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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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陳留編
  第6話 陳留の食事処にて

翌日の朝、約束通り凪たち3人と共に陳留へ行くことになったバサラは村を出発した。
その際に多くの村人から見送られ、別れを惜しまれることになった。
特に子供たちの反応は顕著であった。
「ファイアー」、「ボンバー」といった掛け声をバサラに送り、歌をせがむ始末である。
そんな子供たちにバサラは
「よっしゃあ!おれの歌を聴けー!」
とノリノリであった。
それを3人娘がなんとか止めようとしたが、結局2曲ほど歌ってから、村を出発したのだった。


太陽が真上に差し掛かる前には陳留に辿り着いた一行は、取り敢えず昼を食べてから用を済まそうと考えた。
凪たちの用とは、村で作った竹籠を売ることであった。
籠を見るとなるほど、しっかりと編み込んでおり、丁寧な作りになっていて、これなら売れるだろうと思わせる物であった。
(ちなみに村とはバサラが泊まった村ではない。)
凪たちの村は陳留からおよそ3日ほどかかる距離にある。
そのため、籠が売れたら、陳留で一泊して、村へ帰るつもりである。
一方のバサラは、村を出る時に餞別としてわずかばかりの路銀を貰っていたが、陳留に長居をする気はないので、凪たちが村に帰るまでの間、行動を共にするか、明日ここで別れ、1人で旅に出るか悩んでいた。
「どうすっかな・・・」
「どうしたんですか?」
「お前らと一緒に行くか、ここで別れるか悩んでてな。どうすっかな。」
「なんや兄さんそんなんで悩んどったんかいな。まあ、取り敢えず、まだ決めんでもええんやない?」
「そうなの、今はお昼が先なのー。」
「そうだな、取り敢えず昼飯食うか。」
昼食を取ることに決めた一行は、近くの食事処に入った。


「いらっしゃいませー!」
店に入ると厨房から元気な声でバサラたちを迎える挨拶が響いた。
厨房を見ると、凪たち3人よりもさらに幼いであろう娘がバサラたちを迎える挨拶をかけていたようである。
その娘は、頭に青いリボンを付けているのが大きな特徴であり、年相応の元気さと素直さを感じさせる雰囲気を持っている。
その娘を少し見てから一行は空いてるテーブル席に腰を下ろした。
そして備え付けのメニューを広げると
「おお!担々麺に麻婆豆腐、しかも激辛じゃねえか!他にもいろいろあるみてえだな!」
とバサラが驚きながらも嬉しそうにしている。
そんなバサラを見て凪が
「バサラさんは辛い料理がお好きなんですか?」
と聞いた。
それにバサラは
「ああ!辛いもん食べると心だけじゃなくて、体も熱く燃えてくるからな!おれにピッタリのもんだぜ!」
と答えた。
「私も辛い料理は大好物なのです。だから、それぞれ別々の辛いものを頼み、お互いのものを分け合いながら食べませんか?」
凪がそう提案し、バサラも
「おお!お前も好きなのか!ならそうしようぜ!」
と乗り気であった。
それを見ていた真桜と沙和は、
「に、兄さん本気か?こう言っちゃあなんやが、凪の辛いの好きは並やないで?」
「そ、そうなの。凪ちゃん、普通の人じゃ食べられないような辛さのものが好きだから、やめた方がいいと思うの。」
さりげなくバサラを止めようとしたが、
「望むところだぜ!むしろそれぐらいじゃないと心も体も熱くならねーぜ!」
と逆にノリノリになってしまった。
それを見ていた凪は辛いもの好きの仲間を見つけ嬉しそうに、食べるものをバサラと一緒に決めていた。
真桜と沙和の2人はそれを力なく笑いながら見ていた。
そんな2人も気を取り直して食べるものを決め、店員にそれぞれが食べるものを注文した。

