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ウイングマン スキャンプラス編

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■5話 脱出

1.
美紅はだんだん正気が戻ってきた。
「美紅ちゃん、服はどこにあるの?」
桃子にそう言われて自分の姿を見た美紅は驚いた。
「きゃっ……」
ガ―ディングポイントが発動しているとはいえ下着姿よりきわどい恰好だ。
思わず胸に手をやった。
しかし、発動していることに驚いた。
「あれ? 発動してる……」
あれだけ頑張っても発動しなかったガ―ディングポイントがどうして今、発動しているのか。
ただ、その理由を探っている時間はなかった。
「美紅ちゃん、服はどこにあるの?」
桃子の質問に忌々しい記憶を思い出した。
「消されちゃった……」
美紅はボソッとこぼした。
「え~っ!?」
桃子は驚いて思わず声を出してしまった。
それはつまり美紅が着る服がないということ、だけではなかった。
くるみの着る服もないということも意味していた。
「どうしよう……」
桃子は困り果てた。
美紅にはガ―ディングポイントがあるとしてもくるみを裸のままにしておくわけにはいかない。
健太はすでに鼻血を大噴火して気絶したのだ。
次見ても興奮しないわけがない。
「あいつは? スキャンプラス……」
美紅はスキャンプラスが消したはずのヴィムのブラを取り出したことを思い出した。
スキャンプラスは消したものをデータ化して、それを再生することができることを思い出した。
「今、リーダーと戦っているはずだけど……」
美紅は慌てて穴から顔を出した。

「ちょ、ちょっと待て! オレ様は女を調べてただけで……」
スキャンプラスは必死に言い訳を重ねたが健太は聞く耳を持たなかった。
「広野君っ!?」
思わず美紅は声をかけてしまった。
自分がガ―ディングポイントの姿だということを忘れて、思わず顔を乗り出してしまったのだ。
美紅としては健太が必殺技を繰り出す前に、スキャンプラスからコスチュームを出してもらいたいと思ったのだが、逆効果だった。
「貴様ぁ~、美紅ちゃんにまでっ!?」
美紅の姿を見ると鼻血を出した。
しかし、気絶まではしなかった。
そういう意味ではガ―ディングポイントは効力を発揮していた。
しかし、健太はさらに逆上した。
くるみだけでなく美紅まで辱めを受けていたことがわかったのだ。

「ソーラガーダーシルエット!」
健太がそう叫ぶと、ウイングマンにソーラガーダーシルエットが装着された。
そして有無を言わさずデスボールを発射した。
ソーラガーダーの胸部が開き、飛び出した火玉のようなボール2つが一瞬にしてスキャンプラスの体を包んだ。

美紅は顔色が蒼白になった。
これで服が復元される希望がなくなってしまったのだ。
桃子は美紅の突飛な行動に驚いた。
自分よりも恥ずかしがりやで奥手だと思っていた美紅が、あんな恰好で乗り出したのだから。

「美紅ちゃん、何やってんの!?」
桃子の声に我に返った。
健太に見られた今の自分の姿が下着よりもきわどいガ―ディングポイントの姿だ。
「美紅ちゃん、どうしたの? リーダーにそのカッコ見せてもいいの?」
美紅は恥ずかしくなって顔を赤くし、慌てて胸を隠し、穴から顔を引っ込めた。
「あ、あの……怪人だったら消した服を復元できたから……」
美紅は桃子の問いにボソッと答えた。
「えっ!?」
桃子は驚いた。
つまりはくるみの服も復元できるのだ。
桃子は慌てて穴から顔を出した。
「リーダー、ちょっと待って!」



2.
しかし、健太には桃子の声は届かなかった。
「うわああ、なんだコレはっ!?」
デスボールの中に閉じ込められたスキャンプラスは完全に動きを封じられた。
ウイングマンはヒートサーベルを手に構え、一気に振り下ろした。
「ヒートアタック!」
ウイングマンはデスボールごとスキャンプラスを真っ二つに切り裂いた。

「ああ、遅かった……」
桃子は膝をがくんと落とした。
服の復元の可能性はウイングマンの攻撃によって絶たれてしまったのだ。
デスボールの中で消滅してくスキャンプラスの姿を見ながら、桃子はまったくいいアイデアが浮かばなかった。
敵を倒したことを確認すると、健太は変身を解いて桃子の方に駆け寄った。
「ピンク! 美紅ちゃんとくるみちゃんは無事か?」
心配のあまり勢い余って健太は穴から廊下に出た。
「リーダー、ちょ、ちょっと待って!」
桃子は必死に隠そうとした。
しかし、健太の勢いは止められなかった。
「広野君、ちょ、ちょっと……」
慌てて美紅は自分の体を手で隠そうとしたが、隠しきれていなかった。
健太は目の前の光景に完全に固まってしまった。
ガ―ディングポイント姿の美紅にもだが、それよりもさらに強い刺激があった。
ポッドの中の全裸のくるみの姿に健太の目は釘づけだった。
当然、刺激が強すぎた。
「う~ん……」
健太は鼻血を出して倒れてしまった。
やっぱり気絶だった。
「リーダーっ!」
「広野君っ!」
思わず桃子と健太が駆け寄った。
「広野く~んっ! しっかり~っ!」
美紅の効果は逆効果だった。

