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魔法科高校の有能な劣等生

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九校戦開催 初日

 
前書き
久々の投稿です。
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無月 影・藤宮 介は九校戦が開催される前日の夜に準備を整えていた。
会場の警護強化・周辺の監視機器の調整・自動認識魔法地雷『紅』の設置等。
九校戦会場の警護を『無視』する協力。バレれば違法だ、罪に問われるがバレればの話だ。
影の魔法は現代の科学力では解明不能・・・要するに絶対にバレないのだ。監視カメラに映っても特定させる事は不可能・人の動体視力で彼を見る事は不可能。
が、その『不可能』を可能にする『イレギュラー』が一人。
「傘繭 麻花奈。
魔法科高校の一年『二科生』で合ってるよね?」
「・・・」
「黙ってねぇで答えろよ、立場解ってんのか?」
無月 影は強気な口調で、言っているが結構戸惑っている。
長年の付き合いで大体解るが、影は女の子の扱いは丁重だ。
今回は『特別』な事例の為。影は乱暴風な口調で、『監視者』に質問するのだ。
「影、口が悪いよ」
藤宮は理解しているが敢えて影を抑える。
その動揺の様な態度・・・理解できるが態度が悪い事は明白、対等な立場で会話する方がスムーズに段階を進む事ができると判断した藤宮は綺麗な口調で、紳士的に会話するのだった。
「僕は――――」
「知ってます。
藤宮 介・・・魔法科高校で唯一平等な立場の生徒」
『監視者』傘繭 麻花奈は答えた。
「そのエンブレムは『平等生』の証。
まぁ、貴方の事は大体調べ終えましたので自己紹介は不要です」
魔法科高校の生徒は『劣等生』『優等生』に分別される。
優等生は国立魔法大学附属第一高校の象徴のエンブレムが制服に印されている。
劣等生は無印。差別原因の問題点だ、高が知れる問題。シンボルの有無で差別問題が起こす生徒達に藤宮は正直呆れているが人間の深層心理と考え、無視するが度を超えた差別行為の場合『制裁』を下す。
藤宮 介は、その権利を持っている。正確に言えば与えられている。
『平等生』の所以。
風紀委員会&生徒会の権限を持った生徒。
全国の魔法科高校で、約九人の『平等生』その一人が藤宮 介だ。
「なら、そうだね。
じゃあ、自己紹介は省かせてもらうよ」
「・・・・」
ジーーーーと麻花奈は影を見つめていた。
「なんだよ、」
「いえ、貴方の名前を聞いてませんでしたので」
「俺の名前? 言う必要わねぇな」
ご機嫌斜めな影は手元の缶ジュースを飲み、隣の椅子に座り込む。
「なら、幾つか質問してもいいですか?」
「質問・・・?質問なら、良いか」
「では、貴女は何者ですか?」
「質問を拒否する。
拒否権は当然適用されるよな」
「ええ、構いませんよ。
では、次の質問です。貴方は何故、無月 零を尾行していたのですか?」
「!?」
手元の缶ジュースは地面に落ちた。中身の液体は溢れ、絨毯に染み渡る。
影は唖然―――状況を読み込めず、動揺する。
「貴方は・・・何者ですか?
―――『黒』色」




