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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第73話 心の変化と彼女の想い


 この十字の丘に再び静寂が戻る。これでこの場に葬られたグリセルダと言う名の彼女にも安寧が得られただろう、皆がそう信じたかった。

 そんな時。

「………ねぇ?リュウキ君」

 不意にレイナがリュウキに声をかけた。

「……ん? なんだ」

 何処か、不安そうな彼女の言葉、声色だった。
 振り向かず、リュウキは返事をした。

「何で……あの人に聞いたの? あの時。その……《愛情》について……」

 レイナは少し俯き気味でそう聞いた。彼女は答えを聞くのが少し怖いと思っていた。
 グリムロックのそれが……彼にとって愛情の1つだと思われてしまったら? 2人で必死に否定したけれど、彼が……それを信じなかったら……?
 そう思ったら、怖いと思ってしまった。

「………」

 リュウキ直ぐに答えられずに黙っていた。その答え、直ぐに出てこないかったから。なんで、その事をあの男に訊いたのか、判らなかったから。

 そして、暫く沈黙し、考えた後、ゆっくりと口を開いた

「知りたかった……から。それに、オレはあんな感情が《愛情》だと、思いたくなかったから……かな」

 青いその月光を見上げながらそう呟く。そして、レイナとアスナの方を向いた。笑みを浮かべながら。

「……教えてくれて、ありがとう。おかげでオレはまた一つ知れたよ。……あれが決して愛情なんかでは無い……とな」

 リュウキは2人にそういった。そんな大袈裟だよ、とも2人は思えたが、素直に頷く。

「ッ……うんっ!」

 レイナは、顔を赤く染め……俯かせていた表情を起こし笑顔で答えた。

 それは、自分が求めた答えだった。 聞きたかった答えだったから。

 リュウキは、愛情と言うものを 理解したいと思っている事にも、心から嬉しかったから。

「あははは……。ええ、どういたしまして」

 アスナは、2人を見て笑う。後一歩、後一歩で更に リュウキは、そしてレイナも進めるだろうと、思えていた。
 そして、アスナはお返しと言わんばかりに、リュウキに聞いた。

「そうだ、ねぇ? 2人なら……どう思う。もし、君達が仮に誰かと結婚した後になって、相手の隠れた一面に気づいた時」

 それは、アスナは聞いてみたかった事の1つだ。グリムロックの事を認めたくない。だが……。男性はそう言うものなのかどうか、2人で見極めてみたいとも思っていた。
 レイナがリュウキに聞いたのと似たようなものだった。

「えっ!!」
「ん……」

 キリトはまさか、この流れで自分にふられるとは思っていなかったから、思わず声が裏返る。リュウキはただ純粋に、アスナの問いについてを考えていた。

 もしも、自分自身がそう言う感情……理解できて、そして相手にめぐり合えて、結婚と言うシステムを使ったとしたら……?
 わからないが……もし、仮に……万が一でもいい、あったとしたら。

 その時、リュウキはふと、視線を前にやった。別に考えた訳じゃなかったが……レイナと目が合ったんだ。

「ッッ!!」

 レイナは驚いた表情でこっちを見て、そして直ぐに俯かせた。そんなレイナを見て、リュウキは軽く笑った。

「……そうだな」

 キリトはまだ考え込んでいる。まずはリュウキが答える様だ。

「……オレなら、そう言う状況になれたら。それだけでも、そうなれただけでも嬉しいかもしれない。だが……オレには難題だと思うが……」

 そう言ってリュウキは少し表情を暗くさせた。その表情は判るか、判らないか、だけの表情じゃない。その表情には何か……別のものを感じていた。

「リュウキは嬉しいか……。多分そう言うんじゃないかって思ってたよ」

 キリトは、リュウキの表情を見てなかったからかただ、笑っているだけだった。
 アスナはあまり追求しない方が良いと思ったようだ。レイナは……ただ沈黙をしていた。でも、これ以上暗い気分にさせるのも嫌だったからか。

