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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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ALO編
  第131話 猫と風の妖精の命運



~桐ヶ谷家~




「……ふぅ」

 リーファ事、桐ヶ谷直葉は ゆっくりと身体を起こし、アミュスフィアも取り外した。今日は、いつになく長時間のログインだった為か、疲労感も若干だが感じていた。

「……絶対に、驚きの連続だったからだよ。……これ」

 直葉は、ん~っと、背筋を伸ばしつつ、現在の時刻を確認した。
 この時間なら、母親である桐ヶ谷翠も帰ってくる時間だろうか、一声はかけるべきだろうか? と、そんなことを考えながら、直葉は手探りでヘッドボードに置いてある携帯端末を手にとった。
 外装と一体化したELパネルにログイン中の着信履歴が表示される様になっている。

「って、はぁ? なにこれ!?」

 目を擦っていた直葉だったが、履歴を目の当たりにして、目を見開かせた。

 着信は全部で12件。

 その全てが、長田慎一からのものだったからだ。アミュスフィアの安全装置の1つで、緊急時の着信等では自動ログアウトをする措置がある。その相手は、公共機関の警察や病院、そして家族等を設定しており、緊急タグ付き電話に限るが、自動でログアウトする事が出来る。……が、勿論 長田慎一の番号はそれには含まれないので、ずっと……ひたすら無視をし続けてしまったようだ。

 だが、それにしてもこの時間帯を考えたら異常だろう。

 普段の直葉であれば、学校ででも 竹刀制裁をしてやろうか?と思えるが、件数も異常な程多いので、仕方なく連絡を取ろうと携帯を開いてコールバックをしようとした所で。

“~~~♪”

 まるでタイミングを狙ったかの様に、13回目の着信が入った様だ。青く発行し、光が点滅している。直葉は、ため息を一つ吐くと、通話ボタンを押して耳元へと運ぶ。

「もしもし? 長田クン? なんなのよ、一体?」
『あっ! ようやく出た! もーーっ 遅いよ直葉ちゃん!!』
「何がもーーっ、なのよ。ちょっと中でゴタゴタしててね」
『そ、そんな事より、大変なんだよっ! シグルドの野郎、僕たちを……、いや、そ、それだけじゃない、領主も――……サクヤさんも売りやがったんだよ!』
「はぁ? ……売った? ……どういう事、どういう意味なの? 最初から説明して!」

 突然の事の連続で把握しきれない為、直葉はまずは一から説明をしろと、要求した。
 長田事、レコンは時間がない、と渋ったものの、話が進まないと判断したようで、説明をする。

『昨日の古森で襲われた時のこと、覚えてる?あの時シグルドの奴、なんかおかしいと思わなかった?』
「……急いでる割には、いつものスローな口調に戻ってるわね。……それに、ちゃっかりまた私の名前呼んで。……今度会った時覚えときなさいよ」
『ふぇっ!?!? い、今はいいでしょっ! 本当に急ぎなんだって!』
「ったく、良いわ。それで? おかしいって何が?」

 正直、昨日のことは……驚きの連続だったため、あの3人に襲われた時の事等、忘却の彼方だ。突然現れた場違いな《スプリガン》と、銀髪の新たな種族《フェンリル》。
 その異常さは、能力にも連動しているのか、両方とも初期装備でサラマンダーを殲滅するし、ついさっきに至っては、怪獣映画よろしく、大戦争をしてるし……。妙な疲労感は、間違いなく彼らのせいだ。と思えるのだ。

 だからこそ、キリトやドラゴと出会う前の空中戦闘の事は、よく覚えていなかった、忘却の彼方だったのだ。

『最初だよ。サラマンダーが8人で襲ってきて、そこで、シグルドの奴が囮になるって言って1人で皆を連れて行ったじゃない?』
「……ああ、あれ。結局撒くことができなくて、こっち側には3人来たし。彼も結局逃げきれなかったんでしょ?」
『そうなんだけどさ。あれ、絶対アイツらしくないよ。今思えばさ。パーティを分けるなら絶対自分は残って、囮なんて真似、ほかにやらせるでしょ? いつもなら。それに、たった1人に8人もついて行くのも今思えばおかしい行動だと思うし』
「あー……ま、確かにね。殊勲な行動を、と思っちゃったのは事実だし……。心入れ替えたかな? とも思えたんだけど、その後の態度みたら、そうでもなさそうだったし。……1人に8人は、まあ確かに」

 リーファは思い出しながらそう答える。
 シグルドの司令官としての腕は確かなもの……、だが、随分と独善的で、常に自分が一番でないと気が済まないところがあるのだ。自身がパーティを抜けようとした時も、メンツの問題ばかりを意識し、個人の意思等聞く耳もなかった。
 そんな男が、自己犠牲的な行動は全然といっていいほど、そぐわない。

