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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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ALO編
  第126話 シルフの大魔法使い


 その後、リーファ達は午後3時から行動を開始するらしい。一応、その時間と場所を聞いたが……。

「……今は色々と考える時間が欲しい、からな」

 ドラゴは合流するつもりは無かった。少なくとも今は、だが。

 だからこそ、何かあればメッセージを、とも言ってるし、登録もした。……自分がソロを貫く理由は、はっきりとしている。なぜか判らないが、はっきりと思い出せれていた。……辛く、そして苦しいあの記憶を。

 それは、目を閉じていても無理やり砂をねじりこまれる様な。……息を止めても、肺を内側から焼かれる様な。

 そんな地獄とも言える体験。

「……サニー」

 呟くのはかつての仲間。共に仕事をし、そしてゲームでも遊んだ。……初めてのパートナーだった。そして、初めて直接遊んだ同世代の子だった。

 とある陰謀を暴く為に、協力していた。でも……失敗をしたんだ。そして、サニーは……。

「っ……」

 ドラゴは、唇をぎゅっと噛んだ。
 恐らく現実であれば、唇が噛みきれ、血が滲み出てもおかしくないほどの強さで。

 その時だった。

『――抱えこまないで』
「っ!!?」

 また、声が聞こえてきた。




――……サニー??




 一瞬ドラゴがそう思ったのも無理はないだろう。

 だが、それは違った。

 ……もう10年以上も昔の話だけど、はっきりと覚えているから。声は、まだ続く……。

『――苦しいなら、はき出せばいいって思う』
「………」

 その声にだけ、ドラゴは集中させた。



――なぜだろう……。



 現実世界では、割れる程頭が痛かった現象なのに、……なぜだかは判らないけど、心が和らぐ様な気がする。……心が安らぐ様な気がするんだ。

『――私、■■■■君の力に、なりたい……から』
「……誰が、誰の力に……?」

 ただ、言葉の内容が判らなかった。

 この声は一体誰……なのか?泣き声の様な声だけど……美しい声。

 記憶の底を辿っていっても……まるで覚えがなかった。そう、あの空白の時を除いた記憶では……。

「………絶対に見つけてみせる。ALOで。記憶の欠片を……」

 ドラゴは、再び側頭部をすっと触った。大切なものはここに入っているから。



 そして、暫く色々と街を探索した後。(勿論、他のプレイヤーの少ない場所を狙って……)
 ドラゴは、ウインドウを開いた。そこには、ありえない数値が刻まれている。


~ステータス・データ~


Name:Drago

□ 筋力値 922 □ 敏捷値 930
□ スキルスロット/14

★ 片手直剣スキル /完全習得
★ 両手剣スキル /完全習得
★ 索敵スキル   /完全習得
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戦闘時回復スキル /999
隠蔽スキル    /984
刀匠スキル    /933
限界重量拡張スキル/911
危険察知スキル  /811
戦闘技巧スキル  /788
武器防御スキル  /899
投剣スキル    /399
料理スキル    /122
釣りスキル    /111






 スキル一覧表にも、様々なスキルが収納されている。その殆どが8割以上習得しているものだ。明らかに、初期スキルとは言えないだろう。

「………チート、と言われても不思議じゃない、が。……でも、何故 オレが料理スキル? 釣りスキルは判らなくもないが……、まぁとりあえずは良いか」

 ドラゴは、次の項目をタッチした。それは、この世界の象徴とされているもの。

 そう《魔法》に関する欄だった。

「……なんだ、これは?」

 魔法については、殆ど教わっていない。
 大体は、説明ウインドウを確認すれば問題ないだろうと判断したんだが……。

「項目が、多いな……。色々と聞いてから、何から習得していくか決めれば良かったな」

 魔法スキル欄は様々揃えられている。



~魔法スキル~

□ 神威
□ 覚醒
□ 高速詠唱
□ 詠唱行動
□ 回復
□ 雷
□ 根源元素
□ 光
□ 闇


 初期段階で、習得できるのはこれらの項目。

 後に続くのは《????》とされている欄。恐らくは、クエスト・イベント、あるいはスキル習得で解放されていくのだろう。

「……む、高速詠唱、詠唱行動。ある程度魔法を覚えたら、これを上げていくか」

 ドラゴは、一覧を注目してそう呟く。
 RPGにおいて、魔法とは殆どのタイトルで存在するものだ。その魔法を活かすスキルの重要性の大きさは、言わずもがな。……文字通り、詠唱の速度が増せば、素早くだせるだろう。

