| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SAO編
  第117話 ラストバトル



 真の決戦の時。

 キリトは、茅場晶彦に再び向き合った。……己の命を掛けた決闘を、殺し合いをする前に。

 キリトは最後の懇願をこの男にした。これが本当の最後。

「悪いが、1つだけ頼みがある」
「何かな?」
「簡単に負けるつもりは無い。だが……もしオレが死んだら……暫くで良い。アスナが自殺できないように計らって欲しい。」

「「!!!」」


 アスナは驚愕の……表情をみせていた。
 その直ぐ隣でいるレイナも同じだった。なぜなら、キリトはさっきまで、本当についさっきは、負けるつもり無いって言ってたのにだ。走馬灯の様にかつての思い出話を聞かされた時も……嫌だったけど、そんな言葉は、それ以上に、……この場にいる誰もが聞きたくない言葉だった。そして、その言葉に茅場は意外だったのか、片方の眉をピクリと動かした。
 
 だが、無造作に頷いた。

「良かろう。彼女はセルムブルグから出られないように設定する。」

 茅場は、ゆっくりと頷いた。

「キリト君っ! 駄目だよ!! そんなのっ そんなのないよーーー!!」
「やめてっ!! キリト君っ! そんな事言っちゃ駄目!! やめてぇぇ!!」

 アスナとレイナの涙混じりの絶叫が響く。だが、もう、キリトは振り返ることは無い。言いたい事は全て言い終えられたから。

 そして、右足を引き、左手の件を前に、右手の件を下げて構えた。

 そして。

《changed into mortal object》

 その文が表示されるのを確認した。
 どうやら、宣言の通り不死属性を解除したようだ。キリトは内心……アスナに謝っていた。意識は冷たく澄んでいたというのに……その思考が泡の様に浮かんではじける。でも、キリトは心配はしていなかった……。
 キリトは、自分の志は……きっと継いでくれると信じているのだ。

 そう、自分が死んでも……きっとアイツなら、と。

――リュウキなら……、きっと……。

 約束を果たせそうにない事に、心の中でリュウキに謝っていた。

 その時だった。

 まるで、キリトとヒースクリフの間に稲妻が迸ったかのような感覚に見舞われた。暗くもなく、明るくもないこの空間に目も眩むその閃光。それは、アスナとレイナの二つ名の様な比喩じゃない。

 正に閃光・雷。
 
 そしてそれが止んだその時、キリトとヒースクリフの間に男が立っていた。


「……キリト。お前じゃもうダメだ。……お前にだけはやらせるわけにはいかない……、もう 絶対に、任せられない」


 2人の間に男が立っていたのだ。皆がGMである茅場が施した麻痺作用で、動けないはずなのに。そして麻痺の状態であれば、身動きすらとれず倒れ、茅場晶彦と言う、この世界の創造神、この世界の絶対神の前に平伏すしかないと言うのに目の前の男は2人の間に現れたのだ。

「……むッ!?」

 この時ばかりは茅場も驚きを隠せなかった様だ。今までは、自身の正体がバレる可能性があり、驚いた事は幾つかあったようだが、正体をバラした以上、何も驚く事は無いだろう。そうして、いつも涼しい表情で、そう神の如く君臨していた男が、驚愕の表情をしたのだ。……この時、始めて顔をゆがめていたのだ。

 その原因は……目の前の男。リュウキの存在だった。

 確かに……彼のその見る眼と言うものは素晴らしいものがある。おそらくは、現実の世界で特殊な環境に身をおいている者なのだろうか……?……それが この世界においてどのような影響を及ぼすのかはわからない。

 その眼などと言う力。

 そんな要素はこのゲームに追加してる事は無い。完全なシステム外の力なのだ。どこでどのようにして、その力を得たのかはわからない。恐らくは……現実の世界で特殊な環境に身をおいていたからだろう。

 それも推察でしかない。

 そして、茅場は先ほども言ったとおり、全プレイヤーの中、キリト君とリュウキ君。この2人ならば、たとえこの場で自身のの正体がばれず、そのまま攻略が進んだとしても、100層までたどり着けるだろうとふんでいた。


―――だが……これは一体どういうことだ?