「でも、それってどういうことなの?」
『だ、だからさぁ! あいつ、サラマンダーと内通してたんだよ! きっと、相当前から!』
「……はぁ!?」

 今回の驚きは、キリトやドラゴの2人の驚きをも上回る程の衝撃、驚愕だった。だから、直葉は携帯を握りしめながら絶句をしていたのだ。そもそも、複数のアカウントをとる事はまるで難しい事ではなく、ネットゲームが普及した時から、様々なプレイヤーが使い分けている事だろう。それは、このALOでも同じ事であり、種族間のパワーゲームが繰り広げられているこの世界では、所謂 捨てアカウントでのスパイ行為は日常茶飯事だ。
 ……が、決まってそう言うプレイヤーのステータスは極端に低い。それは当然だろう、どちらかの種族をメインでしている以上、片方は疎かになってしまうからだ。従来のネットゲームであれば、それなりに上昇する事は出来る様だが、このVRMMOにおいては、それはかなりきついものがある。プレイする人間が1人である以上は、絶対の限界は存在するのだ。

 だからこそ、あからさまに判る。

 そして、可能性をも含めたら、殆ど100%、そう言うプレイヤーには各種族の中枢には近づく事は出来ない。

 これらの情報を頭に入れた上で、直葉はシグルドのことを考える。

 性格は一先ず置いといて、彼は間違いなくシルフの重鎮であり、古参プレイヤーだ。それでも、領主になれないのは、現領主である サクヤが圧倒的な人気を誇っているから、毎回の領主選挙では、次点、次々点を甘んじてる。彼の性質を今考えたら違和感があるが、それでもへこたれる様子はまるで無く、補佐に名乗り出て、中枢の一角は間違いなく占めているのだ。

 その彼がサラマンダーのスパイ?
『レコンの言う言葉だから~』を一切含めないとしても、にわかに信じる事が出来ない事だった。

「……あんた、それ、確証はあるの?」

 誰かが聴いてる訳でもない、この現実世界なのだが思わず声を潜めながら直葉は問いただす。

『僕、なんか引っかかると思って、今朝からずっと《ホロウ》でシグルドをつけていたんだ」
「……透明化(ホロウ)でって、……あんた、相当暇な人ね。その情熱を随意飛行、空中戦闘に持ってこれないのかしら……』

 《ホロウ・ボディ》と言うのは、レコンが最も得意とする透明化の術。高位の隠蔽魔法と、隠密行動スキルの双方をマスターしないと使うことが出来ない。狩りや、戦争でも先行偵察隊を目的としたキャラメイクに特化している為、尾行は得意中の得意なのだ。

 実は、一度、それを悪用して、リーファが休んでいる宿屋の部屋に侵入してきたことがあった。

 同じパーティだと言う事で、システム的には入る事は出来る。勿論、リーファには気づかれてしまった。本人曰く、誕生日プレゼントをおこうとしただけ、と釈明してるけど、その時は容赦無く半殺しの目に合わせたのだ。……丁度居合わせた、同じ宿屋にいたリタも騒ぎを聞いて……、その時 研究中だったのか、眠たかったのか判らないが明らかに不機嫌ながら入ってきて。

 その後、レコンがどうなったかは言うまでもない。



~剣道仕込みの剣術と大魔道士の超大型、極大炎魔法の2つをほぼ同時にくらい、夜空のムコウ……にまで花火の様に飛んでいったのだ~


 レコンにとっては、苦い思い出を思いだしている直葉を無視して、言葉を続けた。
 
『……風の塔で、アイツがリーファちゃんに暴言吐いた後、あんまりムカついたからさ、毒攻撃でも仕掛けて、暗殺してやろう、と思ってずっとチャンスを狙ってたんだ。……そしたら』
「うわっ、危ないヤツ」
『――裏道で、あいつらも透明マントかぶって消えるから、こりゃいよいよ何かある、と思ってさ。ま、アイテムくらいじゃ、僕の眼は誤魔化せないけどね!』
「アンタの索敵スキル自慢はどうでもいいから、早く先を言いなさい!」
『ぅ……、おほん! そのまま、地下道に入って、5分くらい歩いたところで、妙な2人と密会してたんだよっ! そいつらも透明マント使ってるみたいでね。それを脱ぎ捨てた姿は……、なんとコイツはびっくり! サラマンダーじゃないですか!』

 妙な芝居がかかる物言いは置いといて、その事実が本当なら、これも驚くべき事だ。

「ええ? でも、あのマントじゃ、ガーディアンは誤魔化せないでしょう? 町に入った時点で着られてる筈よ。サラマンダーなら特に……っ!!」

 直葉は はっとして思わず立ち上がった。レコンはそれを感じ取った様に、電話越しで頷く。

『……リーファちゃん、勘付いた? それで正しいよ。あいつら、《パス・メダリオン》を装備してたよ』

《パス・メダリオン》

 それは、通商などで、テリトリーを訪れる他種族プレイヤーに厳しい審査の上で与えられる通行証アイテムだ。悪用防止で、譲渡不可、執政部の限られたものじゃないと言う代物。当然、中枢の一角を担っているシグルドにはその権限がある。発行権があるのだ。

