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Tales Of The Abyss 〜Another story〜

作者:じーくw
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#22 タルタロスへ強制連行


 色々な()を負ったけれど、ライガ・クイーンとの戦いも終わったど、ジェイドと合流した一行は、チーグルの住処である あの大木へと戻っていった。

 そしてその道中 ライガの女王を倒したからか、無数に現れていたライガが全く現れなくなり、比較的早く戻る事が出来たのだ。




~チーグルの住処~


 事の顛末は、ミュウを通して、チーグルの長老にそして 仲間達に伝わる。ミュウは、全てを伝え終えると、ソーサラー・リングを長老に返した。
 その彼らにとって、大きなリングが再び長老の元に戻った。

「話しはミュウから聞いた。ずいぶん危険な目に遭われたようだな……。 2000年を経て…… それでも尚、約束を果たしてくれた事 感謝している」

長老は一族を代表して頭を下げた。確かにライガの女王の1件は、あまり良い想いはしなかった。歪んでいたとは言え、全ては家族を守る為に戦っていたのだから。でもライガの驚異が去り、多くの仲間達の犠牲が亡くなった。間違いなく助かった命も存在する。それで、少し心が軽くなる想いだった。

「いいえ……! チーグルに助力する事はユリアの遺言ですから。気にする事はありません」

 イオンは笑顔だった。彼らが助かった事が嬉しいのだろう。……ライガの事は複雑でも 人間達が襲われてしまう事を考えたら、致し方ないから。

「しかし…… 元はと言えば、このミュウがライガの住処である森を燃やしてしまったことが原因じゃ……。故にミュウには償いをしてもらわねばならん!」
「みゅう……」

 ミュウは視線を落とす。だが、そればかりは庇えない事だ。ミュウが燃やさなければ、ライガがこれ程近くにまで、来なかったかもしれないから。でも、来た事で、人間を好むライガ達の子供を一掃出来た事も考えられるだろう。

 全ては長老に従うのが一番だ。とイオンもアルもそう思っていた。 
 
 だけど、次の長老の言葉で驚きを隠せられない者がいた。

「従って――。 ミュウの処遇はルーク殿にお任せする」

 その言葉を訊いて、ミュウは一気に元気になった。目を輝かせ、飛び跳ねている程にだ。
 驚きを隠せられない、のはミュウも同じだが、何よりもルークだった。

「はぁ!?」

 その表情は、驚きと同時に『何言ってんのお前?』と言っている様な表情だった。

「……聞けばミュウはルーク殿に命を救われたとか。 故に季節が一巡りするまでの間ミュウはルーク殿にお仕えする」

 そう言い終えると、先ほどまでぴょんぴょんと、飛び跳ねていたミュウは、その方向を変えて、ルークに飛びついた。

みゅみゅ(よろしく)みゅう!(ですの!) みゅーみゅ!(ごしゅじんさま!)

 嬉しそうに、ルークの頭に飛びつくミュウ。だけど、ルークは納得していない。

「だー! 頭に乗るな! オ……オレはペットなんかいらねーっての……!!」

 迷惑そう……には見えない。楽しそうに騒いでいた。助けた時の事を思い出していたのだろう。涙ながらにお礼を言われた事を。

 そして、そんな2人を見ていた他のメンバー達は。

「連れて行ってあげれば?」
「そうだよルーク。チーグルって、聖獣って言われているくらいだから、ルークに仕えると知ったら、家の人もびっくりするんじゃないかな? 勿論、良い意味でさ!」
「その通りですね。きっとご自宅では可愛がられますよ」

 ルーク以外の皆は、賛成派の様だ。自分の所に来る訳でもないのに……、と思えるが、恐らく誰がミュウを助けても、誰にミュウが仕えるとしても、断る者はいないだろう。ジェイドは……、ちょっと微妙だけど。