 今、ここに居る全プレイヤーに施した麻痺状態。その呪縛から、自力で解放するのは無理だ。システム権限により、施している麻痺は、例え解毒結晶、解毒ポーションを使っても解毒することができない。今この場の全員に施している麻痺は、GM権限でシステムを操り施したもの。

 この効力は無限時間、無制限のもの。

 だが、目の前の男はいともたやすく立ち上がっていた。そして、今我々の間に現れた。その速度は、正に神速と言っていい。あの時のキリトをも上回っているのか?と思える如き速度で現れた。

 そして、自分自身がキリトとのデュエルの際に使用したあのオーバーアシストを彷彿させるかのような動きだった。


「……勇者、……か」

 リュウキは呟く。さっきとは対照的な動き、ゆっくりとした足取りでキリトと茅場の方へと歩き出す。

「確か……初めの頃言われてたな、最初は銀髪の勇者だったか?クラインのバカにもさっき言われたし……はぁ、……勝手に、呼ばれたんだった」

 リュウキは……その手に持つ双斬剣をゆっくりと動かしながら更に茅場に近づく。

「あの時は嫌だったし、今でも好んではいないが……。この場では使わせてもらうか」

 そして、キリトの横に立った。

「キリト……。お前が申し込まれたのに悪いが、ここは俺に譲れ……」
「何をっ……!」

 キリトはリュウキの発言を聞いて驚きを隠せない。そして、何より 茅場の仕掛けた麻痺を解毒したのもそうだった。

「……当たり前だ、……戦るなら勝算がある方が、少なくとも自信がある方がやるべきだ。……あんな言葉を吐き出す奴に、最後を任せられないと言ったんだ!」

 リュウキはキリトを睨みつける。その言葉とは、さっき皆に語った事もそうだが、何よりも……。

『簡単に負けるつもりは無い。だが、もしオレが死んだら暫くで良い、アスナが自殺できないように計らってくれ』

 その言葉だった。その言葉を聞いた瞬間、リュウキの眼が黄昏時よりも、血よりも赤く染まったのだ。

「ッ!!」

 リュウキは、純粋に怒っていた。キリトのあの言葉に。負けないと言っていたはずなのに、直前で不安を与えた事に。


――……それを聞いて彼女はどう思うか?
――……自分の横でどんな表情をしているのか?


 自分には、手に取るようにわかる。手に取る様に判る様になったんだ。

 キリトの言葉が、リュウキのタガを外した。急速に精神が昂ぶり、そして極限まで集中する事が出来た。麻痺以前に、あの骸百足との一戦で殆ど出し切ったと思っていたのだが……、動けないと思っていたのだが、まだ残っていた。

 これは正真正銘、最後の力。


「それにアスナは……オレの大好きなレイナの姉だ。……彼女を悲しませるな」

 そう言うと同時にリュウキはキリトを後ろに突き飛ばす。

「リュウッ……つァァッ!」

 その瞬間、キリトも麻痺に襲われていた。それはまるで、リュウキにかけられていたであろう、麻痺状態がキリトに伝染った様だ。


「……ご指名じゃなく悪いが……選手、いや 勇者交代だ。魔王。オレが相手をする」


 目の前にいる巨悪に向かいそう宣言する。茅場は、驚いてはいたものの……次第に表情を変えていった。

「……面白い、……実に面白い展開だ。このような物語は見たことがないよ。私が思っていた勇者を押しのけてきて、更に勇者を名乗る輩が出現するとはね」

 茅場のその顔はもう笑っていた。ただ、何一つ笑えない者もいた。

「リュウッ……リュウキ君ッ!!!」
「ま、待ってっ……!!」

 後ろで……最愛の女性が、悲痛な叫びをしていたのだ。アスナと一緒に。

「まって……っ! このまひ……かいじょっできるんでしょっっ! 今……わたしもいくから ら! いっしょにっ!! ずっといっしょにっ……!!」

 レイナは、必死に体を動かそうとするが……どうやっても出来ない。全く動く事ができなかった。

「大丈夫だレイナ……」

 リュウキはレイナの方を見ると表情を一変させる。その表情はとても穏やかなものだった。

「……レイナはこの世界でオレに光をくれたんだ。……強さを貰ったんだ。……次はオレの番だ。仮想世界じゃない……現実の世界の光を君に贈るよ。だから……安心して待っててくれ。オレは負けない」

 そう言うと……、次にリュウキは茅場の方を見た。

「ん……?」

 その表情に何かを感じたのか、茅場は顔を顰めていた。

 リュウキは、慎重に、そして意味深に言葉を選ぶ。

――この男は自身の正体をばらした、いや……正確には暴かれたと言う方が正しい。

 だから………最後くらいは 互いに誰かくらいは知っておいた方が良いだろう。

 どちらかが死に、どちらかが生きるこの状態なのだから。……自身と茅場。単なる一プレイヤー同士、ラスボスとプレイヤーじゃないと言う事を。

「大丈夫だ……。所詮はデジタルデータの世界……。相手がデジタルならオレは、負けない」

 レイナに、そして茅場にも聞こえる様にわざと大きな声でそう言っていた。ある単語を強調させながら。

「……ぬッ!?」

 それは、どこか……いつか、どこかで聞いた……いや、身に覚えのあるセリフに、茅場は引っかかっていた。……あれは、どこでだっただろうか?
 自身の心の奥に深く刻まれている感覚がするのに、最後の記憶の扉が開かない。その記憶の扉の鍵は……目の前の男が持っていた。

