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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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元聖十三人衆の一角

ハニーボーンにて・・・

「お前たち・・・今まで一体どこをほっつき歩いてたんだ!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の大魔闘演舞参加者が宿泊することになっているホテル、ハニーボーン。そこでは今、エルザの怒声が響いていた。

「まったく楽しくない食事を・・・」
「変なのに絡まれたというか・・・絡んでたというか・・・」

床に正座させられているグレイ、ルーシィがエルザに答える。

「ぬぅぅぅ・・・」

同じく床に正座しているナツだが、その顔はさっきのスティングとローグ、グラシアンという3人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のあまりにもムカつく態度に苛立っており、エルザの話などまったく耳に入っている様子はなかった。

「むぅぅぅ・・・」

同じくハッピーもさっきの3匹の猫の去り際の言葉に屈辱を覚え、表情を歪ませていた。

「「あいつらだけは絶対許さん!!」」

2人は同時に部屋中に響く声で叫んだのであった。

「ところでシリルとウェンディはまだか?」
「そいえば・・・」
「遅ぇな」

エルザ、ルーシィ、グレイはいまだにこの場に戻ってきていないシリルとウェンディの心配をしている。

「シャルルとセシリーもいるはずだし、迷子になるとは思えないんだけど」

ハッピーはしっかり者のシャルルと意外とちゃんとしているセシリーもいるから迷子はないと確信しているようだ。

「もうすぐ12時か」

エルザは部屋にかけられている振り子時計を見てそう呟く。時刻は11時45分、指定された時間までは残り15分となっていた。

「あんな小さな子たちが、こんな夜遅くまで!!」

ルーシィは青ざめながらある1つの考えにたどり着く。

「夜更かし→悪友→不良!!」

ルーシィの中に浮かんだのはサングラスをかけてラフな格好をして、ブーブー言わせているシリルたちの姿だった。

「ああ!!どうしよう!?」
「小説書きはみんなこういう想像力なのか?」

あまりのルーシィのひどすぎる妄想にグレイは呆れてしまっていた。

ガチャッ

ルーシィが変な妄想をしていると、その部屋の扉が開く。

「いよいよ明日だね」
「リサーナ!!」

部屋に入ったのは紙袋いっぱいに差し入れを持ってきたリサーナだった。

「お前も大魔闘演舞を見学するのか?」
「うん!!頑張ってるナツたちを応援したいなぁ、て思ったから」

リサーナは近くにあるベッドに荷物を下ろしながら答える。

「ちょうどよかった。1つ頼まれてくれないか?」
「何?」

エルザは差し入れに来てくれたリサーナにあるお願いをする。

「実は、シリルとウェンディがまだ宿に戻ってなくてな」
「俺たちは、12時になるまで動かない方が良さそうだし」
「12時に何かあるの?」

ルールブックの説明があった時にその場にいなかったリサーナは事情を知らないためそう質問する。

「よくわからねぇけど『12時にここにいろ』ってルールが・・・」

グレイが言い切る前に、部屋の外からドタドタと足音が聞こえてくる。

「ん?」
「帰ってきたのか」

グレイとエルザがシリルたちがようやく帰ってきたのだと扉の方を見る。次第に近づいてくる足音、そしてその音が扉の前まで来たのと同時に、扉が勢いよく開かれた。

「遅いぞ!!シリ・・・」

エルザは来るのが遅かったシリルとウェンディを叱ろうとした。しかし、2人がそれぞれ抱えているものを見て固まってしまう。

「おい・・・どうしたんだ?」

シリルの手には苦しそうにしているセシリー、ウェンディの手には同様の姿のシャルルが抱えられていた。

