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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第85話 変わって見える景色


 それは、キリトと共に第74層の迷宮区を出て外にある森の中での事だ。

「ん? あれは……。」

 まず、キリトが初めに、それ(・・)気がついた。
 気づけたのは、キリトが鍛えていた《索敵スキル》のおかげだ。このスキルは不意打ちを防ぐ効果と、スキル熟練度が上がれば、隠蔽状態にあるモンスターや、プレイヤーも見破ることが出来るのだ。
つまり、ソロプレイヤーには必須スキルとも言える。

 キリトは、その優秀な索敵スキルを用いて、森の中で動いたそれを視認した。視認したと同時に、それには黄色いカーソル、そして対象の名前も表示される。それを確認するやいなや、すぐさま、キリトは投擲スキルの基本技である《シングルシュート》を撃ち放った。
 キリトの手を離れたピックは、稲妻の様に閃き、その輝きを残して梢の影に吸い込まれていく。

「……これは、随分と珍しいのを見つけたな」

 キリトから遅れて出てきたリュウキもそれが何なのかを確認した。
 一撃目はその標的を揺さ振って、姿を露にさし 最後キリトのもう一発の《シングルシュート》の一撃でHPを奪う。
 それは、モンスターと分類するにはあまりにも虚弱な存在。

「ラグー・ラビット。超の付くレア・モンスターだ……」

 キリトが入手したそれをウインドウで確認していた。入手したのは、そのモンスターから得られる肉である。あまりの希少アイテム故、その《ラグー・ラビットの肉》はプレイヤー間の取引では10万コルは下らないという代物だ。

「これ……多分もう二度とお目にかけれないだろう。今日は本当に運が良いな。それにリュウキと出くわした事もそうだな。出現率も同じようなもんじゃないか?」

 キリトは苦笑いをしながらそう言っていた。
 確かに、この《ラグー・ラビットの肉》は希少アイテムだ。分類にすると、S級ランク。
 だが、目の前にいる人物に遭遇する事も嘗てはそれ並みだとも言われていたのだ。……当然だろう、殆ど全層を闊歩しており、その時間帯も成り行き任せに行動しているのだから。

「……人をメ○ルスラ○ムみたいに言うな」

 リュウキはその言葉を聞いて顔を若干……引きつらせていた。某有名RPGのあ256分の1の確立のモンスター。『自分はそんな存在か?』と。
 確かに、以前は人付き合いが苦手であり、逃げる事も意識していたと言えばそうだが、他人から言われるのはやはりあまり好まないのだろう。

「ま、最近はそうでもないか。結構な確率だし」

 キリトは、思い直してそう答えていた。
 あの《黄金林檎ギルドの圏内殺人事件》以降の彼の行動範囲は、かなり狭くなり 何度も会っているのだから。つまりはレア度が落ちたと言える。

「……否定するなら端から言うなって」

 迷宮区から帰りの道中。
 2人はそんな馬鹿話をしながら、其々の場所に帰路していった。



~第61層・セルムブルグ~



 セルムブルグは、城塞都市でありレイナとアスナのホームがある拠点。……今はリュウキも居候という形で滞在させて貰っている。申し訳ない気持ちもあり、金銭が溜まるまでは……とも思っていたが、レイナは離れ離れになる事を嫌い、アスナも妹の希望を全面的に受け入れてくれていた。

「確かに……ここが人気な層だと言うのも納得できるな」

 リュウキは市街地にある店を眺めながらそう呟く。品揃えもそれなりに豊富……と言うより、十分過ぎるだろう。数多くのプレイヤーがホームタウンにしたい候補No.1だと言われても全然不思議ではない。

「ん……家に興味を持たなかった事が災いした……か? だけど、あの場合は仕方ないか。……よし」

 リュウキが思っているのは、リズに渡した金銭の事だ。あれは、上手く交渉をしたかった為、金銭面だけでなく、鍛冶屋に必要なアイテムも購入したのだ。故に、リズが思っていた金額《1000万↑??》よりも高額な金額がかかっていたのだ。だが、それは必要な事であり 仕様がないとしている。
 ……それだけで、割り切れるのもすごいと思えるが、リュウキは気にしていない様子だった。その後メニューウインドウを呼び出し、レイナにメッセージを送る。