「あはっ……じゃっ キリト君はどうなの?リュウキ君だけに答えさせといてだんまりは、ずるいって思うけどっ?」

 レイナは、精一杯笑いながら、キリトを見て そう言っていた。

「だよね~? レイの言うとおり」
「……だな。確かにフェアじゃない」

 アスナもレイナの気持ちを汲み……笑顔を見せた。リュウキも表情を元に戻して……そう言っていた。

「ゔ……解ってるよ」

 かく言うキリト君は集中砲火を浴びたからか、四面楚歌な気分を味わっていたようだ。少し戸惑い、動揺しつつも……キリトは口を開いた。

「オレなら……ラッキーだった。って思うかな?」
「え?」

 アスナは、キリトのその言葉を聞いて思わず声を上げた。よく、理解し切れなかったからだ。

「だってさ……? 結婚するってことは、それまで見えてた面はもう好きになってるわけだろ?だから、その後に新しい面に気づいてそこも好きになれたら……、に、2倍じゃないですか」

 知的でないにも程がある。と自分自身は思っていたようだ。だけれど、アスナは眉を寄せた後首を傾け、少し微笑んだ。

「ふぅん……。まぁ 良いわ」

 アスナは、答えに満足なのか? 満足じゃないのか?ちょっとわかんないんだけど、とりあえず 笑顔になっていた。

「好きになる……か」

 リュウキは、その言葉を呟く。好き。それは喜怒哀楽……人間の感情の1つ。最も大切だとも言われた事だってある。

「あのねっ? 誰かを好きになるってとっても良い感情……なんだよ// え、えと、知ってて損なんて、ない……からっ!」

 レイナは、リュウキの側に来てそう言った。
 
 レイナはリュウキの事が好きだ、……彼のこと、本当に大好きだって思ってる。

 確かに格好良いって思った。初めて会ったときも勿論。でも……、顔だけで判断するような事は決してない。だから誰構わず好きになる様な事は決して無い。確かに切っ掛けは一目ぼれ、そうかも知れないけれど、リュウキの全てを好きになってしまったと思う。だから……リュウキのことはこの世界で誰よりも知ってる自信はある。
 レイナは頑張ってリュウキを見てきたから、だから判るんだ。

 リュウキは、1人を好むのだけれど、何処か悲しい表情もしている時がある。……そして 何よりも優しいんだ。リュウキが、胸の奥に抱えている何か……それも知った。教えてもらった。

 過去、一緒に仕事をしていた仲間が、仲間と思っていた人たちの画策で、捕まってしまった。彼の言い方じゃ、その人がどうなってしまったのか……考えられるのは少なくない。でも その考えは殆ど良い意味なんて無い。
 そんなの……絶対に聞けない。でも、リュウキは打ち明けてくれた。

 きっと、他の誰にも話しをしていない。恐らくはこの世界で最も長く一緒にいるであろうキリトにも。だけど、リュウキはレイナにだけ打ち明けてくれた。
 レイナは力になりたいとも想っていたから……その事も凄く嬉しかったんだ。

「そうか……」

 リュウキは、ふぅ、っと息を吐き出した。落ち着かせる様に。そんな時だ。

「ねぇリュウキ君? 誰かを好きになるってとても大切な事だよ?」

 アスナは笑いながらリュウキの側へと来た。そして、レイナの肩も一緒に掴んで、互いを寄せ合う様にする。次のアスナの言葉にレイナの表情が一変する事になる。

「ねぇ、レイの事……なんてどうかな?」

 初めは、何を言っているのかわからなかったようだ。所々、からかわれていると言う事はあっても……ここまでストレートに言うなんて事ないから。

「………レイナの事、を?」

 リュウキは、そこまで 意識をしていなかったが、訊かれたままに レイナの方を見た。レイナは、驚愕、と言うより、完全に固まっていた。
 アスナの方を見ながら。 

「…………」

 リュウキは、レイナを暫くじっと見た。

「ッ………」

 リュウキは、少しレイナを見た後 直ぐに顔を逸らせた。その反応を見たアスナは完全に確信した。
 レイナに『キャーキャー! お、お、おねーちゃーんっ!』っと言われながら、ぽかぽかっと叩かれながら、『どうどう!』っとレイナを抑えていた。