 まるで、気軽に放り投げる様に、こちらに向けて鍵を投げてきた。……その鍵、次のリュウキの言葉で扉が開く。今、全て思い出した。

「……これは、ラストバトル。最初で最後のバトルだ。……お前には以前にも言った筈だ……。良い思い出になるかどうかは保障はしないとな……? ……茅場、晶彦ッ!」

 リュウキは鋭い目付きで睨めつけた。

「……ッ!!」

 その余裕をもった顔が再び歪む。

 茅場はその言葉で全てを悟った。目の前にいるこの男の正体、この男の正体を完全に。

 それは、この場で自分が名乗り、ヒースクリフと言う男の正体が判った時の、この場にいた全員の気持ち、それが自分自身にもはっきりと判った。驚愕、とはこう言う時に使うのだろう。


「な……なるほど……。キミだったのか。そうか……HN、リュウキ……R・Y・U・K・Iか。はは……」


 茅場は、しきりにその単語を呟くと。



「ははははは!!」



 驚愕、と言う感情は全て消え去り、……全てを悟った時、額に手を当てて高笑いをした。


「そうか……あれほど、現実の世界で会いたかった男とこの世界で会えるとはな……。偶然とは恐ろしい……、いや 君がSAOに来ていれば、これは必然だった。私と君との邂逅は……。まぁ、当初は想定していなかったが」

 ゆっくりとした仕草で……手を下ろした。

「リュウキ君。……キミがあのRYUKI君なら、……相手にとって不足は毛頭無い。……否、十分すぎると言うものだ。私は、君とは直接戦ってみたかった」

 茅場は、その十字が刻まれた盾の裏から細身の長剣を抜き……ピタリと構えた。

 SAOの世界に、この男がくる。

 そうだとしたら、間違いなく勇者の役を担ってる筈だと思っていた。……キリトの存在を知ったその時に考えを改めた様だったが。


「神聖剣。この世界(SAO)の神の剣か……」

 リュウキは呟く。
 その茅場が持った≪ユニークスキル≫の名前だけでも この男の正体にたどり着けそうなものだ。別に出来事が無くたって。キリトが危険を犯さなくても。


―――……どうかしていたのは……自分か。


「神……か……」

 リュウキは、手に持つ双斬剣の中心の柄を握り締める。そして、口元がゆっくりと動く。まるで、笑っているかの様だ。


「ふん……神と言っても、所詮はデジタルの神だろう……」


 リュウキは、そう言うと同時に。双斬剣を右回りに旋回させた。そのリュウキの周囲にはまるで竜巻が出来てるかのごとく、場の空気が乱れる。荒れ狂う。

 暫く回転させた後、リュウキは、回転を止め、地面に剣を突き刺した。その瞬間、衝撃が周囲に迸った。

「別に、システムのオーバーアシストでも何でも使えばいいさ……」

 リュウキは鋭利な鋭い視線で茅場を睨み、そして切っ先を向けると同時に吠えた。

「オレは、そのシステムごと切り裂いてやるからよ……!」
「フッ……面白い」

 両雄の間には、不穏なオーラの様なものが渦巻く。これは最早、遊びでもゲームでもない。

――ただの、殺し合い。

 己の命を≪脳≫を賭けた戦いだ。負けた方が、電磁波で脳を焼かれる死闘(デスマッチ)

 
 先ほどとは一転し、しん………と一瞬静まり返った。そして、その数秒後。互いに間合いを詰めていた。


 まず、先制攻撃。
 僅かに早く飛び出したのはリュウキだ。

≪双斬剣≫

 剣の左右に刃のある剣。

 その真髄とも言っていいのは、一瞬の同時二択の攻撃手段。
 一体、どちらから刃が飛んでくるのか……? 右か、左か。ある程度の勘、そして経験が無ければ防ぐ事は敵わないだろう。
 その片方をヒースクリフに向かい、振り切る。

 その一撃はヒースクリフの盾によって防がれてしまう。

 ヒースクリフは難なくリュウキの一撃を防いだ。この盾の耐久値は強大で何よりも堅い。そして、この世界を作った男。その技術も突出しているものがあるのだ。

 そして、次は神聖剣の攻防一体の技。

 すかさず、ヒースクリフは剣でリュウキの胴を薙ぐように剣を振るが、≪攻防一体≫それは神聖剣だけの専売特許じゃない。それはリュウキの双斬剣もそうだった。

 盾に当てていた方の刃を引くと、もう片方の刃でヒースクリフの剣を弾く。その攻防は暫く続いた。刃が両傍にある剣。
 巧みに使い分ける事で矛にも盾にもなる武器なのだ。

 数合打ち合いが続く。

 時間にしてそれは数分だが、かなりの濃密された時間だ。見守っていた周囲のメンバーからすれば、それは更に長く感じるだろう。そんな死闘の最中、茅場は疑問を口にしていた。