「……色々と試してみるか。えっと、中立の森ででも行って」

 ドラゴは、ゆっくりと翅を広げると……、その森、街から北東に位置する古森へと向かった。あの時の様に、速度を出したりはしない。ゆっくりと、街を眺める様に……、その飛ぶ際の軌跡に鮮やかな銀色の粒子がまるで、ダイヤモンド・ダストの様に空気中に散らばり……そして消えていった。









 丁度、ドラゴが空へと飛び立ったその時。





 ふと、この空を眺めている者がいた。
 VR世界で研究でもしているのだろうか、ウインドウを無数に出して何かを記入したりしている最中。

「……んー? ……おっ? 何あれ?? プレイヤーかな……?」

 気づいたら、凝視していた。その飛ぶ姿に。飛ぶ際に放つ色……輝きは殆ど固定されており、変更は出来ない。

 シルフであれば緑、サラマンダーであれば赤、スプリガンであれば黒といった具合に。

 だが、あれは銀色。雪の様な色も加わっているから、白銀、といった所だろうか。……飛ぶ際に、何か魔法を使っているのだろうか?と頭に過る。
そして。

「……なんか、気になる」

 ……自分の沸き上がってくる探究心が抑えられない様子。

 ここらでの魔法の技能(スキル)研究はもう殆どし終わった所だ。シルフが習得出来る魔法で、現在アップデートされている魔法スキルはもう完全に覚えた。そして、その他の種族のモノも殆ど把握しているし、習得は困難だが問題なく覚えられた。

 だから、知らない魔法はもう恐らくない……と言えた。

 ……言えた筈だった。視覚のみだけに作用する魔法は聞いた事無いし、知らない。もしも、エフェクト効果と共に、飛行中に何か発動するのなら、なお気になる。

「あんなの見た事無いし……」

 周囲に出しているウインドウの全てを消し、ゆっくりと起き上がる。そして、窓から一気に飛んだ。

「あの方向……は、ん。北東のフィールド……古森か。あそこに降りていってるし」

 大体の場所を把握すると、ぐっと、背伸びをした後に翅を広げる。

「あれ? 珍しいね。どっか行くの?」
「……んん? なんだ、レコンか」
「『……なんだ』 って、ちょっと酷いよ」

 降り立った場所が、丁度町のメイン・ストリートだった。だから、結構目立っていた様で、レコンの目に止まったらしい。

「あんた1人? リーファはどうしたのよ。あんたって、いっつもリーファにくっついていたし。ついに愛想つかされちゃった、とか?」
「う゛う゛……酷いよぉ……」
「……鬱陶しいなぁ。あ、あたし、そろそろ行くから」
「う~……って、あれ? 殆どゲーム世界の《ひきこもり》状態だったのに、どこかに行くの?」
「………」

 レコンの言葉を訊き、……ぴくり! と眉が釣り上がった。
 そして、その言葉を聞いた瞬間、彼女の周囲に文字が躍り出た。光り輝く文字は、言葉を発する事に、一文字、一文字の光が選ばれていく。それが、1つになった瞬間、拳大より一回りは大きな炎の玉が、空中に出現。

 その数は示して10弾。

 その者の周囲に、ふわりふわりと浮かび、周囲を漂っている。

 こんな公共の場であるし、普通であれば、周囲も驚くかと思われるが、実はこれはいつもの光景だったりするのはこちらの話……。

「え、ええ? あ、あれ? 火の魔法のファイヤー・ボールって、そんな数、滞空出来たんだっけ??」

 レコンは、その浮いている炎の数を指で数えながら驚愕していた。今使っているのは、所謂、タメ系の魔法。即効性を考えれば使いがってが悪いが、時間をかけて、魔力ゲージであるマナを消費させながら、詠唱する事で、攻撃力が増す優秀な魔法だ。……風の系譜の魔法なら兎も角、炎の魔法は、サラマンダーの十八番。
 シルフでは、中々習得できない魔法だし、それをふまえても、その数に驚いていた。

