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恋姫†袁紹♂伝

作者:masa3214
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第24話

 
前書き
~前回までのあらすじ~

黄巾「うるさいんで! さっきからぐつぐつよぉ――」

華琳「降伏してくれたら、天からも守ってあげるよ?」

黄巾「な、何を言って、僕達は逆賊だよ?(即落ち)」

………
……


華琳「あ~もう・・・もう説得しても無駄だぞ!」

袁紹「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!!(天下無双)」


大体あってる
 

 
 前に出た袁紹に黄巾達は注目していなかった。彼等の視線は一様に華琳に注がれており、その側に居る大勢力の当主など気にもかけない。

(見せてもらおうじゃない……)

 袁紹の行動に華琳は口角を上げる。慢心ではない。確信だ。
 彼を封じるために用いた策、言葉は袁紹を意識して作られたように思えるが実は少し違う。
 彼女は『自身』を意識して考えたのだ。

 仮に自分が袁紹の立場だったとして、今の状況を覆す言葉、策が作れるか? きっと作れるだろう。だがそれは入念に時間を掛け、この状況を予め想定し。打開する言葉或いは策を作り出せればだ。事前の情報も無くこの状況を、土壇場で自分は覆せるだろうか?―――不可能だ。
 それだけに入念な下準備を、危険を顧みず自演をするほどに積み上げてきたのだ。

 そして目の前に広がる確かな手応え――広宗を埋め尽くすように跪き、自分に敬愛の眼差しを向けてくる人、人、人……。『自身』でも不可能と感じているこの状況を覆すことは、『自身』の想像を遥かに越えた発想と策、それは『私』以上の器であるという証明に他ならない。そしてそれはありえない。

 袁紹と同じく自身の才覚に絶対の自信を持っている。華琳らしい発想と見解だった。
 だからこそなのか、この状況に内心歓喜している彼女が居る。

 貴方はどう打開する? どう言葉を投げかける? どう彼等の心揺さぶり満たすの? 私には無理、それを貴方が? やってみなさい……見ててあげるわ、貴方が私を越えようと足掻く姿――或いは越えた姿を!

 袁紹の一挙一動を見逃さまいと彼の背中を注視する。やがて黄巾達が袁紹の存在を気にかけ始めた頃、彼は唐突に口を開いた。

「戦は終わった……ところで腹は空かぬか? 明朝から動き続けていては満足な食事もしていまい。昼食には良い時間だ。我が袁家で用意する故食べていくが良い!」

「………………は?」

 その言葉に間の抜けた声が上がる。諸侯でも無い。彼等の兵でも黄巾でもない。その声の主は――他ならぬ華琳のものだった。
 目を丸くし。口は半開き、およそ不可解な事象にでも遭遇したかのように、普段から凜としている彼女からはおよそ想像も出来ない表情をしていた。

「……っ!?」

 その顔は徐々に歪んでいく、失望、落胆、絶望、そして――怒りと軽蔑。
 今まで彼女が袁紹に抱いていたものが音を立てて崩れていく、それほどまでに彼女は先ほどの言を、それを言い放った袁紹を否定した。

 こんなものなのか、私塾の頃から一目置き、互いに研鑽し合い。離れた後も動向を意識し。その善政を参考に、あの大計略に感慨を抱かせ。こうして自分に期待させた相手が頼ったものが――『財力』なのか!

 出される食事はさぞかし美味な物だろう。酒の用意もあるかもしれない。
 彼等の食欲は満たされる――だがそれだけだ!!

