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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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解き放たれた絶望

一方、ウェンディたちの方では・・・第三者side

「しっかり・・・しっかりしてください!!ビックスローさん!!」

ウェンディはビックスローを牛の山からようやく助け出すことができ、今はそのケガの治癒を行っている。

「俺のことはいい。逃げろウェンディ」

ビックスローは倒れたまま、勝算がないと思いそう言う。

「無駄だ。そいつはもう動かんよ」

グリムリーパーはその様子を見てそう言う。

「隙だらけだぞ、小娘」

グリムリーパーは左手をウェンディに向けると、そこから雷を伴った強風が出てきて、ウェンディを襲う。

「きゃあああああ!!」

それを受けてしまったウェンディは飛ばされ、地面に落とされる。

「自然現象の前において、人の力や心はいとも簡単になぎ倒される」

グリムリーパーはこのまま、ウェンディがここから逃げ出すであろうと思い、そう言う。だが、

「ん?」

ウェンディは逃げるどころか、倒れているビックスローに四つん這いのまま近づくと、再び治癒魔法をかけ始める。

「なぜだ?そいつを見捨てれば貴様にも勝機があるかもしれんというのに」
「仲間・・・仲間を見捨てるなんてありえない!!」

ウェンディはグリムリーパーの言葉にそう答える。

「仲間?」

グリムリーパーは鎌を振るい、風の魔法でウェンディたちを攻撃する。

「うっ!!」

二人は完全に風に飲み込まれるが、それでもウェンディは治癒魔法をやめない。

「バカ野郎が!!お人好しもほどほどにしやがれ!!時には仲間を置いてく勇気も必要だ!!」

ビックスローはウェンディに怒鳴る。

「嫌です!!」

しかし、ウェンディの答えはNOであった。

「私は・・・見捨てたりなんか・・・しない!!」

ウェンディがそう言うと、治癒の光が大きく輝く。

「仲間・・・」

その大きな光は、近くにいたグリムリーパーにもなんらかの影響を与えたようだった。

「なんだ・・・誰だ・・・?」

グリムリーパーは自らの頭を押さえる。

「今のは・・・一体・・・」
「見たか?ウェンディ。あいつ・・・」

グリムリーパーの異変に、ビックスローとウェンディも気づく。

「よせ!!戻ってくるな!!記憶などいらん!!」

グリムリーパーは頭を抱えて叫んでいる。

「野郎、記憶が戻りつつあるのか」
「え?」

ビックスローはグリムリーパーを見てそう述べる。

「来るなカゲヤマ!何も言うな!」
「戻ろうとする記憶、それに抵抗する何かの力。奴は今、てめぇの記憶で押し潰されそうになってやがんのさ!!」

苦しむグリムリーパーの魂を見て、ウェンディに説明する。

「辛そうです・・・」
「あぁ!?」

苦しむグリムリーパーを見て言い放ったウェンディの言葉にビックスローは驚いてしまう。

「私の治癒魔法で、あの人の記憶を戻してあげられたら・・・」
「お前、どこまでお人好しなんだ!?」

ウェンディのあまりの人の良さにビックスローはそう言う。

「やってみる!!」

ウェンディはグリムリーパーを苦しみから解放するため、魔力を解放する。

「お前のせいだ!!小娘!!消えろ!!」

グリムリーパーは心を乱したままウェンディに向かって魔法を放つ。

「天竜の咆哮!!(プラス)キュア!!」

それに対し、ウェンディはブレスと治癒魔法を併せた魔法で対抗する。

「消し飛べ小娘ぇ!!」
「思い出してぇ!!」

ぶつかり合う二人の魔力。その風は近くにいたビックスローをも身動きができないほど凄まじいものだった。

「無茶しやがる・・・!!」

その時ビックスローはグリムリーパーの魂を見て何かを感じ取っていた。

「うおおおおおおっ!!」
「はああああああ!!」

叫ぶ二人。そして、徐々にウェンディのブレスがグリムリーパーの攻撃を押し始め、辺りが光に包まれた。





















「おーい!!」
「!?」

辺りは真っ白な空間のような場所。グリムリーパーは後ろから声をかけられ、驚きながらもそちらを向く。

「情けねぇ姿だなまったく・・・俺が望んだ強さはこんなんだったか?」

そこには黒い手袋をはめ、下に袴のような物を履いた、上半身裸の男が大鎌を持ってたっていた。
その後ろには、顔や服装はわからない、シルエットだけの四人組が立っている。

