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エターナルトラベラー

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番外編 リリカルなのは If その2

それから数日、俺はシャマルの事を探りを入れた。

それで分かったことは少ないが、彼女らは八神部隊長の個人戦力であり、データを見るに10年前から容姿が変わっていないことからある種の魔法生命体であると推察される。

秘匿されている闇の書事件の詳細は閲覧できなかったが、情報を集めるにその首謀者、シグナムが主と呼ぶ八神部隊長を合わせて彼女らが俺たちを殺した犯人だ。

俺は必要最低限以外の接触を絶った。

そうでもしなければ俺はまた彼女らを害しかねない。

まあ、シャマルなど最初からほとんど接点がなかったが…

そんな俺の態度を見かねたようになのはやフェイトが注意してきたが聴いた振りをして実際は無視。

何とか改善させようとしているのだが、やめてくれ。マジでキレそうだから。

そんな鬱屈としていた俺に転機が訪れる。

願っていた…でも会ってはいけない人との再会。

なんだかんだでなのはとティアナが和解して訓練もセカンドフォームの実施が始まった。

俺やソラには最初からリミッターなんて設置していなかったから関係ないのだけれど、ティアナなどはツインハンドガンからツインダガーに形態がチェンジ、その戦闘スタイルすら変わりかねない。

とは言ってもこの部隊には軽量武器の扱いを教えてやれる人は居ない。

そこで俺たちはなのはさんの計らいで第97管理外世界『地球』の海鳴のなのはさんの実家へと赴いている。

実家が剣術の一門派である為に基本だけでもその教えを乞おうと言うわけだ。

今回参加するのはデバイスが刀の俺とソラ、デバイスにダガーが加わったティアナと引率のなのはだけだ。

なのはさんにつれられて俺たちはなのはの実家へと到着し、なぜか一般家庭なのに敷地内に存在する道場へと招きあげられた。

対面に存在するのは一人の女性。

「それじゃ紹介するね。今回の講師の御神紫さん」

見間違えるはずは無かった。

それはあの日突然に別れを告げなければ無かったひとつの日常。

「御神紫です。よろしくね」

そう動きやすそうな練習着に身を纏った母さんが挨拶する。

「はい」

それに応えたのはティアナだけ。

俺とソラは応えられずに押し黙る。

「本当はわたしのお姉ちゃんに頼むはずだったんだけどね、急に都合が悪くなっちゃって。お父さんやお兄ちゃんも都合が悪いし…それでどうしようかって時に紫さんが空いてるからって。紫さんはうちの剣術の免許皆伝の師範さんなんだよ。それでこっちがわたしが教導している子達で」

「ティアナ・ランスターであります」

背筋を伸ばして敬礼のポーズ。

「あ、そんなに畏まらなくてもいいからね」

「そう言う訳には」

「いいからいいから」

昔と変わらない雰囲気を纏う母さん。

「それでそっちの君たちは?」

「アオ…」

「…ソラ」

俺たちはそうとだけ答える。

「アオちゃんと…ソラちゃんね…」

俺たちの名前に少し表情が崩れる。

十年ほど前に失踪した俺たちの事を思い出してしまったのだろうか?

今すぐに打ち明けたい。

けれど今はそんなことは出来ない。

「まずは着替えて軽く準備運動からかな」

母さんのその言葉で訓練が開始された。

町内をランニングで走ること30分。

帰ってくると道場に上がりストレッチ。

「それじゃ竹刀をもって。軽く素振りからはじめようか」

渡された竹刀を見る。子供用なのか、それとも御神流の小太刀に倣っているのか少し短めの竹刀が渡される。

簡単に素振りの仕方を教えられて俺たちは素振りを開始する。

「それで?この子達の戦闘スタイルは?」

「ティアナは両手でダガーを扱うことになると思うから二刀の扱いを基本から教えていただけますか?」

「了解。後の子達は?」

「あー、…この子達は自己流だけどそれなりに使えているので、それを最適化するのを手伝ってください」

「分かったわ」

しばらく素振りをした後に止めの合図で集合する。

「さて、本当はもっと時間があれば良いのだけれど。今回の滞在期間は二週間くらいだっけ?」

「そうですね。仕事もありますし、二週間が限度です」

「そっか、じゃあ型とか歩法とかは本当に基本しか教えられないわね。しかたない、それじゃ本当に最低限自分の武器で自身が傷つかないようになるのが精一杯よ?」

「そうですね、まあ今回はそれが出来れば上等と言うことで」

母さんとなのはさんで打ち合わせ。

まあ、二週間で剣術をマスターなぞ最初から出来るわけが無い。

その後簡単な型や歩方をティアナに教えている。

俺たちもついでにと一緒になって訓練している。

しかしこの訓練、すごく懐かしい。

御神流の訓練を始めたころに母さんと一緒に良くやっていた。

もはや魂が最善の動きを覚えている。

暫く基本の動きの練習をしていると母さんから声が掛けられた。

「アオちゃん、ちょっとこっちに来て」









さて、なぜ今このような状況に居るのか…

俺は今竹刀を持った母さんと対峙している。

母さんは二本の竹刀を構えてすでに臨戦態勢。

俺は竹刀を一本で構えて対峙する。

行き成り申し込まれた模擬戦。

なのはが自己流だが完成していると話した俺たちの実力が知りたいと言い、強制的に始まろうとしている。

ソラとなのはは見学。

趣旨のひとつに二刀の扱い方の見本と言う部分もあるため、ティアナも見学中。

「行くよ!」

「ちょ!まっ…」

静止の言葉は間に合わず、すでに距離を詰めてきた母さんが一閃。

振り出された竹刀の一撃を手に持った竹刀で受け止める。

バシンッと小気味いい音が道場に響く。

一刀を受け止めても直ぐにもう一方を打ち出してくる。

それを俺は受け止めた竹刀を流しつつ回避する動きのままに今度は此方からと一閃。

しかしそれはかすることも無く回避される。

其れからは三戟、防御するか回避してからようやく此方も一回攻勢に出ることが暫く続いた。

しかし、手数が圧倒的に足りていない上にこの十年研鑽を続けてきた母さんの剣筋は竹刀であっても速くて重い。

だんだん一刀では捌き切れなくなってくる。

一瞬距離を取った母さんが二刀を油断無く構えると、此方をひと睨み。

「御神流 虎乱」

今までとは比べ物にならない速さで繰り出される連撃。

迫り来る連撃。

一撃目だけを竹刀で受けて弾いた勢いを利用して大きくバックステップで二撃目をかわす。

三撃目も相手の竹刀を弾いて防御。

そこで追撃が止まる。

「コレも防ぐのね」

一人呟く母さん。

母さんは何か考えたそぶりを見せた後、

「あーちゃんよね?」

そう俺に問いかけた。

問われた俺は動揺を何とか表情に出すことなく答える。

「誰ですか?」

「そう、とぼけるのね。…いいわ、ならば『錬』」

母さんはもう一度距離を取ると一気にオーラを開放する。

ちょっ!『念』!?

噴出したオーラが体の周りを覆い、両手の竹刀を包み込む。

幸い『周』のみだが今の状態で竹刀で受けても確実に竹刀が折れる。さらに言えば肩や手首なのど間接部分が逝く!

と言うか念で強化された攻撃を生身で受けるのは自殺行為!

念で強化された母さんの攻撃は素の身体能力じゃかわし切れない。

神速を発動して避ける?

どうにも脳内リミッターを外すと写輪眼が発動するから却下。

魔力で身体強化?

駄目だ。今までそちらの方面は全て念で修行してきたので不可能。

と言うか何で母さんはこんな所で念による攻撃を?

と、考えて、答えは先ほど出ていた。

気づいてくれた。

俺がどんな姿になっても。

ならば…


side ティアナ

紫さんに二刀流の戦い方を見せてあげるとの事であたしは今、紫さんとアオの試合を見学している。

魔法に一切頼らない、純粋な剣技。

シグナム副隊長の荒々しい其れとは違う一種の芸術のようなその動きにあたしは圧倒された。

しかしそれを捌いているアオも凄い。

10歳ほどの女の子が大の大人の剣をある時は受け止め、時にはかわし、隙を付いて反撃を入れている。

「凄い…」

知らず知らずのうちにあたしはそう呟いていた。

「本当…」

なのはさんも呟くように同意した。

「………」

ソラは無言で戦いを見ているが、その表情が少し険しいかな?

ソラから視線を試合に戻すと紫さんが離れたところから連撃で仕掛けている所だ。

『虎乱』と言っていたのは恐らく技名かな。

紫さんの攻撃は今までのどんな攻撃よりも速い攻撃だった。しかし。

「コレも防ぐのね」

目の前のアオはそれを防いで見せたのだ。

…凄い。

紫さんの剣術も、それを防いだアオも。

なんであたしの周りはこんなのばかりなのだろうか。

いや、だめだめ!この間きいたばかりじゃなかいか。

なのはさんの教導の意味を。

嫌な感情を追い出してアオ達に目を向けるとどこか躊躇いがちに紫さんがアオの声をかけた。

「あーちゃんよね?」

あーちゃん?

確かに名前はアオだしあーちゃんで間違いないだろうけれど、今の物言いは親しいものに向けるソレのようなニュアンスがあったような…

「誰ですか?」

「そう、とぼけるのね。…いいわ、ならば『練』」

紫さんがレンと言った瞬間からあたしは例えようの無い悪寒に苛まれた。

「さっ…寒い…」

この感覚は以前感じたことがある。

そう、あれは確かこの間シャーリーさんの話を聞いていたとき…あの時に得体の知れない悪寒に耐え切れずあたしは気絶してしまっていた。

気が付くと同様に気絶していたスバルやエリオ、キャロ。

あの時原因は分からなかったけれど微かに感じた違和感の発生源は恐らくアオ。

気が付いたときにはすでにアオとソラは居なかった。

あの時一体何が起こったのか…

「うぅっ…くっ…」

隣に居るなのはさんも凄くつらそう。

「………」

ソラに視線を向けたが全然平気そうだ。

あの時ほど怖い感じはしないけれど凄いプレッシャー。

どうにか意識を保ってアオ達を見る。

すると…

「…練」

静かに…しかし確かにレンと呟いたアオからも凄まじいほどのプレッシャーが。

「かっは…あっ…くぅ」

息が出来ない!

「っ…」

なのはさんも苦しそう。

「アオ!」

ソラがアオを呼ぶとこちらを振り向きもしないアオに向かって手に持っていた竹刀を投げる。

それを後ろに目が付いているかのように腕を振り上げただけの動作でキャッチ。

始めから持っていた竹刀とあわせて二本になった竹刀を構えるアオ。

二刀流…

「まったく…アオも母さんも手加減を知らないんだから。周りの事ももう少し気に掛けてくれないと…念に当てられて呼吸が止まりそうな人が居るのに…」

「はっ…かっ…はあっ」

あたしは体全体を包む不快感に懸命に抗う。

前回一度体験しているので、本当に細くだけれど呼吸が落ち着いてくる。

「はぁ…はぁ…はぁ」

あたしは意志を総動員してプレッシャーに抗い、何とか眼前の紫さんとアオとの試合を見つめた。

そこで始まった先ほどの続きは想像を絶するものだった。

彼ら二人の行動は、あたしの目には残像すら残さない。

目にも留まらないとはまさにこの事と言わんばかり。

時々衝突音だけが聞こえている。

紫さんとアオ、あなた達は一体何者?