 そんな中でも、アスナは間違いないと確信した。リュウキは、きっとレイナに好意を持っていると言う事に。

 その気持ちが、そう言う意味だと言うのはまだわかっていないだけだって思っていた。

「……はいはい。そろそろ、行こうぜ? それにもう最前線を離れて2日も経ってんだ」

 キリトは、子供の様にはしゃいでいる、アスナとレイナの方を見ながらそう言った。

「…………。ああ、そうだな」

 この時は、リュウキはいつもの表情に戻っていた。

 アスナの考え……それは、少し外れていた。彼の内面について、決定的に違っていた。
 
 リュウキは自分自身の脈拍が一気に上昇して行くのがわかる。自分のバイタルデータが……どんどん上昇して行くのがわかる。


――何で、風になるのか?いや、自分は判っている。

 アスナに言われ、レイナのこと、考えてからだ。
 
 いや、この感覚は、以前レイナに抱きしめられたあの時から、『放っておけない!』と言われたあの時から、いつも気にかけてくれていた時から。

 そんな事が重なって……、いつしかレイナの事を、想っていた。……そして、何よりも愛おしいんだ。

(っ……愛……おしい?)

 それは、考えて出てきた言葉じゃなかった。それは、一体どういう意味……なのだろう。
 自然に……リュウキの頭の中に浮かんできたのだ。ここで初めて、この世界に来て初めて出てきた。これがあの感情だと言うのなら。

――……好きと言う感情、リュウキは少し判ってきた。

 それは、とても、嬉しい事だ。けれどそれと同時にある事も浮かんできた。あの時の記憶を。忘れていたあの時の感情を。……絶望したあの時の事を。



「もっ……////もうっ!おねえちゃんっ!!」

 レイナはまだまだ、ご立腹だった様だ。物凄く恥ずかしいからだ。キリトの言葉、聞いてて理解はしたんだけれど……さっきの事で、まだ頭がいっぱいのようだった。

「あははっ、ごめんごめん。見てたらちょ~っとおせっかいしたくなって?だって、レイナ、私よりずっと先に行ってるみたいだし……ね?」

 アスナは軽く苦笑いしていた。レイナはまだ顔を赤らめている。

「さって! キリト君の言うとおり。明日からまた頑張ろ!」
「む~~///」

 とりあえず、レイナも一先ずは落ち着いたようだった。恥ずかしかった反面……少し嬉しかったり、自分で言いたい気持ちだってあるからちょっと怒ったり。いろんな感情が一気にきたから仕方の無いとは思う。

