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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。

作者:デュースL
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閑話 第四話

 
前書き
お久しぶりです(白目

言い訳は私の呟きを参照にして下されば。

あと今回は今までで一番文字数少ないです。本当にごめんなさいうちのパソコンがぽんこつすぎて……。次回も引き続き閑話になると思います。 

 
 今日は空が澄み渡っていて爽やかな朝ですね! こんな日はセレーネ様と一日のんびり過ごすに限りますね!

 というわけで、改めてLv.3に昇格したクレアです! 冒険者になってから六年くらい経つのかな? 今日も今日とて武器を血と汗と共に握る毎日を送っています。
 あっさり言ったけれども、昨日の深夜で私は晴れてLv.3に上がった。Lv.2に上がった時のような偉業を成し遂げた訳ではないけど、とにかく私も胸を張って上級冒険者と呼ばれる部類に仲間入りした訳だ。

 Lv.3に至るまでの経緯を簡単に説明すると、私は約一週間前にとある隊商(キャラバン)の護衛にあたることになった。
 隊商(キャラバン)というのは名前の通り、同業者で隊のように連結して行商を行う人たちのことを言うんだけど、何となく解る通りこの人たちは結構なお金持ちである。隊を組むというのは各々の情報網を共有することも目的のひとつだけど、いざ盗賊たちに襲われたときにお互いを守るないし囮に使うためなんだそうだ。
 そのため隊商(キャラバン)が冒険者を護衛として雇用するのはそう珍しい話じゃない。まあ、そんなお金持ちな人たちが雇う冒険者なんて凄腕くらいしか居ないんだけど。

 んで、今回の冒険者依頼(クエスト)はそんな凄腕冒険者を募っていたけど、生憎大手ファミリアたる【ゼウス・ファミリア】を筆頭に実力のある冒険者たちはみんな出払ってしまっており、依頼人(クライアント)側としても早急に出発しなくてはならないという事情から私が採用されることとなった。

 この場合は厳密には強制任務(ミッション)と呼ばれる冒険者依頼(クエスト)である。一人の冒険者が冒険者依頼(クエスト)をこなせばこなすほど、ギルドから信用と評価を得ることができる。これはファミリアの等級(ランク)上昇にも繋がることで、同じように冒険者個人としての評価にも繋がる。
 その信頼が厚いと稀にギルド側から指名で冒険者依頼(クエスト)を発注されることがあるのだ。大体発注される冒険者依頼(クエスト)はギルド側としては重要案件だけど受注者が現れず野放しにされてしまっている物だ。
 つまり、私が今回護衛の任務についたのはそういう経歴があったわけだ。まあ資金稼ぎという下心丸出しの理由で冒険者依頼(クエスト)をこなしまくっていた私としては心苦しい限りの評価でもあるんだけど。

 ということで、私を含めて10人の護衛をつけての出発となった。行商と言ったとおり、彼らは各地を転々と回って物資を売買する商人さんだ。なので当然オラリオを離れることになった。
 久しぶりのオラリオの外は斬新だった。私としては13歳まで故郷に篭っていて、事故が起こってからオラリオにずっと駐在していたから実質初めてまともに外出したことになる。オラリオ内部のような住宅や人でごった返しているはずがなく、ただ自然が広がっている光景は感動すら覚えた。

 普通の場合だったらきちんと整備された舗道を通って目的地に行くんだけど、護衛を付けている時点で普通じゃないのは明白で、野獣やダンジョンから進出してきた祖先(オリジナル)のモンスターたちが巣くう危険地帯を通ることになった。

 まあ、目的地が王国ラキアという時点で大体お察しだよね。

 運搬物資も高級な武具ばかりで、ギルドも隊商(キャラバン)も焦っていた理由が良く解る。ラキアは戦争の神が統治する王国で、しょっちゅう戦争を起こしている問題児でもある。聞くところによると戦争を起こしている理由はただ気まぐれの神による仕業であるだけで、王国の宮廷の人たちは大変不本意らしいのだが、とにかくこの依頼が来た時点で近いうちまた戦争を起こすんだろうなぁと予測できる。

 そんなこんなで危険地帯を通っている間に野獣を始めとするモンスターたち、そして案の定大規模な盗賊たちに襲われたのだった。
 いやね、こんな簡単に言ってるけども結構苦しい戦いだったんだからね? モンスターたちはダンジョン内にいる奴らの方が強かったから問題なかったけど、盗賊に限って言えば相手は同じ人間だから色々と辛いものがあったんだから。私はビビって牽制しかしなかったけど、護衛についていたうちの一人が容赦なく盗賊を殺したのを見ちゃったりしたんだから。