死を覚悟の特攻。
車をスリップさせる魔法で事故を装い、車を発火させ目標を破壊する。
バス内の生徒は無傷。奇跡的な結果だ。
無残な車の残骸は高速道路の道路に『押し潰される』様に破壊され、暴走車の運転手の死体は原型を留めている。
魔法の発動者は不明・・・が、ある程度の実力を備えた生徒は知っている。大方の検討は付いている。
発動された魔法の形跡を見れば一目瞭然『重力変換』系統魔法だ。
車の加速『ベクトル』を操作。
向けられた力の向きを地面に変換。
空気抵抗の壁を突き破り、地面に標的を留めさせる。
一瞬の出来事で、魔法の発動を見破った生徒は少数。見破った生徒は有能と言えるが、誰の『魔法』なのかは検討中の様だ。更に魔法の系統を見破った・魔法の発動を見破った・魔法発動の術者が分れば、その生徒は有能を超え、『優秀』な生徒だ。多分、最強の『劣等生』は気付いている。
司波 達也なら、気付いて当然なのだ。
「ふぅ、」
バレずに済んだ。
俺の魔法の発動時は『サイオン・ザード』が発生する。
無月家特有の体質で、魔法を発動する度に『黒』色のサイオンが放出させる。要するに魔法発動の直前の俺『無月 零』は莫大なサイオン放出を避けられないのだ。無月家の特質する点は常人を超えた『波動』『粒子量』だ。
例えると一度の魔法発動で、約魔法師三人分のサイオンを消費する計算・・・無茶苦茶だろ?
「零、」
背中をトン、と押された。
振り返ると予想通り、達也だった。
「初っ端から、活用するとは流石だな」
「なんの、事、だ?」
「隠さなくてもいいぞ。
あの魔法は、お前のだろ」
――――やはりバレてたか。
達也はCADの調整の為に別枠のバスに乗車していた。俺が乗っていたバスの後方のバス・・・明らかにランクダウンしてるバスに。
だが、達也は文句を言わず素直に乗車するのだった。
達也曰く「俺達の役目は裏方だ、裏方は裏方らしい方が良いだろ」らしい。
まぁ、俺の魔法は後方のバスに乗っていた達也には解っていた。
流石だ、俺の乗っていたバスの生徒は『誰』の魔法か、検討は付いているも確信的な根拠は出ていない。誰も、アイツがやったと言えないのだ。不確定要素の塊、『問題児』の魔法だと言うのは簡単だ。でも、証明するのは困難と言える。
「被害を最小限に抑え、余裕を持った大胆さ。
賞賛に値する」
「・・・・」
最近、達也が変だ。
具体的に言えば印象が変わっと言えば納得するのか、人間味が増した。
初対面に比べれば別人レベルに変わった達也と荷物を運び、指定の場所に出発する。
「零、CADの調整の要望は有るか?
有るなら、最終調整で加えるが」
「う〜ん。この前の試作段階通りの出来栄えなら問題は無いからな。
まぁ、精密な調整するなら・・・調整中に試しで使って修正する改善点でも見つけるか」
「お前の要望に応じた、お前専用のCADだが。
確かに実際に使わないと細かな調整は難しいな、解った。問題点を改善する所から、始めよう」
俺専用CAD。
以前使用していたCAD『シルバー・ソード零の型』は九校戦の規定違反で使用不可能状態で、非常に残念ながら別のCADで出場する事となった。
規定違反理由は『spec』の問題。
従来のCAD以上の処理速度・特殊金属『スペルア・インゴット』で形成された前代未聞のCAD。
規定違反を受けても、承諾に納得できる。納得できても、認められないがな。