 周りに居る諸侯達に特に反応は無い。精々いつもの『散財』か、と嫉妬と羨望の眼差しを向けるだけだ。しかし確かな知を持つもの、華琳を含めた者達にはこの策の不完全さが理解できていた。





 今現在、黄巾達の数は脱走と連日の防衛戦により十八万まで減っていた。一時期は五十万の勢力が見る影も無い。だが逆の視点で見てみれば、数が減ったことにより物資や食料が行き渡り易くなったのだ。
 事実此処に居る黄巾達に飢えている者はいない。数ヶ月にわたる長期戦を想定していなかった『張角』の意向も相まって、隅々まで食料が行き渡っていた。忙しさや戦から一、二食抜くことはあっても、一日何も食べない日などなかったのだ。

 故に袁紹の言葉には鈍い反応しか示さない。彼等は動き出し食事を貰おうとする姿勢をみせたが、もらえるなら――という感覚であり、心の底から望んでいるものはいない。

 食事で満たされた彼等の中には、袁紹についていく者もでるだろう。その数字も決して少なくないはずだ。
 だが、華琳の言葉で心が満たされているにも関わらず。それでも尚、袁紹に付いて行く人間にどれほどの価値があるだろうか、その者達など欲に忠実な堕落者、俗物の類だ。
 芯の通っていない人間を吸収してなんとする?

 華琳達による必勝の策に横槍を入れ、『散財』して彼が手に入れられるのは俗物、文字通り財を溝に捨てるその行為は、袁紹を友として、好敵手として、そして越えるべき壁として、彼を認めていた華琳を落胆させた。







 しかし半刻後、彼女の落胆は驚愕へと変貌する。

「なんだ……ありゃ……」

「わからねぇ……」

「……」

 その場に集まっていた袁紹軍を除く官軍の面々は、一様にある光景を見ながら唖然としていた。
 その表情は先ほどの華琳に似ている。それだけでも彼等の驚き具合を量ることができた。
 彼等の目線、その先には―――







「ワハハハハハハ!」

「飲め飲め!」

「これも食え、うめぇぞ」

「おっとっと、すまねぇな」

 『官軍』である袁紹軍と『賊軍』である黄巾達が、まるで宴会か祭りでもしているかのような様子で、楽しそうに食事しながら笑い声を上げていた。

 他諸侯やその兵達には理解できない。つい先ほどまで自分達は戦をしていたのだ。
 互いは仲間の、或いは友や親類の仇でもある。その戦の余韻が残るこの場で、何故敵同士だった者達が楽しそうに笑い合える? 何故肩を組んで酒を飲んでいられる? 何故泣きながら互いを慰めあえるのだ……。

「…………なるほどね」

「これは……まずいですね」

 多くの人間が混乱に陥っている中、華琳と郭嘉の両名は袁紹の策を――そして意図を理解した。

「我に対する失望、払拭されたか?」

「…………ええ」
 
 袁紹はそんな彼女達と共にその光景を眺めていた。本来であれば『宴』の中心にいるべき人物がである。

 先ほどの発言で華琳が自分に失望しているのは気付いていた。背中越しに殺気に近い視線を浴びていたし。彼女からすれば袁紹『自身』の言葉で自分に対抗するのを期待していたのだろう。
 残念な事に袁紹にはその気はなかったが……

 以前語ってある通り袁紹はこの地における最大戦力を有している。単純な武力は恋が、そして兵数も多いのだが――その殆どは非戦闘員だ。帯剣をしているが飾りに過ぎず。彼等の役目は天幕の設置や食事の準備などである雑用と、『黄巾の懐柔』である。
 
 彼等は南皮に辿り着いた元『難民』達で構成されていた。



 

「難民達を使う?」

「はい~」

 黄巾達の懐柔を目的の一つにした袁紹は、当初は華琳のように己が矢面に立ち説得を試みようとしていた。それに対し風が待ったを掛ける。
 自分達にはそれに最も適した人材、元難民達がいるのだ。使わない手は無い。

 仮にも漢の忠臣である袁紹と、黄巾と同じような境遇にあった難民達、どちらの話しに耳を傾けやすいかと言われれば後者だろう。袁紹はこれに納得し採用しようとしたのだが――

