続けてくる。《王家の剣》の一閃が、今度こそ《マッシブ・ウォリアー》を切り裂く――というところに、新たな機械戦士が《霧の王》の前に立ちはだかった。

「墓地から《シールド・ウォリアー》を除外することで、《マッシブ・ウォリアー》の戦闘破壊を一度だけ無効に出来る!」

 《手札断殺》の効果で墓地に送っていた、《シールド・ウォリアー》が《霧の王》から《マッシブ・ウォリアー》を守る。さらに《王家の剣》にカウンターが溜まり、攻撃力は5400にまで到達するが……《シールド・ウォリアー》によって守られた、《マッシブ・ウォリアー》は無傷。

「チッ……エクゾディオスでマッシブ・ウォリアーに攻撃! 天上の雷火 エクゾード・ブラスト!」

「ぐっ……!」

 流石にこれ以上の攻撃を《マッシブ・ウォリアー》は耐えられず、神の雷の前に破壊されてしまう。その余波だけでも自分にダメージを与えてくる、神のカードからの威圧に耐えながら、それでもエクゾディオスの前に立つ。

「しぶとい奴だ……カードを一枚伏せ、ターンを終了する」

「俺のターン、ドロー!」

 《究極封印防御壁》とエクゾディオスが揃っている限り、俺の攻撃は全てシャットアウトされる。攻撃をするにしても、アモンのフィールドのモンスターに対抗できるほどの火力は、今の俺の手札には存在しない。

「俺は通常魔法《ブラスティング・ヴェイン》を発動! 俺のセットカードを破壊することで二枚ドロー!」

 セットしている二枚のリバースカードのうち、その一枚のカードを破壊することで、カードを二枚ドローする。破壊したカードは、もちろん……決まっている。

「破壊したカードは《リミッター・ブレイク》! このカードが破壊された時、デッキ・手札・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する! いでよ、マイフェイバリットカード!」

『トアアアァッ!』

 ――その雄叫びは何も変わっていない。力強い叫び声とともに、マイフェイバリットカードがデッキから特殊召喚される。

「さらに速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動! さらにデッキから《スピード・ウォリアー》を二体、特殊召喚する!」

「……僕は《霧の王》を守備表示で特殊召喚する」

 特殊召喚した攻撃力1500以下のモンスターをさらに二体特殊召喚する、速攻魔法《地獄の暴走召喚》によって、さらにマイフェイバリットカードが二体特殊召喚される。そのデメリットにより、アモンもさらに一体《霧の王》を召喚するが、守備表示な上にその攻撃力は0。

「さらにチューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》を召喚し、四体のモンスターでチューニング!」

 またもや四体のモンスターでのシンクロ召喚。マイフェイバリットカードとラッキーカードによる調律は、光とともに金属音を発生させていく。合計レベルは再び7。

「集いし刃が、光をも切り裂く剣となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《セブン・ソード・ウォリアー》!」

 シンクロ召喚されるは7つの剣を持つ機械戦士。金色の鎧を輝かせながら、フィールドに守備表示で現れた。さらにそのシンクロ召喚に反応し、永続魔法《コモンメンタルワールド》の効果が発動する。

「シンクロ召喚に成功した時、500ポイントのダメージを与える!」

アモンLP3300→2800

 僅か500ポイントのダメージでも、積もり積もれば山となると言ったところか。さらに《コモンメンタルワールド》だけでなく、さらにアモンに直接ダメージを与えていく。

「《セブン・ソード・ウォリアー》に装備魔法《ミスト・ボディ》を装備!」

 装備モンスターを戦闘破壊させなくする、という単純明快かつ強力な装備魔法。効果を受けつけないエクゾディオスといえども、こちらのカードを無効化出来る訳ではなく、これでエクゾディオス単体では守備表示の《セブン・ソード・ウォリアー》は突破できない。

「そして装備魔法が《セブン・ソード・ウォリアー》に装備された時、相手のライフに800ポイントのダメージを与える! イクイップ・ショット!」

「こざかしい……!」

アモンLP2800→2000

 こざかしいと言われようが、アモンのライフはこれで半分。《封印されしエクゾディア》を除外し特殊勝利を封じた今、このままその『こざかしい手』でやらせてもらう……

「さらにカードを一枚伏せ、ターンエンド」

「僕のターン、ドロー!」

 アモンのフィールドは《究極封印神エクゾディオス》に、《王家の剣》を装備した《霧の王》、守備表示の同じく《霧の王》にリバースカードが一枚。《王家の剣》には三つの紋章カウンターが貯まっており、その攻撃力は5400にまで上昇している。とはいえ、攻撃力を上げるだけとも思えないが……