side out



ソラから投げ渡された竹刀を左手に持ち構える。

お互い今は言葉は要らない。

ただぶつかるだけ。

先に動いたのは母さんだ。

「御神流 『雷徹』」

迫り来る母さんの斬撃。

迎え撃つ俺も奥義で応える。

「御神流・裏 『花菱』」

ぶつかり合う剣技。

相殺した俺と母さんの剣技。

ぶつかった剣技の弾みで互いに距離が離れてしまった。

すぐさま俺は距離を詰める。

「御神流 『射抜』」

高速の突きの連撃。

「っふ!」

しかし母さんは一息の元にその全てを回避する。

「御神流正統奥技 『鳴神』」

俺の突きをかわし、その隙を突いて反撃に出た母さん。

今度は俺が回避する番だ。

「っく」

迫り来る連撃を両手に持った竹刀で捌く。

打ち合い、攻撃をかわし、また繰り出す。

それを何度繰り返しただろう。

それにしても、母さんのオーラのすごく流麗なこと。

確実に過ぎた年月が浮かばれる。

剣技のキレも嘗てとは比べ物にならないほど。

うん、これは勝てない。

俺と言えば最近漸くブランクが埋まってきたところだ。

勝てる道理が無い。

それでも俺は今出来る全力で母さんに挑む。

「御神流 『薙旋』」

俺から迫るは高速の四連撃。

「御神流奥技之極 『閃』」

しかしその初手に母さんのカウンターを食らった。

「くぅっ…」

流を使い竹刀を強化したが全てを受けきれずに俺は吹き飛ばされた。

空中で何とか制動を掛けて道場の壁に激突する寸前で着地する。

追撃を警戒してすぐさま竹刀を構えるがどうやら母さんは動かないようだ。


「ふふ、やっぱりあーちゃんじゃない」

まあ、母さんは最初から確信していたみたいだったけれど。

「ごめん…」

「何が?」

「最初は名乗り出れなくて」

それと、と。

「急に居なくなったりして…ごめんなさい」

「馬鹿…」

母さんはそう言うと俺の体を抱きしめてくれた。

抱き返した俺から母さんは視線をソラに向けるとソラを呼ぶ。

「ソラちゃんも」

「お…かあ…さん…」

「はい」

とてとて歩きよってきて母さんに抱きつくソラ。

両の腕で俺とソラを抱きしめてくれる母さん。

「それにしても、あーちゃん。女の子になったのね」

「うっ…」

「ふふ、後でお洋服買いに行きましょうね」

そんな他愛の無い会話をしながら俺たちは暫くの間再会を確認するように抱きしめあっていた。



さて、暫く感動の余韻に浸りたいところだけれど、いつまでもこの道場では話が出来ない。

「あのー、話が見えないのですが」

オーラを引っ込めた事で漸く復調したなのはが俺達に話しかける。

「知らない方がいい事ってのは世界中にいっぱいあるのよ?」

暗に関わるなと母さんは言う。

「そう言う訳には行きません。二人と紫さんは知り合いなのかとか、何で二人が御神流を使えるのかとか…それに」

と、一拍置いてから、

「どうしてソラちゃんが『お母さん』って呼んだのか」

と。

「どうしても知りたい?」

母さんが確認する。

「はい」

「仕方ない、それじゃ練習は中断。ついて来て」

俺達は練習着から普段着へと着替えて移動する。

そう、俺達の家へ。

「ここは?」

「私の家」

ティアナの質問に母さんが答える。

玄関をくぐると行き成り俺の腹部に衝撃が走った。

「ぐふぅっ!」

悶絶しながら視線を向けるとそこには一匹の狐が張り付いていた。

「久遠?」

「アオ!アオッ!」

おかしい、確かに俺は久遠の記憶を封じたはずなのだが…

少し困惑気味の表情で久遠を見つめ返す。

「くぅん?」

後で聞いた話だが、久遠の記憶はだいぶ前に戻っていたんだと。

どうやら俺達が転生し直した頃と丁度時期がかぶるらしい。

転生したときに何が起こったのか、それともたまたま偶然なのか、詳しいことは分からなかったが、寂しかったと散々泣かれてしまった。

リビングに入り、ソファに座って母さんが出した紅茶を一口すする。

あ、おいしい。

「さて、この子達との関係だったわね」

「はい」

「そうね…ねえ、なのはちゃん。あなた、私の子供、覚えているかしら?」

「はい…大好きでしたから」

「そう…。行き成り居なくなった私の子供が転生したのがこの子達よ」

「はあ?」

目を丸くするなのは。

「テンセイ?って何ですか?」

転生の概念が無いのか聞き返してくるティアナ。

「あら、ティアナちゃんの国では死んだら新しく生まれ変わるって言う話は無いのかしら?」

「生まれ変わる?」

「そう、人は死んだら生まれ変わるって、この国では信じられているのよ」

「そうなんですか?」

なのはに聞き返す事で確認をするティアナ。

「そうだね…そう信じている人は多く居る。死ぬと生まれ変わるって。だけど生まれ変わるときに記憶などは前世に置いてくるって。けれど、実際の所は分かっていないの」

なるほど、とティアナ。

「でもね、二人は特別。二人は生まれたときから前世の記憶があったわ。そして聞いた、何度も記憶を持ったまま生まれ変わりを経験している事も」

「そうなの?」

なのはさんが俺に問いかけた。

「ああ」

「それじゃ10年前、アオちゃんとソラちゃんは……」

「そう、死んだんだ」

「でも、二人一編に死ぬなんて普通じゃない。ねえ、あーちゃん、10年前何があったの?」

「10年前の事…か。その事についてはなのはさんは聞かない方がいい事も多い」

あ、ばらした後でもさん付けしてしまっている。

まあ、今は年下だし、別にいいのか?

「と言う事は、わたしにも関係している事柄があるんだね」

「まあね」

「…だったら尚の事、聞かないわけには行かない」

「…まあ、いいけど」

それから俺は話始める。

行き成り襲われて殺されてしまった事。

襲ってきたのが八神部隊長の身内で有った事。

襲ってきた二人の内一人を再起不能に追い込んだ事。

「…それじゃ今も翔君があんな状態なのは」

「そう。俺の所為だね」

「そんな…あなた達の所為で翔君はもちろんはやてちゃんがどんな思いをしてきたか!」

「何を聞いていたの?襲われ、殺されたのはこっちだよ?それに行き成り何も知らされずに10年もの間自分の子供を奪われた母さんは?」

「あっ…」

「因果応報。人を傷つけた分だけ自分に返ってくる。俺達はただ平凡に生きて居たかっただけなのにそれを奪った奴には当然の酬いだ」

「………」

なのははなにかを考えている。

「それでも…あんな…」

なのはの中ではやてと翔とやらの存在が大きかったのだろう。

どうしてもそちら側に立って考えてしまっているようだ。

理解して欲しいとは思わないけれど、だったら自分はどうするのだろう。

その選択が気になった俺は写輪眼を発動させる。

「月読」

「え?」

刹那に幻覚に囚われる。


side なのは

ここは?

周りを確認すると高町家のリビング。

「あれ?なのは。帰ってきていたの?」

台所で夕飯の料理をしていたお母さんがわたしに気が付いて話しかけてきた。

「おや、お帰りなのは」

今度はお父さん。

お兄ちゃんもお姉ちゃんも居る。

いつもと変わりないわたしの家族。

真っ赤に染まったアオちゃんの眼を見た瞬間、わたしはどこかに飛ばされたようだ。

そんな事を考えていると突然周囲を結界で覆われる。

「結界!?」

わたしが叫んだときにはすでに四方を結界で覆われていた。

「誰が!?」

するといつの間にそこに居たのか、騎士甲冑に身を包み剣型のアームドデバイスを構えた昔の記憶のままの翔君がいた。

「翔…君?」

翔君はわたしの問いには何も答えず、行き成りお母さんに切りかかった。

「え?」

袈裟切りに切られた傷口から大量の血を噴出して倒れるお母さん。

え?なんで?

「なんでそんな事するの?」

そう呟いたわたしの問いに目の前の翔君は、

「なのはが知る必要の無い事だ」

とだけ答えた。

目の前の翔君は次の目標を定めると今度は魔力弾でお父さんを吹き飛ばした。

何で?どうして?

わたしが思考している内に翔君は次々とわたしの家族に手を掛けていく。

「駄目ー」

『プロテクション』

どうにかお兄ちゃんを狙った魔力砲撃に割って入ってバリアを展開する。

間に合った。これなら!

そう思って振り返るとお兄ちゃんの胸から腕が生えている。

何で?

噴出した血液が部屋を真っ赤に染める。

生えている腕に見覚えのある指輪が見えた。

「クラール…ヴィント?」

何で?どうして?何も悪い事してないのにわたしの大切な人を奪っていくの?

「あ…あっ…あああああああああああ!!!」

わたしは目の前の翔君目掛けてレイジングハートを構えた。

「レイジングハート…非殺傷モード解除」

『オールライト。ディバインバスター』

あいつがお父さん達を!

大好きだったのに!



殺意のままにわたしは砲撃を続けた。

side out


「あああああああああああああ!」

行き成り大声を上げて絶叫するなのは。

「なのはさん!?なのはさん!」

その横で一生懸命に肩を抱き、正気に戻そうとするティアナ。

「……ティア…ナ?」

「そうです。ティアナ・ランスターです」

なのはを正気に戻した後、キッっと此方をにらみ付けた。

「なのはさんに何をしたの?」

「幻覚を見てもらっただけ」

「幻覚?」

「はぁ…はぁ」

憔悴しているなのは。

「幻…覚?…じゃあ、お母さんやお父さんは…」

「死んでない。…だけど、幻覚の中で感じた感情や行動は真実。ねえ、なのはさん。あなたはどうしたの?」

と、聞いている俺だが、勿論幻覚世界の内容は掛けて本人である俺には分かっている。

「………」

「襲ってきた相手にどんな事情が有ったにせよ、襲われた方にはこれっぽっちも関係がない!失ったものは戻ってこない!それでもあなたは相手が可愛そうって言うの?」

なのはは顔をくしゃくしゃに歪めて、

「……ごめん…なさい」

とだけ言った。

俺は話を続けた。

転生後は行動に制限が掛けられていて戻ってこれなかった事。

その制限もがんばれば緩みそうだと言う事。

母さんの事も聞いた。

俺達が居なくなって1年くらいは母さんも荒れていたようだ。

しかし近くに久遠が居たお陰で精神崩壊には至らなかったらしい。

その後俺達が転生を繰り返していると言うことを思い出して、もしかしたらこの世界の何処かに生まれなおしているかもしれないと探していたようだ。

とはいえ地球には生まれつかなかったのでどこを探しても俺達は居なかったのだが…

母さんが出してくれた紅茶で喉を潤す。

さすがに説明するのにかなりの時間が必要だった。

「そう…それじゃ今のあなた達に両親は居ないのね」

「うん」

純粋な試験管培養である俺達に生みの親なんて存在しない。

遺伝子提供者は居るかもしれないが、それが親かと言われれば絶対にNOだ。

「だ…だったら…その奉仕期間が過ぎたら…私の所に帰ってきて…くれる?」

母さんがすごく緊張しながらそう言葉を発した。

怖かったのだろう。

俺達が自分の下に帰ってきてくれるのかどうかが。

自分の下をから離れて変わってしまったのではないか、と。

「帰ってくるよ、絶対。ねえ、アオ?」

先に答えたのはソラだった。

「そう…そうだね。ここが俺達の居場所だからね」

「あーちゃん、ソラちゃん」

安堵に表情を緩ませ、目に涙を溜めている。

「とは言ってもすぐにって訳には行かないし、いろいろと面倒な事があるからね」

「別世界だから?」

「それもあるけれど、やはり俺達が人工生命体だと言う事がネックかな。生きてる限り監視が付きそう」

その言葉に母さんは少し考えてから、

「…複雑なのね」

とだけ言った。

さてお開きねと母さんが食器を片付け始める。

「待ってください!」

と、今まであまり発言しなかったティアナが止める。

「何かしら?」

「お話は分かりました。所々理解できないところは有りましたが…。しかし先ほどの戦闘…紫さんが『レン』と言った瞬間空気が変わりました。それにアオも。紫さんは魔導師じゃ無いんですよね?」