 私の首が繋がっているのが良い証拠で、結局武具の運搬は無事に成功。帰りの道では盗賊に襲われること無く帰還することができた。その日の経験値(エクセリア)清算でランクアップしたというわけだ。

 今回の一件で何となく感じたけど、ランクアップするためには偉業を成さなければならないという俗説は正しくないんじゃないかと思う。多分、自分の限界を打ち破る何かしらを成し遂げなければいけないんだと思う。そうじゃないと私がランクアップした理屈が通らない。

 偉業を成さなければならない。この言い回しを吹聴しているのは地上で初めて人々に神の恩恵(ファルス)を施した神様たちだ。言っていることは正しいけれど、厳密な意味合い(ニュアンス)が違う。その曖昧な部分に、私は神様たちが人々に望んでいる何かが隠れているんじゃないかと思った。

 まぁ、娯楽のために降りてきたって言う神様たちなんだから、今更なことなんだけど。



 というわけで冒頭に戻り、無事に帰還したその翌日、つまり今日はセレーネ様と一緒に一日を過ごす予定だ。本当ならダンジョンに潜っているところだけど、実は護衛から帰ってきた時にセレーネ様に多大な心労を掛けていたのにようやく気づいたのだ。

 私は確かに【セレーネ・ファミリア】の構成員として主神に貢献している。だけど、子としては? 今はそんなことないけど、駆け出しの頃は早朝に出かけては深夜に帰ってきて徒労のあまり気絶するなんてことが多々あった。そのたびにセレーネ様に心配を掛けていた。
 主観的には問題無かったけど、客観的に見ればアレは相当異常だった。13歳の少女が毎日ブラック企業以上の重労働を気絶するほどこなしているんだから、心配しない訳が無い。セレーネ様にも泣きそうな顔で「頼むから死なないでくれ」って言われたほどだ。当時はダンジョンで死なないようにという意味だと思って大丈夫と返していたけど、多分セレーネ様は過労死の方も心配していた。

 今回の護衛だって、帰ってきたときのセレーネ様の安心の仕方と言ったら凄かった。仕切りに怪我が無くて良かったと労わってくれた。
 その時にセレーネ様が少し寂しそうに言ったのだ。「私にも構って欲しい」と。さっきも言ったけど、私はセレーネ様に奉仕すると言いながら、セレーネ様が最も欲しがっていた孝行を全くしていなかった。

 自分の間抜けさに憤怒を覚えると共に、遅れながらもせめてもの親孝行として休息日を作ることを約束した。と言っても体に「毎日ダンジョン行こうぜ!」という習慣が染み込んじゃっているから、週一くらいになっちゃうと思う。だけどゆくゆくは休息日を増やしていきたいと思ってる。

 そういうわけで早速セレーネ様にいっぱい甘えるぞ! と行き込んだ矢先である。

「んふふ~♪ 久し振りのクレアだぁ抱き心地最高~♪」
「セ、セレーネ様っ!? そんなことよりもこれっ!!」
「そんなこと!? クレアより大事なことなんてあるの!?」
「えっ、ありがとうございます! ……じゃなくて、これです!」

 私の背にひしっと抱きついているセレーネ様は、私の手元を覗き込んで「あぁそれ?」と呟きながら一通の手紙を取り上げた。

「うーんと、これはヘラの徽章かな?」
「そうですよ! 何でオラリオ最強のファミリアから手紙が……!?」

 【ヘラ・ファミリア】世界の中心と謳われるオラリオの中でも随一の勢力。【ゼウス・ファミリア】と双頭の存在であり、また両陣営の主神が恋人関係にあることから互いに協力体制を敷いているため他の追随を許さない圧倒的な権力を有しているファミリア。実力においても常にダンジョンの最前線を切り開いているほどである。

 常識を知っていれば誰もが畏怖する存在である【ヘラ・ファミリア】が、何故偏狭の地に小さな本拠地(ホーム)を構えている私たち【セレーネ・ファミリア】へ直々に手紙を出してきたのか。恐ろしすぎて私の想像には及ばない。

 何かやらかしたっけ……? いや、【ヘラ・ファミリア】はおろか【ゼウス・ファミリア】の構成員ともろくに会ったこともしゃべったこともないから恨みは買ってないはず。でも私が気づいていないうちに何か向こうにとって不都合なことをしでかしてしまったか……?

