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戦国村正遊憂記

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第壱章
  八……呪ト転生

「はー、よく寝たーっ」


朝だ。日差しが眩しい。
日の出まもない時刻に起きる。これはいつもの事なのだが、いつもと違うのは寝ていた場所と胸の違和感。

昨晩は徳川の城に戻るだけの気力も無く、野宿をした。忍びがそこら中で見張っているのは気が付かないふりをして。起きて周囲を見てみると、なんと苦無が周囲の地面に沢山刺さっていたのだ。


「え……これ、何があったの」


本当に危なかった。寝ている間に殺されかかったのだ。
それよりもっと驚いたのは。


「……こ、これって」


身体がおかしいのだ。
もっと詳細に言うなら、身体が女らしくなっているのだ。
とりあえずこの場に留まっているのは危険と判断し、徳川の城を目指す。道中、野盗に襲われないかとヒヤヒヤしながら。
すると、背後から蹄の音。振り返ると、遠くに赤髪の青年が見えた。


「…………なんだあれ」


厄介そうだったので、村正は例え話し掛けられても無視する事にした。
蹄の音はだんだん大きくなっていき、遂に村正に追いついた。


「おい、こんなトコに一人で大丈夫なのか?」


無視。


「なぁ……大丈夫なのかってば」


む……無視。


「…………」

「くっ、フフッ、あははははは!!」

「え?」


我慢出来ず、吹き出してしまった。
村正はそのまましばらく笑い転げていた。笑いが収まって、馬上から降りた青年に笑いかける。


「あはは……失礼、僕は村正だ」

「村正……ちゃん? か。俺は島左近! 左腕に近し島左近だぜ!」


ちゃん付けされて何故だかむずむずした村正。違和感に、表情を歪ませる。


「なーに変な顔してんだよ、『村正ちゃん』とか呼ばれた事無かったのか?」

「うん……つい昨日までどうやら、男だったみたいだし」

「えっ、それって……」

「いや、元々女だったのかも」


笑う村正。きょとんとしてから、左近も笑い始めて。
二人で笑い合った。
とりあえずここにいるのは危険だ、という事で、佐和山城へと向かう二人。

村正は、すっかり本来の目的……徳川の城に戻ることを忘れてしまっていた。 
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