「そうね」

「だったらあのプレッシャーは一体…『レン』ってなに?ソラが言っていた『ネン』って?それに普通の人間があんな速度で動けるわけが無い」

神速を使った高速戦闘を目の当たりにしたティアナが疑問に思うのも当然か。

だけど…

「プレッシャーについては答えられないわ」

「どうしてですか?」

「だって私はアオから教えてもらったのだもの、だから私が教えるわけには行かないの」

そう言って母さんは俺の方を向く。

「アオ?」

「教えない」

「なぜ!?」

「知れば強くなれると思った?」

「つっ」

図星かな。

自分の事を凡才だと言ってコンプレックスを抱いていたからね。

「魔法技術もまだまだ教えてもらう事が多いのに、それでもまた別の力を望むの?それは遠回りだよ。一日二日で使える技術は無い」

教える気は無いけれど、実際は長期的に考えれば念を習得した方が近道なんだけどね。

影分身あるし。


「そんなの分かってるわよ。それでも…強くなりたい…」

ありゃりゃ、あの後吹っ切れたように見えたんだけど…。

念を教える事は出来ないけれど。

「ねえ、母さん。神速を教えてもいい?」

「神速?出来るのならば構わないけれど」

「あの、神速って?響き的には凄く速く動くんじゃないかとは思うんだけど…」

今まで空気だったなのはが会話に加わる。

「ああ、違う違う。神速は速く動く技術じゃないよ。確かにそう言った効果もあるけれど、基本的には知覚能力を何倍にも増幅させる技術」

「知覚能力…」

「そう、自身の知覚能力を高める事で刹那の瞬間を掴み取る」

「それってあたしは習得出来るの?」

怪訝そうな顔でティアナが聞き返す。

「下地は出来てると思う。後は努力しだい」

なのはさんの地獄の訓練で脳が活性化しているし、まだ若いからコツさえつかめば出来るかもしれない。



さて次の日。

俺達は人里離れた森の中に居た。

「それで?あーちゃんは神速をどうやって教えるの?」

「まあ、普通のやり方ではそれこそ年単位の修行が必要だから、裏技を使うよ」

「裏技?」

「要は何度かティアナの体で見本を見せるから、後は努力しだいって事」

「あたしの体ってどう言う意味ですか!?」

ヒョイヒョイっと印を組む。

「こう言う事だよ『心転身の術』」

と、言った瞬間俺の体はグラッと倒れこむ。

「アオちゃん!」

近くで見ていたなのはさんが慌てたように近づいてくるより速く俺の体はソラによって抱きとめられた。

「だ、大丈夫なの!?」

母さんも心配そうに近づいてきた。

「大丈夫だから、俺の体は安全な所に寝かせて置いてくれると助かる」

「分かった」

うなづき返したソラ。

「え?ええ!?何?どういう事?ティアナが俺って言ってる!」

混乱しているなのは。

(そうよ!ちょっとどういう事よ!?なんであたしの体が勝手にしゃべっているの!?)

「あーうっさいうっさい。今精神だけティアナに憑依しているんだよ」

「なー!」

(な、何ですって!ちょっと今すぐ元に戻しなさいよ!)

はいはい無視無視。これからなんだから戻す分けないよっと。

「さて、それじゃソラ、悪いんだけど飛針を飛ばしてみて」

「分かった」

ソラは魔力で組んだ非殺傷設定の飛針を構えると此方に向けて飛ばしてきた。

(うえ!?きゃああああああ)

おののくティアナの叫び声をBGMに神速を発動。

視界から色が消える。

飛んでくる飛針を視認して左に一歩。

(色が…それに景色が止まって見える)

ひゅんっ

ティアナの直ぐそこを飛針が通過する。

サクっと言う音を立てて後ろの木に刺さった。

「え?今何が?何か避けたの?投げた方も避けた方も全然見えなかったよ」

なのはが今見た現状を説明する。

「これが神速」

(今のが?凄い…っつ)

ずきずきと頭に鈍い頭痛がする。

(痛たたたたた!何よこれ!)

「脳内のリミッターを外すんだから最初は鈍い痛みもあるよ」

(そんなの聞いてないわよ!)

「言ってないもの。ソレよりほら二本目来るよ」

視線をソラに向けると次の飛針を構えている。

「はっ」

ソラから投げられた二本目。

「よっと」

色彩を視覚から排除。

景色が灰色に染まる。

今度は少し多めに距離を取って回避する。

「相手のプレッシャーを感じて自分のリミッターを外すんだ」

色の戻った景色。

すぐさま放たれた三投目。

そのプレッシャーを感じて神速を発動。

目の前まで迫っていた飛針を体を捻って回避。

「分かった?」

(痛たたたたた!頭が割れる!)

「根を上げてないで。自身の感覚として自分で使えるようにならないとなんだからね」

(そんな事言ったって)

「コレを使えるようになれば結構すごいんだよ。接近戦だけじゃなくて射撃に転用したりしてもかなり使えるんだからね」

ポケットを漁ってクロスミラージュを取り出す。

「クロスミラージュ」

『スタンバイ・レディ』

「モード2」

右手に持ったクロスミラージュの形態がダガーに変わる。

飛んできた飛針は3本。

左手のクロスミラージュを構えて迫り来る飛針に向けて誘導性を無視で2射。

寸分たがわず相殺し、3本めは右手のダガーで叩き切る。

(凄い…)

「見えてるんだから当てる事も出来るんだよ」

(なるほど…)

「感心してないで、ほら。いつまでも俺が憑依している訳じゃないんだからね。今の内に感覚をつかむ!」

(あ、はい…)

その後休憩を挟みながら二時間ほど俺がティアナを動かす。

「さて、そろそろ感覚もつかめて来た?」

(とっかかり程度なら…でもまだ全然)

「あとは慣れの問題。一回自分でやってみて」

そう言って俺はティアナと主導権を交代する。

「ちょっと、自分でってどういう事…って今あたしが動かしてるの!?」

(そう。まだ心の中には居るけどね。っとほら来たよ)

「え?っキャーーー」

(痛い…あのね、中に居る俺も痛いんだからちゃんと神速を使って避ける)

「分かっているけれど」

ソラから放たれる飛針。

感じたプレッシャーで自己の知覚を加速する。

一瞬で視界から色が取り払われて灰色の世界へ。

「あっ」

しかしそれもほんの一瞬。

自分で始めて発動した神速に驚いて惚けている内に着弾。

「ぐえっ」

(痛い!)

「ご!ごめん…ってもともとコレはあたしの体!」

(まあ、そうだね。でも今一瞬だけど神速が使えてたよ)

「うそ!」

(本当。ほら!次行くよ次)

「はい!」



それから暫くはティアナの神速の練習。

最初の切欠を憑依して教えた所為か、取っ掛かりは何となく分かって来た様だが、まだまだ全然使えていない。

まあ、初日だし今日はそろそろ終わろうかと言ったとき、見学中のなのはが唐突に自身の疑問を口にした。

「ねえ、アオちゃんって実際はどれ位強いの?えっと…その翔君…あっ、SSSランクの魔導師を退けられるくらいだったんだし」

ティアナから自分の体に戻り帰り支度をしていた俺は少し考えてから答える。

「うーん。魔導師としてだけならば俺よりなのはさんの方が強いんじゃない?」

「え?そうなの?」

純粋な魔法技術だけならば、ね。

神速も使わない、写輪眼も使わない、剣術や体術も禁止で、魔法だけならば技術の差というより魔力量で押し切られそうだ。

「だからルールを設けた模擬戦じゃ勝てないかもしれない。…だけどね」

「だけど?」

「魔法以外も使うならばなのはさんには万に一つくらいしか勝ち目は無いよ?」

「そ、そんなに!?」

俺の言葉が流石にショックだったらしい。

「だったら!わたしと模擬戦しよう!勿論、全力で!」

「はあ?」

「お願い!」








そんなこんなでなし崩し的になのはさんと全力戦闘する事に。

とは言ってもなのはさんには出力リミッターかかってるけどね。

「それじゃ始めよう…って!アオちゃんバリアジャケットは?」

「いらないいらない」

と言うかソルすら起動していません。

「流石に少しムカつきました!後でお話です」

「まあ、そんな事はいいから。ソラ、合図よろしく」

今回は一応ソラに結界をお願いしています。

まあ、スターライトブレイカーとか使われると結界破壊されちゃうかもだけどね。

まあ、使わせる気無いけど。

「分かった。それじゃ、レディー・ゴー」

「レイジングハート!」

『オールライト、フライヤーフ…』

飛行魔法を使うつもりらしいけれど遅い遅い。

ぱっぱっと印を組んで自分の影を伸ばす。

「え?」

レイジングハートを握りこんでいたなのはの左手が何かを放り捨てたようなポーズで空中で止まっている。

「何で!?」

「忍法『影真似の術』」

「忍法!?」

「いやー、昔忍者だった事があってね。その時色々覚えた。この術に囚われると囚われた側は自由には行動できず、俺の動かしたように動くんだよ」

「忍者!?」

「さて、昔の格言にこう言うのが有る。『魔法使い、杖が無ければただの人』って。魔導師のみなさんはどうなんだろうね?」

「くっ!」

『ディバインバスター』

俺の胸元で待機しているソルが術式を展開する。

右手の指先をなのはさんに向けてチャージ開始。

「うぅ!リリカルマジカル。福音たる輝きっ」

「遅いよ!ディバインバスター」

閃光はなのはを直撃せずにその隣を通り過ぎた。

「はい、今のが当たっていれば撃墜。もし撃墜しなかったら何度でも繰り返せばいいんだけど?」

「うぅ…」

「デバイスは優秀だけど、やはりそれを無くすと弱いね。騎士の人たちなんてそれがもっと顕著なんじゃない?」

影真似の術を解除すると、なのははレイジングハートに駆け寄っていく。

「もっ…もう一回!」

「何度やっても同じだと思うけれど…」



仕切りなおしてもう一戦。

「レディー、ゴー」

「今度こそ!」

始まる前から起動していた飛行魔法ですぐさま地上を離れようとするなのは。

だけど…ね。

「『魔幻 樹縛殺』」

周りは林だし、この幻術は丁度いい。

今頃なのはは絡みつく木々の触手と格闘中だな。

「な、何これ!?」

一心不乱に襲ってくる幻覚の触手を避けているのだろう、回避運動をしつつ、あらぬ方向を魔法で攻撃している。

「ちょちょちょ!ちょっとーー!きゃーーーーーーっ」

あ、ティアナの方に魔法が飛んでいった。

母さんはソラが守っているから問題ないな。

と、暫くすると空中で何かに囚われたように大の字で静止しているなのは。

「まあ、インテリジェントデバイスなんだからレイジングハートがなのはの身体に微弱でも揺らぎを与えれば解けるんだけどね」

俺はゆっくり飛行してなのはに近づく。

『マスター!しっかりして下さい。何が起こっているのですか』

レイジングハートが必死に呼びかけている。

「よいしょっと」

なのはの腕からレイジングハートを抜き去る。

瞬間、飛行魔法がキャンセルされる。

落ちていくなのはの腰に腕を回して落下の速度を緩めつつ着地。

着地と同時に幻術を解く。

「…はっ今のは?れ、レイジングハート!?」

俺が持っているレイジングハートを驚愕の表情で見つめる。

「…何をしたの?」

「うーん」

どうしようか…まあ、知られたところで防げないからいいか。

「幻術に掛かっていたんだ」

「幻術?でもあれはシルエットじゃなかった」

ティアナが得意とする幻術魔法、フェイクシルエット。

「フェイクシルエットは現実に出現させる事で相手を惑わせるけれど、魔幻は脳をだます…一種の催眠術だね。なのはさんは昨日一回体験しているでしょう」

「……」

「五感を騙すんだから、いくら防御が硬かろうが、シールドを展開しようが関係ない。魔法じゃレジスト出来ないからね」

「そんな…」

「魔導師じゃ初見じゃ絶対に見破れない。だって知識が無いんだもの。故に面白いくらい掛かるね」

「回避方法は?」

「教えると思う?」

「……アオちゃんの性格からして教えない…かな」

「正解」

手に持っていたレイジングハートをなのはに投げ渡す。

「わっとと。もうちょっと丁寧に扱ってよ」

「ごめんなさい。…、ああ。これで分かったでしょ。一対一じゃ俺には敵いませんよ。」

「む、もう一回!ね?わたしまだまともに魔法を使ってないじゃない…」

「と言うか、使わせるわけが無いじゃないですか。相手の得意舞台で戦わないのは戦う上での基本の一つですよ?」

「…そうかもだけど、ね?お願い、後一回だけ」

むう、面倒くさいな…あ、そうだ!

「じゃあ、後一回だけですよ?本当にこれ以上はやりません」

「え?本当?じゃあ早速!」

「と言っても、戦うのは俺だけど俺じゃありません」

「え?」

「ティアナー」

俺は端に居たティアナを呼ぶ。

「何よ?」

俺は印を組みながら駆け寄って行く。

「『心転身の術』」

グラッと倒れこむ俺の身体を乗り移ったティアナの身体を使って支える。

「よいしょっと。ソラ悪いんだけどまたお願い」

(ちょ、ちょっと!?なんでまたあんたがあたしの身体を動かしているのよ!)

