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ソードアート・オンライン 瑠璃色を持つ者たち

作者:はらずし
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第十話 無謀

 
前書き

どうも、はらずしです。

さて、今回サチさんの出番はあるのか!

それではどうぞ。

 

 




「せらっ」

敵の攻撃を跳躍して躱し、自身の重みを加えた下段突きを敵の頭部にくらわせる。
急所をついたので終わりかと思ったが、そう簡単に倒れるはずもなく、数ドット残してギリギリ耐えていた。

「しつけえよ」

だがそんな最後の悪あがきを嘲笑うかのように頭部から引き抜かれた槍は横薙ぎに振るわれ、敵の首をはねた。

断末魔を聞く間もなくポリゴン化したモンスターに一瞥をくれることもなく、リュウヤは槍を肩に担いでふぅ、と溜めていた息を吐いた。

「くそ強えな、二十五層」

もううんざりだとでも言うように溢れた言葉は虚空に消えていく。

リュウヤがいるのは二十五層の迷宮区。
二十五層の転移門が開通してから一週間と少し。未だボスフロアへ到達したものはおらず、探索を続けている。

今までのこの時期なら次層がすでに開通し、また新たな攻略へと勤しんでいるのが通例なのだが、二十五層は中々に攻略が進まない。

その主な原因として、通常モンスターの基礎値がやけに高いことが挙げられる。

前層までなら簡単にできたことがここでは通用しなくなっている。いきなり難易度が上げられた感覚だ。

とはいえ、それでも四苦八苦しつつ迷宮攻略をしたおかげもあり、ボスフロア発見は時間の問題だとも言われている。

リュウヤもその考えを持つ一人であり、ソロで迷宮に潜ってはボスフロア発見のために尽力を注いでいた。

けれど、自分がボスフロアを見つけたらそれはそれでまた面倒なことになりそうだなぁとリュウヤは思う。

つい先日、ヒースクリフ同伴とはいえ前層のボスフロアを発見したのはリュウヤだ。

誰が攻略の指揮を執るのかという問題もそうなのだが、リュウヤにとって問題なのはそんなことではなく、アスナに叱られるかどうかが肝なのだ。

アスナの長く面倒な説教など聞きたくもないリュウヤは、しかし見つけなければ次へ進まないというジレンマに襲われながら迷宮区の奥へと進んでいく。

だがその足取りは数分後にピタリと止まってしまう。

「……もうヤダ」

目の前にある荘厳な大扉を前にorzとなるリュウヤ。

開けなくても判る。ここが第二十五層フロアボスの住処にして第二十六層への階段だということが。

「なんで俺が見つけちまうんだよ……」

見なければ良かったと思いながら立ち上がり、偵察のためボスの容姿を確認する。

念のために転移結晶を片手に持ち扉を開けた。

ギギィ、と重苦しい音を立てながら開いた扉の先にいたのは、天井に届きそうなほどの巨人。
しかもただの巨人ではない。双頭を持ち背中には巨人に見合うだけの大槌を二本装備していた。

「こりゃあ、やっべえな」

見ただけで解る、解らせられる実力。今までに戦ってきたどのボスよりも圧倒的な力を持つモンスター。

リュウヤは背中に冷たいものが走ったのを自覚した。

「帰ろう帰ろうそうしよう」

同時に即座に踵を返し迷宮区の出口を目指す。
このままアレを見ていたら嫌な予感や不安感でいっぱいになりそうで、自分が何をしでかすか分からなくて、逃げるように足早にその場を離れ迷宮区を後にした。






翌日、リュウヤは朝早くから二十五層主街区の一角に駆り出されていた。

前日、宿に帰る前にアルゴと連絡を取り、ボス部屋までのマップデータを拡散させ、とあるクエストに関しての要求を呑ませて別れて寝た。

しかしその夜、ヒースクリフからの一件のメールにて、具体的なものはなく、ただそこに来いとだけ伝えられ、その場所に来てみたのだ。

だがそこに集まる顔ぶれを見た途端、リュウヤは自分がどれほどお門違いかが十分理解できた。

《黒の剣士》キリト
《聖騎士》ヒースクリフ
《閃光》アスナ

リーダー格
《軍》キバオウ
《聖龍連合》リンド

その他にも攻略組に名を連ねるギルドの長が集まっていた。

(よーし、帰るか!)