その度に涙する。
その度に笑顔になる。
何度、繰り返されても忘れる事を許されさず。
何度、繰り返されても覚える事を許されない。
記憶の淵に、心の済に、ずっと残され。その度に笑顔は薄れ、涙する。
笑顔は、不幸を忘れさせる。涙は幸福を忘れさせる。幸福の涙は、流せば流す程に幸せを与え、絶望の涙は少年を強くする。
絶対に、忘れない。
違った記憶は歳を重ねる程に薄れ、消滅を迎える前に消された。
誓った約束を、無月 零は忘れた。
削除された・・・と言った方が無月 零の為に成るのか。
残酷な真実を現像に、変わらない者達の変えられない真実を捧げた。
ありがとう・・・僕を、その先の言葉の続きを無月は知らず。その先の言葉の意味を察する事さえ、叶わない。
現実は残酷だ、その現実を生きるのは困難で、窮屈で、知れば生きる事を放棄させる様な。
その現実を無月は、知って後悔する。後悔する事を止めれば絶望する。なら、絶望の事実を変えれば救われるのか?
無理だ、不可能だ。諦めるのも躊躇わせる現実を誰だって生きるのは嫌だろ?
周囲は絶望。
目の前は失望。
自分は、その両方を備えた化物。
触れれば壊す。なら、触れる事を止める。
楽な道を許さない。自分の足元を見れば自分の生きた人生が、歪んだ物と解る。
懺悔の言葉は人々を苦しめ、後悔の後を察する様に雨は降る。
「俺は、間違ってたのか?」
空模様は灰色。周囲は血の海。
雨は血を洗い流す。浄化される様だ、自身の罪を償わせる様に、無月 零の身体は地面を這い蹲った。
無茶の連続の代償。大切な人達を護る、その建前を棄てた零の罪は脳を蝕み、記憶を貪り尽くす。
母の笑顔。
影の笑顔。
ジジの笑顔。
風香の笑顔。
嫌だ、消えないで! 消えるな!
何度も、囁いた。何度も、呟いた。心の声は無月 零自身を傷付ける。
解ってる。でも、大切な記憶を消さないで! 幼少期の無月 零は祈った。削除される記憶の中の断片に埋まった魔法式に。ジジの託した魔法式に、次の自分に。
後悔は残った。後悔は自分の弱さを屈辱に変えた。
なら、次の無月 零の人生に託そう。
繰り返された因果に終止符を、次の俺なら、頼むぞ。
想いを込め、無月 零は目を閉じる。その暗闇の先は、2度と覚める事の無い世界だった。



「調整後のCADと調整前だと結構、差が出るよな」
暇なので呟いた。実質、達也の仕事を手伝ってるが、慣れると作業中に暇を感じる。
中身をイジるのは案外簡単だな、慣れるまで疲れるが。
「所有者の力量と得意魔法を前提に、特徴と技量を合わせれば効果は倍増する。
例えば、珈琲にミルクを足せば更に旨いだろ? アレと同じ原理だ」
解るような、納得するのも悩むが。
まぁ、例えの話だし反論するのもなぁ。
一応、俺は珈琲はブラック派なんだよね。
「調整中のCADを所有者の心臓と考えろ。
そう考えれば質は上がるぞ」
なんか怖いよ、達也。
それ程調整に集中してるのか、と隣の達也の調整を見る。
驚愕の真実。九校戦出場生徒全員分のCAD調整を行っていた。
時間が掛かる訳だ、俺の手伝いなんて必要ないんじゃね?
俺のCAD調整で、無駄な時間を被ったと考えると・・・・・・色々と申し訳ないような。
専用改造と調整は俺の時間を考えて、無理矢理作った時間で、休息の時間を潰してまで達也は・・・済まない。
「零、手が止まってるぞ」
「あ、あぁ」
集中せねば、達也の休む時間を作るんだ!
俺は手伝える範囲で、迷惑を掛けない程度で、達也をアシスタントするのだった。






慣れないCAD調整は疲れた。
ほぼ徹夜状態の俺は適当な服に着替え、午後の予定を思い出す。
頭が回らないな。でも、今日が重要な日ってのは覚えてる。全魔法科高校集合だからな、そんなビックイベントを忘れられる訳ない。一度、仮眠を取ってその後ゆっくり今後の事を考えよう。
まぁ、俺は補欠だし。裏方の仕事をすれば文句言われないだろ。





―――――無月 零は変わりました。
―――――変わってしまった。
―――――あれ程の気迫は消え、最強と謳われた最強の魔法師だった頃の面影は無かった。
―――――久々の対面で、解った。彼は成長したんだ。
―――――人間として生命として進化した。
―――――駄目だよ、それじゃぁ…変われる事は才能だ。

変われないのは人間の特権だよ? 零君



 
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