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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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【IS】一億回負けても、諦めない。

 
これは、大成がたっちゃん相手に奇跡を起こす前の話……。


浅田(あさだ)大成(たいせい)という生徒は困った奴だな、と千冬は常々思っている。

彼は男性IS操縦者として一夏に続いて発見された男だ。
本人曰く、打鉄を愛しているそうだ。IS適性検査を通過して、預けられた練習用打鉄を専用機代わりにしている。その生活はある種異常だった、と政府関係者は語る。

打鉄に話しかける。
打鉄を意味もなくワックスで磨く。
打鉄に抱き着いたまま居眠りする。
打鉄のプログラムを勝手に書き換えまくる。
打鉄のことを「打鉄(だてっ)ちゃん」と呼んでいる。

訓練は真面目にこなす。勉強も真面目にこなす。でも打鉄を取り上げようとすると駄々をこねる。そんなこんなで彼は今日も打鉄をブレスレット型の待機形態にして持ち歩いている。
そして今現在、男性IS操縦者用に編成された新型開発チームを蛇蝎の如く嫌っている。理由は言わずもがな、「俺から打鉄ちゃんを取り上げる気か!?」である。

その瞳を千冬は見たことがある。頼れる大人がいなかった時に必死で一夏を育てようとした自分とうり二つだった。既にISを家族並みに大事にしている……だと……?IS一機にどれだけ入れ込むつもりなんだろうか。壊れたら葬式を開いて遺影を抱えて号泣しそうな勢いである。

「そんなに打鉄を手放したくないものか……?わからん。あいつはわからん」
「あそこまでいくと執念のようなものを感じますよね……あ、でも男の子ってそう言う所に変な拘りを持ってるって聞きますよ?」
「その次元に収まってるとは思えんのだが」

超貴重品にして選ばれしものの証である専用機を蹴ってまで自分の打鉄を愛するその姿、常人ならざるものである。

なお、そんなに打鉄が好きなら専用機を貰ったうえで訓練用打鉄を借りればいいんじゃないかと聞いたことがあるが、「俺は打鉄が好きなんじゃなくて”この”打鉄ちゃんが好きなの!」とアッサリ拒否られてしまった。



 = =



エブリデイ敗北男こと大成の評判は総合的には決して良いとは言えないのは、前の話で話した通りである。が、彼の所属するクラス内では結構意見が分かれている。

まず一夏。

「え?大成?うーん……とんでもなく頑張り屋だよな。一回あいつの部屋に行ったことがあるんだけど……あ、ちなみに大成は一人部屋な?で、あいつの部屋にいったら……いないんだよ。何所にいるんだろうと思って聞きまわったらIS整備室に籠っててさ。毎日毎日自分が負けた時のデータを見直してアレが悪いコレがいいって呟いてるんだ。それと並行してISの仕様変更までしてて、ちょっと真似できないなぁって………そう言う意味では尊敬してるかな」

次、モッピー。

「誰がモッピーだコラァ!!……ん、ゴホン!そうだな……初志を貫くという意味では少し好感が持てるが、あそこまで負けがかさんでもまだ戦うというのはとんでもない意地っ張りだと思う。前に食堂で上級生が「戦い方をレッスンしようか」とあいつを誘っているのを見たのだが、にべもなく断っていたよ。理由は「そんな悠長なことをしてる暇はないです。そんなことより情報を得ないと始まらない」だそうだ。誰にも頼らず自力で強くなりたいというのは日本男児らしいが、流石にちょっと限度があると思う」

次、その辺のモブ子を適当に。

「あさりんのこと?頑張り屋だよね~!すごい頑張ってるから、ついつい試合ではあさりんの方を応援しちゃうの!」
「ああ、浅田君?まぁ正直国家代表に勝とうなんて唯のバカの無謀よね。無理無理」
「あそこまで露骨に差があるのに立ち向かえるのはちょっと……尊敬しちゃうな」
「あそこまで実力差が離れてるのにまだ勝てると思ってるところが何って言うか、愚かしいよね」
「………性悪女(ぼそっ)」
「………なんか言ったかしら?ぶりっこ女!」
「まぁまぁ二人とも!……でも負けても全然へこたれないから励ましてもリアクション薄いのよね。ちょっと可愛げないかなー」

ついでに金髪ロール。

「セ・シ・リ・ア・オルコットですわっ!………ふんっ。浅田大成についてでしたわね。彼は私から見れば前時代的な………(中略)………クラス代表の時も私を無視して、見る目がない………(中略)………実力もないくせに強がって………(全略)………ってちょっと!わたくしの話を聞いていますの!?」

どうも本人的にはいろいろ貶した後に「でもまぁ認めたやらなくもない」とちょっとだけ理解を示して終わらせる構成を考えていたらしい。アホである。時間は待ってくれないよ。