 ミュウは目を輝かせながらルークを見つめていた。

「う……うーん。なら ガイたちへの土産ってことにでもすっかなァ………」

 結局、最終的に折れたのはルークであり、こうしてミュウはルークのペットとなった。

「長老への報告は済んだようですね。では、行きますか」

 ジェイドは、話が終了したのを見届けると、早速外へと向かっていった。勿論、他の皆も頷き ジェイドの方についていった。

 ルークは、まだ不満そうだったけど、1度うんと言った以上は、もう嫌だと文句は言わなかった。




 そして 元来た道を戻っていき、ライガがいなくなり敵が少なくなったこの森を問題なく抜け、その入り口に差し掛かった時だ。

「イオン様ぁ~!! アル~~!! 大佐ぁぁ~~!!」

 聞き覚えのある声が入口の方から聞えてきた。結構大きな声で、森に響いた程だ。

「お? あの子、お前の護衛役じゃないか?」
「はい アニスです。」
「あ、ほんとだ。 護衛役なのに離れちゃマズイんじゃない? って思うのは俺だけなのかな?」

 ルークがイオンに訊いて、そして アルが監督不行き届き、と苦笑いしていると、アニスはダッシュで、コチラ側へと走ってきた。そして、アルに顔を思い切り近づけると。

「イオン様は気がついたらどっかいっちゃうんですーーー!! わたしのせーじゃなーーい!」

 思い切り反論をしていた。アルとアニスの距離はまだ、大分開いていた筈なのに、アニスは反論をしてきた。つまり。

「聞えてたの……?」

 アルはやや、驚き アニスの勢いのせいか、身体を引きながら、そう聞いていた。

「もっちろーん!! もう、アルってば!! 私そんなに無能じゃないわよ! すーぐ居なくなっちゃうイオン様の守護、してきてるんだから!」

 アニスは随分とご立腹の様だ。ただ、自分の考えを言っただけなのに。と言えば多分まだ怒ると思うから、アルは口を閉じた。

 だけど。

「改めて・・・お帰りなさーい♪ 3人ともっ♪」

 すぐに元通りに戻る。演技をしていたのかな? と思える程の変わり身の早さで。そんな事をいちいち突っ込んだら、長くなる事をジェイドは知っているのか、本題に素早く、自然に入る。

「ご苦労様でした アニス タルタロスはどうですか?」

 それを訊いていた。タルタロスは、移動手段だから、訊いたのだろうか? エンゲーブの傍に停泊していた筈だけど、とアルは思っていたが。

「ちゃんと森の前に来てますよぅ!大佐が大急ぎでって言うから特急で頑張っちゃいましたぁ!」

 そうアニスが答えていた。確かに、森周囲は、それなりに広い平野。タルタロスを留めるのも、問題ないだろう。でも、何で態々ここまで乗ってくる必要があるのだろうか。

 その答えは直ぐにやってきた。


 森の中に無数の、規則正しい足音が響く。アニスの後ろから、沢山の軍人が、軍隊がやって来たのだ。瞬く間に、その軍隊は連携を取り、ルークとティアを四方を包囲していた。 
 森の中に逃げる事も、他の場所に逃げる事も出来ないだろう。


「―――えッ!? 何だこれ!! どーなんてんだよ??」
「さ……、さあ…… 俺は聞かされてなかったからなんとも…… ってかオレもかな? 黙って出てきちゃったし」

 ルークは騒ぎ出し、流石にアルも予想外だったので、動揺していた。あのエンゲーブから出るな、と言われた事を破ったのは、事実。それくらいで、と思えなくもないけれど、現に包囲されてしまっているから。

「いえ、アル。貴方は関係ありませんよ。拘束の対象は、彼らです。 彼らは、正体不明の第七音素(セブンス・フォニム)を放出していた疑いがあるのです。タルタロスの検知器にも反応がありました。 ……よって、貴方方を拘束します」

 そう言うと軍隊のメンバーが取り押さえに入った。逃げられない様に、数の利を活かし、あっという間に拘束されてしまう。

「ジェイド!? 2人に乱暴な事は……」
「そ、そーだよ。ルーク達はイオンを助けてくれた人たちだよ!? 酷い事するのはあんまりだよ」

 突然のことだ。アルはちょっと動転していた。イオンはまだ落ち着いていたようだけど抗議をしていた。軍隊の事に首を突っ込むのも、どうかと思うけれど、ここまで一緒に戦ってきた人達に酷い事をするつもりなら……、黙っていられなかった様だ。

「2人とも落ち着いて下さい。 何も殺そうというわけじゃありませんよ。……勿論、2人が抵抗しなければ、ですどね」

 そう言うと、、軍隊のメンバーに指示を出す。

「連行せよ」

 一言命令を発し、そのまま戦艦タルタロスへ強制連行となった。ルークもティアも 抵抗は無駄であり、寧ろ状況を悪くさせると判断した様で、大人しくして、タルタロスへと入っていった。