『こいつは間違いなくアタリだと思って、続けて聞き耳をたててたら、そいつらさ! リーファちゃんにトレーサー付けたとか言って、更にそれだけじゃなく……実は今日、領主のサクヤ様が、ケットシーと正式に同盟を調印するってんで、極秘で中立域に出てるらしいんだよ!』
「あ……、なるほど、それで領主館に旗が出てなかったのね」

 直葉の呟きに、被せる様にレコンは喚いた。

『シグルドのヤツ! サラマンダーの大部隊にその調印式を襲わせるつもりなんだよ!!』
「な……!!」

 直葉は一瞬息を詰めた。
 ことによればもう戻らないと言う覚悟で、直葉はシルフ領を出てきたつもりだった。だが、その最大の理由はシグルドの言葉なのだ。……シルフ領は自分にとっての故郷と同義であり、サクヤは敬愛する領主。

 領主になる以前からも仲が良かった。リタも含めて……。

 少なかったとは言え、リタと共に空を飛び、狩りをし、遊びに行ったのは、間違いなく5本指に入る思い出だ。寂しがり屋……と言ったら、火の玉が飛んでくると思えるが、そんなリタがぶっきらぼうながらも、表情を緩めていた。あの思い出そのものを壊されてしまうと、込み上げてくる焦燥のままに、直葉は、リーファとなり、マイクに怒鳴りつける。

「そっ、それを早く言いなさいよ!!」
『だから、最初に大変だって言ったじゃないのさぁー』
「要領を得ないのよ! アンタは!! だから、まっ先にいっつも殺られちゃうんでしょ!!」
『うぅ……』

 情けない声で言うレコンは置いといて、さらに続ける。

「で、それ、サクヤに知らせたの!? まだ、時間はあるんでしょうね??」
『僕もやばい、って思って地下から出ようとしたんだけど……うっかりと石ころを蹴飛ばしてネ……』

 電話越しでも判る。
 この男は、テレ笑いの様なものを浮かべて頭を掻いているに違いない、と。

「このドジ! 大間抜け!!」
『……なんか、最近直葉ちゃんに怒られるの、気持ち良くなってきたかも……』
「この、どヘンタイ!!! それで!? 連絡できたの!?」

 変態発言はこの際聞かなかったことにしたリーファ。今は本当に一刻を争う事態だからだ。

『サラマンダーのサーチャーにハイドを破られて。殺されたとして、復活して領主館に駆け込めばいいやーって楽観視してたんだけど……、あいつら、毒矢で打ってきたんだよ。酷い事するよねぇ……』

 その言葉にも突っ込んでいる時間と余裕はない。

「じゃあ、レコンは今……」
『地下水道で麻痺ってて、サラマンダーに捕まってます……。それで、仕方なくログアウトしたんだけど、直葉ちゃんは、中々電話に出ないし、僕直葉ちゃん以外で他にリアルで連絡付く人いないし……、あ、えーっと、ケットシー領主との会談は1時って言ってたから……うわっ! 後40分くらいしかないよっ!! ど、どうしよ直葉ちゃん!?』
「……その会談の場所、判る?」
『詳しい座標までは……、でも、山脈の内側、《蝶の谷》を抜けた辺りらしいよ』
「判った。あとはあたしがどうにかして、警告に行くわ。もう急ぐから切るわよ」
『あ、直葉ちゃん!』

 切断のボタンを指先に伸ばしたところで、切羽詰まったように、声が再びながれてきた。

「なによ?」
『もひとつ、今日驚いた事があってね。……驚いた事に、あの引きこもりのリタが今出て言ってるんだよっ! ほんっと、驚きだよねー』

 それは、別に今言う情報じゃないだろ!と突っ込みを盛大に言いたかった直葉だった。今は急ぐし、そんなの要らない、っと思ったけれど、答える事にした。今のレコンに良い薬になると思って。

「知ってる。リタは傍にいるし」
『……え?』

 時間にして、1,2秒、レコンが固まった所で、直ぐに電話越しに絶叫に似た悲鳴が聞こえてきた。

『………ええええ!!!』
「ああ、今のセリフ、一言一句違えずに伝えとくわ。多分、炎のプレゼントもらえると思うから楽しみにしといたら? じゃあ」
『うわっ! そ、それはやめてっ! それは全然慣れれないし、気持ちよくないっ!』
「この超どヘンタイ!! もう、いい加減にして、時間が惜しいんだから!」
『ちょちょ、ちょっとまって!もう1つあったんだよ!』