「いや、まあ神速が使えるのと使えないのでは天と地ほど差が有ることを証明しようと思ってね。多分神速が使えればティアナだってなのはさんに勝てるよ?」

(え?)

「ま、見てて。クロスミラージュ」

『スタンバイレディ・セットアップ』

「ソル、いくつか術式をクロスミラージュに転送しておいて」

『了解しました』

「え?ティアナとやるの?」

「ええ、ほら構えて下さい。心配しなくても魔法技術で相手になりますよ…まあ神速は使いますが」

「え?あ、うん」

さて、それじゃあクロスミラージュを構えてっと。

「ソラ、合図お願い」

なのはさんと向かい合いソラの開始の合図を待つ。

「レディ、ゴー」

「レイジングハート」

『フライヤーフィン』

ああ、もう!やっぱり飛ぶんだね。

(ああ、飛ばれるわよ!?)

飛ばれると飛べないティアナは不利だというのは自身が嫌と言うほど分かっているのだろう。

そんなのは俺もわかっている。

だから今度もまた飛ばせない!

「クロスミラージュ」

『スパイダーネット』

地上から二メートルのところに魔力で編まれた半径100メートルほどの円状に網目のネット状の物が現れる。

「え!?」

行き成り現れたスパイダーネットにその上昇を阻まれるなのは。

「くっ!こんな物で」

そう言ってなのはさんは強引にネットを破ろうとするけれど、その隙を逃すわけが無い。

『クロスファイヤー』

「シュート」

放たれたクロスファイヤーが勢いよくなのはに迫る。

『プロテクション』

しかし、なのはが張ったフィールドバリアに阻まれる。

命中するもバリアは割れず。

(硬いわね…どうするのよ?)

しかし、そこで止める俺ではない。

誘導性を無視して速度と威力、連射性を向上させる。

「こうする」

両手のハンドガンをなのはを狙う。

そして神速の発動。

知覚能力が向上して集中力も限界まで高まる。

左右のハンドガンから打ち出された弾丸は計6発。

弾丸は正確無比になのはの張ったバリアの一点に立て続けにヒットする。

先ほどのクロスファイヤーのダメージと、今回の速射のダメージでどうにか4発目でなのはのバリアを抜いた。

ドドーン

着弾して粉塵が舞う。

しかし、バリアが割れて着弾した一瞬にどうやら反撃してきていたらしい。

身体の周囲に現れるリングバインド。

「おっとと」

すぐさま神速を発動してバインドからすり抜ける。

「にゃはは…ダメージ覚悟でカウンターを狙ってみたんだけどね、失敗しちゃったか」

なんてこちらに向かって話しかけてくるなのは。

おっと、そんな話しかけたら答えが有ると思ったら大間違いだぞっと。

俺は無言でクロスミラージュを構える。

『クロスファイヤー』

「シュート」

「え!?ちょ!お話聞いて?」

『プロテクション』

「戦闘中に話しかけるとか…はぁ…」

俺はやるせない気持ちでいっぱいだった。

それでもレイジングハートは優秀なのかバリアはしっかり張っていたが。

爆炎にまぎれて木々の間に身を隠す。

頭上のスパイダーネットで空中は塞いだ。

これで実力の半分も出せないだろう。

木々を移りながら位置を悟られないように魔力弾を撃ち、攻撃する。

まあ、向こうも飛び回っているので互いに決め手に欠けるけれど。

状況は此方に有利かな?

「アクセルシューター、シューーート」

おっと、こちらに向けて10を超える魔力スフィアが飛んでくる。

この数をコントロールしてまだ余裕が有るとは…さすがはエースオブエース。

だけど、甘い!

神速を発動。

此方も魔力弾を速射する。

その数12。

10個のスフィアを相殺して残りはなのはへと迫る。

そして着弾。

その隙に木陰に隠れる。

(ちょ、ちょっと!今がチャンスじゃないの?こっちの魔力は維持しているあのスパイダーネットでガリガリ削られていってるのよ!速く倒さないと魔力切れよ!)

「もうちょっと戦況を良く見ろ!なのはさんが意味も無く飛び回るわけ無いだろう。クロスミラージュ!」

『マジックソナー』

眼前に現れたスフィアが形を崩してその粒子が散っていく。

魔力を使った『円』だ。

「やっぱりあったか!設置型バインド。だけど今のサーチで位置はつかんだ!」

(え?ええ?)

「さて、仕上げと行こうか」


俺は木陰から出るとなのはをかく乱するために攻撃しながら動き回る。

くぅ…流石に魔力量はあちらが上か。

そろそろ押し負けそうだ。

「ああ!もう、何で当たらないの?」

いい感じにじれてきているな。

ええっと、設置型のバインドの位置はっと。

ここなら正面から受け止められる。

「かかった!」

(な!わざわざ位置を確認して何で掛かるのよ!?)

俺の左手に突如として現れたバインド。

その後全身を縛るように現れるリングバインド。

おっと、危ない。

俺は瞬時に身体を捻って右手の自由を獲得する。

『ディバインバスター』

その隙を突いて砲撃魔法のチャージを始めているなのはさん。

しかし俺はソレを待っていた!

神速を発動。

灰色に染まる世界で自由になる右腕で正確にチャージしているディバインバスターを狙い打つ。

『クロスファイヤー』

「シュート!」

打ち出した弾はなのはがチャージしていたディバインバスターに直撃。

ドガーーーン

チャージ途中での横入れで誤爆する。

「きゃーーーーっ」

さて、今だね。

「な!バインド?」

『スターライトブレイカー・シフト・ファントムストライク』

俺の構えた双短銃に四方八方から集まってくる魔力。

「使い切れなくて散らばっちゃった魔力を集めて再利用」

「な!?それって!まさか!」

なのはの顔に焦りが浮かぶ。

「スターーーーライト、ブレイカーーーーーーー!」

「うそーーーーーー!?」
(うそーーーーー!?)
と言うなのはとティアナの心の叫び声を消し去る轟音を撒き散らしながらスターライトブレイカーはなのはを襲う。

あ、しまった結界まで破壊しちゃった…

まあ、森の中だし大丈夫だよね?

粉塵が晴れると気絶したなのはが寝転んでいた。

「うにゃあ…」

「まあこんなもんだね」

(…………)

「ティアナ?ティアナー?」

だめだ、放心している。

さて、試合も終わったし疲れた。

今日はもうゆっくり眠りたいな。


次の日から数日なのはは自分の部屋に引きこもって出てこようとしなかった。

俺にこてんぱんにやられたのが結構精神的にショックだったらしい。

まあ、どうでもいいか。

ティアナの神速の訓練は…まあ順調かな。

少しずつだけど確実に進歩してるし。

そんなこんなで今回の滞在はタイムアップ。

名残惜しいけれどミッドに戻る事になった。

そんな感じで短かった母さんと久遠との再会も暫くお預け。

俺達はミッドの隊舎に戻りお勤め中。

数日が過ぎ、朝練を終えると俺達は休暇を賜った。

街にでも出て遊んでくるといいよとの事。

お言葉に甘える事にして俺達はそれぞれの分隊の新人同士で街へと出かける事になった。

街に出る前にフェイトさんが、

「お金もってる?お小遣いあげようか?」

とか、

「暗くならないうちに帰ってくるんだよ」

とか、あんたは俺らの母さんか!?

いや保護責任者ではあるんだけどね。

街に出て本当に久しぶりにショッピングなどをして時間を潰しているとキャロから緊急通信が入った。

市街地で女の子とレリックを発見、保護したそうだ。

通信は隊舎のほうにも繋がっていたようで、隊舎で待機していたなのはさん達からも通信がはいる。

「アオとソラも現場に行って手伝いをしてあげて」

ウィンドウ越しのなのはさんが命令する。

「市街地の飛行許可は」

「すでに申請済みだよ」

と、フェイトさんが答えた。

一旦通信を切り、俺はソルに手を掛ける。

「なんか面倒な事になってきたけれど」

「そうだね、でもお仕事だもん、がんばりますか」

「うん」

「ソル!」

「ルナ!」

『『スタンバイレディ・セットアップ』』

「さて、行きますか」

「とは言っても現場まではかなり遠いから間に合わないんじゃないかな」

「そうかも…」

まあ、とりあえず飛行して現場へ。

途中にガジェットが来る恐れがあると通信をもらった。

「ありゃ、空からも来たみたい」

飛行中に遠くのほうからくる飛行物体。

『悪いけどアオと、ソラにはそのまま飛行しつつヘリを護衛をお願いや』

どうやら俺達よりも先に救護班が到着したようだ。

ヘリに並走しつつ砲台と化した八神部隊長の砲撃を観察。

「フレスベルグ…か」

「アオ、コピー出来た?」

「術式コピーは完了。だけど流石に俺達じゃあそこまでの連発は無理だな。消費魔力が半端無い」

「確かに…流石はSSと言う事ね」

俺達も多いとは言ってもニアSランク。

絶対量では及ばない。

うーん、一番戦いたくない相手だな。

個人技なら負けない自信はあるけれど、広域殲滅魔法が厄介だ。

近づければ負けないけれど、遠くからばかすか打たれると落とされかねない。

なんて考えていると辺りの空気が変わる。

すぐに『円』を広げる。

熱源反応確認。

距離は割りと遠いな。

なんかこっち狙ってないか?

って撃ってきたよ。

「ソラ!」
「うん!」

すぐさま斜線上に割り込む。

受け止める必要はない。

斜線をずらせば任務完了だ。

『ディフェンサー』

角度をつけてバリアを張り砲撃を受け流す。

ソラは第二射に備えてもらう。

弾いた砲撃は空へと消えた。

「ふぅ。犯人は、っとフェイトさんとなのはさんが追撃しているな」

「あ、逃げられた」

「空間攻撃…いくら廃棄都市だからといっても誰も住んでいない訳じゃないんだけど」

何かの理由で住んでいる人だっているだろう。

うわー…結局逃がしているよ。

まあ、俺たちには関係ないか。

俺たちの任務はヘリコプターの護衛で任務は果たしたし。

「デアボリック・エミッション」

「相変わらず大魔力攻撃の固定砲台だねぇ」

「うん」


病院へと着いてヘリコプターから搬送されていく5歳ほどの少女。

「あれ?」

その少女を見たときにどこかで見覚えがあるような気がした。

どこだっけ?

なんか毎日見ているような…


「アオに似てる」

「マジで?」

「うん」

まあ何はともあれ俺たちはその後機動六課へとヘリコプターに輸送されて帰還した。


数日後。

あの時保護された子供は隊舎で面倒を見ることになった…のだが。

「………」

しっかと俺の服の袖を握り締め、どこに行くにもヒヨコのように着いてくる幼女が一名。

「すっかり懐かれちゃったわね」

そう言ったのはのは呆れ顔を隠そうともしないティアナ。

「多分自分に一番似ているのが分かるんじゃないかな。本当の姉妹みたい」

と、なのは。

「まあ、丁度よかったよ。これから少し用事があるから、ヴィヴィオの面倒よろしくね」

そう言ってなのははヴィヴィオに行って来ますと告げて出て行った。

ヴィヴィオも少し不安そうな顔をしたが、なのはを求めて振り上げた手でそのまま俺を掴んだ。

「うぅ…」

「ソラ…助けて」

「…無理」

「…そんな」

じぃっと俺は辺りを見渡した。

するとその場にいたティアナ、スバル、エリオ、キャロと続けざまに視線を外した。

はぁ…

「でも、本当に良く似ているわね」

「恐らく遺伝子提供者が同じなんじゃないか?」

「あ……」

俺の言葉に一同黙り込む。

この子は人造魔導師の実験体じゃないかって事だし、俺自身もそうだ。

DNA検査でもすれば分かるんじゃないか?

まあ管理局に厄介になってからは一度たりとも血液検査すらしてないけどね。

されそうになったら泣く、喚くなど、何としても阻止しました。

え?何で阻止したかって?