「……この世界では 10種類ユニークスキルがあるのだが……、君のその双斬剣は私はデザインした覚えがないのだがな……」

 剣を構えながら茅場はリュウキにそう言う。
 戦いの最中、敵に話しかけるなど余裕の現われか?とも思えるが、純粋に戦いを楽しみ、かつ疑問を口にするなど、大した精神力だとも感じた。いや、目の前の男は、3000人以上の人間を死に追いやり、その怨念を平然と受け止めている。

 最早、精神力が強いと言うレベルを遠に超えているだろう。

 リュウキでさえ、人の命を奪ったと言う事実。それを、ずっと引きずっているんだ。どんな悪党の命とは言え、自分自身……拭う事の出来ないものを。

 この目の前にいる男は……、それらを受け止め、平然としている。……そう言う怪物なのだ。だが、怪物はこちら側も同じ。


「……当たり前だろう。この武器は、オレ仕様……。現実世界で……信頼できる人が手を貸してくれたお陰で出来た謂わばオリジナル武器。……GM、管理者のお前でもわからない。……そして、これはお前でもわからない太刀筋だ。設計者の有利性(アドバンテージ)は無い」

 ペースに飲まれることなく、リュウキも平然と答えた。この、刹那の戦いにおいて、ここまでの精神力を見せられるリュウキも当然強靭な精神の持ち主である事は言うまでもない。

「……ほう、つまりはシステムを一部をのっとったと言うのか……?いや、その様な仕様はなかったと思うが……?」

 茅場は不思議そうにそう言う。
 世界をこれまで調節してきたのだ。勿論そういった事も確認しているし、カーディナルも機能している。綻び等、殆ど無いはずだった。……その言葉にリュウキは僅かながら首を振った。

「……大規模な事はできないさ。何せ、何1000人も人質にとられている様なものだ、それに目立つ事をし、バレて強制的にペナルティになっても困るからな」

 それが一番の問題だった。ゲーム上のバグを潰すのも管理者側の仕事だ。

 だからこそ、限りなく目立たぬ様に、そして、それでも限りなく早く、少しずつだが、干渉していったのだ。

「それで、この麻痺作用をも自力で直したか。これはGM権限の力。それを抗う術はこの私でさえ考えつかないと言うのにな」

 リュウキは初めは出来るとは思っていなかった。
 外部との僅かな接触・そして武器の生成……それは何とか出来た。その初め綻び、とも言えるのが《リズベット武具店》にあった。この広大な世界、デジタルの世界での綻び、次元の裂け目とも言えるシステムの裂け目が、あの家、あの座標に僅かながら存在したのだ。

 そこで、リュウキは 現実世界の彼と接触をする事が出来た。単純なやり取りしか出来なかったが、内と外でのやり取りが、武器生成の成功と言う形を成したのだ。
 

 だが、最難関だったのがGM。この世界の管理者、≪神≫と言っても差し支えない存在。それを凌駕する事だ。この瞬間の為に練りに練ってきた。


――……これはユイのお陰もある。

 リュウキはこの時、思い出して微笑んだ。
 あの少女は、システムAIでありながら、システム管理者、カーディナルに逆らった存在。神に逆らい抗った存在だ。いや……最早、あの子をAIとは呼びたくない。

――……あの子は≪人間≫だ。

 2人の親友の娘で、妹だ。今も、彼女の元で見守っている。結晶に姿を変えて。

 そんな彼女(ユイ)の存在がリュウキから最後の諦めると言う言葉を消した。

 だから……成功したのだ。神の技を凌駕する為の術を。

「ふむ……」

 茅場は剣を構えなおした。

「まだ75層だと言うのに、最上階を突破できるほどの戦力を携えているとは恐れ入る……」

 茅場のその顔はまだまだ、笑っている。……まだまだ余裕は伺える。

「……笑みが出るってことはまだ余裕なんだろ?」

 器用に、リュウキは武器を旋回させ、突きの構えで固定した。


「……まずは、笑えなくなってもらわないと、なぁっ!!!」


 その構えた刹那、一転突破の勢いで茅場に突きを放った。

「……ぬっ!」

 キリト同等……程のスピードに目を見張ったが、だが防ぎきれない事は無い。単純な速度ならば、あの時の……キリトとデュエルした時の彼の速度の方があるのだ。茅場は、盾を武器の軌道上に置き、受け止めようとするがその刹那。



―――……な……っなんだこれは!!