「お待ち下さい麗覇様、私に懸念が御座います」

 そこへさらに桂花が待ったを掛ける。諸侯の動きは風が目を利かせていたが桂花は過去の憧れもあり、ある軍の動きに注目していた。

 曹操軍だ。彼女達の動きがやけに鈍い。諸侯と協力しているともとれるがこれはまるで――

「まるで一ヶ所に黄巾を集めるように働きかけています」

「……一網打尽にするのが目的では?」

「だとしても追撃の手を緩める理由になりません。私にはわざと加減しているように見えます」

「華り……孟徳の目的は別にある……か」

「あるいは、黄巾の兵力を取り込もうとしているかもですね~」

 もしそうだとすれば彼女自身の言葉と覇気で説得を試みるだろう。私塾の頃から良く知る袁紹はそう結論付けた。

「風、万が一先を越され、孟徳の言葉に黄巾達が魅せられた場合。我等が入り込む策はあるか?」

「ありますよ~、桂花さんには怒られそうですけど……」

 この後メチャメチャ怒られた。








 こうして黄巾達に食事と酒が用意された。始めは恐る恐るだった彼等も、配膳をしている者達が元難民であることがわかると安心し。談笑しながら食事に手をつけ始めた。
 戦の空気から開放され、空腹が食事で満たされ、似た立場の者達と苦労を話し合う。……すると

 華琳により満たされた心が興奮と共に冷め、自分達本来の願いを思い出す。

 それは『安寧』。飢餓、疫病、重税、賊達など、この大陸に蔓延するそれらから解放され、ただただ家族と、友と、愛する者達と生を謳歌したいという。なんともあたりまえで、なんとも尊い願い。

 華琳の言葉からは『変革』を感じさせた。彼女ならこの大陸を正してくれるのではないか、腐敗した『天』より自分達の命を重んじてくれるのではないか――故に魅せられた。
 
「……」

 彼等の様子に郭嘉はさらに心痛な面持ちになる。

 ここまで、ここまでならまだ条件は一緒だ。大陸変革という希望を感じさせた主と、安寧という農民達の望みを引き出した袁紹達、しかし自分達にはあるものが欠け、袁紹達は大きな物を持っていた。

 『実績』だ。三十万を越える難民達を保護し。こうして兵士として雇い入れてる袁紹。
 対する自分達はどうか? 曹操軍でも難民は受け入れている。善政に力を入れ、袁家を除く諸侯の中では栄えている方だ。――しかしそれだけだ。

 大陸は袁家の話題一色、やる事成すこと全て派手で豪快な彼等は、意図せずとも曹操陣営の実績が大陸に回るのを阻止している。
 実際に目の前で元難民達を手厚く遇する袁紹と、覚悟を示したが実績が無い華琳。
 黄巾達が前者に流れるのは自然の理であった。

「……っ」

 郭嘉が黄巾達の様子に顔を歪めている頃、華琳もまた心痛な面持ちになる。
 早とちりで袁紹に落胆したこともそうだが、なにより――此度の策を自分一人で練った事に後悔していた。

 黄巾の人心掌握にあたって自分の策を、自演でも華琳が傷つくことを良しとしない春蘭を除き、皆に聞かせた時だ。渋る秋蘭には半ば強引に言って聞かせ。郭嘉には彼女が思案する前に諸侯の動きの操作。そして封じる手立てを考えておくようにと命令を下してしまった。

 

 袁紹達の今回の策、これは彼一人で考えたものではないだろう。思えば私塾にいた頃から周りの意見を取り込むのが上手かった。
 対して自分はどうか? 以前に比べればいくらか融通が利くようになってきたが、それだけだ。根幹では自分の判断、考えが絶対だと思い込んでいることは変わっていない。
 もし仮に、今回の策を郭嘉達と考えていたら? 袁紹達の策に見劣りしない上策を編み出し。対抗できたかもしれない。あるかもしれない結果を思って後悔するなど滑稽だが、そう思わずにはいられない。

 そこまで考えて華琳は溜息を一つ洩らす。失望すべきは彼ではなく自分自身にではないか、だが顔を下に向けてなどいられない。もう一度、もう一度己を見つめ直す。遅すぎるかもしれない……しかし手遅れではない。