それは俺の体がいろいろやばいからでしょう。

血継限界とか、魔法も使わずに数種類の獣に変身とか、性別を変更させたりね。

ちょっと人とは違うから調べられたりしたら面倒だったのだ。

その話は今は関係ないか。

「うー、うー」

「はいはい。それじゃ何して遊ぶ?」

「うーん」

うーん、まだ自分の意思をはっきり伝えられるほど感情が育ってないのか?

「無難に散歩でいいか」







「落ち着いてくれて良かった」

ベッドに寝かせたヴィヴィオを見てキャロがそう言った。

「まあ、よほど疲れたんだろう。あんなに元気に走り回ってたし」

「まあ、後は寮母さんに任せて俺たちは午後の自主練だね」

ソラの言葉で俺たちは任務完了と部屋を出た。



side なのは

はやてちゃんに連れて来られたベルカ自治区。

そこで出会ったクロノ君と教会騎士のカリムさん。

そこで教えてもらった今回の部隊設立の基となった予言を聞いた。

内容は次元管理局崩壊を示唆するもの。

しかし気になったのはその中の一文。

【銀の太陽と金の月、その二つを蔑ろにしてはけない。止める刃を失いたく無いのならば】

「この銀の太陽と金の月って言うのは?」

隣で聞いていたフェイトちゃんが質問する。

「それは調査中や、この止める刃っていうのは恐らくうちらのことやと思う。だからこの太陽と月については最重要事項なんやけどね」

「人なのか、それとも物なのかも分かっていない。分かっているのは蔑ろにするなという事だけだな」

クロノ君もそう答えた。

みんなが何の事か分かっていないみたいだ。

けれど…もしかして。

アオの魔力光は輝く銀色、ソラは優しい金色。

そして二人のデバイスの名前…ソルとルナ。これはわたしたちの世界の言葉で太陽と月。

これは偶然?

side out


.
朝、さて朝練だと起きようとして腰に引っ付いている重みが…

布団をめくると中から金髪の幼女が…

「アオ、朝練だよ」

「ああ、分かっているんだけど…」

「ああ、ヴィヴィオね。ほんと懐かれたね」

「まあね、容姿がここまで似ているとさすがに分かる。恐らく俺とこの子は同一人物のクローンだろう」

「だね」

「まあ、さしあたっての問題はどうやって抜け出すかって事。いないの分かると泣いちゃうだろうし」

と言うか、ヴィヴィオってなのはさんの部屋で寝てなかったっけ?

何があったのかソルに聞くと、夜中に寝ぼけながら部屋に入ってきてそのまま布団に潜り込んだんだって。

おかしいな、普通なら俺やソラは誰か入ってきたら気配で起きそうなものなのだが…

まあ、その理由も何となくわかる。

ヴィヴィオのオーラが俺に似ているから自然とすり抜けたのだろう。

まあいい、理由が分かったんだから後は送り届けるだけ。

俺はヴィヴィオにレビテーションを掛けて起こさないようになのはさんの部屋へと送り届けたのだった。


朝練終わって朝食へ行く途中の中庭。

「おねえちゃーーーーーん」

駆けてきたヴィヴィオが俺に抱きついてきた。

「ヴィヴィオ早すぎだよ」

その後ろを駆けてきたフェイトさん。

「て、なんでお姉ちゃん?」

「えっと、私となのはが後見人になったって言ったんだけど…まあ、後見人って言葉が分からなかったから『ママ』って事になったんだけどね、その時にアオの事になってね。ちょっと説明するのに困ってとっさに…」

「お姉ちゃんだよって?」

「うん…その、ごめんね」

「いや、良いんだけどね、どう見ても姉妹に見えますし」

「ホントごめんね」

手を合わせてすまなそうな顔をする。

「それで?ヴィヴィオ、俺達はこれから朝ごはんだけど一緒に行く?」

「うん!」








ある日の朝練の前。

「さて、今日の朝練の前にひとつ連絡事項です。陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が今日からしばらく六課に出向になります」

そう、紹介するのはなのはさんの隣にいるスバルに似ている女性。

「はい、108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」

そう言って敬礼をするギンガさん。

「それともう一人」

紹介されたのはマリエル・アテンザさんというデバイスマスター。

まあ、こっちはどうでも良いや、どうせソルたちは見せないし。

最低限度のことは自分で出来るし。

その後、ヴィータの言葉で朝練が始まる。

フェイトさんがライトニングの二人を呼んで訓練場の裏の林に向かう。

ティアナはヴィータに呼ばれたようだ。

俺はソラと自主練習。

ヴィータやシグナムとはあまり一緒に居たくないと言う心情をなのはも分かっているので強く言えないようだ。

「ギンガ、ちょっとスバルの出来を見てもらって良いかな?」

ギンガに近づいたなのはがギンガに頼みごとをしたようだ。

「はい」

「一対一で軽く模擬戦。スバルの出来を確かめてみて」

朝練が始まる前にどうやら一戦あるようだ。




ローラブーツで加速してクロスレンジでヒットアンドアウェイ。

二人とも同じシューティングアーツだからある意味鏡合わせのようだ。

今は地上戦からウィングロードを駆使した空中戦を繰り広げている。

「どうかな?」

「どうして俺に聞くんですか?」

皆より少しはなれた所で見ていた俺とソラのいる所にやってきたなのはさんの質問。

「一番戦闘技術が高いのはアオちゃん達だもの」

なるほど、この前少しやり過ぎたらしい。

「そうですね、ウィングロードの使い方が少し…なんであんなので空中戦してるんでしょうね」

「え?」

「あれは空中を移動できるだけで戦闘には不向きですよ。垂直方向への移動が困難です。航空魔導師と空中で戦えば絶対に勝てません」

「そう…だね」

今まで考えたことなかったのか?

「でも、あれは障害物としては中々のものです。俺だったらトラップとして使うかな」

「この前わたしに使ったスパイダーネットみたいに?」

「ええ、その使い方をすれば空を飛ぶ敵の機動力を大幅に殺ぐ事が出来ますしね。後は逃げる敵の進行方向に先回りが出来れば壁にもなります。そういった使い方のほうが有用かと。有体に言えば空中戦をさせているのは馬鹿じゃない?といった所ですね」