 受け止めようとしたその瞬間、体に戦慄が走った。
『盾諸共だ……諸共……体を貫かれるような』そんな自分自身の未来の姿が予知能力のように脳裏に過ぎったのだ。


 双斬剣最上位スキル:《神威》


 それは、連続攻撃、と言うものではなく、リニアーの様な単発式。

 だが、その性質は、この世界の全武器、との武器にでも無い。

 その一撃は、神を討ち滅ぼす刃。全てを貫く一閃。



「ぬ、ぬおおおおっ!!!」



 茅場はこの時、咄嗟に受け止めるのではなく 決死に受け流す体勢を作った。あのイメージが頭から離れず、焼き付いたから。貫かれてしまう自分自身の未来図が。


 そして、その刃が盾に当たった瞬間、凄まじい轟音と共に火花が巻き起こった。


「ッ……!!」

 そして、嫌な音が響いたかと思ったら、ヒースクリフの盾に……亀裂が入ったのだ。直撃を防ぎ、受け流すようにした筈なのに、リュウキの放った刃はあの絶対の盾に傷をいれたのだ。


「く、……く、くく……これは本当に計算外だな……」


 亀裂の入った盾を見て思わず笑ってしまった。自身の最大の力、とも言える防御の力を、破られても、笑っていられる所も、驚嘆だ。リュウキの一撃、鉄壁の防御を誇る盾を上回ったあの一撃も驚嘆だが。


 その防御力は攻撃特化型であるキリトの剣技を難なく受け止め、75層のボス 骸百足の即死級の大鎌をも捌ききった。

 ……が、それがどうだ?

 さきほどのボス戦に比べればあまりに短い攻防。その短い攻防で、盾を壊されかけたのだ。一瞬でも、受け止めようとしていたら、先ほどの未来の自分自身の姿。盾諸共貫かれるその想像のとおりになっていただろう。

「ッ………」

 リュウキはこの結果に……歯軋りをしていた。渾身を込めた一刀。それを……防がれた。この男の盾はこれまでも無敵を誇っていた。だからこそ……受け止めるであろうと確信していた……。その油断を突く作戦だったんだ。だが、何が奴を感じさせたのか、咄嗟に受け流す構えに変えていたのだ。

……それが、誤算だった。それも致命的な。






「いけるぜ! リュウキぃぃっ!!」

 その勇姿を見たクラインは体が動かぬなら声を振り絞りながら叫ぶ。リュウキとは何度も共に戦ってきた。だが、あそこまでの戦闘力とは思わなかったのだ。否、見せていなかっただけかもしれない。

 そして、よくファンタジーで勇者を賞賛する村人や王国兵。

 彼らの気持ちがわかる気がした。現実には実際は皆がプレイヤーのはずなのだが、それでも一線を越えたものの存在。それは皆に等しく希望を齎す。それが命が懸かっているとすれば尚更だ。

「ヤッちまえぇ! リュウキ!!」

 エギルも、動かぬ身体の代わりに声を振り絞る。その巨体から発せられる重低音は、場に響きわたった。






「っ……、やっぱり、まだまだ敵わないな……」

 キリトもそんなリュウキを見てそう呟く。この世界において一番の目標だった男の背中。外見からは歳下とも思えるがそのセンスも技術も全てが、驚嘆だった。SAOのβテストの時からずっと。特殊な力だけでなく、精神も技術も……そう。

 この世界の最高ランクである《S》を超えているとも思える。……全てがSSクラスなのだと言う事。

 あの広範囲系の力を持つボスなら兎も角、1対1の戦いにおいて負ける姿が想像できない程だった。それが例えラスボスであるあの男でも。そして、自分が死ぬつもりで挑んだ事を後悔する。それに、格好悪くも感じる。でも、戦わず、ここに倒れているキリトを誰も格好悪いという奴はいないだろう。

「……後で謝っておかないとな……。負けるな、リュウキ!」

 そう決意すると共に、キリトもクライン同様にリュウキに向かって声を上げた。

「いけるっ……! いけるよ!レイっ」

 アスナも、彼の力は十二分に知っている。
 だけど、彼女もここまでとは思っていなかったようだ。キリトが団長に挑む時、本当に駄目だって思った。負けるつもりは無いって言っていたけれど……。リュウキも言っていたあの言葉。死にに行くような言葉を聞いて……、ほんとに駄目、勝ち目は無いって思えた。

 当然だろう。……相手は本来は第100層のBOSSだ。

 こちらはまだ4分の3しか、攻略できていない。単純に勝てる戦力じゃないのだ。
だけど……。そんな不安を吹き飛ばしてくれるかのようなリュウキの姿。だから、期待を胸に 手の届かないレイナの方を見てそう叫んだ。

 (レイナ)が安心できるように。


 だが……1人。


 胸騒ぎが止まらない者がいた。

「リュウキ……くん……?」

 それは、レイナだった。

――……なぜ?

 彼女は必死に考える。なぜ、こんなにも不安なのか、と。


――……彼が圧倒しているのに……?
――……全プレイヤー中最強、そう謳われ、その正体はこの世界の神、この世界の魔王、この世界のラストBOSSである茅場晶彦を追い詰めているのに?
――……なぜ、戦っているごとに心が締め付けられそうになるの?
――……まるで心臓をわしづかみにされるような気がするの……?