 様々な嫌な憶測が頭を過ぎるなか、【ヘラ・ファミリア】の徽章が施された赤い封蝋を呆気なく破り捨てたセレーネ様は上質な紙でしたためられた文章にさらさら目を通していく。因みに私は中身に爆弾でも入っているんじゃないかと思って身構えていました。
 目を通しているセレーネ様が唐突に「うげっ」と声を漏らした。やはり何か仕掛けが!? と思った私だったけど、その前にセレーネ様が続けた。

「えぇ……よりにもよって今日やるのぉ……?」
「やる? 何をですか?」
「《神の宴》」
「? 神会(デナトゥス)じゃなくて?」

 初めて聞いた単語に首を傾げた私にセレーネ様が丁寧に説明してくれた。通称《神の宴》と呼ばれる催しは神会(デナトゥス)が定例会議であるのに対し、こちらは一柱の神様が勝手に催す自主参加の集まりのこと。内容は単純に神様たちが集まって騒ぐだけの同窓会のようなものらしい。まあ【ゼウス・ファミリア】や【ヘラ・ファミリア】といった巨大派閥が主催者の場合は各々のファミリアの威厳を示したりして取り入ろうと画策する場に成り代わるらしいけど。
 
 そんな訳で今回ヘラ様から頂いた手紙の内容は、【ヘラ・ファミリア】が主催する《神の宴》の招待状だったようだ。手紙の内容は神聖文字(ヒエログリフ)で記されてるから私には何て書いてあるか解らないけど、とにかく主催日は今日だったようだ。
 まあ、この手紙を回収したのは今日の早朝だ。昨日は護衛より帰還してセレーネ様がそれどころじゃなかったから回収できなかった訳で、もしかしたら昨日にはすでに投函されていたかもしれない。セレーネ様も「ポスト? いや全く見てないけど」と言ってるし、下手したら私が出かけたその日には入っていた可能性もある。

 いつも私がポストを見てるから強く言えないけど、セレーネ様、私が居ない時はポストくらい見てください……。

 でもそれも仕方の無いことかもしれない。聞くと天界では煩わしい事が全く無かったらしいから、家事とかする機会そのものが無かったとのこと。いくら全知全能の神様とはいえ、経験したことない事に対応することは出来ないんだと言っていた。
 因みにじゃあなんで料理は出来るのかと聞くと、やりたいことを探している内に料理も頑張ってたかららしい。その調子で掃除も頑張っていて欲しかったけど、さすがに無茶な要求だろう。

 相変わらずカッターシャツとパンティ一枚という男性ならば軽く悩殺できるレベルの大胆な格好をしながら私を抱くセレーネ様は、招待状を丁寧に元に戻す。

「まぁ仕方ないかなぁ。ちょっと顔出しに行こうか」
「気乗りしないなら断りを入れれば良いんじゃないんですか?」
「断る理由もないし、あと最近ヘラの顔見てなかったからついでに見ようかなって思って」

 す、凄い、あのヘラ様とついで感覚で接するなんて……。ゼウス様とかヘファイストス様にも友好があるらしいセレーネ様って、実は神様の中でもとんでもなく偉い神様なんじゃ……?
 やはり崇高なる神様であると再確認した私であった。

「午後8時からだから、それまでに準備しておかなきゃだね」
「準備? あぁ、他の神様たちに贈り物とか用意するんですか?」
「贈り物なんかしないよ。単純にクレアの服を買いに行かなきゃいけないじゃん」
「えっ、私の? 何でですか?」

 《神の宴》と全くつながりの無いことに素っ頓狂な声を上げた私に、セレーネ様も逆にきょとんとした顔で私を覗き込みながら言った。

「何でって、《神の宴》には自分のファミリアで一番の人を連れて行くからだよ」



『!?』
『おい、あれ見ろよ……』
『すっげぇ上玉じゃねぇか……! 俺ちょっと話しかけてこようかな』
『は? お前じゃ無理だわ現実見ようなゴミくずめ』
『あぁ!?』

 急遽《神の宴》に参加することになった私だけど、今はセレーネ様と一緒に宴で必要なものを揃えるためにメインストリートに繰り出している。私は色々な神様たちが出席するような重要な場所に出たことがないため、上品な服とか綺麗なドレスとか持っていない。この買い物は宴に着て行く服装の準備だ。

 ただそれだけなのに周りからの視線がすごい。と言うか、セレーネ様の注目され具合が半端じゃない。

「ねぇねぇクレア、これ似合うんじゃないかなっ?」

 今私たちがいるのは北のメインストリート界隈の服飾専門店である。オラリオは全国から多種多様な種族が集まる場所のため、風土が入り混じった環境となっている。商人たちは目ざとくそこに気づき、地方中から集まってくる亜人(デミヒューマン)の客と店側が揉めあっているところを仲介し、種族ごとの専門店を数多く構えることで信頼と実績を勝ち取って見せた。北のメインストリートは大陸でも類を見ない数の服飾店が軒を連ねていると大評判だ。