「手厳しい…」

しょぼくれた顔をしながら戦闘を終えたギンガとスバルの方へと歩いていくなのは。


「じゃあ、皆しゅうごーう」

ギンガと言葉を交わしていたなのはが集合の合図をかけた。

「せっかくだからギンガも入れたチーム戦やってみようか。フォワードチーム七人対前線隊長四人チーム」

「え?」

驚いた表情で固まるギンガさんの表情が結構間抜けです。



さて、試合開始…したのは良いんだけど。

シャーリーやマリエルと言った面々がデータを取りながら観戦している中で全力戦闘は出来ない。

適当に負けるかな。


そんな感じで穏やかに時間が過ぎていく。

しかし、そこで思いがけない事件が起こったようだ。

なにか他人事の様な言い方だけど仕方ない。

他人事だし。

その話を聞いたのはある日の夕食後、ティアナをつれて夜の自主練習中、ティアナに神速の訓練をつけていた時の事。

凄い剣幕で走りよってきたなのはが俺に告げたことだ。

「翔君が居なくなったの!」

息を切らせながらもそう告げた。

「と言うか誰ですか?その翔って」

詳しく聞くと病室に何者かが侵入、入院中だった八神翔が連れ去られたようだ。

「それで恨みを持っているだろう俺たちに確認しに来たと…」

「えと…その……はい」

「ちょっと酷くない?」

犯行時間には俺たちは六課内に居ることが確認されているのでアリバイは完璧なのだが。

「殺し損ねていたのは残念だけど、いま少し我慢すれば地球に帰れるこの時期に好き好んでそんな事しないよ」

「……そう」

俺の答えに少し複雑な表情を浮かべた。

「しかし、何のためにそんな死に損ないを浚ったのか……魔導師としては終わっているのに」

その答えは暫くして知ることになる。




俺たちは今、良くわからないけれど地上本部で行われる意見陳述会の護衛と言う任務のために一日前の夜から徹夜で警備に当たっている。

なんでもガジェットが意見陳述会を襲う可能性があるんだって。

だから俺たちの部隊は嫌われながらも天下御免で割り込んだようだ。

と言うか、10歳そこそこの子供に警備で徹夜させて周囲の警戒させる組織って…


「さて、わたしはそろそろ中に入るよ。でね内部警備の時デバイスは持ち込めないそうだから、スバル、レイジングハートの事お願いしていい?」

「はい」

なのはさんがそう言ってレイジングハートを取り出しスバルに渡した。

「アオちゃん何かな?その呆れ顔は」

「いえ、武器をはずして内部警備?なのはさんって無手での戦闘ってどの位か自分でわかっている?」

「えっと…一応訓練はしているんだけど」

「そこらの警備員と変わらないっと。そんな状態で内部警備?笑わせる」

「うぅ…」

「その状態で敵に襲われたら自分の身を守ることも出来ないんじゃないですか?はっきり言ってスバルが中に入った方がよほどマシ」

「……はい」

「まあ、アホな上司を持つと大変だって事だね」

「ちょっとアオ!八神部隊長の悪口言わない!」

「俺は正論を言ったまで。武器を持たないなら誰でもいいじゃない。高ランク魔導師を腐らせるとか…何がしたいかわからない」

言うことは言ったと俺はその場を離れて警備に戻った。


さて、そろそろ意見陳述会が終わろうと言った時、事件は起こった。

空から飛来する無数のガジェット。

「あらら、何事もなくとは行かなかったか」

「そうだね」

一緒に警備していたソラが同意した。

まずは外で警護していたティアナ達と合流する。


「副隊長!あたしたちが中に入ります。なのはさん達を助けに行かないと」

うん!と、うなづくスバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人。

「あ、俺たちは空に上がるんで」

「何だと!?」

ヴィータが怒ったような声をあげる。

「俺たちの任務はガジェットの破壊、隊長たちの救出じゃないはずですが?」

「ぐっ!…わかった。しくじんじゃねーぞ」

「了解しました」

俺たちはすぐに飛行魔法を使用して空に上がった。



先遣隊が防衛に当たっていたはずなんだけど…

「全滅?」

「そうみたい…あいつらが原因かな」

目の前に居るのはどうやら説明にあった戦闘機人らしい人影が二つ。

片方は四肢からフィンの様な物をだし、もう一人は大きなブーメランの様な物を二つ両手に持っている。

「Fの遺産。捕獲対象が向こうから出向いてくれた様だぞ。セッテは左のやつを頼む」

「分かりました」

なんか向こうはやる気満々らしいな。

「来る!そっちは任せた!」

「わかった」

ソルを構えて身構える。

「IS発動、ライドインパルス」

言うなり凄い速さで俺に接近してきた。

なるほど、高速機動型か。

速い…けど、残念。

写輪眼の前では無力。

突っ込んでくる相手に念で強化した拳をカウンターで放つ。

「はっ!」

「なっ!」

向こうの加速によるダメージも重なり吹っ飛んでいく。

地上に激突してクレーターを作り粉塵をあげている。

一丁上がり。

あれはもう立ち上がれまい。

ソラの方をみるとそちらも終わっていた。

相手の武器をルナで切り壊したうえで、俺が打ち落とした上に思いっきり殴り飛ばしたようで、俺が作ったクレーターのすぐ横にさらに抉れる様にして埋まっていた。

「さて、回収しに行くか」

「うん」

俺たちは高度を落として近づいた。


side はやて

私は今、地上本部で閉じ込められたお偉いさん方へのガジェットや今回の襲撃の説明をしている。

私自身も閉じ込められてしまって外の事が良くわからないのが気がかりやけど、私は私がしなければならない事をするでだけや。

カリムも一緒に居てくれるのはとても心強い。

ほんま頼れるお姉ちゃんってかんじや。

ドガーン

説明を繰り返している最中、隔壁が下ろされている扉の向こうで爆発音が聞こえた。

「なんや!?」

すると今度は扉が爆発する。

「主!」

隣に居たシグナムが私をかばい床に倒れこむ。

「お怪我は?」

「シグナムがかばってくれたから大丈夫や」

私はシグナムと一緒に立ち上がり、爆発で開いた扉を見る。

するとそこに居たのは。

「え?何でや!?」

「な!貴様は!?」

私とシグナムの驚きは同時やった。

それもそのはず、そこに居たのは二度と目覚める事のないといわれ、つい先日行方不明になった私のお兄ちゃんだったのだから。

side out


「くそ!なんで六課が襲われているんだよ!?」

俺とソラは六課からの救援要請を受けて全力で空を駆けている。

「狙いはいったい?」

「レリックを集めるのに障害だと感じたから?」

「わからん」

状況は深刻だ。

防衛に出たはずのシャマルとザフィーラの二人がどう言う訳か強制召喚されてどこかへ消えてしまったらしい。

「そんな事が出来るのか?」

通信越しにシャーリーに問いかける。

「八神部隊長ならば可能かもしれないわ。彼女たちのマスターは部隊長でもともと彼女を守るシステムのひとつだったらしいから」

「にしても何でこんな時に!」

「見えた!」

視界にようやく六課を捕らえた時、こちらに迫る大出力の砲撃が迫る。

最小の動きでそれをかわしつつ、六課を目指す。

「あれは?」

「戦闘機人みたい。一人は今の光線が主体か、もう一人見えるけど、どうやら武器はツインセイバーかな?」

併走しているソラが答える。

「一撃で落として六課に急ぐよ」

「わかった」

なおも打ち続けられる砲撃をかわして戦闘機人へと近づいていく。

「はあっ!」

二刀を持っていた方が向こうから近づいてきて手に持った武器で斬りかかる。

「邪魔!」

俺はそれを一刀の元斬り伏せてそのまま海面へと叩きつけた。

そのまま、もう一人へと近づいていく。

「な、なんで当たらないんだ?」

焦る戦闘機人を尻目に懐までもぐりこんで一閃。

「修行が足りないからだ!」

二人目も水面に叩きつける。

「ソラ!後をお願い」

「仕方ないな…ヴィヴィオをお願い」

「分かっている」

無力化した二人をソラに任せてひたすら空を翔る。

目にした機動六課の隊舎はひどい有様だった。

ガラスは割れ、壁は崩れ、所々火の気が上がっている。

すぐさま『円』を広げてヴィヴィオのオーラを探る。

あれ?無い?

そんな、そんな馬鹿な!

どこに居るの?

ソルの力を借りて目いっぱい円を広げる。

しかし感知できたのはこちらに向かって大量に飛来するガジェットだけだった。

『シャーリーさん、ヴィヴィオは?』

モニターに写るシャーリーさん自身も大量に血を流しながらも何とか答えてくれた。

『ごめんなさい…連れて行かれちゃった…連れて行かれちゃったのよ…ごめん…なさい』

そう、シャーリーさんは涙を流して教えてくれた。

「アオ…」

声を掛けて来たのは遅れて到着したソラだ。

その隣にフェイトさんと本来の姿に戻ったフリードに乗ったキャロとエリオ、その背中に縛られて連れて来られた戦闘機人が二名。

「ヴィヴィオ連れて行かれたって。こいつらの仲間に」

そう憤った俺を諌めたのはフェイトさんだった。

「アオ!今は放心している時じゃない。大丈夫、浚われたのなら助け出せばいい…ね?」

「………」

「それに今はあのガジェットをどうにかするのが先決。あれにこられると機動六課の皆が死んじゃう」

「……はい」

「いい子だ」

それからフェイトさんはキッとガジェットに向き直る。

「限定解除申請が出来ない今、どれだけ出来るかわからないけれど」

そう言って詠唱を始めるフェイトさん。

「ファランクス」

幾つものスフィアがフェイトさんの周りに現れる。

その一つ一つから放たれる砲撃。

「くっ!数が多い」

「手伝います」

「え?でも…」

「大丈夫です。広域殲滅魔法も覚えています。…ソラ!」

「うん」

『『ロードカートリッジ。デアボリック・エミッション』』

薬きょうが排出されてチャージが始まる。

「それってはやての!?なんで使えるの?」

「覚えたから」

「それはそうだろうけど…そうじゃなくて!」

「今はどうでもいいじゃないですか」

俺はソルを掲げるとぐっと力強く握りこむ。

「「デアボリック・エミッション」」

空間殲滅魔法がガジェットを飲み込むと爆発。

今ので半分くらい持っていったかな。

つか、結構魔力の消費が半端無い。

だけど、次で最後。

『サンシャインオーバーライトブレイカー・レインボウシフト』
『ルナティックオーバーライトブレイカー・ジェノサイドシフト』

散らばった魔力が振り上げたソルとルナの刀頂に集まる。

「収束砲…」

そう呟いたのはいったい誰だったのか。

「サンシャインオーバーライトぉ」
「ルナティックオーバーライトぉ」

「「ブレイカーーーーー!」」

二つの凶砲が走り、空間が悲鳴を上げる。

そしてガジェットをなぎ払っていく。

扇状に射出された俺のブレイカーと螺旋を描いて広がっていくソラのブレイカーに挟まれて現存していたガジェットはすべて撃墜された。

「ははは…」
「凄いですね…」
「なんか僕たちは本当に何もしてないですね…」

フェイト、キャロ、エリオがそう洩らした。

さて、その後はすぐに六課の内部に取り残された局員の救出へと向かった。







状況が落ち着いた深夜の事、俺とソラはなのはさんに呼ばれ、フェイトさんと一緒にベルカ自治区に来ていた。

教会のような建物の中の一室で出迎えてくれたのは聖王教会の騎士、カリム・グラシアと言う人だった。

テーブルに設けられた椅子に座ると、初対面だったお互いの紹介を軽く済ませる。

「それで、今回どうしても直接お話しなければならない事が有ってお呼びした訳ですが…」

「はやての事ですね」

と、フェイト。

「ええ、それで…その」

「ああ、この子たちの事なら気にしないで大丈夫ですよ、もしかしたら予言に関わっているのはこの子達かもしれないので」

「この子達が?」

さて、どうでも良いけれど、二人だけで納得してくれないでくれないかな?

予言ってなによ?

「今はそれよりもはやてちゃんの事を…」

「あ、はい」

失礼しました、と少し間をおいてから話を切り出した。

あの地上本部が襲撃された時、カリムははやてと一緒に閉じ込められていたようだ。

その時現れた一人の青年にはやてとシグナムは驚きながらも自らの足で着いて行った。

青年の格好を見るに、あの独特のスーツの感じが他の戦闘機人に通じるものがあったため、スカリエッティの関係者だろうと言う点。

どうやら過去に面識があったように見えた事などを話して聞かせた。

「…………」

話しを聞き終わり、一同沈黙が訪れている。

何を話したら良いのか分からないようだ。

さらに悪い事にギンガ・ナカジマは浚われ、リイン隊長は撃墜されてメンテナンス中。

気を失っているところを管理局局員によって発見、保護された。

一緒に居たはずのヴィータ副隊長の行方も他の騎士達同様行方不明。

俺にしてみれば八神部隊長やシグナムたちがどうなろうが知った事ではない。

しかし、今、彼女らが居ないとなると、部隊は立ち行かず、ヴィヴィオの救出が行えないという事。

「このままでは予言が成就してしまう」

深刻な顔で呟いたカリム。

「予言って何ですか?」

「それは…」

「教えてやってもらえませんか…多分無関係じゃないはずです」

言いよどんだカリムを諭したのはなのはだ。

「…分かりました」

そして読み上げる一つの予言。

レリック事件から始まる管理局の崩壊の予言。 

「銀の太陽と金の月…ね」

「…アオ」

「ああ」

「何かお分かりですか?」

「…俺たちのデバイス、ソルとルナ。なのはさん、この二つの名前の意味って知ってます?」

「……わたしたちの出身世界『地球』の言葉で、太陽と月…」

「正解」

「じゃああなた達が?」

「俺たちの魔力光は銀と金。まず間違いないんじゃないかな」

「でも、だからと言って私たちが何か出来るわけでもない」

「…予言には蔑ろにするなとあるわ。あなた達の望みはあるのかしら?」

ふむ、望みか。

地球への移住とか、いろいろあるけれど、先ずは…

「ヴィヴィオ救出のお膳立て、実行は俺たちにやらせてほしい」

「……最善はつくすわ、だけど状況が厳しい。はやてが居ない事には六課を動かす事が困難だもの」

「うん、私もそう思う」

カリムの答えに同意するフェイトさん。

「……偽者でも居ればいいの?」

「え?」

頭が行方不明で動かないなら、偽者でも居れば良いのならば何とかなるかもしれない。





なのはやフェイト、カリムらの働きで機動六課本部を戦艦アースラへと移してミッド地上の仮本部として使用する事になった。

なのはさんやフェイトさんはなにやら感慨深いものがあるようだが、俺はその辺りを良く知らない。

捕まえた戦闘機人4名からの事情聴取は難航を極め、未だにほとんど情報を得られていないと言う。

と言うか、身柄は地上本部に持ってかれたからさらに分らないのだが。

さてさて、俺達の部隊は相変わらず地上本部からは厄介者としてハブられている、とはいえ抜け道はあるもの。

俺達の任務はレリックの確保とガジェットの対処、その為ならば天下御免で出動できるって訳だ。

アースラ艦内で今後の打ち合わせをしていた時、けたたましいアラートが鳴り響いた。

皆急いでブリッジへ向かう。

襲撃された地上の守りであるアインヘリアル。

そのすべては破壊されつくしている。

そして大地を裂き浮上する巨大戦艦。

スクリーンに映し出される画像には幾つか衝撃の事実が含まれていた。

「ギン…ねぇ…」

敵の戦闘機人に混じって管理局に敵対行動を取っているギンガ・ナカジマ。

さらにスカリエッティによって届けられる巨大戦艦内部で貼り付けにされたように座っているヴィヴィオ。

「ママ!…おねぇちゃん!…痛いよ…怖いよ…」

痛みに怯え、孤独に泣いている。

その隣に居るのは居てはいけない人物。

「はやて!?」

「翔…くん?」

「それにシグナム副隊長にヴィータ副隊長」

「それにあれはシャマルさんにザフィーラ…」

フェイト、なのは、エリオ、キャロの順に反応した。

見間違いかともう一度モニターを確認してから、ブリッジ艦長シートにいるはやてに顔を向ける。

皆の視線がアースラにいるはやて部隊長に集まる。

「地上本部より通信が入っています。あそこに居る八神2佐は本物かという事ですが…」

シャーリーが通信用件を読み上げる。

「偽者や、本物はちゃんとここにおる!返信した後、今後は聖王教会のカリムを通してもらって」

「…わ、わかりました」

「まずは作戦会議や、皆会議室へ来てくれるか、その後アースラ艦外への通信はすべて遮断。その後機密レベルAや」


アースラ内の会議室へ集まった主要メンバー。

皆席についてはやての方を向いて、その言葉を待っている。

「さて、厄介な事になってもうた」

「さっきの偽者の件ですね」

「ティアナ、その件なんやけどね」

「どうかしたんですか?」

「実はこっちが偽者だったり…」

ボワンっと音がして煙が晴れるとそこに現れたのは金髪に虹彩異色の少女だ。

「あ、アオ!?」

俺の隣に居たシグナムもいつの間にかソラに変わっている。

そう、あの時、カリムと会った時から俺たちはいつまで経っても戻ってこない八神部隊長に変化していたのだ。

すべてはヴィヴィオを助け出す舞台を作り出すためだけに。

「え?じゃあこっちのアオ達は?」

「ああ、俺たちはっと」

「実は私たちも偽者だったり?」

そう言って俺たちは影分身を回収した。

その結果ヴィータやシャマルも姿を消す。

「な!?」

一同驚愕のうえ思考が追いついていない。

「シルエット?…違うわね。きちんと受け答え出来るシルエットなんて無い。って事は変身魔法の類、だけど…」

すばやく再起動したティアナが問いかけてくる。

「まあ一種のレアスキル。詳細は教えない。つまりはあのアホどもは地上本部襲撃事件以来行方不明だった。まあ、さっきまでは…だが」

「アホって…」

「裏切り者と言わないだけマシだっただろう?」

「う、裏切りって?」

「実際はわからない、だが、さっきの映像を見るにスカリエッティについた可能性がある」

「そんな…きっと何か訳が…」

「理由はこの際重要ではない。問題は敵のすぐそばに居たと言う事実だ」

「…つまりアオちゃんははやてちゃん達と戦う可能性があるって言いたいわけ?」

なのははあの時あの場に居たし、八神部隊長が戻ってきてないのを知っていたため現実を受け入れるのが他の人より早かった様だ。

「そうだね。今の地上の魔導師達であの人たちと戦って勝てる人はいる?」

少し考えてからなのはさんが答える。

「…一対多で一人一人戦えば何とか…だけど、はやてちゃんを加えてチームとしてだとたぶん誰も敵わない。遠距離殲滅、近距離攻撃、盾に回復。そういった意味では理想的な能力分担」

