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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第79話 大切な人を守れない



 あれから、更に数日後の事。

 リュウキは、朝からリズの武具店の閉店時間までは主に迷宮区の探索、そして情報収集。そして、リズの武具店閉店後に、工房を使わせてもらう為リズの所へと向かった。リズの仕事の邪魔はしない程度にその場所を使わせてもらっていた。そんなリュウキを見たリズは『アンタは一体 何時に寝るんだっ!?』と思わずつっこんでいた。
 ……と言うより、突っ込まずにはいられないようだった。

 何故なら……、リズが朝、起きて工房に向かった時、まだリュウキは工房にいる。

 そして、鍛冶以外にも何やら作業もしていた。
 リズは、リュウキの≪可愛い寝顔≫見てやろう!っと思った自分がいたんだけれど……。はっきり言って、無理だった。
 寝る姿……ま~~~ったく見れなかったんだから。と言うより、一切寝てないんじゃ?とも思える。この男は締め切り間際の漫画家か!って思えるほどだ。 

「……一体なんなんだリズ? さっきから、人のことをジロジロと……」

 リュウキは さっきから感じている視線の正体には勿論気づいていた。それはそうだ、この場にいるのはリズだけ そして感じるのは視線だからだ……。
 初めは一番最初にリズの言っていた≪作業を見せてくれないか?≫と言っていたから作業を見ていたいのかな?と思ったけれど、どうやら違っていた様だ。
 だって、作っている物じゃなく、自分の方を見ているのだから。

「あーいや、別に」

 リズは、リュウキから、あからさまに視線を逸らせていた。不審には思うが、リュウキは追求する事はしない。……それに そう言う事ははっきり言って、何度も有るのだから。 

「……そうか。ならいい」

 そう一言返すと、リュウキは再び作業の続きに入っていった。

 その後もリズは暫く、リュウキの仕事っぷりを眺めていた。本当に変わらない緊張感が続いていて、こんなのが毎日続いたら身がもたない!って思うほどだ。今日はいつも通り、暫く見ているだけ……じゃない。この数日、リュウキの様子を見ながら、話をした。
 そして今日は攻めてみよう。と思っていたのだ。

「ねぇ……リュウキ」

 リズは、リュウキの直ぐ側にまで来た。

「……ん?」

 リュウキは作業をする手を止め、リズの方を向いた。何やらその声色から真剣味を感じたからだ。

「その……、単刀直入に聞いてもいい?」

 リズはいつもとは違う、声色だけじゃなく表情も真剣なものだったのだから。

「……さっき、ジロジロ見ていた事について、か?」

 リュウキはそう聞き返した。心当たりがあるのはその事だから。それを聞いたリズは、ちょっと慌てて。

「あーー違う違う。ちょっと違う。……ちょっとじゃないや! ぜんっぜん違う!」

 何やら結構凄い剣幕でそういわれた。

「そうか……、なら一体なんだ?」

 リュウキは改めてリズの方を向いた。

「……っよし」

 リズは何やら覚悟を決めた様だ。……どうやら、リズは本当に自分のことの様に緊張していたらしい。

「私はね…… アスナやレイ……キリトだって、皆大切な大切な友達。親友だって思ってる」

 ふぅ……と落ち着きながらも表情は真剣そのものだった。

「………」

 そんなリズを見て、リュウキは何も言えない、その後リズは更に続けた。

「それは、勿論リュウキだって同じだよ。付き合いは凄く短いけどね? 初めは無茶苦茶なヤツだな~って思ってたけど、アンタと話をしていたら 凄く優しいんだって言うのよくも判った」
「ッ……」

 リュウキはリズのその真っ直ぐな瞳と、直接的なその言葉を訊いて思わず動揺していた。

「だからこそ……だよ? ……リュウキ。教えて欲しいんだ。……何でなの、かな。あの時(・・・)。……何でレイの前で態度を変えたの? ……何で、レイに冷たくしてるの? ……何で、レイの事を避けてるの?」

 リズはリュウキの目をじっと見ながらそう聞いた。

「ッ……」

 リュウキは、そのリズの言葉を聞いて 直ぐに表情を落としていた。
 どうやら、リズにも判るくらい、あからさまだったのだとこの時 初めてリュウキは判ったのだった。

 そして、リズの言うようにあのレイナと顔を合わせて……思わず逃げるように立ち去った時の事を思い出す。あの時の事だけじゃない。これまでの事も思い出していた。事あるごとに、理由をつけて レイナとの接触を絶っていたからだ。