 もちろん神様専用の服飾店もある。だからそこに行くつもりだったんだけど、どうしてかセレーネ様が「別にそんなのいいよー」と異族問わず色々な店を出入りしているのだ。
 外見は十八歳くらいの絶世の美女なんだけど、その子供っぽい好奇心と仕草で神様らしからぬ威厳が撒き散らされていた。まあ、異種族の衣装に手を出す風習はセレーネ様たち神様が下界に降臨されてから巻き起こりつつあるんだけど。

 で、そんなセレーネ様が手に持って私に差し出してくるのが、女戦士(アマゾネス)の正装(?)である。スリットの深さたるや恐るべし。

「き、着れませんよそんなきわどい服!?」
「えー? 良いと思うんだけどなぁ」

 セレーネ様の美的センスに共感できない私である。セレーネ様の普段着はあまり大差無く、カッターシャツとズボンの組み合わせを基本に装飾品を一つ付けている程度だ。今日は胸元に小さなネックレスを下げているだけである。
 そのスタイルが気に入っているのかな、ぐらいにしか思ってなかったけど、もしかしたらセレーネ様、それしか知らないんじゃないのかな……? かく言う私もおしゃれな服選びなんて全くしたことないから言える立場じゃないんだけどね。

「じゃあ私が着てみるか」
「ぶふぅっ!?」
『是非お願いします!』

 周りの野郎共が下心を隠さず唱和してきやがった……! セレーネ様のあられもない姿を下卑た視線に晒す訳にはいかない!

「セレーネ様! 他のところへ──」
「あ、あれ? ホックが留まらない……」
「セレーネ様あああああああああああ!?!?」
『うおおおおお!! でけぇ!! 圧倒的にでけぇ!! そこの女とは違うな!!』
「誰だ今私の胸が小さいとか言ったやつ!? 出て来い!! 三枚に下ろしてやろうか!?」

 くそぅ! 私がちっちゃい訳じゃないんだ! セレーネ様が大きすぎるだけなんだ! セレーネ様を偏差値にしたら私の息は止まっちゃうだろ!?
 私の尊厳をこけにした奴はとんずらこいて何処かへ消えており三枚に下ろすことは出来なかったが、セレーネ様も服(主に胸)のサイズが合うものが無かったようで残念がりながらも試着を諦めてくれた。もしかしなくとも、セレーネ様がいつも胸元を開けてるのって単純に胸が苦しいからなのか……。

 結局全部の店舗を回ることになったけど、私の服を買っただけでセレーネ様は「普段着で良いや」と結論付けてしまい一時の波乱は幕を閉じた。
 何でセレーネ様の付き添いをするだけで私の心が抉られないといけないんだろ……。

「別に大きいからって良い事はあんまりないよ? 肩凝るし、服のサイズ合わないこと多いし」
「セレーネ様、それぜんぜんフォローになってません……」

 私の泣き入りそうな声にきょとんと首を傾げるセレーネ様。持つ者の贅沢な悩みなんですよ、それ。私そんなのなったこと無いのにさ……。

「そんなことよりクレア、年頃の女の子が悩むことと言えば恋愛とかだよ! そういうの無いの?」
「私にとってスタイルは由々しき事態なんですが……恋愛ですか……」

 そう言われても私の生業は冒険者だ。ダンジョンに出会いを求めているわけでもあるまいに、滅多なことで理想の男性と巡り合うことなんてないだろう。ダンジョンに充満しているのはピンク色の甘酸っぱい雰囲気ではなく、どす黒い血なまぐさい雰囲気だけだ。

「そっかぁ……好きな人、見つかるといいね」

 唐突に展開された恋愛に関する話だったが、セレーネ様は私の返答で満足したのかあっさり切り上げて、お昼ご飯をどこかで食べようと言って繁華街の方面に歩き出す。

 好きな人ねぇ……? まぁ、私はセレーネ様といられれば満々足だし、探す必要も無いかな。

 
 

 
後書き

【クレア・パールス】
実は貧乳だった凡才。自分のスタイルにちょっとコンプレックスを抱いていて、そこを刺激されるとキャラ崩壊が見られる。
恋愛に対する認識がかなり残念な子。容姿は文句なしの美少女だけど、職業が職業だけにそういった運には恵まれていないご様子。この場合喪女と言っていいのか解らないが、モてない。 
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