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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第75話 借りたくて、リズベット武具店

 来客者。
 その紺色のコートから、一瞬キリトかと思ったが違う事が直ぐにわかった。なぜなら、そのプレイヤーはコートだけじゃなくてフードもかぶっているからだ。顔見知りじゃあるまいし、それにキリトだったら、素顔を隠して入ってくる様な事は無いだろう。来客は白いフードを被っている。だから、表情が見れず、男か女か?すらも一見だけでは判断できなかった。でも、そんな事よりも、第一印象は正直言って怪しいの一言に尽きる。

「あ……あの~~? 何かお求めで?」

 リズは挨拶をしたんだけれど、何かに集中しているようで聞こえていなかったようだ。無視をしている訳ではなさそうだった。その集中力の様なものがコチラにも感じられるからだ。

 だから、リズは再び声をかけた。

 どうやら、次の声は聞こえたようだった。はっ、とした様子でリズの方を向いた。

「……ああ、すまない。少し考え事をしていた」

 男は、軽く会釈をすると向き直った。数歩……ゆっくりとリズベの方へと歩み寄る。それを見て、リズは一瞬警戒した。それは当然だろう。
 ここは仮想世界とは言え、すっぽりと顔をおおったフードを着た、それに全身が主に黒い男なんて普通ならば警戒するだろう。自分は女なんだし。……だけど、それは一瞬の事だった。この世界においては圏内で何かをされると言う事はまずありえない。そしてここも同様、システム的に保護されている。それでも何かをしようものなら、ハラスメントコードで監獄エリアへと送ってやることだって出来る。

「えーっと、何をお求めでしょう? 展示しているの以外でも、武器・防具、何でもオーダーメイドいたしますが?」

 だからこそリズは、直ぐに表情を戻した。外見がどうであれ、お客はお客、お客様は神様っ!とまでは思ってないけど。それに、外見はあまりお財布事情が大丈夫なのか?と思っていたが、キリトの件もある。もう外見では判断できないと身に染みたからだ。

「……すまないが、頼みがあるんだ」

 男は、そう言うとフードを取った。

「……はい? ッッ!?」

 リズは、フードを取ったその表情を見て驚いていた。その外見は、素顔は、とても可愛らしいもの……だったから。いや、可愛らしいのと格好良いのが≪5:5≫良い具合に混ざっている感じ、だろうか。
そして、歳は自分より下……か?自分自身も童顔。といわれているが、彼も十分そうでは無いか?と思える。そして、かぶっていたフードの中には、その素顔の様に綺麗で鮮やかな銀の髪。
 簡単に髪を直しているその姿……それだけでも十分に魅力的だった。

「えーっと。頼みと言うのは?」

 リズは、とりあえず色々な事が頭を過ぎったが……、気を取り直して接客を再開した。彼女は外見だけで全てを判断するのは好ましくないと考えているからだ。外見は良くても内面が悪ければ 全て台無しだろう。それは、このSAOでも現実でも同じ事だった。
 だから、他のプレイヤーの様な反応は見せなかった。それは男からすれば好ましい事だった。
そして、次の言葉にリズは戸惑いを隠せなかった。

「すまない……、ここの工房を少しの期間だけで良い。……貸してもらえないだろうか?」

 ………この男が何を言っているのか解らない。

「……は?」

 だから、リズは思わずスットンキョーな声を発してしまっていた。直ぐには理解できなかったが、よーく内容を頭の中で再生して……、つまりは この工房を貸してほしいと言う事だろう……か?何度も再生しても、そう言う意味としか思えない。だって、そう言う意味なんだから。

 つまりは、武器を作って欲しいのじゃなく、武器を作りたいから貸してくれとの事だ。

「あの……頼まれればご希望の性能の武器をお作りしますが……?」

 リズは少し訝しみながらそう言っていた。だって、リズにも鍛冶職人としてのプライドがあるから。
満足が行く武器を自分では作れないと思われても不快だ。だからその理由によっては……キリトの時の様になりそうだと考えていた。
 実力行使……?

「ああ、そうだな、そう取られても仕方がない……な。だが、違うんだ。その……上手くは説明できないんだが………」

 男はリズベットの言い方で少なからず理解したようだ。男は、指先でウインドウを呼び出す。

「これは、君にしか頼めないんだ。これまで、色々な所を視て回ったけど、ここ以上な場所は無かった」

 男はウインドウ内を見て、操作しながらそう言っていた。

「えっ?? ……そ、そう?」

 リズベットはその言葉を聞けば少し鼻が高くなる。何せ、この場所に武具店を構えるのに相当に苦労したからだ。自然と両手を腰に当て胸を張っていた。だが、次の瞬間。

 どさっ!! 大きな風呂敷の様なものを男はオブジェクト化、そしてカウンターに広げていた。

「……この場を貸してもらえれば、これを無償で君に提供する。使用の代金も上乗せする」

 そう言うと、次にコル受け渡しの画面を開いていた。リズベットの方に表示される金額が。

――……1,10,100,1000,100000,……。

「……へっ?」

 またまた、女子力を落としかねない言葉が出てしまっていた。数字の端から端までの間。
目線が言ったりきたり。何度も何度も金額を読む、確認する。
 そして、最後には顔を盛大にウインドウに近づけ、目をパチクリと数回瞬きさせながら確認していた。どうやらどうやら……間違い無いみたいだ、数え間違いをしていない様だ。なら変な言葉がでてもおかしくない。総額がそれだけの物だったから。