~戦艦タルタロス~


 2人を拘束すると、直ぐにジェイド直々に尋問に入った。

「2日前に起きた第七音素(セブンス・フォニム)の超振動はキムラスカ王国王と方面から発生。 マルクト帝国領土タタル渓谷付近にて収束となります。 超振動を起こしたのが貴方達ならば、不正に国境を越え マルクト帝国領内に侵入したことになりますね……。不法侵入罪となってしまいますよ」

 因みに、この尋問を集中的にしているのは、ルークの方だ。ティアは元々身分はイオンが分かっていた為すんなり素性は判ったから。問題はルークにあった。

「ティアが神託の盾(オラクル)騎士団の人間だということは判りました。……ではルーク。貴方のフルネームは?」

 ジェイドの言葉を訊き、少し間を空けて、ルークは答えた。


「――……《ルーク・フォン・ファブレ》 お前らが以前、誘拐しようとして、失敗したルーク様だよ」


 その話を訊いて、場が騒然となる。

「え……? ファブレってたしか………」

 アルには、聞き覚えがはっきりとあった。世界情勢の話や歴史でも あったからだ。
 大体判ったという感じのアルの顔を見て、ジェイドは笑った。今はルークの尋問の時間だと言うのに。

「……貴方の勉強熱心ぶりには本当に驚かされますね。はい。教本にも書かれている程、有名人です。 キムラスカ王室と姻戚関係にあるファブレ公爵のご子息ってことですね」

 ジェイドがそう言い終えると同時にアニスは目を輝かせた。

「公爵!?ステキ~~♡」

「「ルーク……」」

 そして、イオンとアルは心配そうな表情で見ていた。明確に敵国(キムラスカ)の人間だと白状したからだ。少しくらい、言葉を濁してもいい部分をはっきりと。
 ……ジェイドであれば、無意味になってしまうと思えるが、それでも心配になってしまうのは仕方が無いだろう。

「……敵国の王室関係と神託の盾(オラクル)騎士団の人間が共謀しての不正入国ですか。 ……いよいよもって、ただの物見遊山とは思えませんね。……それに誘拐とは? 随分と穏やかではありませんが」

 ジェイドは続けて、更に尋問を進め様とした時、ティアが一歩前に出た。

「ジェイド大佐! ……今回の件は偶然発生した超振動で、私たち2人が飛ばされてきてしまっただけです。 ファブレ公爵家のマルクトへの敵対行動ではありません もちろん神託の盾(オラクル)騎士団も無関係です!」

 ティアがそう強く訴えたのだ。アルは直ぐ横でいて、その強い口調と声量、そして何処か慌てた様子なのを訊いて驚く。

(……あの冷静なティアさんがこんなに、慌てるなんて。ひょっとしてその……超振動って言うのの、きっかけは、ティアさんなのかな……?)

 自分のせいで、巻き込まれたのだとしたら、確かに庇うだろう。それが、ティアであれば尚更だ。短い時間だけど、とても誠実な人なのだという事は、アルにも判っていたから。

 そして、話を訊いていたイオンが口を開いた。

「ジェイド。……ティアの言うとおりでしょう。彼らにそのような類の敵意は感じられません」

 イオンがそう言ったのに続けて、アルも答える。

「オレも、イオンに賛成だよ。……だって、そもそも ルークは、敵国であるマルクトに単身(2人だけど) 乗り込んでくるなんて…… ちょっと考えにくいし、隠密行動の目的なら、エンゲーブで泥棒するのも、正直、ちょーっと、異常な行動だと思うよ? だって、……メチャクチャ目だってたし」

 アルもイオンに賛成の様だ。だが、その過程の話を訊いたルークは黙ってはいられなかった。

「だー! アレは俺じゃねーつーの!!」
「はぁ……、食料庫のは兎も角、店先の食べ物勝手に食べたでしょ?」

 ティアがルークを落ち着かせる様に、っというか 一言突っ込みを入れていた。このやり取りを見ていたジェイドは、軽くため息をすると。

「……まぁ そうでしょうね。特にファブレ家の御子息の方は温室育ちで世界情勢には疎いようですし?」
「悪かったな! 大きなお世話だ!!」

 ルークを逆なでする様にそう言うジェイド。正に火に油を注ぐの様な物なのだけど、それが好きなのだろう……多分。そして、アニスはアニスで、ルークの事を知ってまだ悶えていた。