「……そ、それは」

 リュウキは口ごもっているようだ。明らかにさっきまでとは違う様子だった。
 そんなリュウキを見て、リズは、すっ、と目を細めた。

「1つだけ、確認させて。……リュウキ。アンタはレイの事……嫌ってるんじゃないよね?」

 リズが確認したい最優先事項はそれだった。……でも、あまり考えたくない事でもある。あれだけ リュウキの事をレイナが想っているのだから。
 だけど…… 事、恋愛と言うのは人と人との関係、つまりは各々の心の問題。だからこそ……、万が一にでもリュウキがそうであったとしたら……もう仕方ないんだ。だから、もしそうならば 立ち直るまでずっと、レイナを支えていく。
 そして、リュウキとは友達として……接すれば良い。皆を巻き込んで……、そうアスナと、そしてキリトも巻き込んで。ゆっくりと心を癒していけばいい。……難しいかもしれないけれど、レイナの為だったら、何でもしたいと思うから。

 リズはそう考えていたんだけど。リュウキの次の言葉、それを聞いて、杞憂だと言うこと判った。

「それは違う!」

 そう、リュウキはリズの問いに即座に答えたからだ。リズはその時のそう言うリュウキの目をしっかり見た。……嘘を言っているようにはもう見ても見えない。
 そもそも、リュウキは、元々嘘をつく人間にも見えなかったから。

「そう…… なら良かった。……ほんとに良かったよ」

 その答えを聞いてリズは安心しきった様子でそう言った。表情は綻んでいた。羨ましいと思ってはいたんだけど、やっぱり、レイナの事はリズも大好きだから、安心させたい、そして笑って欲しいと思っているのだから。

「……オ……オレは」

 リュウキは続けて何かを言おうとしたんだけれど 喉に何かがつっかえたように、言葉が出ないようだった。安心した様子のリズとはまるで正反対だった。

「……無理にとは言わないよ。何か……あるんだよね? その、……理由がリュウキにも。私は、とりあえず その答えが聞けただけでも良かったから。あの子は。……レイは 私の大切な友達だから」

 リズはリュウキの肩に手を置いた。

「…………」

 だけど……、リュウキの表情は暗く、俯いたままだった。

「あッ……、ゴメン。そこまで、リュウキの事 追い詰めるつもりなかったんだ。ほんとごめんっ!」

 リズは思わず頭を下げ謝っていた。
 想像以上に沈んでいるリュウキを見て、罪悪感に苛まれていたんだ。理由を……最後まで聞きたかった言葉だけれど、これはさっきも言った通り、心の問題。無闇に聞いて良いもの……じゃないんだから。
 
 リズがそう言った直ぐ後に、俯いていたリュウキは顔を上げた。

「いや……オレが悪いんだから。今回のは間違いなく……。リズは何も悪くない……、そして、レイ……ナも」
 
 リュウキはリズにそう言っていた。そして続ける。ここからが、本題だった。

「オレは………怖いんだ」

 リュウキはポツリと話しだした。

「え?」

 思ってもいなかったその言葉に思わずリズは戸惑ってしまった。
『怖い? 前人未到の事を次々と成しているリュウキにこの世界に怖いものがあるのか?』と思っていたんだ。最前線での戦いはそれ程までの戦いをしている事もリズは聞いていたのだから。

「怖い……?」
「……ああ。」

 リュウキは……更に続けた。自分自身が理解した事を……そして、そこから先の事を。

「……オレは、誰かを好きになる……と言う気持ち よくわからなかった。でも、親の事、親代わりになってくれた人の事は好きだ。大好き……だ。でも……違うんだよな?他人を……、その異性を好きになるって事は」
「えっ? え~~っと……まぁ、そうだよ? う、うん、そうそう……」

 リズは少しぎこちないが、リュウキの問に肯定した。だって、幾ら何でも 正面から言われたら流石に照れてしまうからだ。でも、しっかりと、はっきりと答えていた。

「……オレは……あの時、解ったんだ。オレ、オレは……」

 リュウキは息を呑む。そして深く深呼吸をした後に……。



「オレは、レイナの……、レイナの事が………好きだよ。……好きになってたって事に気づいたんだ……」



 リュウキの言葉。まるでそれは告白の様だった。


「……………」

 そのリュウキの告白を目の前で聞いたリズは顔を紅潮させる。
『何で本人の前で言わないんだ!?』
『私に言ってるみたいでドキドキしてしまった自分が情けない!』
 ……と、思わず頭の中で葛藤していた。
 それも仕方がないだろう、何せ、リュウキは リズの面向かって言っていたのだから。

「でも……」

 リュウキは更に続けた。リズは、その表情を見て、どうやら ここからが本当の彼の問題なんだとわかった。

「オレは……駄目なんだ」

 リュウキはそう言う。

「え? 何……? 何が駄目なの?」
「……オレは大切な人を守れない男、なんだ。……以前も大切に想いだした、想っていた相手を……守れなかった。……最後に、最後の最後で失ってしまった。……だから、失ってしまうのが怖いんだ。彼女を、大切に想っている、好きだと判ったレイナを、失う事が怖いんだ。……凄く怖い」