「シャルルが・・・セシリーが・・・」
「どうしましょう!!エルザさん!!」

2人は大切な友の苦しむ姿にあわてふためいていた。

「落ち着け!!2人共」
「何があったのか説明できる?」

エルザとルーシィが慌てる2人を落ち着かせる。2人は数回深呼吸した後、ことの次第を話始める。

「実はですね・・・」
























シリルside

「美味しかったね、シリル」
「うん!!初めて食べる物だったから不安だったけど、すごく美味しかったよ」

俺とウェンディ、シャルルとセシリーは夕飯を済ませてお店から出る。

「次どこにいこっか?」
「う~ん・・・」

ウェンディに次にいく場所を聞かれて頭を悩ませる俺。他に見てないところといえば・・・

「ねぇねぇシリル!!」
「ん?」

セシリーが俺のズボンの裾を引っ張りながら何かを指さしている。

「あそこにいってみたいよ~」

セシリーが指を指しているのは華灯宮メルクリアス。

「あ!!私も行ってみたいかも!!」
「まぁ、いいんじゃない?」

ウェンディとシャルルもメルクリアスに行くのに賛成のようだ。せっかくだし7年前とどこか変わったかも気になるし、行ってみようかな。

「うん!行ってみよ!!」

俺たちはそんなわけで華灯宮メルクリアスへと向かって足を進める。だけど、俺たちのことを後ろからずっと狙っていた奴がいるなんて夢にも思わなかった。

























「シリル!!見てみて!!」
「オオッ!!」

ウェンディと俺は目的のメルクリアスの前まで来たのだが、その大きさに目を奪われる。

「すごい・・・」
「おっきいね~!!」

シャルルとセシリーもメルクリアスを見上げながらそう言う。

「なんて名前なのかな?」
「華灯宮メルクリアスっていうんだよ」
「7年前も思ったけど、本当豪華だよね~」

ウェンディの質問に俺が答え、セシリーは7年前とあまり変わった様子のないメルクリアスを見て感嘆の声を漏らす。

「王様ってどんな人かしらね?」

シャルルがそう言う。王様かぁ・・・エドラスの王様のイメージしかないけど・・・

「おひげじゃないかな?」
「おひげような気がするね」
「おひげかもね!」
「モジャモジャ~」

俺たち全員の意見が王様はお髭の人ってことで合致する。もっと細かいイメージしろって?だってエドラス王の印象ってあのすごい髭くらいしか残ってないんだもん。

「王様かぁ・・・実際はどんな人なんだろうね」

エドラスみたいな自分勝手な人じゃないといいなぁ。
俺がそんなことを思いながら華灯宮メルクリアスを見つめていると、

ヒュンッ

「!!」

何かが飛んで来る音が聞こえ、俺はウェンディたちを抱えて横に飛ぶ。
俺たちがさっきまでいたところにはナイフが数本刺さっていた。

「誰だ!!」

俺は目を使って攻撃が飛んで来た方向を見る。そこには1人の人がいるのが確認できた。

「そこにいるのはわかってる!!出てこい!!」
「へぇ。すごいなぁ」

街頭の影から現れたのは緑色の髪をした眼鏡をかけた男だった。

「なんだお前は」

俺にはあいにくこの男の見覚えがない。男は眼鏡を上げながらこちらを見据える。

「俺の名前はノーラン・レイビー。お前が以前倒した元聖十大魔導、カミューニと肩を並べる1人だよ」

その言葉に俺たちは動揺する。なんでそんな奴がこんなことをするんだ。

「目的はなんだ?」
「君たちをここで堕とすこと。それが俺の使命だよ」

ノーランはそう言うと近くの茂みから木の枝を1本折る。

「それっ!!」

ノーランはその木の枝をこちらに向かって投げてくる。でもたかが木の枝じゃ大したダメージにはならないんじゃ・・・

ヒュンッ

俺が油断していると木の枝がドリルのようなものに空中で変化する。

「がっ!!」
「シリル!!」

完全に油断していた俺はその攻撃を受けてしまう。運良くかすっただけだったからまだよかったが、もしまともに当たってたら間違いなくやられていたぞ。