「にっ……にひゃくまんっ!!??」

 リズは驚きのあまり、今度は目を白黒させてしまった。この物件を買ったのが300万コルだ。しかもあの時はライバルもかなりいて他の物件の相場よりも遥かに高い金額だ。つまり、コレだけの金額があれば一等地のデカイ家が建つ。確か、アスナとレイナが買っているプレイヤーホームが家具を全て含めて、その倍の400万だったと記憶している。

 広いリビング権ダイニングと更に隣接したキッチン。そして恐らくは職人にオーダーメイドしてもらった家具。

 何度か足を運んだことがあるがあれは凄いものだった。最前線で攻略を続けているプレイヤーだからこそ、そして、2人だからこそ貯まり 買うことができる物。と思えていた。だが、その大変さは自分も良く知っているんだ。
 その半分をこの場所を貸すだけでくれる……? そんなの、裏がある気がしてならなかった。

「あ、あ、アンタ、こんな金額を ここ貸すだけでっ!?これだけの金額を簡単に手放しちゃうのっ!!」

 リズは、接客業にも関わらず、思わず素の喋り方になっていた。なぜなら、金はこの世界においての生命線の1つ。それにそもそも、現実でもお金がなければ、生活が出来ないのだから。それを一瞬で……しかも大した事せずにだ。

「簡単……じゃないさ。オレにとってはそれだけの事なんだ」

 男は更にオブジェクト化した風呂敷を広げた。オブジェクト化しなくとも、渡せる事は出来るのだが?と一瞬思ったがそんな事はどうでも良かった。どうやら、貸してもらえるなら提供すると言った物だったからだ。
 
 そして、先ほどオブジェクト化した大きな袋、中から出てきたのは、金属アイテムだった。
 それも……ただの金属アイテムじゃない。鍛冶を生業としている者であれば、誰もが目を見張る代物。

「こ、これって……。!!!」

 リズは再び驚いた。その中にあった一つを見て。それは見間違えるわけが無い。ついつい最近。2日前にも見たものだから。

「くくく……、クリスタライト・インゴット!?」

 そう、それはキリトと共に、入手した金属だった。金属の中でもかなりのレアな部類に位置するものだ。自分の最高傑作である、キリトに作った片手直剣《ダーク・リパルサー》もこの金属で作成したのだから。

「……ん。知っていたのか」

 男も驚いた……とまではいかないが、表情が少し変わっていた。リズは、そのタッチして金属のアイテムを調べもせず外観だけで名を言い当てたから少しばかり驚いていたのだ。

「って、知ってる! 知ってるわよっ! ってか、なにっ!! これ……10コも!?」

 ゴロゴロと袋の中から出てくるのは嘗て苦労して入手した《クリスタライト・インゴット》。
 それも示して10ケ!それを見るや否や、リズは思わず、目の前の男の胸倉をつかんでしまっていた。

「ななななっっっ!!?? あ、あ、あたし達があれだけ苦労したのにぃ、どれだけしたら、こんなにとれんのよぉぉぉ!!」

 そのまま、男の胸倉をつかんでブンブンっと前後に振らす。

「……ッッ!お、落ち着けっ」

 男は初めのうちは、突然の変わりように驚いていたが、直ぐに戻り軽くリズの頭を撫でるようにおいた。その行動にリズは、“はっ”としたようだ。初対面の人に、一体何をしてるんだ、と直ぐに後悔した様で。掴んでいた手を放した開放した。

「ご、ごめん……あまりの事だったからつい……」

 その後、直ぐに謝罪の言葉を口にしていた。

「……い、いや、別に構わない。だが、知っていたんだな。この金属の入手の情報……まだ正確なものは出回ってなかったはずだが」

 突然の行動には驚かされたが……、とりあえず、この金属の事を思い出しながらそう言った。入手できる場所、そしてモンスターの情報は既に出回っている。だが、それだけでは入手する事は出来ないのだ。それは勿論リズも良く知っていた。

「ほんの数日前にこれを取ったんだ。だから知ってる」

 だから、そう答えた。

「なるほど……」

 男は理解したように頷いた。確かに、このアイテムに関しては入手したのだが、正確な情報をアルゴに教えていないからだ。単純に、リアルタイムで全ての情報を渡すのは流石に無理だから。