即断即決、有言実行、さっさと帰って寝てしまおう。

ーーーなんてわけにも行かず、

「リュウヤさん?どこ行くの?」

完全笑顔の目に有無を言わさない色が宿っている。
誰もが認める美少女であるアスナに首根っこを掴まれたリュウヤはそんな機能はないのにダラダラと背中に汗が流れている感覚を覚えながら言い訳を始めた。

「どこって、もちろんわたくしが最も優先する案件を履行するための場所へですが?」

「その場所、まさかとは思いますが、宿屋とか言いませんよね?」

「まっさかあ、そんなこと言いませんよ〜。俺をなんだとお思いで?」

「それともなんですか、自宅とでも言うつもりですか?」

「おいおい、俺を見くびってもらっちゃ困るなぁ」

「じゃあどこへ?」

「寝床ーーースンマセン勘弁してくださいあんなところにいるなんていたたまれないんです帰らせてぇっ!?」

簡潔に答えた瞬間にリュウヤはアスナに引きずられて攻略会議の場に連行された。

アスナはリュウヤの必死の抗議に一切応えず、リュウヤに向けた笑顔を保ったままリュウヤを引きずっていった。

それを見ていた一般プレイヤーたちは奇怪なものを見るような目で彼らを遠目で見ていた。

無理やり連れてこられたリュウヤはアスナに座らされ、アスナもその隣に座り完全に逃げれなくなったところでようやく諦めた。

ほとんど日常茶飯事とも言えるアスナとリュウヤのやりとりに攻略組メンバーは誰も気にせず、唯一キリトだけが苦笑いしていた。

「さて、招集したメンバーは揃った。会議を始めようか」

「この第二十五層、噂通りフロアボスは今までと比べ物にならないらしい」

「せやかて進まんわけにも行かんやろ。さっさと攻略して次に行こや」

「それはそうだが、慎重にな」

「んなことあんさんに言われんでも分かっとるわ」

基本的に、今回の会議で口を開いているのはヒースクリフ、リンド、キバオウの三名だ。
他は会議の行方がどうなるかと傍観している。

アスナは割とこういうところでは発言するタイプだし、実際最近は会話に入っていっていたが、さすがに今回はそうはいかないらしい。

キリトはキリトで思考を回転させ分析しているようだ。

そしてリュウヤは、

「ーーーそこでだ、実際に確認したリュウヤくんに話を聞きたいのだが」

「ま、コイツの話なんか聞きたかないけど、しゃあないわ」

「リュウヤ?……ちょっと」

「………すぅ……」

ーーー寝ていた。

「「起きんかーっっ!!」」

「おあぁぁぁ!?耳が、耳がぁぁぁ!!!」

アスナとキバオウの両サイドから至近距離で放たれた怒号に、リュウヤはイスから転げ落ち、体を跳ねながら耳を抑えてのたうち回った。

「お、お前ら、何考えてんだっ!?耳元で大声出すなよっ!」

「「それはこっちのセリフだ!!」」

「なんであなた会議そっちのけで寝てるの!?どういうわけなの!?」

「どういうわけも何もあるかっ!ていうか寝てないっつうの!ちゃんと話聞いてたわ!」

「じゃあ説明してみなさいよ」

「未だに情報が少ないから発見者の俺の意見を聞くって流れだったんだろ!?ほら、ちゃんと聞いてんじゃねえかよっ」

「本当に聞いてんたんだ……」

「……久々に僕カチーンと来ましたねぇ。てめえ表ぇ出やがれっ!!」

失礼(?)なアスナに対して大声で怒鳴るリュウヤにヒースクリフが割って入って来た。

「リュウヤくん、座りたまえ。会議が進まない。茶番は後でいくらでも出来るだろう」

ヒースクリフの発言(余計な一言)にキリトは焦った。
そんなことを言ってはリュウヤがキレてかかると思ったのだが、果たして杞憂に終わる。

「はいはい、大人になりますよ……っと。で、何が聞きたいんだ」

リュウヤは割と素直に倒れていたイスを立てて座った。
キリトとアスナは普段のリュウヤとは違う態度に口を開けてポカーンとしているが、そんなものは気に留めずヒースクリフは続けた。