 すると今度はイオンが答える。

「ここは、寧ろルークたちに協力をお願いしませんか? 皆さんご存知のように昨今……、局地的な小競り合いが頻発しています。 ホド戦争が休戦してからまだたったの15年です。 このままでは再び本格的な全面戦争へと発展するのも時間の問題です。そこでマルクと王国ピオニー九世閣下は和平条約を提案した親書を送る事にしました。僕はローレライ教団最高指導者という中立の立場から協力を要請されました。 我々は今和平の支社として戦争を止めるためにキムラスカ王国へ向かっています」

 イオンの話を訊いて、色んな単語を訊いてルークは驚く。

「戦争を……? 止める……? てかそんなにヤバかったのか? キムラスカとマルクトって……」

 自分の口で、その言葉を口にして、改めてルークも唖然としていた。温室育ちであれば、世界情勢を全く知らない。ずっと、家で過ごしていたのであれば、平和だっただろうから、知らないのも仕方の無いことだ。

「とは言え、我々は敵国(マルクト)の使者です。そうすんなりと、国境を越えられるとは思えません」

 イオンがそう言うと、変わってジェイドが繋げた。

「……そこで1つお願いがあります。ルーク、貴方の力、いえ その《地位》は今の我々にとって非常に好都合その権力(ちから)をお貸しいただけたい」

 確かに、ルークの助けがあれば、ありがたい。でも、頼み方がマズイと思うのも仕方が無いだろう。だから、アルは若干引いていた。

(凄く、高圧的だね。……敵国相手だし、捕虜にしてもいい状況だから、仕方ないといったら仕方ないんだけど……、ルークにそんな言い方したら……)

 アルの予想。それは全く外れる事は無かった。

「……おいおい、おっさん。その言い方はねーだろ! 大体人にモノを頼む時は頭下げんのが礼儀じゃねーの?」

 嬉しくない事に、全く外れなかった。ルークもルークだ。敵国のど真ん中で、そう強気で言えるのも凄い。

「ルークよしなさい! あなただって戦争が起こるのは嫌でしょう」

 ティアが宥めようとするが、ルークの不機嫌は止まらなかった。それどころか、協力なんかしない。と言いそうな雰囲気だ。

 それを一番感じていたのは、ルークの横にいるアルだった。

(このままじゃ……アクゼリュスが……皆が……)

 考えるのは、アクゼリュスの事、そこに暮らす皆の事だ。協力が得られなければ、救助なんてしてくれる訳がない。敵国であるマルクトの領土になっているから、キムラスカが助ける事なんて、有り得ないのだ。

「ルーク……」

 そう思ったからこそ、アルは、ルークに話しかけた。

「んだよ!」

 気分が悪い所に話しかけたから、ルークは機嫌が悪いままだ。でも、アルはやめなかった。

「その、オレからも、頼んじゃダメ……かな? このマルクトにはオレの命の恩人が…… 大切な人達が暮らしている町があるんだ。……そこは今大変な事態になってる。 事情があって、マルクトからは助けられないんだって。……皆をを助けるにはルーク。君の助けが必要なんだ……」

 アルは、顔を俯かせながら続け、最後には頭を下げた。ルークが言っていた事だ。『人にモノを頼む時は頭を下げるのが礼儀』と。


「皆を、助けてください。大切な人達を、守ってください……。お願い、します……」


 アルは、頭を下げたまま、そう言っていた。下げた頭を戻す様子も無い。

「……ッ!」

 ルークも、突然のアルの言葉に、行動に困惑しているようだ。アルの事は悪い気はしていなかったし、悪意も向けられていない。判らない事は、少なからず教えてくれたりもした。比べられてる気分だった事は、不快だったが、それ以上に 好感部分が多かったのだ。

「アル……」

 イオンは アルを見て 悲しそうな顔をした。今の自分じゃ、彼を、彼の街を助けられない。それが歯がゆかったのだ。あの森で、アルは助けてくれた。命の恩人、と言えばアルだって、イオンにとってみればそうなのだから。