「貴様は・・・俺?」

グリムリーパーはそう言う。グリムリーパーに声をかけた男は、7年前、呪歌(ララバイ)の時にナツ、ニルヴァーナの時にシリルと交戦した時の、グリムリーパー・・・エリゴールの姿だった。





















「うわぁっ!!うおっ!!ぐはっ!!」

突然、グリムリーパーの体から黒い禍々しい邪気が抜け出る。それと同時に、グリムリーパーは意識を失い、地面へと転落した。

「奴の魂から何かが抜け出たぞ」

ビックスローは倒れたグリムリーパーを見つめてそう言う。それと同じようにグリムリーパーを見るウェンディの表情は浮かないものだった。

「そんな・・・私、人を治す力で・・・人をキズつけてしまった?」

ウェンディは自分の治癒魔法でグリムリーパーをキズつけてしまったと思い込み、暗くなる。

「いや・・・」

そんなウェンディにビックスローは近寄ると、そっと頭を撫でる。

「俺には見える。やっぱりお前は治したんだよ。あいつの心を」

ビックスローとウェンディは、体中から煙を出して倒れているグリムリーパー・・・いや、エリゴールを静かに見つめていた。
























シリルside

「サンドスラッシュ!!」
「無駄だ、聞こえてる」

マックスさんが砂で作ったカッターのようなものでコブラを攻撃するが、それを振動で消してしまう。

「こっちだって!!」

マックスさんはコブラの真後ろに入り攻撃しようとするが、

「うっ!!」

コブラはそれさえも聞こえており、腹にケリを入れる。

「だからよぉ・・・」

コブラは聞こえてると言おうとしたのだろうが、あいにく俺たちの作戦に引っ掛かってしまってることには気づいてないようだ。

「かかったな!!サンドトラップ!!」

コブラが蹴りを入れたマックスさんは砂で作った偽物!!本物のマックスさんはコブラから少し離れた地面の中から上体を見せる。

「シュガーボーイの粘液から思い付いたんだ。シリル!!いけぇ!!」
「ご協力、感謝します!!」

俺は砂に足をとられて動けないコブラに向かってジャンプする。

「水竜の・・・翼撃!!」
「聞こえてると・・・」
『翼撃!!』
「言ってるだろうが!!」
「「うわぁぁぁぁぁ!!」」

攻撃をしようとした俺とマックスさんをコブラは音の振動で吹き飛ばす。
だが、俺はすぐに体勢を立て直し、コブラに向きなお―――

「砕けろ!!」
「なっ!?」

いつの間にか俺の後ろにコブラがおり、至近距離で俺に攻撃しようとする。

水竜の盾(ウォーターシールド)!!」

しかし、俺はそれを素早く盾を作って防ぐ。

「ちっ」
「それと、水竜の拘束(ウォーターロック)!!」

俺は盾で使った水を操ってコブラの手足を拘束する。

「ナイスシリル!!サンドスラッシュ!!」

俺がコブラを押さえたのを見てマックスさんが攻撃する。

「それも聞こえている!!」
「ぐわぁっ!!」

コブラは拘束されたままの状態で音を振動させる。それにより、マックスさんは大きなダメージを受けてしまった。

「マックスさん!!」

マックスさんは地面に倒れ、動けなくなってしまう。

「ヘドが出る。美しい友情ごっこかよ」
「なんだと!?」

俺はマックスさんに駆け寄り、コブラを睨む。

「キュベリオスはもういねぇ・・・俺にはもう、友はいねぇ」

そう言ったコブラの表情は、実に悲しげなものだった。

「なるほど・・・お前の悲しみ、俺にも聞こえたぞ」

俺はコブラを見据え、立ち上がる。

「だけどなぁ・・・その悲しみを乗り越えることこそが、次に進むための力になるんじゃないのか?」
「知った風な口を。お前に俺の心の悲しみを理解できるわけねぇ」
「わかるよ」