「それじゃなのはさんとフェイトさんの二人でも?」

「シグナムさんとヴィータちゃんを抜けないし、はやてちゃんの援護射撃が有る分不利」

「なるほど…そう言えば先ほどモニターに映っていた男は?」

「あれは八神翔くんで間違い無いと思う」

「八神翔って確か…」

「あの八神部隊長のお兄さんで元SSS魔導師。確かこの前浚われたんじゃ…」

キャロの呟きにエリオが答える。

「でも確か昏睡状態だって聞いたわよ。映像を見る限りじゃ普通に動いているじゃない」

ティアナが疑問を発する。

「おそらくスカリエッティが何かしたんだと思う。生物工学に関しては天才だから」

長年スカリエッティを追ってきたフェイトが答える。

「…もしかしてだけど八神部隊長達は」

「翔くんを人質に取られたって事かな」

ティアナの言葉を継いだなのはがまとめた。


「さて、今後の俺達の動きなんだけど、俺がさっきまで八神部隊長の偽者を演じていた時の命令を伝えるね。俺たちは3グループに別れて地上局員の援護だそうだ」

「3グループ?」

「巨大飛行船の撃破、市街地の防衛、スカリエッティの逮捕の三つ」

「高濃度のAMF戦と戦闘機人との戦闘経験があるのは私たちだけだからね」

「そう言う事だね」

「そういう訳だから、空を飛べる俺とソラ、なのはさんが巨大戦艦撃破及びヴィヴィオの救出、空の飛べないスバル、ティアナ、エリオ、キャロはギンガさんの保護と地上に侵攻している戦闘機人の撃破、最後にフェイトさんとリイン隊長はスカリエッティの逮捕って事で」

「え?私ははやてちゃんの所に…「行かせませんよ?」え?」

「行ってどうするんですか?ちゃんと戦えるんですか?」

「たたか…う?」

「そうです、説得とかしている間に市街地の被害が増えるんです。はやて部隊長達数人にかまっている内に失うその他大勢の命の方が組織としては大事です。どれだけ速く状況を解決できるかの瀬戸際にその場をかき乱すだけの存在は不要。どうしてもと言うならば部隊長権限で謹慎してもらいます」

「あなたにそんな権限はありません!」

ふふっと俺は笑ってから変化。

「ここでは私が部隊長やよ。私の言う事を聞けへんていうんなら懲罰房にはいってもらう」

「な!でもあなたは偽者!」

「今ここにおいては本物や。カリムの後見もあるしな」

「本当なんですか!?」

驚愕してなのはに確認を取るリイン隊長。

「…本当よ。あらかじめはやてちゃんが敵になるかもしれないって私たちは分ってたからね、騎士カリムと打ち合わせて、偽者でも今の部隊長はそこに居るはやてちゃんなんだよ」

「そんな!」

「悪いが反論は受付へん。それじゃ皆準備をして現場に向かってくれな。解散」

その場を強引に押し切って会議室を出る。

まあ、ぶっちゃけ俺が現場に行ければ後はどうでもいい。

スカリエッティは…まあ、ヴィヴィオを誘拐してくれやがった償いをさせてやるが、市街地にどれだけ被害が出てもぶっちゃけ知った事じゃない。

知らない不特定多数よりも知っている一人が大事なんだよ、俺はな!


その後は一部を除いて皆プロだ。気持ちの整理をいち早くつけて状況に当たっている。

さて、飛行可能な魔導師はアースラの下部ハッチからテイクオフな訳だが…

「……いい加減バリアジャケットくらい展開してくれませんかね?」

「え?そんなの空中で展開すればいいじゃない」

と、なのはさん。

「「……………………」」

「な!何!その呆れ顔は!?」

「……はぁ」

俺はため息をつく。

「バリアジャケットは服の形をした魔法なんですよね?」

「え?そうだよ?」

「着ているだけでも最低限の身は守れるんですよね?」

「う、うん」

「じゃあ展開しないで飛び降りて超長距離から狙撃されたら?」

「防御魔法を展開する」

「その一撃がバリアを抜くほどの威力だったら?」

「………」

「なのはさんはそこで死亡。バリアジャケットがあれば防げたかもしれないダメージをもろに食らうと」

「うぅっ…ごめんなさい…」

「フェイトさんはそんな事しないよね?」

「うっ…もっもちろんだよ?ば…バルディッシュ」

『イエッサー』

そう言っていそいそとバリアジャケットを展開する。

「あー!フェイトちゃんの裏切り者!」

その後ちゃんとバリアジャケットを展開してカリムさんから限定解除をもらってから出撃。

出発するのは俺とソラ、フェイトとなのはの四人。

リイン隊長は結局八神部隊長の所に行くとうるさかったので懲罰房に放り込んでおいた。

逆に説得されて敵になられては敵わない。

フェイトさんとは途中で別れ俺たちは一路聖王のゆりかごへ。

ガジェット飛び交う激戦地へと到着したんだけど…

「航空魔導師がほぼ壊滅…」

その光景を驚愕の表情で見つめるなのは。

「広域殲滅魔法持ち…それも実質地上トップレベルがいれば当然か。しかもリミッターが解除されているようだ。流石は天才と言ったところか」

「アオ、あっち。収束砲」

ソラが示した先を見ると、こんな状況の中航空魔導師の中から巨大な魔力反応。

「ブレイカー級砲撃」

すごいな。ちゃんと大威力砲撃が出来る地上局員もいたんだ。

「撃った…これならいくらはやてちゃん達でも…」

放たれた極大の砲撃はまっすぐ八神部隊長へと走り、飲み込んだ。

しかし、光が止むとそこには無傷の八神達の姿があった。

「嘘!」

「ソル」

何があったと問いかけた。

『あの青年から放たれた広域のラウンドシールドが砲撃を拡散させて直撃から守ったようです』

「うわぁ…リンカーコアは無いはずなのに…スカリエッティに改造でもされたか?」

「改造って…」

「ともかく。ブレイカーすらほぼ無傷なんだけど、勝てる?アレ」

「………」

俺の質問に沈黙で返すなのは。

なのはの最大の必殺技すら無傷で凌げそうな敵に魔導師達が勝てえるはずもなし。

なのはの攻撃が通じないんだから俺達の魔法が通じないのは自明の理。

どうしよう。

俺達の苦手としている空間系の殲滅魔法を使えるはやてが敵にる状況。

狙撃しようにもめちゃくちゃ硬い盾がいる。

問題は連続で展開できるのかと言う所だが、ブレイカー級の収束には10カウントほど時間がかかる。

俺とソラ、なのはさんで3連射が限度。

すべて凌がれると魔力消費が馬鹿にならない上に次弾のチャージ中にシグナム達に近づかれると厄介だ。

もしくは防御されつつはやてのカウンターで殲滅されかねん。

あれ?詰んでねえ?

「アオちゃん?何か策はある?」

策と言われても、そんな大層な物は無い。

「近づければどうとでも出来る。問題は近づけるかという事」

「近づける?」

「空間殲滅の直撃を食らわなければ恐らくは」

俺はソルのリボルバーを開き装填されていたカートリッジをすべて抜き出す。

ソラも俺に倣って入れ替えを始めた。

「アオちゃん?ソラちゃん?」

懐からスピードリーダーを取り出して装填。

「一体何を?」

「ちょっと特別性の物に取り替えただけです」

「特別性?」

「まあ、詳細はどうでもいい事です。なのはさんはこの位置から八神部隊長が撃って来るだろう砲撃の相殺をお願いします」

「あ、うん。アオちゃん達は?」

「俺たちは何とか近づいて無力化してきます。ソラ!」

「いつでも行ける」

心強い事で。

「練」

『ロードオーラカートリッジ』

ガシュガシュガシュと3発ロード。

全身をオーラで覆い全身を強化する。

「ゴー!」

ゴウッ!っと音を立てながら音速もかくやと言った勢いで一気に目標めがけて空を駆ける。

「速い!」

ビックリしているなのはさんの声はすでに聞こえていない。

飛んでくる砲撃をかわしつつ、その距離を詰める。

「悪いがこれも主のt」
「はやてがかなs」

なんか言っていたシグナムに思いっきり『硬』で強化したコブシを叩きつける。

内臓系がかなりやばい事になってるかも知れないけれど、ソルを振るわなかっただけマシだと思ってくれ。

本気でやったら真っ二つだよ。

隣を見るとヴィータも同様に吹っ飛ばされている。

【なのはさん。二人の回収お願いします】

【え?】

【速くしないと死ぬかもですよ】

【にゃ?】

その後一方的に通信を切ってさらに加速する。

「シグナム!ヴィータ!」

撃墜されたシグナムたちを必死に呼んでいる八神部隊長。

その隙を突いて駆け寄る俺。

しかしインターセプトされた八神翔の放ったバリアが俺の行く手を阻む。

「くっ」

「なんで?なんでや?」

いやそれは俺らの台詞。なんで裏切っちゃってくれるかな…

バリアを張っている翔に感情らしきものは浮かんでいない。

なにかプログラムに動かされているかのような違和感だ。

バリアに邪魔されて近づけない。

…だけどこの距離まで詰めれたのならやりようはある。

「天照」

俺は万華鏡写輪眼を発動、天照を使用して瞬時に八神部隊長のデバイス、シュベルトクロイツと夜天の書を燃え上がらせる。

「あつっ!」

すぐにデバイスから手を離したおかげで体には燃え広がらなかったようだ。

しかしこれで八神部隊長の攻撃は塞いだ。

その特異性からその殆どをデバイスに頼っている八神部隊長の魔法はこれで完全に封じたも同然。

ソラの方を確認するとザフィーラとシャマルを行動不能に追い込んだようだ。

とくにシャマルのダメージがやばそうだが、前世の恨みか?

「あんたが!あんたがぁ!」

ああもう、うるさいうるさい。

ちょっと黙っててくれないかな。

「月読」

瞬時に幻覚の世界にご招待。

「あああああああああ!」

次いで発狂した後気を失って飛行魔法もキャンセルされる。

今は翔が張ったバリアに乗っかっている状態だ。

バリアがとかれればまっ逆さまだろう。

続いて翔に月読を掛ける。

「…効果無しか」

最初から意思の無い物に対しては効果が薄いようだ。

むう、殺してもいいなら天照で燃やしてやるんだが…

あ、そうだ。

「ソラ!このまま攻撃を続けるよ」

「う、うん!」

相手にバリアを張らせたまま攻撃を続ける。

すると突如としてバリアが解除され、気を失って落ちていく。

「限界?」

「いや、酸欠か二酸化炭素中毒か…どちらにしても密閉空間で炎を燃やしていた結果だ」

そう、俺が天照で燃やしたデバイス二つが未だ燻っていたのだ。

人間である以上呼吸は必須。

バリアの中で燃えていた炎が辺りの酸素を食らい尽くしたのだ。

「アオ、行って!」

「分った…」

落ちていった二人にレビテーションを掛けるソラを残して俺はゆりかごへと向かった。

side ティアナ

今あたしはスバルたちと分断されて戦闘機人二名と交戦中だ。

相手の一人はスバルに良く似たタイプの戦闘機人。

今までのあたしなら敵の攻撃の速度について行けずに多大なダメージを追っていただろう。

だけど!