とまぁ概ね上記に並んだような意見が出ている。
総合するとこの男、明らかに偏屈人間の類である。



 = =



時は流れ、新西歴2100年!勿論嘘である。実際にはたっちゃんとの決闘から1週間くらい経った。
メタいことを言うと真・打鉄ちゃんを手に入れる直前で丁度進撃の中華編(鈴~ゴーレム戦)終了後である。

既に迸る俺の打鉄愛は留まることを知らず、俺は世界一の打鉄大好き男だと学園内で専らの噂になるほどの存在として認識されている。そんな俺は今、同級生と一緒に機動訓練を行っていた。

「クイック!停止!螺旋起動加速!バレルロール!どざえもん!!」

華麗な機動から一転して背中からふわっと浮き上がるキャトルミューティレーションスタイル。うむ、今日も機動の調子は完璧だ。

「えっと……クイック!停止!螺旋起動加速!バレルローるぅぅおおおおおおッ!?」
「一夏ぁぁぁ~~~!?」

悲痛な箒の叫びも虚しく、真似しようとした一夏がバレルロールで方向感覚を失って俺の左にものすごいスピードで落下した。別名イチカメテオである。MP消費30のお得技だが命中率が低いのが玉に傷。IS戦ではほぼ何の役にも立たないゴミ技なのでテストには出ない。
このマヌケめちょっとは成長したかと思ったらそうでもなかったようだな。

「うーん、ロールの時にちゃんと三次元的に自分の位置を考えてないだろ?計器の表示ちゃんと見てターン時に自分がどっち向いてんのか意識してたら普通に出来た筈だぞ?」
「は!?お前ひょっとしてIS機動中に高度計とか座標数値表示したまま戦ってんのか!?」
「そうだけど?」

何言ってるんだコイツ。データ取りのために常時表示したままにしてるに決まってるだろう。

「普通チェックするとしてもバリアエネルギー残量だけだろ!他も見ながら戦ったら頭の中こんがらがって逆に何すればいいか分かんねえよ!!」
「フーン。まぁ練習の時くらい数値気にしながらやってみろよ、感覚掴めるから」
「大成さんはマルチタスクがお上手ですわね……ひょっとしたらBT適正があるかもしれませんわ」
「いやいや、そんな立派なもんでもないって」
 
実際、最近やったセシリアとの模擬戦は10戦7敗くらいだ。一昨日漸くBT対策戦略を組み立てて勝つことが出来た。最終的な戦法として取ったのがミサイル戦法だった。

というのもブルー・ティアーズの武器は殆どレーザーなので連射性が低く、しかも数で補うBTを操る間はセシリア自身の動きが鈍る。なので単純に対応しなければならないターゲットの数を増やす――要するにありったけのホーミングミサイルを用いた空間爆撃戦法に思い至った。

BTを展開した場合ミサイルを撃ち落とそうとすれば本体が鈍り、逆に回避に専念しようとした場合は連射性の低さがネックになって思うように対応できない。BTを展開した場合、ミサイルの爆発範囲の広さで逆にBT撃破が容易になる。
よって俺は打鉄ちゃんの非固定浮遊部位、装甲、拡張領域にありったけのホーミングミサイルを詰め込んでバカスカ撃ちまくるスタイルに変更した。ついでに腕部にハンドガドリングを装備させて出撃したらB子ちゃんに「どこのヘビーアームズよ!!」とツッコまれた。
ちなみにA子ちゃんは「ぐるぐるヤー!ぐるぐるニャー!」とどっかで聞いた破壊のプリンスの歌を歌って応援してくれた。やだ、なんか可愛い。ルームメイトさん、うちのたっちゃんと交換しない?

ちなみにこれも初見殺しでしかないので、残り2勝はミサイルを主軸に真面目に動きを分析したものだ。結果、セシリアに「二度と模擬戦したくない」と言われてしまった。そんな連れないこと言わないでくれよ。

「だって、戦えば戦うほどブルー・ティアーズが苦手な動き『しか』しなくなっていくんですわよ!?第二世代のウェポンセレクトの汎用性が高いのは認めますが、こうもやられると気が滅入りますわ!!」
「ティアーズって拡張領域ないの?」
「アンタは知らないかもしれないけど、第三世代ISって基本的に兵装の関係で拡張領域結構カツカツなのよ。だから専用機持ちは自分の装備を如何に極めるかが重要になるんだけど……」

と、一夏たち専用機持ちの視線のニードルスピアーが突き刺さる。

「「「弱点ばっかり突いてくるとか、いやらしい………」」」
「人をスケベみたいに言うなよ!打鉄ちゃんで勝つにはこれが一番なんだよ!!」

勝てる方法で勝つ。負ける方法はしない。それを忠実に実践してるだけなのに……こんな経験は昔通ってたゲーセンの格ゲーで強キャラハメ技使いまくって蛇蝎の如く嫌われたとき以来だ。
  
 

 
後書き
書いてたのに投稿するの忘れてました。
いやー懐かしい。3年半ほど前に書いたっきりでした。 
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