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ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか

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特訓と……

 
前書き
んー、なんか強引な感じになってしまった。どうもすみません 

 
「ああ゛?」

「は?」

翌日のことだった。
まだスウィード達が戻って来ていないため、ホームにいても暇なだけだった俺は特にこれといった用もなくぶらぶらとおらりおの街をさまよっていた。
士のとこに行こうにも、【アレルヤ】の新しいのを受けとるのは明後日になっているため今行っても仕方ない。
暇潰しとして士をからかいにいくのもありだが、作業中のあいつはマジギレしてマジで怖い。余計なことをするのは自重しなくてはならない。

で、だ。
宛もなく歩き回っていると、ちょうどこいつと出会っちまったってわけだ。

「ちょうどいい。おい、紫野郎。これから付き合え」

「出会い頭に何様だよお前」

こいつーーベート・ローガーーは俺の質問を無視して踵を返すと、元来ていたであろう道をまた戻り始めた。
ついてこいということなのだろう。反応と態度に少々イラッときたが、大きな心で接してやろう。こういうのはどちらかがこうしないと話が進まないのだから。
それに、こちらも何か用事があったという訳ではないため、まぁつきやってやらんでもない。
本音いうとリューさんと付き合いたい。意味が変わるけど


ずんずんと進んでいくローガの後を追って、俺も少しだけ歩みを速めた。
終始無言のローガに、何をするのか聞いても無駄だと悟った俺は黙って歩く。

進めば進むほど人通りは少なくなっていき、やがて全く人がいないところまで来た。
オラリオにやって来てから早五年。俺もこんなところに来るのは初めてだった。

「こっちだ」

周りを見渡してほへぇ~としている俺の前方で、ローガがこちらを見ずに通路を曲がる。
見失わないように慌てて後を追うと、目の前には大きな倉庫。
もう使われていないものらしく、少し老朽化が進んでいた。

男二人。人気のない倉庫。
こいつはここを発展場にでもするつもりなのか?

と、まぁふざけるのはここまでにしておこうか。

躊躇いなく中へと入っていくローガに続いて俺も中へと足を踏み入れた。

外の見た目から、中も同じようなものかと思っていたのだが、外見に反して、なかなかきれいであった。
所々何かで破壊されたような後が見られるがそれもあまり気にしなくていいものである。

「で? なんで俺はこんなとこに呼び出されたんだ?」

目的地には着いた。なら、もう本題に入っても構わないだろう。
俺は思っていた疑問をローガにぶつけた。

「特訓に付き合え」

「……は?」

まさかの返答にマジトーンの声が出てしまった。

「あー、つまりあれか? 前の一件で火でも着いたのか?」

「んなことはどーでもいいだろうが。さっさと構えろ」

おかしいな。まだ俺一言もやるとは言っていないのだが……

ローガの脚に装着されたメタルブーツが鋭い光を放った。どうやら、あちらさんは俺の事情がどうであれ止めるつもりがないらしい。何という理不尽。

だがまぁ、ちょうど暇していたところだ。断る理由はないし、こいつとは一度手合わせしてみたかったってのもある。
こちらとしても願ってもない申し出……というわけでもないのだが、別に構わないという様子で【物干し竿】を構えた。

「……てめえ、本気でこいよ」

「もちろん、そのつもりだぞ?」

「ほざけ。槍が本気だって言ってただろうが」

どうやら、食料庫(パントリー)で俺が話したことを覚えていたらしい。
だが、あいにく、【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】も【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】もホームに置きっぱなしだ。念のためと思って持っていた【物干し竿】しかないのだ。

「まぁそうだけど。けど、俺はこれの腕もなかなかだと自負しているぞ? 少なくとも、お前に負けることなぞありえんしな」

「はっ、上等。その自信、へし折ってやらあ」

その言葉を合図に、長刀とメタルブーツがぶつかり合い、甲高い金属音を辺りに響かせた。


ーーーーーーーーーーーー


「ガルァアア!!」

「シッ!!!」

空中からの踵落としを刀で弾くことで軌道を反らすと、返す刀で斬りかかる。
だがローガはこれを手甲で受け止めた。

こんなやり取りがもう一時間以上も続いているのだ。それも全てがすべて俺を殺しにかかってくる威力のこもった一撃だ。もろで喰らえばLvの差はあってもただではすまない。
まぁ、俺もそれに答えて、殺すつもりで斬りかかっているのだが