「はあっ!」

ローラーブーツでダッシュしてこちらに近づいてのヒットアンドアウェイ。

だけど今のあたしにはその動きがゆっくり見えている。

あのアオ達の遠慮しない地獄のような特訓でようやく最近何とか使えるようになった神速があたしに多大なアドバンテージを与えている。

『クロスファイヤー』

「シュート!」

敵のパンチを避けゼロ距離のクロスファイヤーでのカウンター。

「がは!」

「な!今助けるっす!」

クロスファイヤーをもろにくらいよろける仲間を助けるために中距離砲撃を繰り出してきたもう片方。

そのプレッシャーを感じて即時に神速を発動。

その弾丸のすべてをかわして距離をとり、今度はこちらの番とクロスミラージュで応戦。

「くっ…」

何発かヒットして相手に隙が生まれた。

『リングバインド』

よろよろと立ち上がろうとしていたスバル似の彼女ともう一人を拘束する。

「こんなもの!」

そう言って力任せにバインドを解こうと試みている。

しかし、あたしはそのわずかな時間を利用して収束砲の準備に入る。

『スターライトブレイカー・シフト・ファントムストライク』

この魔法は以前アオが使用したもの。

あの時はアオがあたしの体を使っていた。

けれどあのときの感覚はあたしの中に残っている。

何となくだけど今なら使えるような気がする。

「な!収束砲?」

「それもなんて魔力込めてるっすか!?」

あたしの目の前に現れた魔力スフィアを確認してその表情を真っ青にそめた。

「スターーーーライト、ブレイカーーーーーーー!」

放たれた極大の魔力の本流が戦闘機人を飲み込む。

辺り一面の建物は吹き飛び、ついでに多くのガジェットも巻き込んだようであちこちで爆発が起こっている。

「……はは…は」

なんちゅう馬鹿威力…アオ…あんたはあたしになんて物を仕込んでいったのよ…

粉塵が晴れると魔力ダメージでノックアウトしている戦闘機人二名が気を失っていた。

「……とりあえず、スバル達の援護に行かなきゃかな」

side out



『円』を広げてゆりかごを包み込む。

オーラの反応は二つ、その中にヴィヴィオのオーラを感知する。

どうしようか…

外装は恐らく対魔力、及び実弾兵器に対しての耐性は高いだろう。

未だに損害らしい損害が出ていないのがそれを証明している。

ならばどこから入る?

簡単だ。

今もどんどん排出されているガジェットの排出口。

そこならば他の所よりも装甲が薄いだろう。

『ロードオーラカートリッジ』

ガシュッと音がして薬きょうが排出される。

俺は勢い良くヴィヴィオに直線距離で一番近い射出口へと飛んで行き、纏ったオーラとすべて右コブシに集めて、力の限り殴りつけた。

ドゴンッと言う音を立てて外壁が破壊される。

滑り落ちてくるようにして排出口から外へと出ようとしているガジェットを一刀の元に切り伏せて進むと、どうやらガジェットの格納庫らしきところへ出た。

しかしその途端すべてのガジェットが俺を攻撃対象と認めたのか此方にむけてビームを放つ。

「ちぃ!AMFが重い」

阻害されるならばと俺は最初から魔導師としての戦い方を捨てた。

『フライ』

昔取った杵柄でキャンセルされそうになった飛行魔法を組み替える。

「相手にしている暇は無い!」

『ロードオーラカートリッジ』

再び高まったオーラを纏ってヴィヴィオへと続く直線距離にある外壁をそのコブシで粉砕しながら最短距離を進んでいく。

待っていろ!ヴィヴィオ!


side クアットロ

何なのあの子は!?

今私が監視しているゆりかごの鍵となる聖王のクローン。

それと良く似た姿をした少女。

恐らくは同型の人造魔導師素体。

しかしその発現した魔力光から遺伝子劣化が激しいと断定され、ゆりかごの鍵には成りえないだろうとの事だったから回収優先度は低かったのだが…

回収任務に参加していたお姉さまと妹たちをことごとく屠ったその子は十分に脅威足りえたのだけれど、手元にかの闇の書の主とヴォルケンリッター、それと今は大威力の防御魔法しか使えないとはいえ元SSSオーバーの魔導師だったあのお人形を加えた6人を物の数分で撃破し、今も壁を素手でぶち抜くと言うとんでもない事をやってのけている。

ゆりかご内はAMF濃度が高くて普段どおりに魔法は使えないはずなのに…だ。

しかし、データ上は彼女は魔法を使っていない。

恐らく何か別系統のエネルギーだとは思うのだけど、今も計測している機器はなんのエネルギー反応も示さない。

まさに異常。

「やばい、やばいわ。このままではドクターの計画が…」

早くあの聖王もどきを洗脳して迎撃の準備を整えないと。

私は急いでキーボードに手を躍らせたのだった。


side out

「おらあっ!後一枚!」

目の前の壁をぶち壊す。

中に入ると機械じみた玉座に拘束されて座っているヴィヴィオ。

「いらっしゃーい。お待ちしてました。こんなとこまで無駄足ご苦労様」

ヴィヴィオの隣にいるメガネの女性。

発する言葉が厭味ったらしくてなんか生理的に嫌いだこいつ。

「さて各地であなt」

「ヴィヴィオー!」

ヴィヴィオの隣にメガネが居るが、オーラをまったく感じない。

恐らくフェイクだろう。

そう考えて俺は一直線に駆け寄る。

「あらあらせっかちね」

「ううあああああああああっ!」

メガネがそう言った途端ヴィヴィオが苦しみだした。

その体から虹色の魔力を垂れ流し、その奔流で俺の体の進攻を止める。

「うあああああああ!おねえちゃん!おねえちゃん!」

あのメガネが何をやったのか、良く分らないが、自分の意思で出しているわけではなさそうだ。

「ヴィヴィオ!俺の眼を見ろ!」

「お姉ちゃん?」

「大丈夫だから!」

「あらあらだめよ陛下、騙されては。その子は陛下のおねえちゃんj「月読」…」

メガネが何事か言っていたが無視。

何かに操られているにしろ、どうやらそれは洗脳に近いもののようだ。

ならば此方も精神に干渉すればいい。

俺はここまで来る間に消費してかなりボロボロになった体に鞭打って写輪眼を発動、月読を使用する。

ヴィヴィオがどうにか俺の顔を見つめ返したその瞬間ヴィヴィオの体が力を失ったかのように弛緩した。

「な…何をしたのよ?」

単純に催眠眼を使って眠らせただけだが誰がお前に教えるかよ馬鹿!

俺は内心で毒づいてからヴィヴィオに駆け寄ると拘束していた拘束具を力任せに引きちぎる。

「ヴィヴィオ…」

玉座からヴィヴィオを抱えて来た道を戻る。

「くっ!誰が陛下を行かせるものか!」

ピピッっと言う音がすると円を広げた先のほうでガジェットがこちらに向かって移動してくるのを捕らえる。

だがしかし、残念ながら俺の脱出の方がだいぶ速い。

真下から一直線にぶち抜いてきたから穴から飛び降りれば射出口まで一直線だし、外に出れば今は阻害されている魔法もフルで使える。

急にけたたましい音を上げて鳴り出したアラート。

後一回穴をくぐれば外と言うところで目の前で穴が魔力のような物で塞がれてしまった。

それと同時に艦内のAMF濃度が上がり魔力の結合が殆ど出来なくなった。

…まあ、俺には関係ないけどね!

俺はヴィヴィオを抱えなおし、右手にオーラを集めて塞がれたばかりの穴にめがけて叩きつける。

バリンと小気味のいい音を立ててふさがった穴をもう一度開通させ、ふさがる前に通り抜け空中へと躍り出る。

俺は自由落下そのままにゆりかごから距離を取った。

地面が近づき飛行魔法を使用して減速、地面に着地する。

「アオ!」

「アオちゃん!ヴィヴィオ!」

ゆりかごから出てきた俺を察知したのか、地面に着くや否やソラとなのはに囲まれた。

「よかった、無事だったんだね」

「ええ。この通り、ヴィヴィオは無事に救出しました。ただ、精神やその体がいくらか弄られたみたいで…今は眠らせてますが、早く救護ヘリを呼んで…いや飛んでいったほうが速いか?」

「そうだね、ここまで無傷でヘリが飛んでくる事は難しいかな。もう少し離れないと……と言うか!ゆりかご!ゆりかごの中に戦闘機人は居なかったの?一応逮捕が目的なんだけど…」

「ああ、メガネが一人居ましたよ?と言っても安全なところで此方をあざ笑っていた所を無視してヴィヴィオをぶっこ抜いて来たからまだ居るんじゃないか?」

「ええ!?それじゃ中に逮捕に行かないと!」

「やめた方がいいんじゃないかな。ゆりかご内部はAMF濃度が唯でさえ高く設定されていたのにヴィヴィオが居なくなった事でさらに高くなったから…それこそ飛行魔法すらキャンセルされるくらいに」

「本当に!?」

「まあ、ヴィヴィオの救出でゆりかごの外部兵装は止まってるみたいだし、これならあとはほかの局員に任せても大丈夫だろ。…まあ、あのメガネはステルス機能が搭載されてるっていう情報だから逃げ延びられるかもしれないけれど…ソラ、悪い、俺はちょっと疲れちゃった」

「うん、分った。アオは休んでて良いよ」

ソラに任せて俺は体力回復に努めた。


side クアットロ

なんなのよあいつ!

あいつの所為でドクターの計画が後一歩のところで!

まあいいです。私さえ残ればいくらでも再興はできます。

私のお腹にはドクターのクローンがいるのですから。

あとはこのシルバーコートを使って管理局に見つからないようにゆりかごを出るくらい簡単。

しかし私の考えはゆりかごを出た瞬間に打ち砕かれたのだった。

side out


先ほどから周囲をソラのオーラが薄く漂っている。

ソラが使用した円のためだ。

『リングバインド』

ルナの声が響きわたり、ゆりかごの下方の何も無い空間にソラが使用したバインドが現れる。

いくら戦闘機人とは言えど、その体に生身の部分があるのならば微弱ながらもオーラは出ている。

念を習得していないのならばソラの円から見つからずに逃れる事は不可能だ。

「なのはさん。あそこのバインドにめがけて砲撃して下さい」

ソラが自分でやるのは面倒とばかりになのはさんに振った。

「え?何も見えないけれど?」

「いいから全力で!手加減無しでお願いします」

「う、うん…レイジングハート」

『ディバインバスター』

魔力の収束が始まる。

「ディバイーーーーーン、バスターーーーーー」

相変わらず鬼のような威力の砲撃だ。

寸分たがわずソラの設置したバインドを貫いて、その奔流はゆりかご下部に当り四散した。

砲撃が終わるとゆりかご下部からまっ逆さまに空中を落ちていく人影が。

「え?あれって?」

「あーたぶんあのメガネだね」

「え!?ちょっと!大丈夫なの?」

「機械なんだから大丈夫なんじゃない?」

「そんな訳無いじゃない!ちょっと何とかしないと」

うえ…正直どうでもいいんだけど…

『レビテーション』

ソラとルナが気を利かせてくれたようで、激突寸前でどうにか落下を食い止めた。

「後は任せます」

「う、うん。ヴィヴィオをお願い!」

なのはさんは一旦俺たちと別れて先ほど撃墜したメガネの逮捕に向かった。


さて、それからしばらくして、制御から離れたゆりかごを、遅れて現れた管理局本局の次元航行艇の砲撃でその質量を残すことなく消失させた。

これでこの騒動は一応の決着を見せた。


その後、部隊長のいなくなった機動六課は速やかに解体された。

部隊長から犯罪に加担していたのだから仕方が無い。

八神部隊長はじめヴォルケンリッターの面々はリンカーコアを厳重に封印されて拘置所送り、裁判を待っている。

その他の面々の殆どは前任の部隊に出戻り。

スバルとティアナは陸士108部隊、ギンガさんの部隊に引き取られたらしい。

キャロとエリオは今はフェイトさんの家で生活している。

未だ身の振り方が決まってないらしい。

ヴィヴィオはなのはさんが面倒を見る事になり、今は二人親子のような生活を送っている。

さて、俺たちはと言うと…


今、俺達は懐かしい一軒家の玄関前に居る。

「アオ」

「うん…」

意を決してインターホンを押す。

ピンポーン

はーい、と言う声が中から響いてきて。

「お帰りなさい。あーちゃん、ソラちゃん」

「「ただいま!」」 
 

 
後書き
TS設定と生かしきれておらず、さらに八神一家には酷いアンチになってしまいました。
そんな感じなのでエイプリルフールの特別掲載だったのですが…アンチも需要も有るかな?と思い再掲載しました。
最後に。作者は八神一家が嫌いなわけでは有りませんよ? 
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