「なんだ。ビビって動いてくれたら急所に当たる計算だったんだけど・・・反応できなかったみたいだね」

ノーランはそういいながら地面に転がっている小石を手に取る。

「でも、次は避けられないかな?」

ノーランは指で弾くように小石をこちらに放つ。どんな攻撃でもこの目があれば避けることくらい―――

ドッ

「!?」

俺の脇腹に痛みが走る。痛みのある場所には弾丸が通ったような痕がついていた。

「っ!!」
「シリル!!大丈夫!?」

ウェンディが心配して俺に近づく。そのまま俺の脇腹のキズを治癒魔法で治してくれる。

「ありがとう、助かった」
「どういたしまして」

俺はウェンディにお礼を言うとノーランの方を向き直る。

「なんだその魔法・・・」

木の枝を投げたはずなのにドリルが飛んで来たり、小石が放たれたはずなのに弾丸のようなキズがついたり。

「俺の魔法は物質を違う物質へと返る魔法。ただ、人間には使えないのが難点なんだよね」

ノーランはそう言いながら再び小石を手に取る。

「ウェンディ」
「うん!!」

ウェンディは両手を広げ魔法は陣を作り出す。

「アームズ×バーニア、付加(エンチャント)!!」

俺とウェンディの体が光出す。あいつの攻撃がもしウェンディにまで飛んできたらまずいし、自分にもかけておいてもらったのだ。

付加魔導士(エンチャンター)か」
「水竜の・・・」
「天竜の・・・」
「「咆哮!!」」

俺とウェンディがブレスをノーランに放つ。ノーランはそれをジャンプして避ける。

「いいコンビネーションだな。ただ、コンビネーションを意識しすぎて攻撃のタイミングが遅くなっているぞ」

ノーランは手から弾丸をこちらに放つ。俺とウェンディはバーニアによってスピードが上がっているためそれを交わす。

「水竜の・・・翼撃!!」
「うおっ!!」

俺の攻撃が当たりノーランは一歩後ずさる。

「天竜の・・・翼撃!!」

そこにウェンディがだめ押しするように攻撃を加える。ノーランはそれをガードする。

「意外に来るなぁ」

ノーランはそう言いながらこちらに突進してくる。

「水竜の・・・鉄拳!!」

俺のパンチをノーランはジャンプして避ける。そして後ろから俺に踵落としを繰り出す。

「天竜の・・・鉤爪!!」
「っ!!」

そのノーランにウェンディが鉤爪を放つ。ノーランはそれを受け流したため俺に攻撃を加えることができなかった。

「さすがに2対1じゃ分が悪いか」

ノーランはそう言いながら俺たちから距離を取る。

「どうした?カミューニさんの方が全然強かったぞ?」
「そりゃああの人は強いよ。それに・・・俺は本気はまだ出さないようにって言われてるし」

ノーランはこちらに視線を向けたままそう言う。カミューニさん同様にこの人も本気はいざって時まで出さない人なのか。

「まぁでも・・・もう“目的も達成した”からここで帰らせてもらうかな」
「「?」」

俺とウェンディはノーランの言ったことの意味がわからずに?マークを浮かべる。この人の目的は俺たちの邪魔なんだろ?だったら目的は達成したないんじゃ・・・

「「きゃあああああ!!」」
「「!?」」

突然、俺とウェンディの後ろからシャルルとセシリーの悲鳴が聞こえる。驚いて振り向くとそこにはグッタリと倒れているシャルルとセシリーの姿があった。

「シャルル!?」
「セシリー!?」

2人に駆け寄る俺とウェンディ。それと入れ替わりに2人の間から黒い見たこともないような生き物がノーランの方へと走っていく。

「お疲れさん」
「キキキッ」

黒い生物はノーランの肩の上に乗っかる。まさかあいつがやったのか?

「シャルルとセシリーに何をしたんだ!!」
「大丈夫、死にはしない。それと、これはただの挨拶だ」
「挨拶?」

ノーランはシャルルとセシリーを抱える俺たちに背を向ける。

「明日、大魔闘演舞で会おう」

ノーランはそう言うとその場から歩き去ってしまう。

「大魔闘演舞で・・・?」

奴の残した言葉に俺はそう言う。まさかあんな卑怯な奴が大魔闘演舞に参加するっていうのか?

