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ドリトル先生と森の狼達

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第二幕その八

「ただお顔がいいだけでなくてね」
「女の人にもてて」
「いや、人格も教養も見事な人で。雅がわかっている人だよ」
「女の人とは?」
「愛し愛され。素晴らしいね」
 先生が見るにはそうなのです。
「とても素晴らしい人だね」
「ああした人になりたいとか思うことは」
「僕は誰かになりたいとは思わないから」
 このことも先生の特徴です、そのお考えの。
「だからね」
「それでなんだ」
「源氏の君は素晴らしい人だと思うだけだよ」
「ああした恋愛をしたいとかは」
「別にね」
 やっぱりです、思わないというのです。
「素晴らしい恋愛だけれどね」
「そう思うだけなんだね」
「駄目かな」
「いや、先生らしいね」
 王子は今はこう言うだけでした。
「ただ、やっぱり先生は源氏の君じゃないね」
「何か引っ掛かる様な言い方だけれど」
「気にしないで、とにかくこのお話はこれまでにして」
 そしてというのでした。
「お風呂から上がったらね」
「うん、お料理だね」
「お酒も出るよね」
「この十津川の地酒がね」
 出るというのです。
「注文してあるよ」
「ここのお酒も美味しいのかな」
「それは飲んでからだね、あとここのお料理も出るよ」
「十津川のだね」
「そちらも楽しもうね」
 先生はにこにことしてお話しました、そしてでした。
 お風呂を楽しんだ後でお部屋でそのご馳走を食べるのでした、執事さんと運転手さん、動物の皆も一緒です。
 浴衣に着替えた先生達の前に出されたそのご馳走はといいますと。
「蒟蒻、ですね」
「そうだね」 
 先生はお刺身を見ながらトミーに答えました。
「これは」
「蒟蒻のお刺身ですか」
「日本人はお魚をお刺身にしてね」
「お肉もお刺身にすれば」
「蒟蒻もするとは聞いていたけれど」
「はい、僕もスーパーで見てはいます」
 お刺身用の蒟蒻をというのです。
「ですがこうしてホテルのお料理で見ることは」
「はじめてだね」
「不思議な感じがします」
 とてもというのです。
「これは」
「そうだね、けれどね」
「美味しそうですね」 
 トミーは目を輝かせてです、先生に答えました。
「これは」
「うん、それにね」
「他のお料理も」
「あまごのお造りだね」
 王子は他のお刺身も見ました。
「それとお豆腐、湯葉もあるね」
「こちらも美味しそうだね」
「茸や山菜の天麩羅に」
「いたどりを煮たもの」
「あと茶碗蒸し、それと地元の野菜のお料理に」
 それにでした。
「サイコロステーキ、生麸のお吸いものだね」
「御飯もあって」
「どれも美味しそうだね」
「はい、本当に」
「山のものがメインだけれど」 
 この辺りはやっぱり十津川です、ですが。
 先生は卓の真ん中の大きなお魚の塩焼きを見てです、トミーにとても嬉しそうに言いました。 
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