「ははは……、ん? ……リュウキ? 大丈夫か」

 キリトは慌てふためいている2人を尻目にリュウキの方へと行った。アスナの一言で、混乱している可能性だってあるんだから、側にいた方が良いとも思っていたようだ。

「………ああ」

 リュウキは、至って普通だった。心配は皆無か、と思っていたが。

「なぁ、……キリト」

 リュウキはキリトの方を向くと、一瞬、ほんの一瞬表情が暗くなる。

『……誰かを好きになるって、辛いんだな』

 リュウキはそう言った。

「え……?」

 キリトははっきりと聞こえたワケじゃない。ただ……、その声には悲しみや寂しさが篭っている様に聞こえてきた。だから、キリトはリュウキの顔を直ぐに見た。

 だけど、彼の表情はいつも通りの表情だった。いつもの彼の表情だったんだ。

「大丈夫だ。行こう」

 リュウキはそう一言だけ言うと、アスナとレイナの方を向いた。

「……そろそろ行くんだろ? まだ、あいつ等がまだ付近にいないとも限らない」

 リュウキは2人に笑いかける。リュウキは、2人にその理解した気持ちを、それは決して言わなかった。

「あっ……///そ、そうだねっ! うんっ!!」

 レイナは、慌てて頷く。そんなレイナを見てアスナも微笑みつつ、一緒に歩いていた。

「……だな。行こう」

 キリトも頷く。リュウキの事、正直少し心配だった。だけど、今はいつものリュウキに戻っている。だから、大丈夫だとキリトは思っていた。


 そして、4人揃って、戻る時だ。

「ッ……!!」

 まず気がついたレイナだった。その不可思議なものに。レイナが振り返り見たのは…… 明確な理由はない。言うならば、そう何気なく……だ。朝日の光が丘を照らしていた。

 その……、グリセルダさんが眠っている墓にも。

 その神々しい光の中で、女性が立っていたのだ。それは、決して、幻じゃない。
 間違いなく……、彼女は立っていたんだ。

「どうしたの? レイ?」

 驚き、凝視していたレイナに気づいたアスナ。その視線の先を見てみる。

「ッ……!!」

 アスナも……その存在に気がついた。2人の様子から、男性陣も気がついた。

 この世界では、アインクラッドではあらゆる感覚情報はコードに置換可能なデジタルデータである。だからこそ……心霊現象というものは存在するはずが無い。
 よって、今……4人が見ている者はサーバーのバグか、或いは生体脳が生み出した幻覚。というものになる。だが……4人同時にその様な現象が起こるとは考えにくいのだ。

「……あの瞳は」

 リュウキは、今まさに目の前に存在しているその存在の目を見た。……何人か知っているメンバーに共通する強い光。必ずいつか、この世界を終わらせようとする意思を秘めた攻略者の瞳。
 
 それを見たその時……、≪彼女≫の表情が変わった。

 穏やかな微笑を浮かべていた。そして黙したまま見つめていた。
 そして何かを差し出そうとするかのように、開いた右手を皆に向けて伸ばした。自然とその差し出された手に答えるように皆同時に右手を差し伸べ、4人の掌にほのかな熱を感じた瞬間、きゅっと握り締めた。その温度が体を流れて胸の奥に火を灯した。

「……間違いなく。存在しているな……。幻なんかじゃない。この温もりは……」

 リュウキは、そのぬくもりを胸にしまうように……手を胸の辺りに持っていった。その温もりが雄弁に語ってくれた。
 この人が、何を求めているのかを。

「……ああ。あなたの意思は、オレ達が確かに引き継ぐよ。いつか必ずこのゲームクリアして、みんなを解放してみせる」
「ええ。……必ず。約束します」
「だから……見守っていてください。グリセルダさん」

 皆の囁き、それが夜風に乗って……彼女にまで届いた。リュウキも頷き……そしてそっと胸に拳を当てた。リュウキは無言だが、その仕草、表情はこう言っているように見えた。

『後はオレ達に任せてくれ』と。

 それらを見たグリセルダは、透き通るその顔に、にっこりと大きな笑みがこぼれ出た。その次の瞬間には、そこには誰もいなかった。皆、手を下ろし、暫くその場に立ち尽くしていた。
 そしてやがてアスナがキリトを、レイナがリュウキの右手を握り微笑んだ。

「さ、帰ろ。明日からまた、頑張らなきゃ」
「だね! しっかり今後の攻略の対策もしようねっ? 皆っ」

 笑顔を見せる2人。その笑顔に答えるようにリュウキもキリトも表情を緩めた。

「ああ、今週中に今の層は突破したいな。だからこそ……」

 キリトはリュウキの方を見た。何かを期待する様に。

「……ああ、判っている。たまには最前線の攻略にも優先的に精を出さないと……な」

 リュウキもキリトの言おうとした事を理解して、頷いた。
 
 ……リュウキは、このアインクラッドのほぼ全層を闊歩している。だが、以前にも説明したとおり、それは各層を視て回ることで様々な情報を発信する為だ。だからこそ、最前線でのマッピングにおいては、そこまで貢献はしていない。でも、その事で攻略組でそのリュウキの行動を非難したりするものはいない。
 中層プレイヤー達の糧になっていると言っても良いのだから。だから、そんな彼が範囲を最前線に絞って集中したら……?

 それはきっと、多大な成果を残すに違いないとこの場の3人は思えていた。攻略の速度だってずっと早くなると。

 そして、キリトとリュウキは互いに拳を合わせていた。

「あはっ……これって、白銀と漆黒。再び、って事だね?」
「私達も負けてられないよ? レイ」
「うんっ! 勿論!」

 紅白の色の2人、彼女達も白銀と漆黒の2人に習い、固く拳をあわせた。

 そして、朝日は昇ってゆき、神々しい朝日に丘が包まれていった。

――……全ての闇が晴れた。

 そう思える景色が 広がっていくのだった。

 
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