「僕は《七星の宝刀》を発動! 守備表示の《霧の王》を除外し、二枚ドローする!」

 俺が《サイバー・ブレイダー》をコストに使った魔法カード、《アトバンスドロー》のレベル7を指定したカード――というと微妙に違うが――《七星の宝刀》が発動され、《地獄の暴走召喚》によって特殊召喚されていた、攻守ともに0の《霧の王》をコストに二枚ドローする。

「バトル。《霧の王》で《セブン・ソード・ウォリアー》に攻撃。ミスト・ストラングル!」

 《霧の王》の苛烈な攻撃が《セブン・ソード・ウォリアー》を襲うものの、《セブン・ソード・ウォリアー》の身体はまさしく霧のようになり、その攻撃をまるで受けつけない。装備魔法《ミスト・ボディ》の効果により、戦闘破壊耐性を得ているというのはアモンも承知の筈だが……?

「戦闘したことにより、《王家の剣》に4つ目の紋章カウンターが乗る」

 なるほど。考えてみれば当然で、《王家の剣》に紋章カウンターを乗せるためか――などと呑気に構えていた俺の余裕を、《王家の剣》はあっけなく打ち砕いた。四つのカウンターが溜まったその剣には、まるでこの異世界ごと消し飛ばしてしまうような――それほどの威力が秘められていると分かる、信じられないほどのエネルギーを持っていたからだ。

「まさか――」

「四つの紋章カウンターが乗った《王家の剣》の効果を発動! 《霧の王》とこのカードを墓地に送ることで、相手ライフに4000ポイントのダメージを与える!」

 《コモンメンタルワールド》や《セブン・ソード・ウォリアー》のバーンなど比較にならない、まさに桁が違う必殺の一撃。初期ライフをも一瞬で消し去るその効果に、もちろん俺のライフが耐えられる訳もない。

「エクゾディオスの効果を封じた程度で勝ったと思わないことだ! 《王家の剣》の効果を発動!」

 4000ダメージの籠もった一撃が俺に放たれ、その自身で放った攻撃に耐えきれずに《霧の王》が自壊する。その俺を破滅させんとする光が迫る間に、俺は一枚のリバースカードを発動する。

「リバースカード、オープン! 《シンクロコール》! 墓地のモンスター同士でシンクロ召喚を行う!」

「このタイミングでシンクロ召喚だと!?」

 半透明の《パワー・ツール・ドラゴン》に、同じく半透明の《エフェクト・ヴェーラー》が現れると、一瞬でシンクロ召喚の態勢を取っていく。

「レベル1の《エフェクト・ヴェーラー》に、レベル7の《パワー・ツール・ドラゴン》をチューニング!」

 エフェクト・ヴェーラーがパワー・ツール・ドラゴンの周りを旋回し、パワー・ツール・ドラゴンは力を解き放つかのようにその装甲を外すと、いななきとともに霧の中を飛び上がる。その姿を露わにするとともに、《王家の剣》の放った光へと向かっていく。

「集いし命の奔流が、絆の奇跡を照らしだす。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

 《パワー・ツール・ドラゴン》の正体――その鎧の中に封じ込められた竜が、《王家の剣》が放った光を正面から吸収する。4000ポイントのダメージを与えるカードであろうと、何の抵抗もなく受け入れて自身の命としていき、あっさりと《王家の剣》は無効化される。

「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》がいる限り、俺へのバーンダメージは0となる! ダメージ・シャッター!」

「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》、だと……!」

 その効果で《王家の剣》のバーンダメージを無効化すると、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は改めて、守備表示で俺のフィールドに舞い降りた。《王家の剣》の効果の発動にチェーンしてシンクロ召喚したため、シンクロ召喚時というタイミングを逃し、ライフポイントを4000にする効果は使えないが……アモンもコストとして《霧の王》を失った。痛み分けといったところか。

「僕は……カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 《王家の剣》の起動効果を使用するため、メインフェイズ2へと移行していたのでエクゾディオスの攻撃はない。《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の登場でさらに防御を固め、俺は落ち着いてカードをドローする。

「俺は魔法カード《潜入! スパイ・ヒーロー》を発動! デッキからカードを二枚、ランダムに墓地に送ることで、相手の墓地の魔法カードを手札に加える!」

 砂の異世界で交じってしまった十代のカード。いつだかは、このカードを返すことを目的にしていた気もするが……すっかりそんな目的ごと忘れてしまっていた。だが好都合だ、明日香だけでなく十代の力も使わせてもらう……!

