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音楽家の人間性

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第二章

「その二人と比べるとな」
「モーツァルトはまだ」
「ましだ、しかしだ」
「それでもなのね」
「変人だ」
「アマデウス観ていたら」
 有名な映画だ、モーツァルトの才能だけでなくその人間性と死の真相にも迫っている無二の傑作である。
「品性がね」
「ないな」
「ええ、無邪気で」
「モーツァルトは子供だった」
 その心はというのだ。
「悪人ではなかったが」
「無邪気で品がなくて」
「金銭感覚もなかった」 
 この辺りワーグナーと同じであろうか。
「ビリヤードなりが好きでな」
「お金が入っても」
「すぐに使っていた」
 莫大な収入があったのだが、だ。
「そうした人間だ」
「一緒に生活しようと思ったら」
「大変だからな」
「それでなのね」
「モーツァルトも駄目だ」
 彼についてもだ、グレゴールは駄目出しをした。
「だから止めておけ」
「モーツァルトみたいな人とも」
「言っておくがシューベルトもだ」
 この音楽家は自分から出した。
「多くの友人がいたが」
「だらしない人だったから」
「女性にも不運だった」
 ただ交際出来なかっただけではない、そこで別の女性と関係を持ったまではいいが梅毒に感染してしまったのだ。
「あまりよくはない」
「あの人も」
「結論を言う」 
 娘に対しての言葉である。
「そうした人間とは交際するな」
「結婚も」
「絶対にだ」
 何があろうともというのだ。
「するな、そうした人間とはな」
「音楽家とはなの」
「全ての音楽家が流石にワーグナーやベートーベンではないがな」
 モーツァルトやシューベルトでもだ。
「普通の人とだ」
「付き合えっていうのね」
「そうしろ、いいな」
「ううん、わかったわ」
「普通の人と普通に付き合えばいいんだ」
「あまりにも個性的な人とは付き合わないことね」
「それだけで災厄だ」
 上記の様な人間性の持ち主達との交際はというのだ。
「父親として御前に行っておくぞ」
「私まだ彼氏いないけれど」
「なら余計にな」
「これから彼氏を選べっていうのね」
「そういうことだ、それで結婚する時はだ」
 ここで先の話もしたグレゴールだった。
「俺の前に連れて来い」
「お母さんにもよね」
「そうだ、わかったな」
「そうさせてもらうわ」
 ハンナは父の言葉に頷いて答えた、ハンナは少なくとも素直であるのでこの時も頷いたのである。そして数年後。
 ハンナは大学を出て就職してからその職場で知り合った男性をグレゴールと母親のヒルデガルト、自分がそのまま年齢を経た様な外見の彼女の前にその彼を連れて来た。その彼はどういった人物かというと。
「フリッツ=ヨーゼフ=ケーニヒです」
 黒髪を七三に分けて黒い目に眼鏡をかけている大人しい青年だった、すらりとしていてスーツの着こなしも真面目だ。
 その彼を見てだ、グレゴールは言った。
「真面目そうだな」
「ええ、とてもね」
 そうだとだ、ハンナも答えた。 
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