「君が見て何を思ったか、何を感じたかを話して欲しい」

「そんなの情報屋に聞けよ。俺はそっちに全部話した」

情報屋に伝えたものと大して変わらないし、話すのが面倒だと言外に伝えるリュウヤは腕を組み仏頂面でヒースクリフを見やる。

「誰かを介しての話というのは情報量が減っている可能性がある」

「……本当に、俺の感覚でしゃべっていいんだな?」

「もちろん」

ヒースクリフの即答にリュウヤは大きくため息を吐いた後、皆にも聞こえるような声で話し始めた。

「敵は天井すれすれくらいまである巨人型。頭が二つある、いわゆる双頭だな。つまり目が四つあるもんだからハイドアタックもしくはバックアタックは効きづらいんじゃねえかな。
あと背中に大槌を二本装備してた。同時に二つの大槌を使う可能性があるから攻撃範囲が広いってのが考えられる。
それに加えて十中八九特殊攻撃があるはずだ。異常回復アイテムは片っ端から用意してくのがいいんじゃねえの。
……とまあこれくらいだが、こんなの情報屋に全部言ったんだけど?」

切って話すことなく、一遍に話し終えたリュウヤは非難がましくヒースクリフを睨んだ。

それにヒースクリフは苦笑で返すとリュウヤは黙って視線を逸らした。

「今聞いたことを念頭に置き、偵察隊を送りたいのだがーーー」

「そんならワイのとこが行く。数はウチが一番や。手練れも多いし、十分やろ」

ヒースクリフが視線を巡らしているとキバオウが少し早口で名乗り出た。
偵察は被害が一番出やすい危険な行為であり、キバオウの言に誰も文句をつけるものはいなかった。

「ならそうしてもらおう。では今日のところは解散としよう」

ヒースクリフの宣言で集まっていた人たちはまばらに部屋を出て行った。
キリトもアスナもその流れに乗って出て行ったが、唯一リュウヤだけはその場から動かなかった。

黙って目を閉じているリュウヤを不審に思うヒースクリフだったが、結局何も言わずに部屋を出て行った。
そのドアが閉じたと同時にリュウヤは口を開いた。

「軍は何するつもりだ」

重々しい声は、部屋を反響し、虚空に消えることなく、どこからともなく現れた人影に届いた。

「サア?オラっちに聞かれても」

肩をすくめるのはアルゴ。
隠密スキルを使って先ほどの会議に参加していたのだ。

それがリュウヤにバレていたことは気にもせずーーーというか気にしても無駄ーーー返答した。

「情報屋だろ?なんとかしなさいな」

「無茶にもほどがアル」

何も知らないと告げるアルゴだが、リュウヤは満面の笑みを浮かべながらアルゴを見やった。

「ウソつくのは状況を選べよ。俺、今機嫌悪いんだ」

「おお、ソリャ怖いナ。ーーー二万コル」

トントンとリズミカルに机を指で叩きながら言うリュウヤに、本気を感じたアルゴはすぐさま交渉に入った。

「そんなにヤバいか」

「ソレ、五百コル」

「……あっそ」

言いながら、リュウヤはメニューを操作しアルゴに三万コルを送った。

「二万コルって言ったんだケド」

金にガメツイと言われるアルゴだが、一応良心というものはある。
心優しい指摘に、しかしリュウヤはそれに笑みを返した。

「洗いざらい、全部吐いてもらおっかな☆」




「……キメェ」

「……言わなくてもいいじゃん」

シリアスのヘッタクレもなかった。







アルゴから現状で確認できた軍の情報を駆使し思考を回転させていたら、いつの間にか夜も遅くなっていた。

アルゴの話を聞いた後、リュウヤは自室に戻ったのだが、考え事に気を取られていたのかどうやってここに着いたのかは覚えていない。

だが、帰り道の途中でさえ思考に気を回していた甲斐もあって軍の情勢は大体把握出来た。
そして何をしだすのかも。

後はそれを防ぐために色々と手を回さなければならないのだが、まずはーーー

ドンドンッッ!!