 レコンは続けて言う。

「ったく何よ、一度に言いなさいよね!」
『えーっと、ね。あのキリトってヤツ、直葉ちゃんとどういう関係なn“ぶちっ!!”』

 もう聞くつもりが無かったとは言え、そこには一切触れて欲しくなかったのか、直葉は問答無用で回線を切断し、携帯を再び、ヘッドボードに放り投げた。そして、即座にアミュスフィアを被り、現実世界で唯一使える魔法を。詠唱文を口にする。


 それは、いつもの大空を飛び回れる幻想世界じゃない。それにそぐわない雰囲気が流れる世界へ、陰謀渦巻く異世界へと戻っていった。











~ルグルー鉱山都市 宿屋~




「ん……」

 ドラゴは、魔法スキルの確認を。

「ん……、確かに重いけど、もうちょっとこう……」

 キリトは、自身の武器の確認。

「………“ぺらっ……ぺらっ……”」

 リタは、魔道書を読み耽っていた。

 ユイは、キリトの傍にいたり、ドラゴの傍にいたり……、リタの傍には中々行かなかった。集中していた、とは言え、若干傷ついてしまうリタだった。

 その時。

 ぱちり、とリーファのアバターの眼が開く。

「ん、戻ったか」

 一番先に気づいたのは、比較的傍にいたドラゴだ。

「おかえり、リーファ」
「お帰りなさいー」
「ん」

 それぞれが挨拶をするが、返す時間も惜しんだリーファは口を開いた。

「キリト君っ、ゴメンなさいっ!!」
「……え? ええ?」
「あたし、急いで行かなきゃならない用事ができちゃった。説明してる時間もなさそうなの。それにここにも帰ってこれないかもしれないわ」
「………」

 その言葉を聞いた、リタは読む手を止め、本を閉じた。

「……アンタが取り乱すのは珍しい事じゃないけど、そんな顔するのは、あまり無いわね。……何があったの? あたし達に関係すること?」
「う、うん! リタも来てっ! サクヤ達が危ないのっ!!」
「はぁっ!?」

 リタも思わず声を上げてしまっていた。
 リーファは、現実世界に戻っていたのであり、何故そこで仮想世界の領主の名前が出てくるのか?と混乱してしまったのだ。

「……急を要する、様だな」

 ドラゴは、魔法スキルウインドウを消すと、すっと立ち上がった。キリトも頷く。

「じゃあ、移動しながらだったら、話せるだろ? 移動しながら聞こう」
「え……?」
「どっちにしても、ここからは脚を使ってじゃないと、出られないだろう?」
「……わかった。じゃあ、走りながら話すわ」

 宿屋を出ると、ルグルーの町の大通を進み、門を目指して駆け出した。そして、再び地底湖を貫く橋へと通りかかった。

 その場所にまで到達した所で、リーファは説明を終えた。随分とかいつまんでだが、大体のことは理解したようだ。

「ったく……世話が焼けるわね。……サクヤっ」

 リタも自然と拳が握られていた。

 その仕草だけでもよく判る。そのサクヤと言う人が、リタにとっても大切な人なのだと言う事が。

「いくつか聞いていいかな?」
「どうぞ」

 キリトが視線を前方にさせながら聞く。

「シルフとケットシーの領主を襲うことで、サラマンダー達にどんなメリットがあるんだ?」
「……領主、と言うくらいだ。普通のプレイヤーを倒して得られる物とは比べ物にならないんだろう?」

 ドラゴも推察ながらそう言う。リーファは、2人の方を向いて、頷いた。

「……えっとね、、まずは同盟の邪魔が出来る。シルフ側から情報が漏れた~なんて状況になったら、ケットシー側が黙ってないでしょう。下手したら、サラマンダーとどころかケットシーと戦争に成りかねない。サラマンダーが現在最大勢力だけど、シルフとケットシーが連合すれば、多分バランスは崩れるわ。それだけは 何としても阻止したいんだと思うよ」
「……如何にもトカゲが考えそうなことよね。」

 リタはそう呟いた。サラマンダーが嫌いなのは見て取れそうだ。ケットシーは別なのだろう。
 ……この時、誰も知るよしもないが……、リタは猫が大好きなのである。

「それと、ドラゴ君の言うとおりよ。領主を討つって言うのはそれだけで凄いボーナスがあるの。ただのプレイヤーだったら、そのプレイヤーの三割だけど、領主だったら、領主館に蓄積されてる全部の資金の三割を無条件で入手出来るし、10日間、領内の町を占拠状態にして自由に税金をかけられるの。これが凄いのよ。昔、サラマンダーがシルフの最初の領主を罠にはめて殺したから、今最大の勢力になってるの。普段は、領主は中立域に出ないからね。ALO史上、領主が討たれたのは、後にも先にもその1回だけだったわ」