「ごめんなさい……稟」

「か、華琳様?」

「貴方達と一緒に考えれば上策が出来たかもしれないのに…………私は」

「謝るべきは私です!」

「……稟?」

 華琳の謝罪を遮るようにして郭嘉が声を上げる。彼女にも反省しなければいけない事があった。

 華琳から此度の策を聞いた彼女にはある懸念が存在した。それは自分達以外に(兵力)を取るかもしれない勢力、袁家の参戦。
 本来であれば袁家は受け入れた難民達の対処で忙しく、此方に構っている余裕などないはずだ。
 参戦の可能性は限りなく低い。しかし無ではなかった。
 郭嘉は軍師として、最悪の事態(袁家の参戦) に備えるために更なる上策が必要になると考えていたが……彼女は進言できない。

 華琳の下について日は浅いが主の気質は理解している。自身の考え、信念、やる事成すこと全てに自信の高さが窺え、又それが主の魅力でもあった。
 口出しする必要は無い。そう考え主に与えられた任『だけに』固執したのだ。

「貴方も私も、まだまだと言う事ね」

「はい。ですが―――」

「?」

「華琳様の策は、無駄にはなりません」

 柔らかい笑みを浮かべて語る郭嘉、彼女の視線の先には余り食事に手をつけず。神妙な顔つきで下を向いている黄巾の一団に注がれていた。
 そもそも郭嘉が華琳の策に対して進言しなかった理由の一つに、策の完成度の高さが存在していた。未来の覇王が編み出した策は、袁紹達の財力をも駆使した策に確かな爪あとを残したのだ。

 結果、黄巾十八万のうち『安寧』を求めた十五万の農民達は袁紹に、『変革』を求めた三万は華琳に付いて行く事となった。
 数だけで見れば袁紹の一人勝ちである。しかしそれ以外、質ではどうか―――
 袁紹に追従した者達は殆どが農民、武の欠片も無い非戦闘員に近い人員だ。
 対する華琳に追従した者達は――元盗賊、漢王朝に恨みに近い不満を持ち、黄巾の中では常に最前線で官軍と戦っていた。言わば精鋭達である。

 正規の軍に比べれば確かに質は劣るだろう。しかし武の下地が出来ている彼等は、扱い方さえ間違えなければ強力な戦力に変貌するはずだ。気性が荒く手綱を握るのに苦心するだろうが――規律を重んじる曹操軍であれば問題無く取り込めるだろう。





 こうして黄巾の乱は、孫呉が(張角)を、曹操が(兵力)を、袁紹が花と実の両方を手に入れ終息――したかのように見えた。





 各軍が引き上げていく中、孫呉の陣営は天幕すら片付けていなかった。

「孫策の様子はどうだ?」

「ハッ、大分落ち着いた様ですが……」

 周瑜の問いに兵士が答える。その視線は孫策がいる天幕に注がれている。

「いつまでもこうしてはおれぬ、私が様子を見てこよう」

「な! き、危険です!! あのような孫策様は見たことがありません。いくら周瑜様でも……」

 孫呉の陣営では異様な光景が広がっていた。日が沈み始めていたため、そのまま広宗で一夜過ごし明日出立する手筈なのだが――本来手厚く守りを固められるはずの天幕に護衛の姿が無い。それどころか皆、その天幕を避けるようにして動いていた。





「これはまた。……随分荒れたようだな雪蓮」

「……」

 天幕の中に入り孫策に話しかけるが彼女の目は虚ろ、中はそこらじゅうが彼女の獲物『南海覇王』により切り刻まれていた。





 時を少し遡る。

「良くやったわ! 思春、明命、貴方達は孫呉の誇りよ!!」

「勿体無きお言葉」

「わわわ、ありがとうございます!」

 黄巾達との戦が終わり、張角の首を持ち帰ることに成功した二人を労っていた頃だ。

「失礼致します! 袁術様の兵がお見えになっていますが……」

「……なんですって?」

 孫策の顔が一気に険しくなる。実は孫呉の軍に僅か千人余りの袁術軍が追従している。


 張角討伐による名声のため、孫策は自分達を客将として使っている袁術――と言うよりは張勲に許可を貰う必要があった。

『ん~そうですねぇ、条件がありますが良いですよ』

『……なにかしら?』

 力の抜けるような声色から発せられる『条件』と言う言葉に警戒心を露にする。
 今までも散々この女に利用されてきたのだ。また悪巧みをしているのではないかと、警戒していたが――