俺はコブラの言葉にそう返す。それを聞いたコブラの顔は、不機嫌さを隠すことなく、苛立っているように見えた。

「俺も7年・・・いや、14年前に大切な親を失った。他の人だって、それぞれ色んな物を胸の中に秘めている」

俺と同じように親を失った者。自分の故郷をを破壊され、大切な人をさらわれた者。大切な人が操られ、二度と会えなくなった者・・・でも、みんなそれを乗り越えて生きている。

「聞こえたんだろ?コブラ」

俺の問いかけに、コブラは何も答えない。

「ちっ、俺としたことが、目的を忘れていた」

コブラは何かを呟くと、服の袖からナイフの柄のようなものを出す。

「水竜!!いずれ決着はつける」

コブラはそう言うと踵を返し、どこかに走り去ってしまう。

「待て!!」

俺はすぐにあとを追おうとしたが、倒れているマックスさんとエバーグリーンさんのことを思い出し、立ち止まる。

「今はこっちが優先だな」

俺はキズを負った二人の元に近づくと、すぐに治癒魔法をかけて回復させることにした。


























第三者side

「おい起きろ!!いつまで寝てんだエリゴール!!」
「そ・・・そんな乱暴な・・・」

ビックスローは気を失っているエリゴールの胸ぐらを掴み起こそうと揺すり、それを隣で見ているウェンディが慌てぎみに止めようとしている。

「これだけは聞かなきゃなんねぇ」

ビックスローは自分を止めようとするウェンディにそう言い、視線をエリゴールに戻す。

「おい!!お前たちの目的を話すんだ!!無限時計はどこだ!!」

ビックスローが耳元で大声を出したためか、エリゴールはようやく気がつき、頭を抱えながら話し出す。

「わからん・・・ボーッとして、自分が何をしていたのか」
「記憶が戻ったばかりで、まだ頭がはっきりしないんですね」

エリゴールを見たウェンディがそう言う。

「おめぇ、監獄にいたはずだろ?」
「そうだ。いつだったかひどい悪夢を見た。誰かが俺の夢に忍び込んだ感じだった。その後俺は・・・」
「グリムリーパーとして活動してたわけだな?」

エリゴールはビックスローの言葉に小さくうなずく。

「夢に忍び込む?」

ウェンディは先程エリゴールの言っていた言葉に何かを感じる。

「夢を使って、その人を操る魔法でしょうか?」
「だな」

ウェンディの推測をビックスローは肯定する。

「脳波に少しずつ影響を与え、無意識下でコントロールするってとこだろうな」
「言われるままに記憶を差し出し、その代わりに気象を統べる魔法を得た。しかし、すべてを忘れる・・・苦痛だった、あんなに辛いことはねぇ!!大きな力には大きな代償があると言うが、あんなもの・・・」

エリゴールはグリムリーパーだった時のことを思い出し、苦痛に顔を歪ませる。

「そんな時、あんたの声が聞こえた」

エリゴールはウェンディに視線を向ける。

「馴れ合う気はねぇが、感謝させてくれ」
「は・・・はい!!」

エリゴールの言葉にウェンディは嬉しくなり、手を後ろにして可愛らしく返事をした。

「ちょっと待てよ!!」

すると、ビックスローはあることを思い出し、その場に立ち上がる。

「今回のチームを占いで決めた時、カナが言ってたよな?」
「『なんだか知らないけどやたら眠い』って・・・それじゃ、カナさんも気づかないうちに夢で操られて!!」
「はなっから奴等に都合のいいように組まされたチームだったってことか!!」