リュウヤの思考を遮った過激なノックが部屋に響き渡る。

うるせえなぁ、と思いつつ用心のため慎重にドアを開けると、外にいた人物に思い切りドアを押し上げられた。

「な、なんーーーってアルゴじゃん。どったのこんな夜中に」

ゼェ、ゼェ、と息を切らして部屋に無理やり入ってきたアルゴは息が整う時間も惜しむように口を動かした。

「ヤ……ヤバイ!ヤバイ、ゾ、リュウ兵!」

「落ち着けって、深呼吸して冷静に、な?」

頭も回っていないのか危険だけを伝えてくるアルゴに困ったような顔をするリュウヤ。
しかし、その表情はアルゴの口から出た言葉で一変する。

「リ、リュウ兵の、言ってタ、クエスト……軍のヤツラが始めやがッタ!」

「おい、なんで情報がもれてる?秘匿しろって俺言ったよな?しかもそれ昨日の話だぞ!?」

「オラっちが情報をもらすなんてヘマ踏むわけないダロ!」

「じゃあ原因はっ」

「たぶんアイツら、リュウ兵が見つける前にもう知ってたんダ!」

「クソッタレっ!」

吐き捨てると同時にリュウヤは部屋から飛び出し、敏捷値補正を全開にして疾走する。
アルゴもその後に付いて来た。

「あいつら今どこだっ!?」

「もう始めてル!」

「くそっ、ヤバイ、ヤバイぞ!」

必死の形相で地を飛ぶように走る。
リュウヤがここまで必死になるのはひとえに人命がかかっているからに他ならない。

リュウヤがたまたま見つけたそのクエストは一見普通に見える。だが、その難易度はノーマルどころの話ではないのだ。

ふと、頭の中に嫌な光景が広がる。

倒れ伏す者。

状態異常により動けない者。

モンスターの攻撃を食らって体力を失う者。

そして、体力ゲージを真っ赤に染め、果てにはーーー

「クソがっっ!」

声を出し、頭に浮かんだ光景を振り払う。

違う、そうじゃない、考えるべきはそれじゃない。

そう思うが、クエストの内容を知っているだけあって、軍の今の勢力を知っているだけあって、生まれてくる希望的観測が自らの推論でことごとく打ち破られていく。

(間に合ってくれ……!)

祈りながら走ること数十分。
隠密スキルと経験則を使って戦闘を回避しつつクエストの発生場所にたどり着いた。

そこに広がる光景は、リュウヤの祈りを無残に引き裂いたものだった。


その光景は、リュウヤが想像した、想像してしまった、そのものだった。

いや、それ以上と言うべきだろう。

なぜなら、リュウヤが想像したのは危機に追い込まれたプレイヤーたちのみ。

今眼前に広がる光景はその先を映し出していた。

つまりーーー



『アアアアアアァァ!!』

剣が振るわれる。

「イヤだっ、し、死にたくなーーー」

パリン、

「助けてくれぇぇぇーーー」

パリン、

『ゴァァアアアアア!!』

拳が飛ぶ。

「ああああああああ」

パリン、

「この、クソっ、クソォォ」

パリン、



パリン、パリン、パリンーーー



剣によって、拳によって、ブレスによって、脚によって。

軍の制服を着たプレイヤーたちが次々にポリゴンの破片へと変わっていく。

指揮をとる者もいないのか連携はあってないようなもの。
皆が自分一人が助かろうとするあまり余計な被害が出ている。
あれでは逃げれるものも逃げれない。
阿鼻叫喚とはまさにこのことだ。
アルゴはまだ追いついていないのか。
ここで止められるのは自分だけか。

凄惨な光景を前にして、浮かぶのは冷静な思考のみ。

ーーーいや、違う。そうすることでこの現実から逃げているだけだ。

それでも抑えきれない感情が溢れ出す。





目の前で、死んでいる。

人が、死んでいる。

名も顔も知らないけれど。

目の前で、人が、死んでいる……?



また、か。

また、目の前で死んでいくのか。

人が、目の前で死んでいくのか。

大勢の命が、失われていくのか。



ーーーはぁぁぁ………。


槍を取れ

恐怖を捨てろ

意思を持て

震えを抑えろ

覚悟を決めろ


ーーー俺が、俺であるために。




「ぁぁぁぁああああああああああああっっっっ!!!!!」


槍が閃き、ナニカが呻いた。






 
 

 
後書き

いかがでしたでしょうか。

えー、サチさん、一切出てませんねぇ。
すみません!二十五層の話に入っちゃいました!

加えて、今回の話急遽取り入れたところも
ありまして……
若干荒いと思います。……いつもそうですけど。

だって二十五層で「とある事件で軍が半壊」とか
知ったのつい先日ですし……。

とまあ自分の言い訳は置いといて、
次回、リュウヤの身に何が!?
的な感じで締めさせていただきましょう。

それではまたお会いしましょう。
See you! 
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