 だが、その返答は違った。

「……ぶっ飛べ!!」
「え、ええっ!?!?」

 返答は、この炎の玉のプレゼント……だ。
 そう吼えた瞬間、10もの火の玉……炎の玉がレコンに迫っていった。

“ちゅどちゅどちゅどぉぉぉんっ!!!”
「ぎゃああああああ!!!」

 勿論、この街。シルフ領であるスイルベーンでは、シルフであるレコンにダメージを与えることはできない。……が、ノックバックは発生する。
 即ち10連撃もの衝撃が、その小さな身体に迸るのだ。本来は、追尾するのは2~3球。即ち 3倍以上の衝撃。

「ぐええっ!!?」
「……ふんっ!!」

 吹き飛んだ、レコンは街の壁に衝突し、しこたま頭を強打した。

 破壊不能オブジェクト、とシステムメッセージを残しながら。

 ぴくぴく、と痙攣させながらもゆっくりと頭を上げ。

「……ひ、ひ、ひどいよぉ……リタぁぁ……」
「うっさいわね! 毎回あんたは 余計なお世話なのよっ!!」

 げしっ!と蹴りを1つ入れて、更に転ばせると、その情けないシルフの鼻垂れ坊主を後に、翅を広げた。

「あんたも、リーファのお尻ばっかり追っかけてないで、もうちっとゲームに集中したら? 少なくとも、いい加減飛ぶのくらいはマスターしなさいよ」
「ぜ、善処……しますぅ……」
「後、昔から言うでしょ? ……口は災いのもと」
「えー……僕は本当の……「ギロっ!!」 な、なんでもないです……、ご教授ありがとうございます……リタ先生……」

 ペコリと速攻で頭を下げるレコン。リタは、そのままぷいっと顔を背けると、そのまま先へと向かった。目指すは、あの銀の光の元へ。

「このえ私が知らない魔法があるなんて、我慢ならないわ。……なんにも無かったらそれはそれで良いしね。たまには気晴らしって事にもなるでしょ」

 緑の翅を広げ……そして、飛び上がった。

「ぅぅ……、リタだってあまり参加しない癖……って言ったら後が怖いし……」

 どこで聞かれているか判らないからレコンは急いで口をチャック。もう言い切った後だから、殆ど無駄だと思うが……幸か、リタはもう空高く飛び上がっていた。




~中立域 古森~


 空を駆け巡るエリアだけの事はある。その空にも浮遊している小島が無数にあり、その一つ一つを探索する事が出来る。……この世界を隅から隅まで確認するには、膨大な時間を要するだろう。

「ふむ、それに関しては幾らオレでも、時間がかかるのは同じだな」

 ドラゴは、無数の浮く島を眺めながらそう呟いた。他のゲームでは、無装備クリア、低レベルクリア等、色々としてきているし、最短クリアと言うのにも何度もし、ネット上で記録も残っているくらいだ。
 
 勿論、一桁ランキング。

 ……が、当然だが 広範囲の探索系は勿論、時間をかけなければ無理だ。

「ギャアギャア!!」

 そんな時だ。
 無数の鳥……いや、一つ目のワイバーンと言うべきモンスターが飛来してきたのだ。その数は、目算で3匹と言った所、だろう。

「……肩ならしにはちょうど良さそうだ。さっき覚えた魔法も使えるだろうし」

 ドラゴは、魔法の詠唱をしようと構えた。無数の文字をどんどんと唱えていく。……が、勿論敵モンスターも黙って待ってる筈もない。

 何度も飛びかかってくるが、それを巧みに回避していく。本来であれば、詠唱の最中には、行動は出来ない。攻撃でもされようものなら、即座に攻撃が中断されてしまうのだ。
そして、何よりしっかりとした詠唱文を発声させなければ、魔法とシステムに認証させる事は不可能だ。それを可能にさせているのが、先ほど習得したスキル《詠唱行動》。

 詠唱をしながらも動くことができる。
 だが……、動けるだけであり、詠唱文をしっかりと言わなければならないのは変わらない。だから、普通であれば、動きながら詠唱は集中力を普通の詠唱よりも要する。パニックになったりして、中断される可能性は普通の魔法使いポジションよりも難易度が高いだろう。