 そして、事態を終息させたのは、まさかのジェイドだった。

「やれやれ……。アルに先を越されましたね」

 ジェイドは、頭を下げるだけではなく、跪いたのだ。

「どうかお力をお貸しください……。 ルーク様」

 ジェイドの行動には、ルークも驚いていた。さっきまで高圧的な態度だったのに、と。そして、ジェイドの部下であるその他の軍人達も動揺を隠せず、驚いたようだった。

 それは、アルの時以上に場がざわついたのだ。

 そして流石に、ここまで言われて、頭を下げられて、断る様な事はルークには出来なかった様だ

「わかったよ。国王に取りなおせばいーんだろ?」

 ルークは頭を掻きながらそう言う。ジェイドはそれを訊くと、まるで待ってました! と言わんばかりに、スっ! と立ち上がり。

「いやぁ、助かります! そうと決まれば急ぎましょう!」

 本当にさっきの態度は、なんだったのだろうか? 七変化? とも思える程の速度。流石のルークも怒るどころか、呆れ返ってしまっていた。

「……いい性格してんなアンタ」

 だから、怒る代わりにそう言っていた。

「……ルーク。本当にありがとう」

 アルは、頭をゆっくりと上げると、ルークを見て再び礼を言った。。

「べっ……、別に、大した事でも、なんでもねーよ! んなこと!!」

 アルからの礼には、流石に照れるのだろう。あからさまに 逸らしていた様だが、バレバレだった。アルも、ルークを見て微笑んでいた。


(アルにも色々あったのね……)

 ティアは、そんな2人を眺めながらそう思っていた。本当に不思議な人だとも、同時に思う。見た事もない譜術を操り、そして 記憶が無いのにも関わらず、一般常識とは言え、博識ぶりを見せる時がある。
 そして、先ほどの行動も、そうだった。

 ティアは、彼の力になれれば、とこの時から、思う様になったのだった。





「さぁ ぐずぐずはしていられませんよ。大詠師派の邪魔が入りかねません」

 ジェイドがそう言うと、ルークが反応した。判らない単語が飛び出したからだ。

「大詠師派って?」

 ルークが首を傾げつつ、アルの方を見る。アルも、う~ん、と唸っていた様だが、 答えが帰ってくる事は無かった。

「ごめんね……、ちょっとまだ勉強不足だったみたいで。そこまで詳しくは。ローレライ教団っていうのは判るんだけど」

 そう言い頭を掻きながら苦笑する。それを見たイオンが前に出ると。

「それは、ボクから説明します。 お恥ずかしい話ですが ローレライ教団では派閥抗争が起きているんです。このボク、導師イオンを中心とする改革的な導師派。そして大詠師派モースを中心とする保守的な大詠師派……、ボクはマルクト軍の力を借りてモースの軟禁から逃げ出してきました。モースは戦争が起こるのを望んでいるんです。 ヴァンがボクを探しているというのも恐らくはモースの指示だと思われます」

 イオンがそういったと同時に、ティアが話に割り込んだ。

「何かの間違いです! 導師イオン!!」

 血相を変えて、叫んだのだ。

「モース様は予言の成就だけを祈っておられます。戦争を望んでいるはずが!!」

 ティアは、必死に誤解だと、訴え続けていた。イオンとティアのやり取りを見ていて、アルは思う。

「ティアさんはそのモースって人派なんだね?」

 イオンが軟禁された、と告白しているというのに、そこまで庇う、と言う事は、それほど信頼していると言う事だろう。

 そう言うとアニスが。

「えー、なんか ショックですぅ~~」

 ティアを見て項垂れていた。勿論アニスは導師派だからだろう。それを訊いて、ティアは慌てていった。

「い いえっ 私は中立よ! 予言(スコア)は大切だけどイオン様の意向も、大切だから」

 ここで、今までの話に入ってこれないルークが不満を愚痴る。

「おーい、さっぱり話が見えねーんだけどー?」
 
 ルークは、自分だけ取り残された、と言う気分なのだろう。だから、アルは。

「えっとね。状況を整理してみると…… イオンともう1人のお偉いさんがいて、それが大詠師って人。 イオンとその人が、どっちが上かで揉めてる。っというか 意見の違いでケンカしてて……、そしてティアさんは、中立だけど、イオンの事も、もう1人の事も凄く方を信頼しているから、複雑。……って感じかな?」

 少し簡潔過ぎたかな? と思ったアルだったけど安心した。

「お! なるほど……」
 
 ルークが納得してくれたからだ。

「わ、わたしは……、イオン様も、モース様も……」

 ティアが慌てながらそう言おうとした時だ。

《ビーービーービーー》

 突然、このタルタロス内にブザーが鳴り響きだしたのは。



 
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