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零から始める恋の方法

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黒城姉妹

 マッサージを終えて、なんとなく距離が縮まった気がした。
 これを続けていけばいつかは・・・。


 『雪菜・・・』


 『なんですか?先ぱ・・・きゃっ!?」


 『雪菜・・・黙って俺のものになってくれ・・・・」



 「は・・・はい・・・せんぱあい・・・」


 「何を言っているの?」


 「きゃっ!?」


 「ほら、ぼーっとしてないで後片付け後片付け」


 っく・・・。
 途中から声に出ていたのか・・・。


 まあ、今は妄想の中だけだけどいつかはきっと・・・。





















 「お疲れ様―」


 「お疲れ様でしたー」


 後片付けも終わり、そろそろ帰ろうと思い、荷物をまとめる。
 基本的に学生の荷物は鞄一つだけなので楽だ。


 「・・・すみませーん」


 「あ、はい。なんでしょう・・・か・・・?」


 効きなれない言葉なので、新しいマネージャー希望の子かと思った。
 しかし、どうだ。
 その女性が来ているものは制服ではない。
 あの・・・なんというか、メイドっぽい格好だ。


 「えーと・・・どちら様でしょうか」


 「あ、私は黒城紗由利(こくじょうさゆり)と申します。去年までここに通ってたんですよ?」


 「あの・・・私今年入ったばかりなので・・・」


 「まあ・・・!では、後輩さんですね!」


 いや・・・入って年数にかかわらず、後輩だと思う。
 ・・・なんか利英さんっぽい人だな。


 「それで、何の用でしょうか?」


 「あ、そうでした。私は利英さまのお世話をしているものなんですけども・・・利英さまいますか?」


 ・・・お世話?
 ってことは、利英さんのメイドさん?
 ひょっとして利英さんってお金持ちなの?


 ・・・想像の中の利英さんは『最高級のノリをお出し!』とか言ってる。
 想像できないし・・・。


 「利英さんはピアノ同好会って同好会に所属していますので、校舎にいると思いますよ」


 「あ、そうですか!どうもありがとうございました」


 そう言って、ぺこりという擬音がしそうな見事な一礼をして去っていく紗由利さん。
 ・・・というか、利英さん知らない人だったらどうするんだったんだろ。





















 翌朝。
 学校では紗由利さんのことで話題になっていた。
 先生方の中には紗由利さんを知っている人がいたらしく、ちょっとした話もしたそうだ。


 「利英さんってお金持ちだったんですねー」


 「え!?いやー・・・普通の家だと思うよ?」


 「普通の家はメイドさんを雇わないですよ?」


 メイドさんいる=金持ちという式が私の頭の中にはインストールされている。
 だから、利英さんは金持ちだ。


 「あー、紗由利のこと?あの子はなんでもお父さんとお母さんが私の世話を任す、とかいってどっかいっちゃったらしいからそれに従ってるだけなんだって。それと、服装はあの子の趣味ね」


 どこの家の両親も失踪してるんだなー・・・。
 なんて世紀末なんだ。


 「あ、利英さんお弁当作ってきたんですよ?」


 「え?本当!みせてみせてー!」


 こういう少し子供っぽいところとかがあるからきっと紗百合さんの両親とかも放っておけないんだろうなー・・・。




















 「利英さま」


 「・・・雪ちゃん、あなたは何も見ていない。いいね?」


 「え?でも・・・迎えに来てくれたんじゃ・・・」


 時刻は少し暗くなってきた7時30分ほど。
 夜道は危険だと思ったのか、利英さんのことを紗由利さんが迎えに来てくれていた。


 「そうですよ。せっかく来たんですから頼ってください」


 ・・・そういえば、利英さんの家ってどんな感じなんだろ。
 やっぱり豪邸とか?


 「紗由利さん、私も一緒に帰っていいですか?」


 「ええ。かまいませんが・・・方向とか大丈夫ですか?」


 「・・・よし、決めた!」


 と、私と紗由利さんが話している時に利英さんが何かを決心したようだ。


 「雪ちゃん、今日はお泊り回にしよう!」


 「・・・え?」





















 と、いうわけで凛堂宅についた。
 思っていたより豪華ではないが、普通に金持ちっぽい洋館だ。
 私の豆腐ハウスとは大違いだ。


 「今鍵を開けますね」


 大きな扉だ。
 私より頭三つ分ぐらいで買い。
 多分2メートルぐらいあるんじゃないかな?


 「では、利英さま。どうぞ」


 「うん、ありがとう」


 あんな重そうな扉開けられるのかな?
 すると、重苦しい音とともに扉が開き・・・。


 「お姉様・・・!おかえりなさい!」


 まるで、それは弾丸のよう・・・というのが正しいのか。
 とにかく、若干幼さを残した声で一人の少女が利英さんに飛びつこうとしていた。


 「・・・っふ。遅い」


 しかし、少女の頭突きを左手で受け止めた!
 ・・・結構勢いあったよね?


 「うー・・・また失敗・・・」


 「おせーよ、俺にはお前が止まって見えるぜ!」


 「うー・・・そのセリフなんか嫌い・・・」


 なんで急に一人称がかわったのかは不思議だけど、利英さんの妹か何かなのかな?


 「あの・・・」


 「ほら、想夢、自己紹介ですよ」


 「あ、はーい。私は黒城想夢(こくじょうそうむ)。紗由利おねーちゃんの義理の妹でこの家の警備員みたいなのやってるよー」


 自宅・・・警備員・・・?
 いや、中学生っぽいしまだ違うか。
 しかし、才能は十分。要警戒といったところか・・・。


 「想夢はまだ中学生ですから平日の昼などは私がすべての家事などを担当しています。想夢にはまだ早いので、適当な仕事を与えています」


 「ぶーぶー。私だってお料理ぐらいできるー」


 「私だってできるー」


 「・・・想夢はそう言って前火事を起こしかけましたし、利英さまが作るとすべてが黒一色になるじゃないですか」


 「海苔は至高の食べ物だよ?」


 「限度というものを知ってください」


 ・・・黒一色。
 つまり、ノリ味噌汁、ノリごはん、ノリのつくだににノリサラダ・・・うわあ・・・。


 「・・・今日も私がお弁当を作りました」


 「まあ!まるでカップルみたいですね!そういうの大好きです!!」


 ・・・は?
 紗由利さん・・・女の子同士でカップルはおかしいし、あんまり恋愛ごとに興味を持ちすぎると馬に蹴られて死ぬぜ・・・。


 「この子はこういうやつだから・・・。なんというか・・・思考がいまいちよくわからないんだよね」


 「利英さまも相当謎だよね」


 私からすればみんな謎なんだけど・・・。

 
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