「俺が手札に加えるのは魔法カード《アームズ・ホール》! そのまま発動し、デッキから《パイル・アーム》を手札に加える!」

 アモンの墓地から手札に加えたのは、アモンが装備魔法《王家の剣》をサーチする際に使った、装備魔法のサーチとサルベージを可能とする魔法カード《アームズ・ホール》。その魔法カードを奪うことで、デッキトップを一枚墓地に送り、通常召喚を封じることで装備魔法《パイル・アーム》を手札に加えて発動する。

「装備魔法《パイル・アーム》の効果! 相手の魔法・罠カードを一枚破壊する! 俺はそのリバースカードを破壊!」

「チェーンしてリバースカード、《強欲な瓶》の効果を発動」

 《パイル・アーム》を装備した《セブン・ソード・ウォリアー》が、アモンのフィールドに先のターンから伏せられたままのカードを破壊するものの、それはあいにくの《強欲な瓶》。アモンはチェーン発動して《パイル・アーム》を避け、一枚のドローを果たす。

「くっ……さらに《セブン・ソード・ウォリアー》の効果を発動! このカードに装備カードが装備された時、相手ライフに800ポイントのダメージを与える! イクイップ・ショット!」

「それも通さない! 罠カード《エネルギー吸収板》!」

「なに!?」

 アモンのフィールドに伏せられていたもう一枚の伏せカードは、バーンダメージを無効にしそのダメージ分だけライフを回復する《エネルギー吸収板》。《セブン・ソード・ウォリアー》の効果は無効化され、そのダメージ分だけアモンのライフが回復していく。

アモンLP2000→2800

 せっかく《セブン・ソード・ウォリアー》の効果で与えたダメージだったが、皮肉にも《セブン・ソード・ウォリアー》の効果で回復させてしまう。《ライフ・ストリーム・ドラゴン》のシンクロ召喚により、デュエルの流れはこちらに来ていると思ったが……アモンは、そこまで甘いデュエリストではなかったらしい。

「……ターンエンド」

 こちらのフィールドには守備表示の《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と、同じく守備表示の《セブン・ソード・ウォリアー》。《セブン・ソード・ウォリアー》には装備魔法《ミスト・ボディ》と《パイル・アーム》が装備されており、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》も自身の効果で限りはあるものの破壊耐性を持っている。それと永続魔法《コモンメンタルワールド》に、一枚のリバースカード。これがこちらの布陣。

「僕のターン、ドロー!」

 対するアモンのフィールドには、《究極封印神エクゾディオス》と永続罠《封印防御壁》のみ。ボード・アドバンテージはこちらが有利だが……相手はその程度の差を引っくり返す、正真正銘神のカードだ。相手の力を減じさせるように戦っているとはいえ、油断出来る敵ではないのは明らかだ。

「……僕は魔法カード《マジック・プランター》を発動! 永続罠《封印防御壁》を墓地に送り、二枚ドロー!」

 こちらがバーン戦術で攻め込んでくると分かったからか、アモンは永続罠をコストに二枚ドローする《マジック・プランター》により、《封印防御壁》を墓地に送り二枚ドローする。もう攻撃力が不安定な《霧の王》がいない、というのも理由のうちだろうか。

「フッ……魔法カード《大嵐》を発動! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」

「このタイミングでくるか……!」

 さらにアモンが発動したカードは、全ての魔法・罠カードを破壊する汎用カード《大嵐》。アモンのフィールドには《マジック・プランター》により既に魔法・罠カードはなく、俺のフィールドの四枚のカードのみが破壊されていく。装備魔法《ミスト・ボディ》、同じく《パイル・アーム》、永続魔法《コモンメンタルワールド》、さらに伏せていた《奇跡の残照》。特に戦術の中核をなしていた、《コモンメンタルワールド》と《ミスト・ボディ》が破壊されたのは多大なダメージ。

 ……いや、多大なダメージというよりも。《大嵐》まで使ったのだから、アモンはこのターン攻め込んでくる……!