「ダラァアッ!!」

「チッ!!」

今度はこちらから攻めてかかる。
袈裟斬りからの横薙ぎ。連続で二撃をローガに叩き込もうと刀を振るう。
がしかし、ローガは最初の袈裟斬りを脚を振り上げることで迎撃。続く二撃目を放てなくなり、尚且つ体勢を崩してしまっていた俺はやむなく後退。その直後、俺がいた場所にローガの踵落としが炸裂した。
倉庫の床が弾け飛ぶ。

「さっさと一撃喰らえや!!」

「そのまま返させてもらうぞ!!」

お互いが駆けたことで、俺が先程取った距離が瞬く間に消失する。
薙ぎと回し蹴りが交錯したかと思えば、次には斬り上げと踵落としがぶつかり合い、更には蹴り上げと上段斬りご弾かれあう。
第三者から見れば、どうなっているのかと視認することさえ困難だと思われるこの攻防。
お互いの敏捷値が高いからこその動きだ。
一瞬でも気を抜けば一撃をもらうであろうこの緊張感も半端ではない。

刀で蹴りを防ぐ傍ら、チラリとローガの顔を確認すると、顔の左の刺青が歪み、獰猛な笑みを浮かべていた。

多分だけど、俺もこいつと同じような顔になっているんじゃないかと思う。
だって、意外と楽しいんだもん。これ

幾度となく刀とメタルブーツが金属音を響かせあう中で、俺はもう一度距離を取るためにバックステップ。
一度、こいつをひびらせてやろうじゃないか

半身の構えをとり、刀の峰と地を平行にして構えた。
ローガは逃がすかとばかりに距離を詰めようと俺に向けて駆けた。
なら、俺がやるのは迎撃だけだ。

「秘剣ーー」

ローガが加速し、渾身の回し蹴りが放たれる。
……が、俺のほうが早かった。

「燕返し!!」

三つの円弧が描かれる。
上から右から左から。都合三太刀の攻撃がほぼ同時にローガに襲いかかる。

「ッ!?」

流石にこれには驚いたのか、ローガの目が見開かれる。

「んのっ……!!」

迫り来る三つの軌跡を前に、ローガは攻撃寸前だった脚を無理矢理止め、間合いから逃れようと後ろに跳んだ。
だが、【物干し竿】と呼ばれるこの刀は長さ一,五M以上もあるのだ。そう簡単には間合いから逃れられない。
燕返しは、攻撃途中だった右足、左腕、そして胴を斬り裂いた。
まぁ、手足は装備を傷付けただけに止まり、胴の傷も浅かったが。

「……浅かったか」

「てめえ、紫野郎、今何しやがった」

「答えるわけがねえだろ」

刀を担ぎ、こちらを睨み付けてくるローガに睨み返す。
次はどう動こうかと【物干し竿】を構え直したその時だった。

「ほう、こりゃまた珍しいこともあるもんじゃ」

声がしたのは俺たちが入ってきた入り口の方。
そこに立っていたのは逞しい体つきをして、髭を蓄えた老人のドワーフだった。

「……じじい…特訓にはまだ時間があるだろ」

え、お祖父さんなの?

「何、時間が余ったからの。こちらから出向いてやろうと思ったんじゃが……面白そうなことになっとるわい」

ローガにじじいと呼ばれた人物が此方に視線を送った。
その瞬間察する。この人、【ロキ・ファミリア】の【重傑(エルガルム)】だ。

俺と同じLv6のドワーフ、ガレス・ランドロック。【ロキ・ファミリア】の古参にして幹部のこの男をこの都市で知らないというものはいないだろう。
……いや、そもそも【ロキ・ファミリア】の幹部で知られていないという人物はいないのではなかろうか、

「しっかし、あの小僧が他派閥のもんと特訓とはのぉ……」

ゴツい体を揺らして笑うガレスさん。それを見て「うっせえな」と悪態をつくローガ。この状況にどう反応すればいいか分からない俺。

「お初お目にかかります。【バルドル・ファミリア】所属、ナンバ・式と申します」

「おお! お主があの【秘剣(トランプ)】か! ガレス・ランドロックじゃ。うちのもんが世話になっとるの」

「世話に、というか、今日いきなり付き合わされたんですけどね……」

「んなことはいい。じじい、てめえはまだだ。こいつとのが終わってからにしろ」

そこでローガが割り込んでくると、シッシ、とガレスさんにここから出けとでも言いたげな様子だった。

「まぁ待て。せっかくじゃ。儂も今から特訓に付き合ってやろう」

そういうと、どこにあったのかガレスさんが巨大な戦斧を担ぎ上げた。

……え、マジで?