 リーファの説明を聞いて、キリトも思わずため息を吐く。『そりゃすげえな』と言葉を添えて。

「成る程。ケットシー側、シルフ側の2つの種族の領主を討ち取るとなったら、ALOの歴史に刻まれるな?現実の事件張りに」
「そうなるわ。……だからね、2人とも」

 リーファは、脚を止めて、言葉を紡ぐ。

「これは、あたし達の、……シルフ族の問題だから、これ以上2人が付き合ってくれる必要はないよ。この洞窟を出れば、アルンまではもうすぐだし、それに会談場にくれば……多分、生きて帰れない。また、スイルベーンから出直しで、何時間も無駄になる」
「………もう、はっきり言っちゃえば? リーファ」

 そんなリーファにリタが肩を叩きながら声をかける。

「え?」

 キリトは、リタの言う言葉の意味が判らない様だ。

「キリト、アンタも世界樹の上に行くのが目的なんでしょ? ……なら、あのトカゲ連中と連むのが最善なのよ。……いけ好かないけどね。アンタにも事情があるっていうのは良くわかったから」

 リタは、キリトの目的も聞いていた。そして、それを話している時のキリトの目も見た。アバターの目ではあるが、その目は真剣そのものであり、この世界を自由に飛びまれる様になる為、一番になりたい為、そんな欲望ではなかったのはわかったのだ。

「……リタの言うとおりだよ。その目的の為なら、今のあたし達の行動を邪魔を……、斬って阻止してくれても構わないし、文句はないわ。スプリガンのキリト君や、フェンリルっていう未知の種族。2人の実力だったら、傭兵として雇ってくれるかもしれないし……ここであたし達を切るのが最善だよ」
「……ま、ドラゴも上に行きたいんでしょ? ……大切な物がそこにあるんでしょ? 選択の余地はないと思うけど」

 リタの言葉、意味深な言葉に、普段のキリトやユイであれば反応していただろう。だが、今はそれを考えていなかった。

 リーファも普段の自分じゃないようで内心では驚いていた。リタの発言もそうだ。……正直、2人がかりでもこの2人には勝てないだろう。間違いなく。でも、もし攻撃されたとしても、抵抗しようなどとは不思議と自分は思わなかった。

 この2人と戦うのなんて、考えたくなかったからだ。

 特に、キリトとは。

 リタも同じであり、自分には魔法があれば、といっている彼女だがリーファやサクヤは例外なのだ。……こんな自分に何度も何度も懲りずに話しかけてきて、しまいには共にパーティを組んだこともある。そんなサクヤやリーファを見捨てる様なことは、したくない。

 口ではどんな言葉を吐いても、その言葉に隠された文字は『助ける』しかない。そんな想いがあっても、このドラゴの目的を聞いてしまった以上、知り合ってしまった以上……、彼のそれを成就させてあげたいと思っていた。

 リーファの様に無抵抗で、とは流石にリタは思っていないが、その時は全力で自分の魔法をぶつける。最初で最後の魔法比べをする、と決めていたのだ。……寂しい気持ちはあるが。

「見縊るな」
「「え?」」

 帰ってきた返答は、思いもよらなかった言葉だった。ドラゴの言葉、少しだけ怒気を内包していた。

「……オレが自分の利の為に、仲間の手を切る男だと、思っていたのか? リタは」
「……ばっかじゃないの。そ、そんなに長い付き合いじゃないんだから、そんなの判るわけ……っ……」

 そう言うリタだったが、確かに、どこか判っていた。そんな事を選ぶ様な男じゃない、と何処か判っていたんだ。

 この男は、真っ直ぐな目をしているから。

 これまで、出会ったプレイヤーの中で見た事もない程に。

「オレは、自分の利と仲間。どちらかを取らなければならないのなら、仲間を取る。……信じないかもしれないが、滅多な事ではオレはフレンド申請はしない。申請した、と言う事は最大限に信頼しているから、その人物を視て、信じたからしたんだ。……だから、この先も、これまででも、もし自分が裏切られる事があったとしても、相手を恨みもしないし、組んだ事も後悔もしない。それは自分の責任だ。自分の眼で視て、判断したんだから。……見誤ったからの結果だからだ。自分を嘆いたとしても、相手は、……もう恨んだりはしない。……裏切られる様な事があったとしても、オレから裏切る様な真似は絶対にしたくないし、しない」
「………っ」

 ドラゴの言葉にリタは、もう何も言葉が出てこなかった。リーファも同様だった。走る速度がみるみる内に落ちてゆく。

「まぁ、ゲーム内、所詮はゲームだから、何でもありだ。殺したければ殺すし、奪いたければ奪う、そして裏切りたければ裏切る」

 ドラゴに続き、キリトも言葉を発した。

「――……そんな風に言う奴には、嫌って程出くわしたよ。一面では、それも真実だ。役割を演じる世界(RPG)なんだからな。正直、オレも昔はそう思っていた」
「………」