「さらにフィールド魔法《神縛りの塚》を発動する」

 アモンのフィールドに祭壇が出現すると、そこから現れた鎖がエクゾディオスを守るように縛っていく。以前俺が使用していた時は、エクゾディオスを制御するのに必要不可欠なカードだったが、完全体を操るアモンには不必要なカードだったはずだ。それでもなお投入しているということは、レベル10以上のモンスターが相手モンスターを破壊した時、相手に1000ダメージを与えるバーン効果が狙い。

「バトル! 《究極封印神エクゾディオス》で、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》に攻撃! 天上の雷火 エクゾード・ブラスト!」

 《大嵐》と《神縛りの塚》を発動した後、アモンは遂に本格的な侵攻を開始した。こちらの防御用の魔法・罠カードは全て破壊されてしまったが、まだ《ライフ・ストリーム・ドラゴン》には自身の効果がある……!

「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は墓地の装備魔法を除外することで、あらゆる破壊を無効にする! イクイップ・アーマード!」

「承知の上だ。墓地から罠カード、《ブレイクスルー・スキル》を発動!」

「墓地から罠……!」

 墓地から除外することで、相手モンスターの効果を無効にする罠カード《ブレイクスルー・スキル》。デッキトップを墓地に送る《アームズ・ホール》の効果で墓地に送られていたのか、温存していた必殺の一撃が炸裂したかのような最高のタイミングで、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果は無効とされる。

 《神縛りの塚》によって装備された鎖から神の雷が発生し、飛翔する《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を縛りつけながら、その雷撃を浴びせていく。たまらず《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は破壊され、守備表示のため俺にダメージはないが、あたかたもなく粉砕される。

「そして《神縛りの塚》の効果を発動! レベル10以上のモンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、相手に1000ポイントのダメージを与える。受けろ、神の雷を!」

「ぐあああっ!」

遊矢LP3300→2300

 《神縛りの塚》による効果ダメージというよりも、間接的だが《究極封印神エクゾディオス》という神のカードからの一撃。それはライフポイントへのダメージ以上に、俺の身体そのものにダメージを与えていた。

「これで終わりかと思ったか? 速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動!」

「くっ……!」

 とことんまでアモンはこのターンに流れを掴むつもりなのか、さらに追撃を加えるのか速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動する。その効果は手札を一枚捨てることで、手札の罠カードの発動を可能とする、というトリッキーな速攻魔法。

 アモンが発動する罠カードは――

「手札を一枚捨てることで、僕は通常罠カード《未来王の予言》を発動!」

 ――通常罠《未来王の予言》。

「魔法使い族モンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、このターンの召喚を封じることで、再度の攻撃を可能とする!」

 二回攻撃の許可をアモンから得たエクゾディオスが、再び動き出し鎖で《セブン・ソード・ウォリアー》を縛りつけた。咆哮とともに空から雷撃を発生させ、鎖を通じて《セブン・ソード・ウォリアー》に流し込んで破壊していく。

「《未来王の予言》という通り、王の判決を言い渡す……死だ! 《神縛りの塚》の効果を発動!」

「――――ッ!」

遊矢LP2300→1300

 《セブン・ソード・ウォリアー》が破壊されたことにより、俺にも同じように裁きの雷が放たれていく。連続で受ける神のカードからの攻撃に意識を手放しそうになるものの、あとは気力だけで意識を維持させる。

 アモンとエクゾディオスを睨みつけながら、何とかその敵意で意識を保ちながら、俺はカードをドローするためにデッキに手を近づけていく。

「早く楽になればいいものを……僕はこれでターンエンド」

「俺の、ターン……ドロー……っ!」

 ドローしたカードをチラリと見た瞬間、そのままそのカードをデュエルディスクに差し込んだ。

「俺は魔法カード《貪欲な壷》を発動! 墓地のモンスターを五体墓地に戻し、二枚ドローする!」

 汎用ドローカード《貪欲な壷》で引いた二枚ドローしたカードを見ると、俺の朦朧とした意識を一つの思いが支配した。

 ――やはりこうなったか、と。

 《リバイバル・ギフト》や《異次元の指名者》、《コモンメンタルワールド》など様々な戦術を用意し、様々なエクゾディオスの対策を考えてきた。もちろんそんな悠長なことをしている時間はなく、亮をも破ったあのアモンならば、こちらの小細工など突破してくるだろう、という思いもあった。

「アモン……」

 だから、今までの戦術は全てこのコンボまでの布石。アモンのカードを消費するためだけの囮。そして遂にコンボの発動条件が揃う――!