『そんな難しいものではありませんよぉ、私達の手勢を少し連れて行って欲しいのです』

 張勲が言うには勅旨を出した朝廷に『義理』を果たしたいとの事。重い腰を上げることの無い袁術陣営は形だけでも張角討伐に動いたことにしたいらしい。
 指揮は孫策達に一任され、兵糧も余分に用意してくれるともあって、この提案を二つ返事でうける事になった。
 しかし、広宗に辿り着く前に後悔する事なる。 
 
 目に付いたのは袁術軍の錬度の低さだ。常日頃鍛練に励んでいる孫呉の兵達とは違い。大した訓練をしたことが無い彼等は新兵の方が良いのではないか? と孫策が真顔で言えるほどだ。

 これでは黄巾達との戦いのときに足を引っ張られる可能性が高い。故に孫策達の満場一致の意見により、彼等は戦には使わない。文字通り案山子――否、兵糧を消費する分、案山子にも劣る存在と成り果てていた。

 
 そんな袁術の――張勲の手勢が今更なんの用だろうか、二人の労いの場を邪魔された気分に陥った孫策は、話を聞くため中に入れるように指示を出す。
 追い返そうとも思ったが、そんなことをしては何をされるかわからない。さっさと話しを聞いて今後の打ち合わせをしなければ――孫策は半ば強引に思考を切り替えた。




「もう一度言ってくれるかしら?」
 
 挨拶もそこそこに、用件を伝えた袁術軍の兵士に再び問いかける。彼が発した言葉、要求はどう考えても許容出来る様な内容では無い。

「張角の首は我らが朝廷に持っていく、此方に渡して欲しい」

 孫策の殺意に近い怒気を前にして要求を繰り返す袁術軍のこの男、ある意味豪胆なのかもしれない。ただ鈍いだけだったが……、そんな男の意に返さない様子がさらに孫策の癪にさわる。

「っ!? 思春! 明命!!」

「はい!!」

「……くっ!」

 孫策の様子をいち早く察知し。周瑜は二人に制止させようと声を張り上げる。
 しかし二人の動きよりも速く、孫策の得物が男に振り下ろされていた。

「ヒッ!?」

 情け無い声を上げる男、彼は無事だった。孫策の振り下ろした刃は横から飛んできた矢に軌道を逸らされ、間一髪の所で男は命を拾う。もう少し遅ければ男は真っ二つに切り裂かれていたであろう。

「落ち着かれよ、策殿」

 狭い天幕内にも関わらず。矢で軌道を逸らす神業を披露した黄蓋は、弓を下ろしながら孫策を諌める。
 いまだ弱小戦力な自分達が袁術に逆らうのはまずい。孫呉の多くは残してきている故、人質をとられているも当然だった。そして逆らえば袁術たちは――特にあの張勲は容赦しないだろう。

 
 結局孫策たちは、要求通り張角の首を渡す他無かった。


 そして孫策は荒れた。やり場の無い怒りを天幕内の物に当たり、少しでも発散しようとしていた。無理も無い。緻密に計画を立て、名声を得て独立する事に夢を見、信の置ける仲間がやっとの思いで成し遂げた手柄、それが案山子以下だと見下していた相手に横から持っていかれたのだ。

 やがで暴れ疲れた孫策は泥のように眠った。周瑜は彼女を寝台に寝かせ天幕の外に出る。
 ちょうどその頃、孫策の怒気に恐れをなした袁術軍達が引き上げていた。

「……」

 周瑜はそれに目を向ける。張角を討ち取るための策を考え、ありとあらゆる手段で広宗を調査し。諸侯の動きを計算に入れ、袁紹達に辛酸舐めさせられても挫けず。自分達を眼中にも入れない曹操に歯軋りし。
 苦労の末に袁術たちに手柄を持っていかれた彼女は―――嗤っていた。


 こうして黄巾の乱は、袁術が花を、曹操が実を、袁紹が花と実の両方を手にし終息した。






  
 

 
後書き
だからあの時は序盤だって……(白目) 
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