『もう直ぐにつく』とメッセージを送ったのだ。

 だから、ホームに入った直後にレイナの笑顔が飛び込んできた。

「お帰りっ! リュウキ君。」

 笑顔とともに、レイナの声が玄関部に響く。誰かが帰りを待ってくれていると言う事に心地良いと感じるのは不思議ではないだろう。

「……ん、ただいまレイナ」

 リュウキも笑顔で答えていた。レイナは、笑顔だったけれど、少し心配そうな表情をしていた。

「……大丈夫だった? その……怪我とかしてない?」

 レイナは、そう言っていた。リュウキの事は信頼しているし、強さも知っているけれど、やっぱり危険はあるんだから。最近は最前線の攻略に勤めているリュウキだから、尚更なのだ。

「……ここは仮想世界だぞ? 怪我なんてしないだろう?」

 リュウキはレイナの言葉に苦笑いをしながらそう答えた。HPは減る事はあっても、目に見える怪我というものはしない。部位破損、腕や足を切り飛ばされれば失ってしまうが、暫くすれば元の状態に戻るからそれも特に問題ない。
 だがまぁ、HPが無くなれば死ぬ事はあるんだけれど……そこまで いかない様に注意は基本的にしているからだ。

「あはっ……そーだね?でも リュウキ君だけど、やっぱり……心配だから……さ?」

 レイナはそう言うと、笑顔に戻ってスルっとリュウキに抱きついた。
 ギルドは仕方ないけれど、やっぱり、甘えたい。大好きな人の傍にいたい。その想いは恐らく誰にでもあるって、レイナは強く思えている。何故なら、今の自分がそうなのだから。

「……そうか」

 リュウキは苦笑いから笑顔に戻って レイナを抱きしめ返した。
 その2人の姿は本当に微笑ましい……。まさに新婚夫婦と言ったところだろう。そんな時だ。


「あーーはい。ご馳走様っ! ちょっとごめんね~? お2人さん?」

 
 そんな2人だけの空間?を作っていたようだが、ここは、姉妹で住んでいるホーム。勿論、アスナだっているのだ。その上、リュウキとレイナがいるのは玄関部だ。……所構わずイチャイチャしてたらばれちゃうのは必然だ。当然だ。
 なぜなら 玄関1つしかないんだから……。

「わあっ! お、お姉ちゃん!! ゴメンなさいっ!!」
「ああ、悪い。邪魔したな」

 超大慌てなレイナと超冷静なリュウキ。いや、 実に対照的なお2人だろう。アスナはイチャラブ(死語?)してる2人を見て……。

「ほんっと、2人は 仲睦ましいな~~。ま~ったく! 羨ましいなぁ~もぅっ……」

 思わず、頭の中で思っていた事を口に出して言ってしまうのも無理ないだろう。目の前で見せつけられてるも同然なのだから。

「あ、あぅ………///」

 レイナは、アスナのその言葉を聴いて赤くなってしまったようだ。自分としては自然に接したつもりだけど……、やっぱりそう見えるのだろうと思ったから。

「………//」

 今回ばかりは、リュウキもレイナ程じゃないが流石に少し顔を赤くさせていた。


「さてと……、私、出てくるね?」

 アスナは、微笑ましい2人を見て自身も赤くなりつつも外と向かう。

「あれ? お姉ちゃん、今日ギルドの活動あったかな?」

 レイナは頭の中のスケジュール表を、ペラペラと捲り、確認をしながらそう聞いた。間違いなく、今日は別段特に活動予定は組み込まれてない筈だから。レイナは、ギルドの仕事に関しては、しっかりしている。それは姉譲りであり、うっかり忘れてる、なんてことはあまり考えられないのだ。