 ドラゴもキリトの言葉に目をつむりながら聞いていた。ゲームだから、何でもあり。その上金をもらえるなら、喜んで裏切る。……密告する、騙す。
 
 よく……知っているから。

「でもな、それだけじゃないんだ。仮想世界だからこそ、どんな愚かしく見えても守らなきゃならないものがあるんだ。オレは、それを大切な人に教わった。……矛盾してるかもしれないけど、プレイヤーと分離したロールプレイというものは有り得ないと俺は思うんだ。……プレイヤーとキャラクターは一体なんだ。だから、欲望だけに身を任せると、絶対に現実世界の、リアルの人格へと還っていく。オレも、自分の目で見て、感じて、それでシルフ族のリーファや、リタ、そして……ドラゴの事だって、好きになったんだ。友達にだってなりたいと思ってる。……ドラゴもいったけど、オレも自分の利益の為だけで、相手を斬る様な真似はしない、絶対に」
「っ……」
「キリト……君」

 不意に胸が詰まって、呼吸ができなくなるリタとリーファ。そして、思わず立ち止まってしまった。

 今までこの世界でどうしてもほかのプレイヤーに、ある程度の距離以上には近づけなかった理由、それが相手が生身の人間なのか、ゲームのキャラクターなのか判らなかったからだ。その言葉の裏側に一体何があるのか、本当のこの人は何を思っているんだろう、とそんなことばかり気にしていた。
 どう接していいか判らない、そして重荷に感じる。だからこそ、翅を広げてその差し出す手を振り払っていったのだ。

 リタもそうだった。

 魔法に集中する事で、他人を見ずにしていた。……これまでずっと自身の周囲に纏う現実が絡みついてきている。周囲の人間の好意の裏には絶対に何か悪い物がついている。努力して、努力して、トップに立てても、近づいてくる悪意を見抜けずに、全て壊れてしまう。そんな出来事を目の当たりにしたからこそ、全てを遮断する様に魔法に没頭したんだ。

 でも、人間にはそれだけじゃないんだ。人間は、そんなものばかりじゃないんだ。

 心の感じるのを無理矢理、トラウマで封じてしまう事は愚かしい事だったんだ。

 時には、本当に信頼出来た人達の手を取っても……良いんだ。自分の心を許した相手を。

「……ぁり……とう」
「……ありがとう」

 それ以上は言えなかった。相手に伝わったかどうかは判らない。それでも、良かった。でも、キリトはどうやら聞いていた様で、照れた様に笑った。

「ごめん、偉そうなこと言ってさ? 悪い癖だ」

 キリトが謝ったのを視て、ドラゴもふと思った。今のはあくまで、自分の中で決めたルールであり、他人に強要するものじゃないから。

「……む、自分の価値観を相手に無理に押し付けてる、か……確かに、それも良い事ではない、か。そうだな。悪かった」

 そんな2人の言葉に、リーファは首を振った。

「ううん、嬉しかったよ」

 そして、リタはそっぽ向いて。

「……良い。あんた達らしいから。……もう」

 そう言って、2人が見えない所で笑っていた。

「……なら良かった。ところで、リーファ。その会談の時間は大丈夫なのか?」
「あ、いや……あんまり大丈夫じゃないかも」
「ふむ……」

 ドラゴは、さっき説明にあった位置情報を頭の中で再生させた。そして、キリトの方を向くと。

「……確かに他人のスキルを聞くのはマナー違反、だが、今回はお互い様だキリト。真面目な話、敏捷性(AGI)筋力値(STR)はどのくらいあるんだ?」
「ん? どういう事だ」

 ドラゴは、キリトに今後の事を説明した。これが最短で、最速で、最善の方法だと思って。

「……考える事、同じだな。オレもそれしかないって思ってた」
「なら、いけるんだな? 正直、3人は無理だ」
「大丈夫だ。オレはリーファを、ドラゴはリタを」
「ん、OK」

 どうやら、何かが2人の中でまとまった様だ。

「え?」
「何 色々と話してんの?」

 2人には聞こえていなかった様で、そう聞くが、キリトは胸ポッケに入っているユイに声をかけた。

「ユイ、この先のナビ、頼めるか? 道に迷ったら厄介だ」
「はい、了解です!」
「……先のマップ情報くらい頭に入れとけよ。町で見てただろう?」
「んな、短期間じゃ無理だって……」
「ふふっ」

 キリトとドラゴのやり取りが、面白く懐かしく思えたユイは笑っていた。……当然だが、おいてぼりを食らっている2人には判らない。

「ったく、聞きなさいよ。一体何の話?」
「ん、ちょっと失礼する」
「……は?」

 ドラゴは、リタの手を握った。そして。

「ちょいと手を拝借」
「えっ? は? あ、あのー」

 リタが誰かと手をつなぐ様な光景は、超レアだ!と一瞬混乱してしまったリーファ。だが、自分も手をつないでしまった事実を目の当たりにして、心臓がどくんっと脈打った。それは、リタもそうだろう。本来であれば、パンチの1つでも飛びそうだ、と思うが今はそんな事は無かった。