「……このターンで決着をつける……!」

「……ほう?」

 面白そうに笑うアモンに対しニヤリと笑い返し――たかったが、思うように顔の筋肉が動かなかったので止め――一枚のカードを、再びデュエルディスクに読み取らせる。このデッキの切り札を呼び寄せる、あの魔法カードを。

「《ミラクルシンクロフュージョン》を発動! 墓地の《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と、《スピード・ウォリアー》の力を一つに! 融合召喚、《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」

 墓地の《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と《スピード・ウォリアー》が、エースカード同士の融合した竜騎士としてフィールドに舞い戻る。素のステータスとしてはこのデッキの中で最強を誇り、名実共に切り札ではあるが、一体では神のカードに適うはずもなく……つまり、まだまだ止まらない。

「そして装備魔法《D・D・R》を発動! 手札を一枚捨てることで、除外ゾーンのモンスターを特殊召喚出来る! 再び現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

 《ミラクルシンクロフュージョン》で融合素材となったモンスターの行き先は除外ゾーン。つまり除外ゾーンのモンスターを特殊召喚する《D・D・R》による帰還が可能で、さらに発動コストである墓地に捨てた一枚のカードも同時に発動する。

「さらに《D・D・R》のコストで墓地に送ったカードは《リミッター・ブレイク》! お前も墓地から蘇れ、マイフェイバリットカード!」

『トアァァァッ!』

 融合素材として除外されたモンスターとは別のカードだが、マイフェイバリットカードもが再び特殊召喚されたことで、俺のフィールドに融合モンスターとその融合素材が揃う、という希有な状況となる。もちろんこの状況を作ることが終わりではなく、さらにカードを発動していく。

「通常魔法《能力調整》を発動! 自分フィールドのモンスターのレベルを1ずつ下げる!」

 最後に発動するのは単体では何ら意味のない、シンクロ召喚をサポートするレベル変更カード。だが、このカードのおかげで……《スピード・ウォリアー》と《ライフ・ストリーム・ドラゴン》でチューニングが可能となる……!

「行くぞアモン……これで最後だ……レベル1となった《スピード・ウォリアー》に、レベル7となった《ライフ・ストリーム・ドラゴン》をチューニング!」

「チューニング……チューナーだと!?」

 そのシンクロ召喚にアモンが驚愕する。活かす機会があまりないものの、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》はれっきとしたシンクロチューナー。《パワー・ツール・ドラゴン》からさらに先に繋げる効果を持っており、遂にマイフェイバリットカードとのシンクロ召喚を果たし――合計レベルは8。

「集いし決意が拳となりて、荒ぶる巨神が大地を砕く。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ギガンテック・ファイター》!」

 《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と《スピード・ウォリアー》のチューニングにより、フィールドに現れたのは白銀の巨人。《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》とともに、このデュエルを終演へと導くモンスターたち。

「この局面で最上級モンスターを二体……どうくる?」

 俺のフィールドに並び立ち、エクゾディオスと相対する《ギガンテック・ファイター》と《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》。しかし、今更考察したところでもう遅い――俺はずっと、この盤面のことを考え抜いてきたのだから。

「《ギガンテック・ファイター》は墓地の戦士族モンスターの数、×100ポイントの攻撃力をアップする。墓地には戦士族が……八体。よって、攻撃力は3600!」

 単純に共にフィールド戦ってくれたモンスターだけではなく、《アームズ・ホール》や《潜入!スパイ・ヒーロー》で直接墓地に送られたモンスターの数も含め、その数は八体。《貪欲な壷》を発動したに関わらず数が多いが、《貪欲な壷》の対象は《チューニング・サポーター》などの機械族に賄ってもらったが故だ。

 ――そして並び立ったこのフィールドこそ、俺が狙っていたものだ。

「バトル! 《ギガンテック・ファイター》で、《究極封印神エクゾディオス》に攻撃! ギガンテック・フィスト!」

「――迎撃しろ、エクゾディオス! 天上の雷火 エクゾード・ブラスト!」

 様々な布石を打ち終わり、あとはただぶつかるのみ。攻撃を命じられた《ギガンテック・ファイター》は、恐れずにその白銀の腕を神のカードへと向ける。……しかし、神のカードなどといったことはともかく、攻撃力という差は埋めることが出来ず。《ギガンテック・ファイター》がその攻撃を轟かせるより早く、神の雷がその身体を貫き、そこでそのまま倒れ伏してしまう。