2人の呼びかけに一瞬戻りかけた意識が、美紅の姿を間近で見たせいで、また鼻血を吹き出したのだった。
「美紅ちゃんったら……」
桃子は少し呆れて美紅を見た。
「きゃっ!」
美紅は健太から離れて胸を隠した。
しかし、桃子からすると健太が気絶してくれたことは好都合と言えなくもなかった。
とりあえず服問題を考える時間がわずかでもできたのだ。

改めて、辺りを見渡すと服はもちろん布のようなものもまったくなかった。
窓がないのでカーテンすらないという状況だ。
「さて、どうしたものか……」
そう言って上の見上げたときに月が見えた。
桃子と美紅は顔を見合わせた。
「え?」
建物が消えかかっているのだ。
スキャンプラスと連動していたのか、この建物が上の方から徐々に消え始めている。
ということは、しばらくすればこの建物はきれいさっぱりなくなってしまう。
何かいい方法は……
「どうしよう、桃子ちゃん……」
美紅も困り果てた。
建物が消えてしまえば、ガ―ディングポイントの姿で町中に放り出されることになる。
しかもくるみはアイドルだ。一般の人にも知られている。
そのくるみちゃんを裸のまま町中に放り出すわけにはいかない。
「美紅ちゃんはリーダーの学生服を借りて! くるみちゃんの服は私がなんとかする!」
桃子はひとつアイデアを思いついた。
とにかく善は急げだ、くるみをポッドからひっぱり出した。
「くるみちゃん、起きてください!」
体を揺さぶられて目を覚ましたくるみは、目の前の桃子に思わず抱きついた。
「あなたは広野君の仲間のっ!?」
くるみには怪人に捕らわれていたことは覚えていた。
助けに来てくれた桃子を見て反射的に安堵したのだった。
「ありがとう! 殺されるかと思った」
桃子はくるみの胸の感触を直に感じて恥ずかしくなったが、今はそんなに余裕がなかった。
「ちょっと~っ! くるみちゃん! 離れてください! あまり時間がないんですよ!」
そう言うとくるみを無理やり引っぺがした。
そして、自分のバッジをはずして自分の変身を解いた。
「ど、どうしたの?」
桃子のいきなりの行動にくるみはただただ困惑した。
「くるみちゃんのその恰好をなんとかしないと!」
そう言われて自分の姿を見たくるみは大慌てだ。
「いや~ん!? なんでぇ~?」
ブラジャー姿になったことまでは覚えていたが、全裸にされた記憶はなかったのだ。
恥ずかしくて恥部を隠そうとして辺りを見渡したが、隠せるものは何もなかった。
制服に戻った桃子は、パニくるくるみに自分のバッジを渡した。
「とにかく、今はこのバッジを胸に着けてください!」
くるみは桃子のバッジを受け取ったので、右手を胸に強引に押し当てた。
するとくるみはウイングガールズの桃子のコスチュームに変身した。
「えっ!? なにコレ?」



3.
一方、美紅は桃子に言われるがままに健太の学ランを脱がそうとしていた。
ボタンを気づかれないように1つ1つはずしていくのには慎重になっているので時間はかかっていた。
そして、くるみが変身したことで桃子の意図がわかった。
自分が着る服が健太の学ランだということだ。
確かに、くるみは有名人で町中で裸にすれば社会的にも大きな話題になることは間違いない。
さらにこれからりろと取材をこなさなければいけないのだ。
桃子の選択は仕方がない。
ただ、美紅のすることは変わらない。
健太を起こさないように慎重に学ランを脱がして、それを着ることがベストだ。
しかし、健太は深い眠りについているわけではない。
気づかれないように慎重に脱がそうとはしたのだが、上半身を起こさないと学ランを脱がすことはできなかった。
体を動かそうとした瞬間、健太は意識を取り戻した。
目を開けると目の前に半裸の美紅が自分の服を脱がしにかかっているのだ。
「えっ!? 美紅ちゃん、な、何をしてるの?」
その声に健太が起きたことに気づいた美紅は慌てる。
「ち、違うの¡?」
この体制は誤解されても仕方がない状況だ。
美紅は気が動転した。
「あの、桃子ちゃんが脱がせって……」
その言葉を聞いて健太は驚いて桃子の方を見た。
「えっ!?」
いきなり視線を向けられた桃子は動揺した。
「いやそれは美紅ちゃんの……」
言い訳をしようとしたが健太にはそれより驚く光景があった。
「な、なんでくるみちゃんがピンクのっ!?」
くるみは自分のコスチューム姿を見て気恥ずかしくなった。
スカートは短いし、おへそは出ているし胸も強調されている。
桃子よりも身長の高いくるみはスタイルもよくセクシーさが強調されていた。
「なんだかスースーするなあ……」
くるみはお尻の感触が気になっていた。
それもそのはずだった。くるみは下着をはいていないのだ。
桃子はくるみを気遣ってそれを伝えなかったが、やはり感触に違和感を感じていた。
そこに健太の熱い視線を感じたのだった。
「えっ!? 広野君?」
健太は目を皿のようにくるみのコスチューム姿を見ていた。
「うひょおおっ!!?」
健太は鼻血を出して気絶した。
下から眺めていた健太はくるみのスカートの下が見えていたのだった。
くるみはまいっちんぐポーズをした。
「いや~ん、広野君のエッチぃ!」