 だが、その後、さらに衝撃的な事が起こる。

「……遅れたら置いてくぞ」
「こっちのセリフだ」

 それが、まるでスタート合図だったかのように、2人は、“ぎゅん!!!”と言う音を立てて、猛烈なスピードで駆け出した。

 空気の壁を突破し、超音速による衝撃波の様なものが発生したかと思えば、衝撃音が2人の鼓膜を叩いた。

 今までのペースもかなりあった、と自負していたが、それとはまるで比べ物にはならない。あまりの速さに、岩肌のテクスチャが放射状に溶けてながれているようにさえ見える。……新幹線に乗って、外の景色、近い所の景色を見たイメージが違いだろうか?

 そして、勿論洞窟内は、一直線ではない。
 所々湾曲してるし、90度カーブもある。それをコーナリングする度に2人の身体はぶんぶんと振り回される。絶妙なコーナリングのお陰なのか、壁に激突する様な事態にはならなかったが……、異性と手をつないで歩くと言うロマンチックの欠片もない。言うならば、先ほどの例えで上げた新幹線。まるで、教育テレビの様に新幹線に手が生えて、その手を掴んで走ってる様な感じだ。
 ……だから。

「うひゃああああっっ!!!」
「きゃあああああっっ!!!」

 2人とも悲鳴を上げてしまっていた。そして、勿論洞窟には数多い湾曲等だけではなく、進路を塞ぐ障害物、即ちモンスターも存在している。新幹線と言うのは体感からの比喩であり、そこまでの高速と突進力はないから、モンスターとは戦わなければならない、と思っていた2人だったのだが。

「ちょっ! まえ、まえっ!! いる、いるからっ!!」

 リタの叫び。そう、前に無数のモンスタ―達がいるのだ。少数でのパーティであれば普通、スニーキングしながら、洞窟を突破するのがセオリーだ。不意打ちも仕掛けやすくなるし、相手と接触もせずに済む。
 ……が、そんなのはおかまいなしだった。

 不運にも、ドラゴ側にはモンスターが多く、キリト側には比較的少ない数。それでも、数がいる事は間違いないのだが、キリトは速度を落とすこと無く、間を縫って走り抜けた。

「ちっ、運が悪い……」

 ドラゴがそんな言葉をいっているが、風切音が凄い為か、聞き取りにくい。

「ちょちょ、あれ、無理でしょっ!! と、と、とま、とまっ」

 振り回されながらも、着実に近づいていく大群を見てそう言うリタ。だが、ドラゴも速度を落とすような事はせず……、その速度のまま 剣を素早く抜くと。

「ぬんっ!!!!」

 その速度に合わせて、裂帛の気合と共に、扇状に敵を切り裂いた。そのダッシュも攻撃の補正、判定にはかかっているのか、通常の立ち止まってのスライス攻撃とは比べ物にならない程の威力であり、モンスターが軽く吹き飛んだのだ。

「……よし、道ができた」
「っっ~~~!!」

 その衝撃映像は、まるで、高速道路で人を轢いてしまった様な感覚だった。
 複数のオーク達は、壁へと“びたんっ!”と、まるで漫画の様に、めり込むように吹き飛び、風圧で道も出来てしまったのだから。それがたたったのか、キリトとの距離はやや開くが、それも数m程だった。


 そして、その後は問題なくモンスター達を掻い潜る事が出来た。
 エンカウントしても、立ち止まること無く進んでいく内に、背後には巨大なモンスターの大群が生まれてしまった。濁流の様に地響きと共に追いかけてくるが、こちらの衝撃音の方が衝撃すぎて、気にならない。……後々、振り返って冷静になって考えると、この行為は《トレイン》と呼ばれる非マナー行為だ。大量のモンスター集団を生み、そしてもし何処かにプレイヤーがいたら、そのプレイヤーにタゲを擦り付けてしまうかもしれない。
 緊急事態とは言え、目覚めの悪い事だが、幸いにも。プレイヤーは誰ひとりおらず。