「シリル!!シャルルとセシリーから魔力を感じないよ!!」

ウェンディの大声で俺はすぐに今の状況を思い出す。
2人に外傷のようなものは一切ない。だが、2人の体から魔力が感じられない。

「治癒魔法で・・・」
「やってるんだけど・・・」

俺とウェンディで治癒魔法をしてみるかシャルルとセシリーはグッタリしたまま目覚める様子が一切ない。

「どうなってるんだこれ・・・」

なんで2人が目を覚まさないのか、こんな風に倒れているのかわからない俺は頭を抱える。

「どうしよう!?シリル!!」
「くっ・・・」

不安そうなウェンディの顔。どうするって・・・こんな時間じゃ医者なんてやってないし・・・ていうかどこに病院があるのかもわかんないし・・・

「ホテルに戻ろう!!ギルドの人たちなら何かわかるかも!!」
「そ・・・そうだね!!」

俺とウェンディはそれぞれセシリーとシャルルを抱え、皆さんの待っているホテルハニーボーンに大急ぎで向かった。

























そして現在・・・

「というわけでして・・・」

俺が一通りことの経緯を説明しながらシャルルとセシリーをベッドへと寝かせる。

「ノーラン・レイビーか・・・」

エルザさんが俺たちの名前を聞いて何か知っているような反応を見せる。

「知ってるのか?」
「ああ。一度評議院に始末書を提出しに行った時に話したことがある。だが、とてもじゃないが他人をキズつけるような奴には見えなかったが・・・」

エルザさんはそう言う。確かに顔はそんな悪そうな人には見えなかったけど・・・

「だけどそいつがシャルルとセシリーをこんな風にしたんだろ?」

ナツさんは眠っている2人を見て怒りの表情を浮かべている。

「待て。もしかしたらノーランという名を語る闇ギルドの奴かもしれん。あの3人の名前はわりと有名だからな」

エルザさんの言う通り、その可能性も十分あるだろうな。あまり強いとは思えなかったし。

「しかし、なんでシリルたちをそいつが襲ったんだ?」
「挨拶とか言ってましたけど・・・」
「何の挨拶だよ」
「さぁ?」

俺はナツさんの質問にそう答える。大魔闘演舞で会おうとか言ってたけど、仮にエルザさんの推測通り闇ギルドの人間だったら大魔闘演舞に出てくるとは思えないし・・・

ゴォーンゴォーン

俺たちがシャルルたちを看病していると時刻が12時になる。そういえば12時にここにいろってルールがあったな。あの一件のせいですっかり忘れてた。

「一体何があるんだ?」

街中に鳴り響く鐘の音。

『大魔闘演舞にお集まりのギルドの皆さーん!!おはようございます』

そんな中、どこからかそんな声が聞こえてくる。てか夜だからおはようございますじゃねぇだろ!!

「外か」

エルザさんがそう言う。俺たちは謎の声の聞こえたベランダの方へと全員で出ていく。

「なんだあれ!?でけぇー!!」
「立体映像ね」
「カボチャぁ!!」

外から聞こえた声の主を見てナツさん、ルーシィさん、ハッピーがそう言う。声の主は他方向からの映像によって作られたカボチャの被り物をしたキャラクターだった。

『これより、参加チーム113を8つに絞るための予選を開始しまーす』
「予選だと!?」
「聞いてないぞ!?」

カボチャの突然の発表にグレイさんとエルザさんは驚きを隠せない。マックスさんたちも何も言ってなかったし、もしかして去年までは予選なんかなかったんじゃないか?

「シリル・・・113個のギルドっていくらなんでも多すぎない?」
「言われてみると・・・」

ウェンディの囁きで気づいたけど、確かにフィオーレ中のギルドの数にしては多すぎるな。

『毎年参加ギルドが増えて内容が薄くなってるとの指摘を頂き、今年は本選を8チームのみでやることになりました』

カボチャは歌うように躍りながらそう言う。

『予選のルールは簡単!!』

カボチャがそう言うと俺たちのいる建物が・・・いや、クロッカスの街全体が大きく揺れ始める。

「なんだ!?」
「うわっ!!」
「これは・・・」

驚くグレイさんとハッピーとエルザさん。ちなみに俺とナツさんは案の定酔ってしまいました。

「宿が変形している!?」

エルザさんの言う通り、ハニーボーンがさっきまでの高さから大きく上に突き出るように変形している。

「見ろ!!他の宿もだ!!」
「どうなっているんですか!?」

街の中の至る建物が上に突き出るように変形している。

『これから皆さんには競争をしてもらいます。ゴールは本選会場ドムス・フラウ。先着8チームの本選出場となります』

カボチャは簡潔にルールを説明する。すると俺たちの目の前に木で出来た道が出現する。

「道だ」
「ここを進めと言うことか」

グレイさんとエルザさんがその道を見てそう解釈する。

『魔法の使用は自由。制限はありません。早くゴールした8チームのみ予選突破となります。ただし、6人全員揃ってゴールしないと失格!!』
「「「「「「!?」」」」」」

それを聞いた俺たちは一瞬冷や汗を体に感じる。もし俺とウェンディがノーランって奴にやられてたら俺たちここで終わってたんじゃん!!まさかあいつは始めからその計算だったんじゃ・・・

『それと、迷宮で命を落としても責任は取りませんので』
「迷宮?」

カボチャの言葉にナツさんが?を浮かべる。
すると、カボチャの後ろにイビツな形の球体があることに気づく。

『大魔闘演舞予選、『空中迷宮(スカイラビリンス)』開始!!』

カボチャの開始の合図が響き渡る。思わぬ形でスタートした大魔闘演舞。一体これはどうなってるんだ!?あまりにも突発的すぎて俺の頭はついていくことが出来なかった。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
諸事情によりエルフマンが差し入れに来ない上にウェンディも無事と言うことにさせていただきました。
次回はいよいよ予選です。
ただ、これから少し更新が遅くなっていきそうです。申しわけないです・・・
次回もよろしくお願いします。 
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