「……コメットってか? 相当長い詠唱だが……生憎、暗記系は大得意だ。……普段、何百、何千、何万の数値を見てきてし、記憶もしている。このくらいの詠唱文は、ぬるい」

 詠唱が終わったと同時に、天から光が降り注ぐ。それは、人間大の隕石の様な塊。

 ずごぉぉぉぉぉぉ!!!! と言う衝撃、この世の物とは思えぬ……、いや、仮想世界だが。
 その物体は、空から高速に飛来し、ワイバーンの3匹に直撃し、大爆発を巻き起こした。その爆炎に包まれた中にいるドラゴは、目を丸くさせていた。

「………チートだ。この魔法」

 自分が魔法を放っておいて、唖然としながら呟くドラゴ。

 魔法スキル 《根源元素》。

 無属性の魔法があるだろうと思って習得してみれば、ビンゴだった。根源の力。元素の力。それは、色々なゲームでも出ているから判った。

 だが、初期段階で習得できる魔法に括るのは有り得ないだろう。

 この威力……、詠唱文の長さから考慮したとしても、ゲームバランスを崩しているとしか思えない。……パーティを組み時間を稼いだとしたら、間違いなく最強の火力を持った魔法兵器の完成だ。

「……無双キャラをしたい訳じゃないんだけど……。あくまで自分の力で強くって言うのが信条だし……、今は仕方ないな」

 甘んじて使わせてもらおうと思うドラゴ。何でこの力が自分に備わったのかは判らないが。あのメモリでゲームをしたから、と言うのが切欠だと思うが……。
 その時だ。

『……思い出し給え』
「っ!」

 突然、声が聞こえてきた。

「……誰だ」
『この世界に、君が求める物は必ずある。……思い出し給え。……■■■■君』
「……会話が成立している。これは……」

 嘗ての記憶のものじゃない。今、この世界での出来事だ。

「お前は誰だ……? GMか?」
『……的を得ているがな。違うとだけ、言っておこう』
「なら誰だ。オレに何の様だ……?」
『……ふふ、かつて、君を後ろから攻撃した者だよ』
「……何?」

 言っている意味がいまいち判らなかった。

 後ろから攻撃を? 別の世界、ゲームでの話だろうか? だが、その時のHNは今とは違う。そして、VRMMOもこれが初めてであり、容姿から判る筈もないのだが。

『……今は無理の様だが、いずれは思い出すだろう。これは私からのプレゼントだ。真剣勝負だった、とはいえ、そして、あの状況とはいえ、後ろから刺すと言うのは私にとっても悪手だと今でも思っているよ。……君とは純粋なゲームで競いたかったのは事実だ』

 そう言うと、ウインドウが光出した。すると、マップ上に赤い光点が示された。

「何……? お前は、オレの事を……? 何故だ。何故知っている? それに知ってるなら教えてくれ!」

 頭の中に響く声に向かって声を荒らげた。だが、それ以上の声は聞こえてこなかった。

「……一体何だ。今のは……くっ……」

 歯ぎしりをするドラゴ。知っているかもしれない。あの存在が一体何なのかは判らないが、自分が知りたい事が……。

 歯ぎしりをしていた時に、また、声が響いた。

『……ふ、君は自力で思い出す、と思うんだがな? そう言う男、だろう』
「っ……!」

 それを言われれば、間違いないだろう。何事もそう。ゲームにしたって、攻略サイトを利用する事は無い。全て自力で解くし、調査する。
 判った事を発信する事はあっても、その逆は無い。これまでも、そしてこれからも……。

 だが……。

「時と場合による、んだがな……。これ以上聴いても答えてくれなさそうだ」

 ドラゴがそう呟くと、その声はどうやら、笑った様だ。それを最後に本当に声は聞こえなくなった。



 そして、更にその後、マップ上の赤い光点を目指して北東方面へと向かっていく。すると、洞窟が見えてきた。

「ルグルー回廊……か。いや、光点の位置はやや東より……竜の谷と古森の中間ポイント……ん?」

 丁度その時だった。
 風切り音が聞こえてきたと思えば、空に声が響き渡る。

「よーやく見つけたぁぁ!! 待ちなさい! そこのアンタっ!!」
「……何だ?」

 空を見上げると、そこにいたのはシルフ。……いるのは別に不思議じゃない。何度か別プレイヤー、サラマンダーにも出会っているからだ。容姿のせいか、攻撃をいきなりされる事はなかったが、最終的に血の気の多い種族の様で戦闘にはなったが……、軽く屠った。今度はシルフか?とドラゴは思っていたんだけど。