「っ……!」

遊矢LP1300→900

 ただでさえ朦朧としていた意識に、さらに神の雷の洗礼が浴びせられる。さらに《ギガンテック・ファイター》が戦闘破壊されたことにより、フィールド魔法《神縛りの塚》の効果が俺に裁きを与えんと発動する。

「…………《神縛りの塚》の効果により、1000ポイントのダメージを与える!」

 アモンは今の自爆特攻を不信に思ったようではあるが、トドメを刺さんと《神縛りの塚》の発動を宣言する。鎖を通して神の雷が俺に襲いかかり――その雷を全て、《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》がの槍が吸収していく。

「ドラゴエクィテスの効果。相手の効果によって発生した効果ダメージを、そのまま相手に跳ね返す! ウェーブ・フォース!」

「ぐああっ……!」

アモンLP2800→1800

 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》のバーンダメージ反射効果。神のカードだろうと何だろうと、そのバーンダメージはプレイヤーに平等だ。《神縛りの塚》によって発生した雷は、ドラゴエクィテスの槍に吸収された後にアモンへと放たれた。

「だが、この程度のダメージで……」

「《ギガンテック・ファイター》の効果を発動」

 アモンの台詞を遮って、戦闘破壊された《ギガンテック・ファイター》の効果の発動を宣言すると、エクゾディオスに迫っていた《ギガンテック・ファイター》が再び起き上がる。失っていた眼光がさらに鋭く灯っていき、神の雷で受けたダメージもそのままに、エクゾディオスに対しそのまま前進していく。

「《ギガンテック・ファイター》は戦闘破壊された時、墓地の戦士族モンスターを特殊召喚出来る。その対象は、今破壊された自身をも含まれる!」

 よって《ギガンテック・ファイター》の効果は、戦闘に対しての不死と同義。さらにバトルフェイズ中に特殊召喚されたことにより、《ギガンテック・ファイター》は更なる攻撃を可能とする……!

「……ギガンテック・ファイター……で、エクゾディオスに……攻撃!」

「まさか……」

遊矢LP900→500

 先程までと結果は同じ。エクゾディオスは容易く《ギガンテック・ファイター》を破壊し、さらに《神縛りの効果》の発動条件を満たす。アモンはその処理を止めようとするものの、手札にこのタイミングで発動出来るカードはなく、《神縛りの塚》の効果は強制効果であり……アモンに発動を止めることは出来ない。

「ドラゴエクィテスの効果発動!」

「無限……ループ……ッ!」

アモンLP1800→800

 アモンは信じられない、と言わんばかりにそう呟いたが、現実にドラゴエクィテスの効果はまたもやアモンを貫いた。さらに《ギガンテック・ファイター》はまたもや蘇生し、再びエクゾディオスへと適わない攻撃を続けていく。

 エクゾディオスが強大な存在だったからこそ持ち得た戦術。あと一撃で俺はその力を取り戻し、明日香たちを助けることが出来る……!

「終わ、りだ……アモン! 《ギガンテック・ファイター》で、《究極封印神エクゾディオス》に……攻撃! ギガンテック・フィスト!」

「馬鹿な――」

 神の雷を受け続けてボロボロになりながらも、さらに《ギガンテック・ファイター》は前進する。三度の前進からようやくその一撃がエクゾディオスに届き、届けたパンチから雷を受けて消滅していく。役目を果たしたかのように《ギガンテック・ファイター》が爆散し、その衝撃が俺に叩きつけられる。俺に残されたライフポイントは僅か100――霧に包まれたのか目が霞んでくるが、俺に必要なのはあと一声のみ――

「ドラゴエクィテスの効果……発動……!」

 ――自分はどうすれば良かったのだろうか。最期に思ったのはそんなことで、最期に記憶に残っているのは霧ではなく――

遊矢LP500→100

アモンLP800→0
 
 

 
後書き
最後までフラストレーションの溜まる終わり方で。遊矢はどう行動するのが正解で、最後に見たのは何だったのでしょうか。

つぶやきの方に四期の予告を載せているので是非。ではまた。
 
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