ビックスローとウェンディは同じことを考えた。

「そんな・・・」
「俺たちは、罠にはまっちまったんだ!!」

二人は自分たちのおかれている状況を理解し、今回選抜チームに選ばれた仲間の心配をする。

(シリル・・・)

ウェンディは最愛の少年の無事を祈り、両手を強く握り合わせた。

























シリルside

「うぅ・・・」
「あれ・・・」

俺が治癒魔法をかけてしばらくすると、マックスさんとエバーグリーンさんが目を覚ます。

「気がつきましたか?」
「あいつは・・・コブラはどこいった!?」

マックスさんはさっきまで戦っていたコブラの姿が見えないことに気づき、俺に質問する。

「あっちに・・・たぶん教会にいったんだと・・・」
『きゃあああああ!!』
「「「!!」」」

俺が事情を話していると、突然女性の悲鳴が聞こえてくる、今の声が聞こえた方って・・・

「教会の方からですよ!?」
「コブラの奴、何かしやがったのか!!」
「行ってみましょ!!」

俺たちは何が沖田のか状況を把握するため、悲鳴の聞こえたところへと急いで向かった。

















「悲鳴が聞こえたのはこっちだ」

俺たちが声の聞こえたところに到着すると、そこには見るも無惨な光景が広がっていた。

「なんですかこれ・・・一体どうなって・・・」

倒れているたくさんの評議院の人たち、そして、その評議院の真ん中に倒れている女物の服を着た人の形をした砂の塊のような物。これは一体?
俺は気になったのでその塊を目を使って見てみる。それは、生きているでも死んでいるでもない人のように、俺には見えた。

「なんだよこれ・・・何をしたっていうんだ・・・コブラ」

俺はそれを見てただただ呆然とするしかない。

ゴォォォン

「!!」
「どうした?シリル」

俺は今、鐘の音が聞こえたような気がして、空を見上げる。
その空は、さっきまでの曇天模様から変化し、真っ赤に染まっていた。だがそれは、夕日によって染まったような美しいものではなく、まるで血で染められたかのような赤色の空だった。
さらに、その空に巨大な魚のようなものが現れ、飛行していた。

「なんだよ・・・なんの冗談だよ、こりゃあ・・・」
「これが・・・」
「まさか・・・無限時計!?」

俺たちはその巨大な魚を見て、唖然としていた。




















第三者side

「無限時計の解放?」
「あれが時計か?でかすぎんだろ」

同じ頃、ウェンディとビックスローも空を飛んでいる無限時計を見てそう言う。

「無限時計はゼントピア大聖殿の真上に隠してあったのだ」
「どういうこった」

エリゴールにビックスローは問いかける。

「あれはゼントピアの歴史から封印されていた教義の原点・・・善意と悪意の、始まりと終わりの交差点・・・」
「始まりと終わりの交差点?」
「それは一体・・・」
「わからん・・・それ以上は思い出せん」

エリゴールは申し訳なさそうに首を振る。
ウェンディたちには、その時計が何をするものなのか、わかるはずがなかった。





















シリルside

「なんだあれ?」

俺は目を使って無限時計を見ていたのだが、その時計から鎖が地上に落とされる。
その鎖は街のありとあらゆるところに突き刺さる。

「まさか・・・無限時計が活動を始めたということなんてしょうか?」
「だろうな・・・」
「そんな・・・」

俺たちは無限時計を止めれなかった悔しさに苛まれる。

「今はそんなことを考えていても意味ないですね・・・」
「だな」
「これからどうするの?」

俺たちは顔を見合せ、次に何をするべきかを考える。

「一度、ギルドに戻りましょう。もしかしたら、誰かが何かの情報を持ってきてるかもしれませんし」

俺たちは今の状況を確認するために、一度ギルドに帰ることにした。











 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
もうすぐ最終決戦です。
次回もよろしくお願いします。 
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