「ん? 今日は無いよ。でも……もうちょっとでその、BOSS攻略会議……だから。その……そろそろ……ゴニョゴニョ……」

 アスナの声はだんだん小さくなって行った。心なしか、その表情も赤く染まっていっている。

「あっ」

 アスナの反応を見たレイナは、気がついた様だ。アスナがこれから何処に行くのかを。

「……ああ、もうそんな時期だったのか」

 リュウキはアスナの事、には気づかずその内容にだけ着目していた。BOSSの攻略は個人で行うものではなく、大型ギルドが決める事。だから、主に血盟騎士団が決めている。
 第74層のBOSS攻略会議がそろそろ始まるのだと、リュウキは少なからず集中をしていた。大事な時期だと言えるからだ。

「ね、ね、リュウキ君」

 レイナはリュウキの方を見て言った。

「ん?」

 リュウキも呼ばれたため、レイナの方を見た。

「お姉ちゃんは、キリト君に会いに行くんだよ♪だって、もう直ぐBOSS攻略だからっ!」
「っっ////」

 レイナの会心の一言でアスナは顔を真っ赤にさせた。どうやら、さっきのお返しだよ、と言わんばかりの画策があったようだ。

――しかしながら、……ここのメンバーは高確率で赤くなっちゃうと思うのは気のせいだろうか……? 苦笑

 レイナが言うには、アスナはキリトの所に行く口実として、BOSS攻略会議を……との事。そして、女の子の方からはあまり活発に行けないから、口実が必要との事。
 ……でも、そこまで聞いて、リュウキは少し疑問に思う事があった。

「成る程。……ん? レイナは、結構俺に会いに来てくれてたよな?」

 その事だった。
 レイナの事を強く意識する以前から、確か自分に良く会いに着てくれたと言う記憶があるからだ。

「あ、……う、うん。そうだけど……///」

 リュウキの頭には「???」がドンドン浮かんでゆくのがよく解る。アスナは見かねてリュウキに応えた。

「あのね? レイは、すっごい勇気があるんだよ、リュウキ君」
「……え?」

 リュウキは、アスナの方を見た。

「リュウキ君に何度も会いに言って、……振り向いてほしくて、好きになってほしくて……頑張ってたんだよ。すっごく勇気がいる事なんだ」
「レイナ……」

 リュウキは、思わずレイナの方を見た。それ程までに、自分の事を想ってくれていたんだとリュウキは改めて思ったのだ。もし、過去に戻れるとしたら、自分自身を殴ってやりたいとも思える。

「っ///うん………」

 レイナは顔を赤く染めていたが頷いた。恥ずかしいんだけれど、もう大丈夫だから。

「ありがとう……」

 リュウキは、礼の言葉しかでてこない様だ。

「いやっ、お礼言うのは私だよ……だって、私の事も好きになってくれたんだから……///」

 最後には2人で赤くなっている。

「うーん……、私も、頑張らないとね……」

 アスナは、2人を見て改めてそう思う。自分も、好きな人がいるから。だから、自分も妹の様に……なりたい。支えて、支えられて、信じて、信じられて、信頼して、信頼されて。何より。

 《愛して、愛されて》

 その見てるだけでも、悶えちゃいそうになるけど……とても微笑ましく思えるような間柄に。でもやっぱり、ちょっと妬けちゃうから早く、同じようになりたいと思っていた。

「さてっ! 行って来るね? 2人とも!」
「あっ///うんっ! 気をつけて!」

 レイナは はっとしてアスナを笑顔で見送る。

「キリトなら、エギルの所へ行こう、って言っていたな。位置情報を確認すれば一発だと思うが。十中八九間違いない」
「うん。リュウキ君ありがとう」

 アスナは礼を言うと…… キリトの所へと向かっていった。


 アスナが出かけたその後の事。

 リュウキとレイナは、攻略等のことを一切せず、所謂デートと言うヤツをしていた。リュウキはよく解らないなりにも 頑張ったようだ。ただ1つ君のために。レイナの為にを心に秘めて。だから、レイナが行きたい所へ行く。それが主な行動だった。リュウキは、何度もこのアインクラッド内をを闊歩しているから特にコレと言って行きたいと思える場所は直ぐに思いつかなかった。 
 ただ、彼女と一緒なら何処でも良かった。