 そしてあの時の言葉が、なぜかレイナの脳裏に焼きついた。それはキリトがヒースクリフを狙って攻撃したときの事。

『まて……早いんだ!』

 と言う言葉。
 あの時、キリトだけでなく、レイナにも聞こえていたのだ。あまりに突然の事だったから……深く考えられなかったけれど。今は、再生を繰り返すように頭の中に流れ出てくる。その声の主だ誰なのかは、判ってる。大好きな人のものだから。

――………はやい?何が……はやい?その前、彼は何を言った?あの躊躇ったような時に。

「まさ……か……っ」

 嫌な言葉が頭の中を過ぎる。あの言葉の前に飲み込んだ言葉

『まて………早いんだ!』

 この中に隠されたのが……『まてまだ戦うには……はやいんだ!』だったとしたら?


――……それは……もしかして、リュウキはずっと昔にヒースクリフの正体は看破していて……。
――……全員の戦力を合わせても今の戦力じゃ……って事?
――……今の彼じゃ……って事?


《あの男には勝てないって事……ッ!?》


 頭の中で描いた空論。
 それが的中しているのだとしたら……?と、レイナはそう思ったその瞬間。

「リュウキ君っっっ!」

 レイナは彼に向かって叫んでいた。

 その後、彼女のその嫌な予感。

 数秒後、的中してしまう事になった。



 それは、再び何合か打ち合った後の事。

「リュウキ君。キミはやはり素晴らしい。この神聖剣の盾の耐久値をも奪うとは……な。……だが、そろそろ 種が切れるのではないか?」

 剣を構え直し……笑っていた。
 確かに茅場は、盾をやられた瞬間は、動揺を隠せなかったが。それでも再び笑みはあった。今は余裕さえも取り戻していた。打ち合っている茅場自身にはよく判っていた。
 目の前の男の異常が。

「ちッ……ふん」

 リュウキは再び、双斬剣を構えなおす。その表情には……明らかに疲労が見え始めていた。

 ……彼女の、レイナの考察は正しかった。

 《システムを奪う》

 そんな大それた事が完璧にできたと言うのであれば、そもそもこのデスゲーム自体成り立たなくさせることだって可能だ。βテストの時の蘇生手段を復活させることだって出来る。だが……この茅場が生み出したこの世界。

 それは、それほど甘くは無い。

 リュウキの家族である綺堂 源侍。

 彼が爺やと慕う家族・執事であり、改めて説明をする。
 彼は仕事をする時リュウキの補佐でもある。彼の現実での働きによって、仮想世界と現実世界を僅かだが繋げた。世界の綻びがあった場所。それが、あのリズベット武具店。広大な海に漂っている1枚の葉を見つけるが如き確率だったが、見つける事が出来た。

 そして、度々リズの元に訪れ、リュウキは少しずつ、デジタル上の信号のやり取りをし、源侍と接触した。彼らの力があって、少しずつ……少しずつ……。このゲームに干渉していった。双斬剣はその一部。それを選んだ理由は、以前のゲームで最も好んで使っていたと言う子供らしい理由はあるけれど。

 ……リュウキは、この世界の最終BOSSはおそらく茅場だと確信していた。だから、この世界のシステムを使った武器では、おそらくは太刀打ちするのは最難関だと。従来のゲームなら良い。

 だが、これは違う。……今は違う。愛する人が出来た今は……。

 だから、システムに干渉していない力を手に入れた。今回使ったのは、75層のBOSSは異常な力だから、まだ 試作段階だったが使わざるを得なかった。

 だが、それは全て自分の力で、自分の脳で、演算・コントロールをしていかなければならない。

 単純な雑魚なら……問題ではないが。神経を集中しなければならない程の相手。その疲労感は計り知れないのだ。後遺症が残りかねない程に。

「ふふふ……私の推察が正しければ、その様な力……乱用はできないであろう? ここは仮想世界とは言え、己の脳でプレイしているのだ。そのシステムの保護を逸脱した行動をするとなれば、その処理負担は全て君自身に降りかかる」
「……だまれっ!」

 リュウキの返答は、刃による一撃だった。その後も、再び両者間で火花が舞う。

「ふむ……。速度が大分鈍っているな。それに威力も」

 ヒースクリフは、リュウキを見ながらそう確信した。否、全て先ほどの驚異的な攻撃の後に確信したのだ。この神聖剣の最大の特徴である防御力。それを看破したというのに、あの表情……。
 まるで……最悪の失敗をしたかのような表情だったのだ。