注文して15分後ほどが過ぎ、
「お待たせしました。激辛担々麺に激辛麻婆豆腐、日替わり定食2人前になります。」
と店員が料理を運んできた。
一応分かるとは思うが、激辛担々麺に激辛麻婆豆腐は凪とバサラ、日替わり定食は真桜と沙和である。
日替わり定食の内容はごはんに汁物、青椒肉絲となっている。
示し合わせたわけではないが皆食事の前に手を合わせ
『いただきます』
と声を揃えて言った。
バサラと凪は、注文前に話していた通り、それぞれの料理を半分ほど分け合い食べている。
ちなみに2人の料理は真っ赤に染まっており、見ただけで辛いというのが分かるものである。
そのため真桜と沙和はなるべく2人の方を見ないようにして食べている。
そして激辛料理を食べている2人は、
「かあ〜!これだよ、これ!この燃えるような辛さがいいんだよ!食べてるだけで心も体も熱く燃えてきたぜ!」
「うん、うまい。やはり辛いものは最高だ。」
と嬉しそうに食べていた。
あ、ありえない。
この2人を見ていた人、それは真桜と沙和の2人だけでなく、店内にいたお客、そして従業員でさえそう思った。
料理を作った少女を除いて。
(あの2人のお客さん、激辛の料理が好きみたいだから、店で出せる1番の辛さで出したけど、喜んでくれたみたいでよかった。)
厨房の少女、典韋は心の中でそう呟きながら見ていた。
この典韋という少女はこの陳留の町で料理の修行をしながら食事処で働いている。
少女には、並外れて大食らいの幼馴染がおり、その幼馴染に料理を作っているうちに料理のうでが上がり、幼馴染の美味しそうな顔を見ているうちに、料理人になりたいと志すようになる。
それがいつか自分の店を持ちたいと思えようになるのは自然のことといえよう。
事実、真桜と沙和も気を取り直して自分たちも食べているが、美味しそうに食べている。
店内の客も皆美味しそうに食べている。
それを満足そうにして典韋は眺めている。
眺めながらも料理を作る速さを緩めることはない。
そして20分ほどが過ぎ
「ああ〜、うまかったぜ。あんなうまい料理久しぶりだったぜ。」
と満足そうにそう言うバサラ。
「そうやな〜、この日替わり定食の青椒肉絲もなかなかやったで。まさかこんなうまいとは思わんかったで。」
「なの〜。デザートの杏仁豆腐も絶品だったし、大満足なの♪」
ご機嫌そうにそう言う真桜と沙和が褒める。
「ああ、偶然入った店がこんなにうまいと思わなかったな。陳留に来る際は寄って行きたいものだ。」
そして凪がそう絶賛する。
4人とも料理に満足そうである。
そしてバサラが
「おお〜、まだまだ熱いぜ!よっしゃ!このまま歌うぜ!」
と叫びながら、立ち上がりギターを構える。
この行動に3人はやっぱりと言いたそうに苦笑していた。
だが店内はいきなりの行動に驚きに満ちる。
典韋もまさか歌うとは思わず混乱している。
だが、バサラは店内の様子に構わず
「よっしゃあ!!おれの歌を聴けー!!突撃ラブハート!!過激にファイアー!!」
歌いだす。
バサラの歌が店内に鳴り響き、それは店の外にも聞こえていた。
普通なら、そんな状況ならバサラたちは店から追い出されている。
だが、バサラの歌を聴いている人たちは最初は訝しげに見ていたが、歌が進むにつれて、バサラの歌に聴き入っている。
それは店の外で聴いている人たちもそうだ。
最初は店の中の歌を聞いて何事かと店を覗き込むが、バサラが歌っている姿と歌を聴いているうちにやはり歌に聴き入っている。
そして結果的にバサラの歌目当てに店内に入り料理を注文するため、店主も喜んで歌わせていた。
(半分以上はバサラの歌を気に入ったのもあるが)
そして典韋はというと
「すごーい・・・」
とただ感心していた。
「へへっ、おれの歌を聴きに来たやつがこんなにくるとはな。ノリがいいじゃねーか!!どんどん行くぜ!PLANET DANCE!!」
バサラの即興ライブはまだまだ続きそうである。



同じ時間、バサラが歌っている店の周辺にて、
「あら?」
「どうかなさいましたか?華琳様。」
「なんだかすごい人が集まっているところがあるけど、何かしら?」
「何かあったのかもしれません。様子を見てきます。」
「いえ、私も行くわ。あんな人だかり初めて見たし、なぜか気になるのよね。」
「気になる、ですか。」
「ええ、言葉にはできないのだけど、なぜか、ね。」
「は、はあ、そうですか。」
黒髪の女性はそう言うが要領を得ていない様子である。
華琳と呼ばれた少女は、気にしていない様子で
「とにかく、あそこに私も行くわ。後に続きなさい。春蘭、秋蘭。」
『はっ!!』



また新たな出会いが訪れようとしていた・・・

 
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