「そうじゃの……小僧は傷を癒しておけ。その間はこやつと儂で特訓しておくとしよう」

「おいじじい! なに勝手なこと抜かしてんだ!」

「そ、そうですよ! そもそも、この狼の特訓なんですから、俺とあなたがやっても意味がありませんよ!」

「いいじゃろうが別に。それと小僧。お主が皆に黙って特訓しとることを儂から話してやってもいいのじゃぞ?」

え、お前黙って特訓とかやってたの?

視線をローガに移せば、グギギギ、とガレスさんを睨み付ける狼の姿。
なにこいつ、ギャップ萌えでもねらっているのか? なにそれキモい

男のツンデレとか誰特なの? って感じとおなじだなこりゃ

「……早くしろよ……」

許可出ちゃったよ! 俺の意思と関係なしで!

「うむ、そうじゃの……お主、極東出身じゃろ?」

「え? あ、はい。そうですけど」

「なら話は早い。相撲を取らぬか? ロキから聞いた極東の組打ちの一種らしいが、知っとるじゃろ」

「まぁ、はい。知ってますけど……」

そうか! といって嬉しそうに大戦斧を立て掛けるガレスさん。
この人、マジで俺と相撲をとるつもりらしい。
いや、見た目からしても敵うわけないっしょこれ。明らかに耐久と力の特化したお人にどう戦えと?

「……俺、やるといった覚えないんだけどなぁ……」

はぁ、とため息をつきながら渋々俺も【物干し竿】を立て掛けた。
前世じゃ、小学校低学年くらいまでは大会とか出てたってなぁ、と思い出す。確か、親の影響で時おりテレビで見ていた気もする。

遥か昔の記憶をしみじみと思い出しながら俺は目の前のガレスさんを見た。
……もう四股踏んで準備万端のようだ。足が地につくたびにドシンッ、と体に響く程の衝撃。

もうやけだよコンチクショー

蹲踞の姿勢をとり、胸を張る。

「ん? 坊主、それは何じゃ?」

「まぁ、相撲やる前にとる基本の姿勢ですね。精神統一のための姿勢なんですよ」

「ほお、やはり極東出身のものは詳しいの。どれ」

そう言って俺の真似をするガレスさん。体格のこともあってか、迫力がヤバイです。
んで、そのまま八卦よい。

ガレスさんが動いた瞬間、俺は横にとんだ。変化である。
正直、あんなゴツい体を真正面から受けて無事でいられるとは考えられない。
なら、受けなきゃいい。そう考えて変化を取ったのだが、それに反応してのけるガレスさん。
……え? まじで?

そのまま取っ組み合う形に持ち込まれた。

「なかなかいい動きをしとるな」

そして持ち上げられそうになるのを必死で食い止める。同じLv6だが、力のアビリティの差がありすぎる。この間の一件からまだ【ステイタス】の更新を行っていないため、俺の力のアビリティはIのままだ。

「ヌウゥンッ!!」

「ヘブッ!?」

で、結局は投げ倒された。

結構頑張ったんだけどなぁ……

「ガハハハ! なかなか良かったぞ。また頼みたいもんじゃな」

「か、勘弁してくださいよ……」

「おい、紫野郎。次は俺だ。早く立て」

こいつ、ほんと何様だよ!?

その後、ガレスさんとも武器を取っての特訓をすることになってしまい、何故か【ロキ・ファミリア】の遠征までの間成り行きで付き合わされることになってしまった。




ーーーーーーーーーーーー




「た、ただいま……」

俺がホームに戻ったのは夕方、それもほとんど陽が沈みかけている頃だった。
ローガならともかく、ガレスさん強すぎワロタ

とりあえず先にシャワーを浴びた俺は部屋着に着替えてリビングへ。
現在ハーチェスさんとエイモンドさん、それにバルドル様と俺を含めた四人しかいないホームは、ものすごく静かに感じられた。

「あ、お帰り式」

「おお、自分。邪魔しとるで」

「………………はい?」

なんかいた

正確にいうとロキ様がいた。

いや、なんでいるの

「ちょうどええわ。本人も来たことやし、本題入ろか」

「やっとかい。三本も飲んじゃってさ……」

はぁ、とため息を吐くバルドル様の視線の先には高そうなお酒のビンが空になって転がっていた。
……あれ、デルガさんの秘蔵の酒じゃなかったっけ?