「お、出口かな?」
「ああ」

 前方の光を見て2人がそう呟く。マップ情報を完全に頭の中に入れているドラゴも頷いていた。

 そして、先ほどまで小さな光だったのだが、その光は速攻で大きくなり、4人を包んだ。

「ひゃあああああ!!」
「うきゃああああ!!」

 その瞬間、足元から地面が消えたのだ。速度に慣れてきたか?と思った矢先の出来事だった為、再び2人は悲鳴を上げて、足をばたつかせる。

 轟音が一気に拡散した……、と感じた2人はゆっくりと瞼を開いた。そこは、どうやら洞窟ではなく……、もう空の上だった。

 翅で飛んだわけではなく、どうやら、山脈の中腹にあるルグルー回廊の出口から、まるでカタパルトの様に飛び出たようだ。

「っっ!!」
「きゃぁっ!!」

 慌てて、翅を広げ滑空体勢に入る2人。殆ど同じタイミングで、詰めていた息をいっぺんに吐き出した。

「――ま、魔法スペル、何個か飛んだ、絶対………」
「――こっちは寿命が縮んだわよっ……」

 空中で、ぜいぜいと荒い呼吸を繰り返している2人。

「わはは、時間短縮にはなっただろ?」
「……違いない。ここからまだ距離がある様だが、時間的に間に合うだろう」

 楽しそうに笑うキリトと、あくまで冷静なドラゴ。実に対照的な2人だが、本質はどっちも同じ様な気がしなくもない。

「む、無茶苦茶するなっ! 次、何も言わずにこんな事したら、特大炎、ぶっ放つからね!」
「一応、目をつむってもらえないか? 相当な時間短縮が出来たんだから」
「ぐぅ~……」

 リタは、押し黙った。
 確かに、2人の言うとおり、いまの時刻をみたら、大分短縮になったのは事実だから。

「……でも、ダンジョンってのは、もっとこう……、索敵に気を遣いながら、モンスターとリンクさせないように……、あれじゃ、別のゲームだよ。レース系? ……全く」
「ほんとよ……って、聞いてんの? ドラ……ぁ」

 ドラゴが見ている先に気がついたリタ。リーファも動悸が落ち着いた様で、気がついた。キリトもその先を見据えた。

 眼下には広大な草原が広がり、ところどころに湖が青い水面を煌めかせている。それらを結ぶように蛇行する河が流れ、更にその先にある巨大なもの。

 そこに皆の視線が集中していたのだ。

「あれが……、世界樹か」

 それを言葉にし、発したのは、キリトだった。その巨体な姿は、まるで空を支えているのか?と思える程高く聳えており、太い幹が垂直に天地を貫いている。そして、上部にはまるで別の天体かと思えるスケールで枝葉が伸びていた。



――……世界樹。



 その名は、様々な世界で見られる言葉。その名に相応しい巨大な樹木だった。まだまだ、山脈を超えたばかりのこの地点。アルンまでの距離を考えたら、まだまだ先の位置にあるのだが…、ここから見えるだけでも、圧倒的な存在感だ。近づいたら一体どれだけのものだろうか……。

「って、こうしちゃいられないわよ」
「そうだったそうだった!」

 リタとリーファは、直ぐに気を取り戻し、座標を確認する。

「……だな。リーファ、リタ、その会談の場所ってどの辺りになるんだ?」
「………」

 キリトが、リタやリーファ達に聞いていた時、ドラゴは周囲をじっと見ていた。

 辺りに誰かいないか、……大部隊と思われるサラマンダーの部隊。領主討伐を狙う部隊であれば、それ相応の数で望む事だろう。……ならば、それ程までの人数で、壮大な数の部隊となる筈。

(……集中しよう。この世界の空気の流れを、全ての騒めきを……)

 眼を見開き……そして、ゆっくりとアルンの方角に向いて、西へ……そして東へと向けた。大部隊が動いている以上、何かしら鼓動は有るはずだ。

 空気の震え、大気の震えが。

 ドラゴにとって此処、仮想世界……デジタル世界は 自分の土俵だ(ホームグラウンド)


「ええっと、今抜けてきた山脈は、輪っかになって世界中央を囲んでるだけなんだけど、その山脈には3箇所の大きなきれ目があって、1つがサラマンダー領に向かう《竜の谷》ウンディーネ領に向かう《虹の谷》、そしてケットシー領に繋がる《蝶の谷》……だから、会談はその蝶の谷の内陸側の出口で行われるらしいから……」

 リーファがぐるりと、視線を巡らせたその時だ。

「……この方角、だろ?」

 ドラゴが、指をさし、そして先を見据えた。

「そ、そう。その通り。あっちに暫く飛んだ所だと思う」
「……何で、わかったかは今は聞かないでおくわ」

 リーファは頷き、リタはやや呆れながらそう言っていた。確か初心者の筈であり、記憶力もずば抜けている、と思うが……リーファしか知りえぬ情報まで持っているとは思えないからだ。リーファが説明をする前から、ドラゴはその方角を見ていたのだから。

「了解だ。……それで、残りの時間は?」

 キリトがそれを聞く。

 ケットシーとシルフの命運。そのタイムリミットは……。

「――20分」

 全てはこの4人に託された。
 先に待つのは、サラマンダーの蹂躙か、シルフ・ケットシー達を無事逃がす事ができるのだろうか? ……或いは。


 
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