「ちっ……」

 リュウキは歯軋りをする。ヒースクリフのその推測、それは間違えていなかったのだ。あの突きに賭けていた。それは決して間違いじゃない。

≪システムごと切り裂く≫

 その言葉どおり、その攻撃をしたのだ。

≪対茅場用謙必殺技≫

 まだ、実用するのには実践でのデータが足りなかったんだ。だが、やった、最高の集中力を使って。そして、使わなければならない場面で。

 しかし、なぜか相手は絶対の自信が有るはずの盾で受け止めなかった。

 目の前の男は受け止めようとせず、全力で回避しようとしたのだ。何がそれを予感させたのか、わからないが……、全身全霊の一撃をかわされた、その事実は変わりない。

「ふんっ!」

 ヒースクリフの一撃、それを防ぎきる事が出来ずに、今度こそリュウキの直撃した。肩位置だった為、そこまでHPを削られた訳ではないが、それでも、クリーンヒットは今回が初めてなのだ。

 均衡が崩れた瞬間だと言えるだろう。


「ぐっ……!」

 その一撃を受け、リュウキのHPがレッドゾーン近くに下がってしまった。




「リュウキくんっ!!」

 レイナの悲痛な叫びが響き渡る。

「ど、どうしちまったんだよぉ! リュウキよぉ!!」

 クラインも……明らかに動きの鈍っていたリュウキに驚きを隠せなかった。

「リュウキっ………」

 キリトも……、あのリュウキが相手の前で1対1の戦いで肩膝をつく所、そんなの見たこと無い。ありえない、無意識にそう思っていた。……それを目の当たりにしたから。

「そんなっ………」

 アスナも、妹の叫び声を聞きながら……。自分も叫びそうになりながらも必死に堪えていた。




 心配する仲間達の表情は、例え見なくてもよくわかった。



「ふん……なんて顔してるんだよ……。」

 だから……、リュウキは思わず笑っていた。普段なら、まず見られない表情だから。

「言葉を返す様だが、笑っていられるとは、随分余裕だな。リュウキ君。私は理不尽な事はしない。と言ったが……君のそのシステムののっとり、それは最終BOSSである事以前に、GMとしても、それは看破できないのでね。……処置をさせてもらおうか」

 剣を構えながら……近づいてくる。それを見て、再びリュウキは笑った。

「仲間を守れるなら何でもする。それが以前じゃ絶対にしないようなことでもな……。」

 リュウキのその言葉を聞いたヒースクリフは、笑い返した。

「ふむ、そういえばそうだな。キミは天才だ。それはプログラマーとしてもそう、そして ゲームにおいても不正の類はみられないな」

 足を止め、表情を変えながらそう言っていた。

「そもそも、不正する必要がないか……。以前君についてのデータは色々と見させてもらったからな……。勿論君に関する個人情報、正体まではわからなかったがな」
「……それだけでも、プライベートの侵害だろ」

 リュウキは立ち上がった。

「SAOだけに、その様な事をするとは、複雑だがね」

 ヒースクリフは再び剣を構えなおしリュウキの方へと歩き出す。

「……当たり前だろ。それに、このゲームくらいだ、こんな理不尽……命がかかっているゲームなんかな。何より……初めて出来た大切なものの命も……だからな」

 リュウキは、武器を構えなおした。茅場は、ゆっくりとした仕草で剣を向けた。

「何かを守ろうとする者は強い……。と言ったがな。だが、 敵わないものはあるのだよ。リュウキ君。同じ仕事をした好……最後に君にもう一つ教えてあげよう……。どんなに足掻いても守れぬものもある事を!」

 言葉の最後に、瞬時にリュウキの間合いを詰めると、その聖剣で斬りつけた!

「ッ!!」

 リュウキは、今度は弾かれる事なく受け止める事が出来た。だが……、明らかにダメージは溜まっている。

「ぐっ……」
「ほう……」

 茅場は、受け止めたリュウキをみて、僅かに驚いていた。リュウキの姿を見たところもうそろそろ限界だろうと踏んでいたが、そうでもなかったようだ。










「りゅうっ……き……くんっ!」

 レイナは……体を動かそうと必死に足掻く。麻痺状態で、身動きを取れない状態なのだが、それでも、諦めなかった。

 その時だ。

『心配するな……』

 そんな声が聞こえた気がした。離れているのに、他の皆も叫んでいるから、声が届くと思えないのに。確かに聞こえた。








「オレは、お前から教わる事はもう何もない……」

 茅場との鍔迫り合いの最中だ。

「ん?」

 消え入りそうなリュウキの声が聞こえた。もう……風前の灯、そう感じたこの男だったが……、その言葉が聞こえた瞬間。

「ぬぉっ!!」

 茅場の剣が押されたのだ。否、押し返されたのだ


「お前に教わる事は無い……そして、オレのこの世界で生まれた絆は何人たりとも斬れない。大切じゃないものなんか無いんだ。……全て、全てを守ってみせる!」



 押し返したと同時に、双斬剣のもう1つの刃で、リュウキは、茅場を切り上げる様に打ち込んだ。

「ぬぅぅぅっ!!!」

 ヒースクリフは、盾で受け止める事ができた……が。それは時間にして刹那の瞬間。

 ヒースクリフはリュウキの≪眼≫を見た。

 あの赤い瞳が、更に赤みを増していた。真紅の瞳だと言えるだろう。自分にとっては不吉な色にしか見えない。 鬼と一部では恐れられた真紅の瞳を目の当たりにしたのだ。


 そして次の瞬間。


 そのとてつもなく重い一撃は茅場の身体を上空まで跳ね上げた。これまでの層のどんなBOSSの一撃でも、盾が押され、飛ばされるなどと言う事態にはならなかった男が吹き飛ばされる様に飛んだのだ。