バルドル様の後ろのハーチェスさんも苦笑いだ。恐らく、帰ってきたときのデルガさんのことでも考えているのだろう。
……俺、しーらね

「ナンバ・式。待ってたよ」

そしてロキ様の後ろにいるのは小人族(パルゥム)の男。
勇者(ブレイバー)】、フィン・ディムナその人であった。

「……ちょっとハーチェスさん。これ、どういう状況ですか?」

俺もバルドル様の背後につき、ハーチェスさんの隣に並ぶとそっと小声で尋ねた。

「ぼ、僕もさっぱりだよ。突然やって来て、ずっと君が帰るのを待ってたんだから」

と、こちらも小声で返してくる。
どうやら、今からその本題に入るみたいだ。

「単刀直入に言うで。バルたんとこの【秘剣(トランプ)】君を今度の遠征に同行させたい」

「……はぁ?」

何を言ってるんだというバルドル様の声が溢れた。

「ちょっとロキ。自分が何をいってるのかわかっているのかい?」

「まぁ話は最後まで聞いてやバルたん。ちゃんと理由はあるから」

「理由、ねえ……それはこの間の事と関係あるのかな?」

「お、鋭いなバルたん。まさにその通りや」

フィン、とロキ様は控えていたフィンさんに事情を説明するよう求めた。
神の前で子は嘘をつけない。だからこそこの手段を取ったのだろう。なるほど、信用はしやすくなる。

フィンさんの話をまとめるとこうだ。

今回の遠征で、【ロキ・ファミリア】は五十九階層まで攻略(アタック)するつもりでいるらしい。
そこまではいいのだが、例の食料庫(パントリー)の事件で、あのレビィスという女がアイズにこう告げたのだとか。
『アリア、五十九階層へ行け。ちょうど面白いことになっている』

「……なるほど、今回の騒動に関係はあるのか」

「せや。今のダンジョンは何やよう分からんことになっとるからな。うちらの眷族()なら大丈夫やとは思うんやけど……こう、何かイヤーな感じがすんねん」

「神の勘ってやつかい?」

「まあな。こな騒動に関わってんのは他にディオニュソスんとことヘルメスのとこがあるけど、深層には力不足や。あっこは第一級の冒険者やないとキツイ」

「……で、式に白羽の矢がたったんだね」

バルドル様がチラリとこちらを見るが直ぐに視線をロキ様に移した。

「一応、この件に関してはうちらは協力体制やろ? 戦力が増えるのは助かるわや」

「君はそれでいいのか? ファミリアの威信をかけた探索だと思うんだけど」

「うちにとったら、眷族()の方が大事や」

そう言ってのけたロキ様の目は真剣そのものだった。俺が視線をフィンさんに向けると、向こうも此方に気付いたのか、コクリと頷いた。

「今回の遠征はファイたんとこの鍛冶師(スミス)の子らもついてきてもらう。【バルドル・ファミリア】とも合同ってことにするしな」

どや? と、ロキ様はバルドル様と、そして俺の方にも顔を向けた。

「……バルドル様、俺は受けてもいいと思います」

「……そうかい?」

「はい。俺としても、まだ見ぬ深層を見てみたいという気持ちもありますしね」

「……分かった。許可しよう。けど、無茶は禁物だ。ロキも、式のことを頼む」

「ありがとうございます」

「安心し。フィンに任せれば大丈夫や」

話が終わると、ロキ様とフィンさんは自らのホームへと帰っていった。

さて、遠征は八日後だ。それまで、特訓は続けなくちゃな



 
 

 
後書き
ちょっと無理矢理過ぎたかなとおまっております。気に入らない人がいたのならご免なさい。
でも、どうしてもこうしたかった!
なんか、最近自派閥の話が成りを潜めてしまっていますが、これが終わったらちゃんとやります! 
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