「そ、それに……インゴットだけじゃない……、鉱石……、それも結晶クラスのものばっかじゃん……」

 そのオブジェクトの中に、素材アイテムで、武器防具の性能を向上……+させる鉱石類もその中に含まれていた。

 そして、その鉱石にも勿論ランクと言うものがある。

 ≪~石≫が最低のランクで、最大なのが≪~晶≫と言う名が付くの鉱石。つまり、それだけ入手するのが大変なのだ。
 それが、どっさりといーーーっぱい。
 仮に、この提供された素材を全額売ったとすれば、先ほどの金額……更に倍はしそうな値段になりそうなのだ。価値だけで言えば……500万コルを軽く超えそう……。下手をすれば1000万の大台に乗る事だって十分ありえる。
 なぜなら、最大クラスの物は簡単に手に入る物じゃないから、勿論非売品。プレイヤーの言い値次第で変化するのだから。

「……確かに、突然の事だから疑うのはわかる。だが、オレにとってそれだけ重要なんだ。……頼めないか?」

 男はリズの考えを読んだようにそう言った。そして、軽く頭も下げていた。

「うぅ~~ん……」

 リズは、そういわれても……と言う表情だった。いきなりの連続で 上手く頭が働かないのだ。そして 何か 裏があったら、と考えれば考える程怖い。
 でも、こんな顔してるコがそんな事考えているなんて思いたくない、と考える自分もそこにはいた。

「……とりあえず、貴方、名前は何て言うの?」

 まずは、名前の確認。それ基本だから。続いて身分証……を。

『………んなもんあるかっ!』

 っとリズは 思わず頭の中で突っ込んでしまっていた。

 そうやって、1人ノリツッコミを頭の中で楽しんでいる時に。

「ああ、そうだったな。オレはリュウキと言う名だ。ここについてはアスナとレイナ、血盟騎士団の副団長達に紹介してもらった。信用問題、と言うなら、2人に連絡を取れば、裏を取れる。簡単だろう?君は2人の友人だと聞いていたが?」

 男……、そう、彼はリュウキだった。彼なら……こんな無茶なやり取りも何処か納得出来る、当たり前の様な光景だと言う事がよく判るだろう。

 でも、そんな変な常識は 知らないリズは、その言葉を聞いて口をパクパクさせていた。

「え、え、え」

 混乱させつつも、リズは、脳内にある攻略組メンバー表をパラパラめくる。
 どう考えても、何度考えても、そのメンバー表で検索?されて出てくる人物は1人しかいないのだ。

「……りゅうき? りゅうきって あのりゅうき?」

 リズは結構時間をかけながらそう聞いた。
 発音がおかしく……まるで、日本語に慣れていない外国人かの様にそう聞いていた。知り合いがいれば大笑い者だろう。

「……どの? とは考えたく無い事だ。……が、まぁ 多分その想像通りだと思う」

 リュウキは、そっぽを向きながらそう返していた。噂されている印象はあまり好ましくないからだ。
等のリズはと言うと。勿論、この名は知っていた。
 ……と言うより、主にあの2人から聞いていたと言うのもある。当然だろう。ハイレベルのプレイヤー達と商売のやりとりをしている。だからこそ……最前線に連なる名前には覚えがあるのだ。流石に姿まではわからないが。

「あの……白銀が、ここに……? 何で?」

 これはこれでかなりのレアな体験だ。キリトとの冒険に負けずと劣らずの。リュウキは様々なところで徘徊……?していると聞いている。
 そして、勿論リズも 初期の頃のあの≪鼠のアルゴ≫の情報の話も知っている。というよりまだ根付いているんだ。アインクラッドの上層には特に。
 
 その≪白銀の勇者≫の話は。

 それに、彼は未踏破の高難易度ダンジョンにも笑って突入すると言うのも聞いた事が確かあった。装備も、プレイヤーメイド品じゃなく、魔物ドロップ品ばかりで武器屋等は必要無いともあった。

「……出来れば、俺の事は普通に名で呼んでもらいたい」

 リュウキは、心底嫌な顔をしながらそう言っていた。リズは、それを見て初めの白銀の事。
その想像とは違う人物だと思った。リズはリュウキと言う人物について、勝手に想像していたんだ。

 アルゴの情報は確かなもの。だけど、ちやほやされてきたら、誰でも調子に乗っていく……って考えていたんだけど。目の前の白銀は。……リュウキは、その想像とは違っていた。
 どうやら、実際には 注目を集めるのは苦手のようだ。

「わ、わかった。じゃあ、リュウキ」
「ん」

 簡単に返事をするとさっきの様な露骨なやな顔はしていなかった。リュウキは表情を緩めていた。

 その表情を緩めたリュウキの顔も……、魅力的に感じるリズだった。
 
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