 リュウキは肩を震わせてそう言っていた。

「……な!? 何言ってんの、知らないの!? アンタに救われた人、この世界に滅茶苦茶いるんだよ!? 大丈夫だよっ! 失うなんて……そんな事なんか無いって!」

 リズは思わずリュウキを弁護をしていた。そもそも白銀の話の伝説は本当によく聞く。眉唾なものや、妬みの様なものも中にはあるが、感謝しているものもかなり多い。

 レイナやアスナに聞いた事も、勿論ある。

 だからこそ、リズは強くそう言っていた。でも、今のリュウキは普段のリュウキとはかけ離れてみえた。それは、弱々しく……折れてしまいそうなほどに震えている。

――それは、まるであの時のレイナの様に。

 だから、リズはそんな事無いって伝えて、レイナの時の様に 震えを止めてあげたかった。

「違う……オレ、オレは……。ッ………」

 リュウキは震えている肩を自分で抑える様に?んだ。それでも身体は止まる事なく震えている。

「……ごめん。今日は休ませて貰って……いい……か」

 リュウキは震える肩を抑えながらそう言った。

「あ、うん……。ごめん。本当に、ごめん」

 リズは頷くと、思わず謝っていた。……彼の闇の部分に触れてしまったと、そう思ったからだ。妄りに開いてはいけない事を。開いてはいけなかった その扉を……開いてしまったんだから。

「……違う。リズは何も悪くない。それにリズが言う事……それを聞いたら……オレはレイナを……」
「わ--解ったから。もう、落ち着いてリュウキ。大丈夫、大丈夫だから……」

 リズは、グイッと抑える。
 もうそんなリュウキを見ていられなかったから。本当にあの時のレイナを見ているようだったから。


「……オレを幻滅しただろ?」

 リュウキは立ち上がると静かにそう言った。

「え?」

 リズはきょとんとしていた。リュウキの言葉の意味がイマイチ判らなかったから。何に幻滅するのかが判らないのだ。

「……不本意なんだけど……、オレは色々と此処では言われている。だが……オレは臆病者と言う事だ。……強くなんかない」
「ああ……。なるほどね」

 リズは、リュウキにそう言われて、言っている意味が漸く判った。そして、リズは次に笑顔を作って。

「幻滅なんかしてないよっ! 逆に安心したって。」

 だから、笑顔のまま、リズははっきりとリュウキに答えた。

「……え?」

 今度はリュウキがリズの言っている意味が理解出来ていないようだ。

「ふふ、だってさ? リュウキは当事者だから、ぜ~~ったい知ってると思うけど……アンタの話。《白銀の勇者》って言ったら、ものすっごく有名じゃん? それはそれは、滅茶苦茶な行動張りだし、物凄い強いし……。神出鬼没だし……。 ほんとに同じ人間なの~?? って、思っちゃってたんだよ? でも、そんなことなんて無いんだって、私たちと変わらない同じ人間なんだって、とても安心した」

 リズのその言葉を聞いたリュウキは表情が固まる。

「………」
「安心したよ」
「あ……りがと」

 リュウキはそう一言いう。《ありがとう》と。こんな風に言ってくれたのは初めてだから。


 その後、リュウキは、しっかりとした足取りで工房から出て行った。リズのおかげで、今まで心の奥に追いやってきたモノを出す事ができて、軽くなった。
 あの時、レイナに過去の闇を訊いて貰った時の様に。

「……レイナは、オレを助けてくれたのに……、オレは一体何を……」

 帰る道中、考えるのはレイナの事。あの時、助けてくれた人。大切な人なのに、凄く迷惑をかけてしまった。 リズが心配する程に。

 だから、リュウキは今度 勇気を持ってレイナと話そうと心に思っていた。直ぐには難しいかもしれない。だけど……必ず。






 そして、工房に残っていたリズはリュウキの出ていった方をじっと見ていた。

「……色々と抱えているんだ。それも、レイナやアスナが言う通りだったな」

 そして、リズは改めて思ったいた。

「……こりゃ、どっちも大変だ。……ちゃんと してあげないとね」

 あんなに強いリュウキでも……心はやっぱりそうは行かないんだ。そう、守ってあげなきゃいけない部分はあるんだと思っていたんだ。

「それに、ちゃんと伝えてあげないと。……リュウキの事」

 リュウキはレイナの事を嫌ってない事。
 レイナの事を好きだと言った事は、とりあえず自分の胸に置いておこう。リュウキのあの≪告白≫は本人の口からレイナに言ってあげてほしいから。

 そして何よりも……


――……レイナのあの涙を止めれるのはきっとリュウキだけなんだから。
――……そして、リュウキの震えを止めてあげれるのは……きっとレイナだけなんだから。




 
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