「バカなッ……いったい何処にこれ程の力が!」

 データ上では、リュウキの状態は最早見るまでもないほどに憔悴していると言っても言い。だが……デジタルデータに無いほどの力。

 明らかに、筋力パラメータを超えている。筋力値(STR)は、MAXでも1000.

 だが、単純に感じるその力は、明からに倍以上。……2000は軽く超えているかのような力だった。

 何よりも……茅場の、(タンク)ではないにしろ、それなりに重い装備をしているヒースクリフの体が浮いたのだ。

 受け止めたはずなのに浮かす。重量のある聖騎士装備を纏っている自分を浮かす。圧倒的な差が無ければ出来ない芸当だ。



 そして、場面は75層ボスの部屋上空。


「対茅場用必殺……。これがオレの本当の切り札。オレの……オレの全てを解放する!」


「ッ!!!」

 ヒースクリフは目を疑った。リュウキの姿が目の前にあった。下にいた筈の男が一瞬にして間を再び間合いを詰めたのだ。

 まるで、鳥の様に、飛翔でもしたかの様に



「全武器オブジェクト、解放」


 リュウキの言葉にシステムが反応するかのように、通常では指で操作するのだが、メニューウインドウが勝手に表示。

 リュウキはシステムコマンドを、声だけで反応させた。

 リュウキの周囲に無数のウインドウが開く。その画面が光り輝くと、次の瞬間には四方八方に、これまでリュウキが所持していた武器が空中に浮かんでいた。

 前に《片手直剣》後ろに《刀》

 左に《両手剣》右に《極長剣》

 それぞれの間を埋める様に《短剣》《細剣》《斧》《槍》

 宙に浮いている武器は、示して全8種類。


「こ、これはっ!!??」

 見たことも無い光景に茅場は混乱し、一瞬リュウキから目を離してしまった。……その次の瞬間にはリュウキは目の前にいない。

「ッ!!」

 ヒースクリフの身体に悪寒が一気に走る。いつの間にか、リュウキは片手直剣が浮遊している場に空中移動していたのだ。まるで、羽根があるかの様に、飛翔んだのだ。

「なっ!」

 その事実に気がついたその時にはもう遅い。リュウキは再び空を駆け巡り……片手直剣がヒースクリフを斬り裂いた!

「がっ!」

 雷の様な一撃で、茅場の体がくの字に折れる。だが。

「一撃で終わると思うな」
「ッ!!」

 再びリュウキは目の前にいなかった。

 次は現れたのは真後ろ。《刀》が浮いていた場所にいたのだ。刀を手に持った瞬間、再びヒースクリフとの距離を一瞬で縮め、斬り裂いた。

「がはっ!!」

 そして、まるでそれは本物の閃光。アスナやレイナも閃光の異名を得る程のだったが、それはあくまで剣閃。剣速。だが、リュウキはまるで違う。身体自体が閃光となったかのように縦横無尽に上空を飛び回っていたのだ。

 瞬く間も無く、空中に浮かんでいる全ての武器でヒースクリフの体を斬り裂いた。


 縦横無尽にヒースクリフを中心にリュウキが交差を繰り返す。
 リュウキの姿が光……残像となって残っている為か、まるで彼らの場所が球体状に見えるのだ。それは1つの形を成す。


 “超級攻撃特化型”・オリジナルスキル《武神覇斬剣》
 

「……ぐああああああっ!!!!!!!」

 ヒースクリフはあまりの速さに、悲鳴が遅れていた。完全にシステムが遅れている。アバターを形成しているオブジェクトにノイズが走り続ける。……攻撃をし終わった後に解析が追いつき、衝撃を与えているのだ。

 システムがまるで追いついていない。


 だが……まだ、リュウキのターンは終わっていなかった。

「これで終わりだ!! うおおおおあああああああああっ!!!!!」

 最後は頭上切り下ろし。
 全ての、全8種類の武器がまるで1つになったかの様に光となって、リュウキに集まり……魔王を討ったのだ。

 最後の一撃を受けた茅場の身体は地面に激突する。

 舞い飛んでいた武器達は、光が消えると、次々と地面に落下し突き刺さっていった。リュウキも……正真正銘、全てを出し切った為か 空中で大の字になり……落下し、砂埃をあげていた。


 それは、全てを終わらす一撃。凄まじい砂埃に見舞われ、その場にいた誰もが確認をする事が出来なかった。茅場の……そして、リュウキの姿を。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