「ふぅ……」

 ふわりと着地すると、ゆっくりとした足取りでこちらへと歩いてくる。

「……なんだ? オレに何か様なのか?」

 後一歩の距離、至近距離まで近づいた所で歩を止めた。この距離で攻撃されても問題ない。それは、過信ではなく絶対の自信があったんだ。

「いや! 街でアンタの事見て、気になったのよ。一体何者なの? ……この私でも知らない魔法を使っちゃって! さっきの、まるで所謂 極大魔法みたいなの、使ったのもアンタでしょ? それ、目印に来たら案の定だったんだもの!」

 客観的に見ても かなり興奮しているようだ。ドラゴにそう聞いていた。確かに、あの魔法に関してはチートも言い所だ。そして、このゲームは魔法が売りな所もあるから、気になるプレイヤーがいても不思議じゃないだろう。

「あ、ああ……話すと長くなるんだが」
「良いわ。久しくなかった探究心だもの。教えてくれるなら、何時間でも何日でも!」
「……そこまでは掛からない」

 目を輝かせている少女を見て、思わずのけぞってしまうドラゴ。余程魔法が好きなのだろうか?と思った様だ。

 そして、一つずつ説明をしていった。リーファと言うプレイヤーと接触したという事。街にいたのは、彼女がお礼に、と言った事を。

「ふーん……そう言えば、街中で色々と話題だったわね。リーファもリーファで、なんか変なのと一緒にいたし」
「変なのって……キリトの事か?」
「ん? あ~、そんな名前だったわね。確か」
「覚えてやれよ……。それに変なのって」
「十分変でしょ? シルフ領にスプリガンがいる時点で。ま、アンタも十分変なんだけど」

 はっきりと物をいう彼女だが……、不思議と悪意と言う感じはしなかった。

「そうか。それは否定しない。……話せるのはこれくらいだ」

 そう言って、立ち去ろうとしたのだが。

「ちょっと待った。まだ肝心の魔法、聞けてないわよ」
「ん? 魔法と言ってもな……さっき言った様に、何故この種族に選ばれたのかがよく判らない。このフェンリルと言う種族特有の魔法だと思うぞ」
「ん~……成程ね。まぁ、そんな所か……」

 何やら考え込む仕草を見せた。そして。

「あのでっかい光の魔法は? 何て言うの」
「所謂、小惑星衝突(コメット)じゃないか? 正式名称じゃない様だが。詠唱文が長くて、時間もかかる。 まぁ それを補う程の威力を秘めてる様だ。見ての通り」
「コメットコメット……。んー、種特有の魔法なら、私が習得するのは難しいか……、でも 呪文単語の一つ一つを解析していけば、なんとかなるかも……?でも、そのためには研究をもっと続けないとだし……ぶつぶつぶつ」

 何やら、ぶつぶつとつぶやいている少女。とりあえず、終わっただろうと思ったドラゴは。

「もう、いいか? オレは行く所、あるから」

 そう言って別れようとしたが……、手をガシっと掴まれた。
 筋力値(STR)的には、恐らく負けないと思われる筈だが……、振り解けない。

「……なんだ?」
「少しだけでいいから、アンタについて言っていい? ……あたし、アンタの魔法に無茶苦茶興味があるの」
「………嫌だ、って言ったら離してくれるのか?」
「嫌って言われても、勝手に後ろからついて行く。どうしても、アンタの魔法習得したい」
「……はぁ」

 これは何を言っても無駄だと思える。
 その目が物語っているのだ。今までのゲーム、MMOの中でもここまで押しが強いプレイヤーはあまり見ない部類だろう。……目も座っている様だ。

「……勝手にしろ。オレはもう行くぞ」
「あーまって。一応、自己紹介しとくわ。あたしはリタ。とりあえず少しの間ヨロシク」
「……ドラゴだ」

 ひょんな事から、魔法熱心なシルフ魔法使い、リタと行動を共にする事になった。

「それで、今から何処行くの? ま、あたしとしては、魔法がみたいから、敵と戦える場所に向かいたいわね。ここよりはダンジョンの方が都合が良いけど?」
「……まぁ、この光点の場所に行く予定だが?」
「ん? 光点?」

 リタは、ドラゴが可視化したウインドウを覗き込んだ。そして、暫く見た後。

「ふーん……、丁度あの谷と この森の境目ね。あたしは行った事、無いけど。……何でアンタのマップにそんな印があるのかしら?」
「……さぁな。この種族もイレギュラーだし、このマップにも色々と有るんだろう。……別に何も無いならそれでもいい」