 彼女と一緒なら……どこでも良いと。違った風景が待っていると思えていたから。そんな中でレイナが一番行きたかった所が判明した。


 それが、第47層・フローリア

 その場所は、通称≪フラワーガーデン≫と呼ばれている場所だった。




~第47層・フローリア~


 アインクラッド、47層は花の都。
 それは円形の広場の細い十字路の周りに咲き乱れる百花繚乱。そこの中心で、2人は腕を組み眺めていた。

 プレイヤーのデートスポットと呼ばれている場所だが、幸運にもプレイヤーが少なく、殆ど貸切の状態だった。その場所でリュウキは間違いなかった、と確信をしていた。好きになった人と見る景色と言うのは、どれだけ見慣れた景色でも全然違って見えてくると言う事だ。
 リュウキは、煉瓦で囲まれた花壇。名も知らない花を眺めながら微笑んでいた。

 そして。ぐっと……レイナを抱き寄せる。レイナも、そっとリュウキの肩に頭を乗せていた。

本当に……本当に幸せだった。
この世界に囚われている筈なのに……、永遠にこんな時間が続けばいいのに……って思えていた。


「でね? リュウキ君っ」
「ああ」

 2人は他愛の無い言葉を交し合っていた。それは、……ギルドの話や姉との話。リュウキに会えるまでの話等。
 そして……、ギルドの愚痴っを言ったり、色んな話をして、そして、リュウキは笑顔で聞いていた。

「む~……最近は幹部クラスに護衛をつけるのが、ギルドの方針になっちゃって……。私達は主に一緒に行動しているのが多いから2人に2人が、1人の時もあるけど。私達につくだけなんだ……それでもやりすぎだって思うんだ」

 話の中でも……、レイナのギルドの愚痴はまだまだ続く様だ。 

「……ははは。でも大型ギルドではありがちな話だろう。……それだけ、アスナやレイナが大事なんだ」

 リュウキはそう返した。それは、間違いないと思える。でも、レイナはちょっとリュウキの言葉に不満気味だった様だ。だから、聞いてみたいことがあった。

「でも~……。ん? リュウキ君はへーきなのっ? 私の事、四六時中見られてる時だってあるんだよ? ギルドにいる時なんかず~~っと、その監視? されてるから、一緒なんだし」

 レイナがそう言うと……。リュウキは考え込んだ。
 自分が好きになった相手、レイナが他の男性プレイヤーに付きまとわれている?事を想像していた。そして……物の数秒で、リュウキの表情が見る見る内に表情が強張って行く。

 それは、以前の自分だったら……決して思わない、思わなかった感情だ。

「あ、あの~リュウキ……君?」

 レイナは、からかうつもりで、悪戯っぽく言ったんだったけれど、リュウキの表情を見たレイナは、ちょっと戸惑っていた様だ。

「ん……。それは嫌だな。凄く不快な気持ちになる」

 リュウキは真顔でそう答えた。レイナは、リュウキが嫉妬をしてくれているんだって思ったら、それだけでも嬉しかった。

「……そっか。うんっありがと」

 レイナはするっと抱きつく。

「ギルドの方針だから、中々難しいけど……今度、団長に何度か頼んでみるね?」

 レイナはそう言った。

「あっ……。俺の我侭、になるのか……」

 リュウキは少し反省をしていた様だ。ギルドのあり方なら仕方がない事なのだから。だから、我慢をするという事も大切だろう。でも、レイナは、首を振る。

「いや、私は嬉しいよ……? すっごく……。だって、それだけ想ってくれてるんだから」
「………///」

 リュウキは、それを聞いて赤くなる。否定は決してしないんだけれど……やはり赤面をする事は止めれなかった。





 
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