美紅は健太の学生服を取ると急いで着用した。
やはりガ―ディングポイントの姿で建物がなくなるのは困る。
アオイや桃子が一緒ならまだしも、完全に1人だけなのだ。
それは美紅にとってはたまらなく恥ずかしいことだった。
しかし学ランを羽織るとその瞬間にガ―ディングポイントが消失した。
「きゃあつ!? まだボタン締めてないのに!?」
幸いにも健太は何度目かの気絶をしていたので見られることはなかったが、それを気にしている余裕はなかった。
美紅は慌ててボタンを締めた。
早く家に帰って服を着ないと……
学ランなら風でめくれたり、というようなことはほとんどなさそうだが、美紅みたいな女の子が学ランを着ているというだけで、奇異の目で見られてしまう。
そして、その下は何も着ていないのだ。
ジロジロ見られては恥ずかしくてたまらない。

幸いなことに建物が消滅した瞬間、付近には人通りはなかった。
「美紅ちゃん、私はくるみちゃんをサポートするね。バッジも返してもらわないといけないし」
その言葉を聞いてくるみは少しがっかりした。
本当は健太にエスコートをしてほしかったが、仕方がない。
それにこの恰好で異性と一緒に取材場所に言ったらいらぬ誤解を生むかもしれない。
しかし……
「私、この恰好で今から取材受けるの?」
くるみは自分の格好を改めて見直して、顔を赤くした。


「美、美紅ちゃん……」
学ラン姿の美紅に起こされた健太は、声を詰まらせた。
美紅は顔を赤くしながらうつむいた。
「はっくしゅん!」
さすがに冬にシャツ1枚では体も冷える。
「広野君、大丈夫?」
心配はするのだがこの学生服を返すわけにはいかない。
「ごめんね、広野君……」
健太もガ―ディングポイント姿も確認していて、美紅の事情は承知していた。
「平気平気。でも、ちょっと寒いし早く帰ろうか……」
美紅は健太にエスコートされ、家に帰った。



「くるみちゃん、なんでそんな恰好してるんだ?」
桃子と一緒に仲額中学の校門で時計を見ていた貧乏ゆすりをしていたマネージャーがくるみを出迎えた。
一度は学校近くまで一緒に来たのだ。その恰好とあからさまに違っている。
「いやあ、いろいろありまして……」
少し顔を赤らめながら言い訳をしようとした。
が、のんびりしている時間はなかった。
「この際、仕方ない。相手を待たしているんだ」
質問をしたくせに聞くつもりはないようだ。
そう言うとマネージャーはくるみの手を引いて走り出した。
「もう、りろちゃんをだいぶ待たせているんだ。学校の使える時間もあるし……」
桃子もその後を追いかけていった。

待っていたりろもくるみのその姿に驚きを隠せなかった。
「くるみお姉さま、どうしてそんな恰好をされているんですか?」
当然、それが桃子のコスチュームであることは一目見てわかった。
いろいろあったことは想像に難くなかった。
くるみは返事ができなかった。
「まあ、いろいろあってね……」
そう言うと、りろも事情を察したかのようにほほ笑んだ。
そして、対談は滞りなく始まった。
でも、何もなかったかのように対談を行い、1か月後には桃子のコスチュームを着たくるみが雑誌のグラビアを飾ることとなる。



ヴィムは研究室に戻ると、早速、くるみと美紅のデータの解析を始めた。
「アイドルって生き物は、別に特別な機能を有している人間ってわけじゃなさそうね」
生物的にも服装にしても特別なシステムはなかった。
ただ同時に回収した美紅のデータが気になった。
「あいつはウイングマンの仲間だったな。あのバッジのデータは興味深いな……バルドの言っていた夢の力、というのもまんざらでたらめではなさそうだ……」
ヴィムはデータをもう一度見直した。
「フフフ。それなら次の手は決まったな。」
ヴィムはほくそ笑んだ。
そして、夢を食べる能力を持ったバクプラスの開発を開始した。


 
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