 ドラゴはそう言うと、歩きだした。それについて行くリタ。

「まっ、何かあるのなら、それはそれで興味深い対象になるかもしれないわね……ぶつぶつぶつ」

 歩きながらも、リタはそう言っていた。ゲーム内だというのに、……まるで根っからの研究者の様だ。
 ある分野を追求する、それ以外には興味が無い。ときっぱりしている様だ。そして、自分の中に一本の強い芯があるとも取れる。

「……熱心なのは言いが、足元注意だ」
「ん? ひゃっ!!」

 ドラゴがそう注意を言った瞬間。リタの足元付近が盛りあがる。

 そこにいたのは、頭を出した土竜(モグラ)。 そんな可愛げのあるものではなく、言うならば醜悪。長い舌で、舌なめずりをしており、その目は先ほどのワイバーン同様に1つ。針の様な毛が全身に入っており、触ると刺さるだろう。……そもそも触りたくない。
 リタは、突然の足元からの攻撃に、ダメージこそは無かったが、思わず倒れてしまった。

「……ふっ!」

 ドラゴの剣閃が、土竜の身体を捉えかけたが……。
 あの土竜は、ドラゴの剣閃が届く前に素早く潜り、攻撃を回避した。

「ちっ……、思ったよりすばしっこいな。……大丈夫か?」
「………」

 リタは、尻餅をついて、放心しかけているようだ。研究熱心なのは結構だが、圏外と圏内の区切りはしっかりとしてもらいたいものだ。ドラゴは、傍にまで近づいて引っ張り上げた。

「大丈夫か? ……ここでへたりこんでると危険だぞ」
「あ……ぅ、わ、悪かったわね。ちょっと驚いただけよっ」

 リタは、ドラゴの手を離した。そして。

「あ、ありがと……」

 そっぽ向いて礼を言っていた。ドラゴは、とりあえず剣を構えて。

「……礼は後でいい。とりあえずコイツらを片付けてからだ」

 そう言うと、再び剣を構えた。

 ぼこぼこぼこ……、と周囲の大地が鳴る。
 周囲を見渡すと、あの土竜が通ったであろう、道筋が無数に出来ていた。盛り上がっている地面。それをたった一匹で作るのは有り得ない。即ち……。

「POPしたか……」

 地面の下にいるからか、正確な数は判らないが、複数いるのは間違いなさそうだ。

「地面の下……。アンタっ! 10秒だけ時間を頂戴!」
「ん? ……ああ、判った。……ふんっ!!」

 ドラゴは、リタの言葉に頷くと……跳躍し、地面に剣を突き刺した。この世界では、ソードスキルは存在しない。それは、まるであの世界の《ヴォーパル・ストライク》
 突き刺した刃が衝撃を生み、辺りの土竜達にスタンの効果を与えた。

「ぎっ!?」

 そして、増悪値もドラゴに向けられた様で、タゲを取り続ける事も成功。無数の相手だが、この辺りの敵はまるで問題が無い。……が、幾ら強大な力も当てられなければ意味は無い。

「……いいわ!」

 そんな時だ。時間にして丁度10秒後。リタが声を上げた。

「相手は大地の下。……囁かな大地のざわめきは敵を滅する」

 リタがそう言ったその直後。土竜(モグラ)達の周辺の地面が光った。

「……オレの方にも来てないか? これ……」

 そう、その範囲は思いの外、広く……丁度、ドラゴの直ぐ傍にまで広がっていたのだ。

「そこ、危ないわよ!」
「……なら、最初から さっさと言え」

 ドラゴは、翅を素早く出すと、随意飛行をする。その瞬間。

 ずがががががが!!!! とけたましい衝撃音を発しながら、無数の岩が大地から飛び出した。

 岩なんて、生易しいものじゃない。まるで、巨大な剣か槍の様に、刃先が尖っており、敵を貫いたのだ。

『ぎょわああああっ!!』

 無数の断末魔の悲鳴が木霊し、数にして3匹のモンスターが燃え上がる様に消滅した。が、辛うじて直撃を免れた2匹もいたが、大地から離れ、宙に放り出される。……その隙を逃すドラゴではない。
 素早く接近し。 ドラゴの一閃の元、切り捨てる。

 そして、例外なく、残りのモンスターも燃え上がるように消滅していった。

「ふぅ……」

 ドラゴは、着地し翅を収めると、リタの方へとやって来た。そして、少し笑うと。

「……そっちの魔法も随分と強力だな。シルフ族は、風の系譜の魔法を得意とする、と聞いていたが、明らかに土の属性の魔法だし」
「ま、まぁ。あたしは、色々と研究……極めてるからね。あたしの魔法に属性に括りは無いわ」
「成る程。……魔法に拘るだけはにある、と言う事か、納得したよ、……見事だ」
「っ……」

 リタは、笑顔を向けるドラゴを見て顔を逸らした。
 正直、他人とパーティを組む事は稀であり、組んだとしても、女性プレイヤーが殆ど。大パーティの場合でも、はぐれ魔法使いとして、後ろから火力の高い攻撃魔法を放つだけであり、コミュニケーションと言うコミュニケーションはあまり取ってこなかった。
 ……勢いでついてきたが、こんなマンツーマンで男プレイヤーとこんなに話した事無かったから、どういう顔をすれば良いのか判らなくなった様だ。……レコンは別としても。

「さ、行くぞ」
「……へ?」
「ん? 付いてくるんだろ?」

 少し、また放心しかけていたリタだったが、直ぐに正気に戻り、慌てて駆け出す。

「も、勿論よ! ってか、次はあんた……ドラゴの魔法も見たいからね。撃ってよ!」
「……リタは魔法使いだろ? それとも前衛も出来るのか?」
「鞭スキルは上げてるわ。だから、接近戦も問題なし! この辺り程度なら尚更!」
「ん、判った」

 ドラゴは、そう言うと、再び光点目指して翅を広げた。

 ……この時リタは思い出す。

 リーファとの話、サクヤとの話を。






~回想 中立域 古森~



 3人のシルフは、午前中から狩りをしていて、時刻は15時。今日の狩りを丁度終えていた。

『はぁ……、ま こんな所ね』
『相変わらずクールだな? リタは』
『ふ~ん、ま、良いんじゃない?』
『あははは……』

 それは、3人で狩りに行っていた時の事。リタは、魔法のスキルをあげる為、サクヤやリーファは素材、金を集める為。

『ねー、折角のVRMMOだし、もうちょっと皆と話せば? リタ』
『……話してるじゃない。あんた達と』
『まぁ私としては、寡黙なリタと話が出来て嬉しいけどさ? もっともっと皆とだよ。結構人気あるんだよ? リタって』
『っ……。興味無いわ』

 リーファはニコニコっと笑いながらそう言う。リタは、そう返してそっぽ向いた。

『ふふ、男性と話をしてみる、パーティを組んでみる。と言うのも良いかもしれないぞ? リタ。……守られると言うのをこの世界ではリアルに味わえるからな』

 サクヤは、そう言う。もう少し皆と打ち解けて、そして積極性が出てきたら、シルフとしては大いなる戦力になってくれるのだ。

 《シルフ一の大魔法使い》と言っても過言じゃないプレイヤーだから。

 今でも十分な程だが、それ以上になる。だからそう言ったんだが。

『男? やーよ。レコンみたいなのばっかだし。リーファ狙いばっかだし』
『ちょっ……!! な、なによっ! 私狙いって!』
『言ったとおりの意味。そのデカい乳に目が奪われてるって言ってるの』
『む、胸はかんけーないよっ!!』
『ふむ、私もリーファのは羨ましいと思った程だぞ?』
『ささ、サクヤまで!! って、サクヤだって変わらないじゃない!』

 サクヤとリーファの乳比べになりそうな展開に持って行ってしまったリタは若干後悔していたが、直ぐに興味なさそうに、魔法スキルウインドウを開いた。より効率よく、魔法を放てる様に、詠唱文を頭に叩き入れる為だ。

 普通に会話で使われる様に自然に出せる様に。
 どんな時でも、失敗しないように。

『ふふ、リタは、男が出来れば変わる、と思うんだがな?』
『お、おとこ……』
『まぁ、リーファは出来ても同じな気がする』
『ちょっ! ど、どーいう意味よ~~!!』

 この中で一番、大人っぽいのはサクヤ。それで決まりだろう……っと思える様な光景だった。




  
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