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ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか

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休日とステイタス

さて、話はダンジョンから帰った翌日。
留守番していてくれた【ウィザル・ファミリア】の皆さま方(当然のように留守番していないラッカルさんもいたが)との夕食を終えた日の次の日だ。

予定通り六日でダンジョンの探索を終えた俺達であったが、今日一日は体を休める日となっている。
あとは【ステイタス】の更新である。
ていうか、こちらの方が大事なのである。


で、だ。



只今、バルドル様の前で正座中

……あれ? なんかデジャヴ

「はぁあああ~~~~~!? また、ロキのところと問題を起こした~~~!?」

「い、いや、問題ってわけじゃ……相手も納得はしてましたし……」

目の前にはプンスカ怒る男の娘(バルドル様)。そっちの気はないが不覚にも可愛いとか思っていたりする。でもやっぱリューさんかなぁ……

「ちょっと! 話を聞いているのかい!?」

「リューさん可愛い」

「聞いてないの!?」

おっと、本音が漏れてしまっていたようだ。
俺はすみませんと頭を下げて謝っておく。こういうのは反発すると長い。
一応頭を下げたからなのか、フゥッ、と息を吐いて落ち着きを見せるバルドル様。
正座する俺を見下ろす形になり、言葉を続ける。

「全く……次から次へと君は……」

「でもバルドル様? 俺、手合わせしただけなんですが……」

「ハーチェスから聞く限りじゃ、君のそれはほぼ死闘に近かったと聞いているけど?」

正にその通りだったのでなにも言い返せませぬ。

うっ……、と黙り込む俺を見てバルドル様はため息をついた。

「何を思って君がそうしたのかはわからないけど、お願いだから皆に心配だけはかけないでくれ。……ま、ロキと何かあったのなら、僕が全力で守るからさ」

「……はい。……どうもすみませんでした……」

「うん。先にハーチェスにしごかれてたみたいだし、これくらいにしておくよ」

もういっていいよ、とお許しをもらったので、俺は正座を解いてバルドル様の私室を出ると、そのまま同階にある自室へと向かった。
入ってから一直線に向かったのは壁際に立て掛けられた一本の短槍。

「……やっぱ、整備とかした方がいいよな……」

昨日の手合わせ(という名の死闘)でアイズの一撃をまともに受けた【アレルヤ】。
そのせいなのか……いや、そうなのだろう。とにかく、持ったとき重心に違和感があるのだ。
あれ、強化してなかったら確実に砕けていたぞ……

袋に【アレルヤ】を入れて部屋を出ると、出会したパティさんに武器の整備でちょっと出てくると伝えてそのままホームを出た。
【物干し竿】、【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】、【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】はあの金髪ピアスの神様のお陰なのか【不壊属性(デュランダル)】が付与され、さらには切れ味も落ちないという武器としてなかなかのチート武器であるため、整備などは必要ない。
昨日、アイズにお高い武器を使ってるじゃねぇか、とかなんとか言ったが、俺も使っていたので人の事言えない。
というか、武器の攻撃力では明らかにこちらの方が上なのだ。それで互角なのはアイズの腕前なのだろう。


「と、着いた着いた」

やっていたのはオラリオ北東のメインストリート周辺。
ここは【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師(スミス)の多くが自身の工房を構える場所だ。
俺はその中から、よく見慣れた青い煙突の工房へ向かうと遠慮なしに扉を開いた

「邪魔するでー」

「邪魔すんねんやったら帰れボケェ」

「嫌だ! 絶対邪魔するんだ!」

「何でそない決意に満ちた目ぇしとんねん!!」

怒鳴り声で出迎えてくれた頭にバンダナを巻いた長身の男。

「ま、冗談はともかくだ。お久だな、士」

「……お前の冗談は冗談に聞こえんから困んねん」

額に手を当てて溜め息を吐くと、まぁ座れと部屋の隅に置かれた椅子を持ってくる。

ガドウ・(つかさ)
極東出身の男で、現在は【ヘファイストス・ファミリア】の団員で、Lv3
もう三年も前から俺はこいつに短槍と軽装をつくってもらっている。
ちなみに、同い年だ。

「でぇ? お前がここ来たっちゅーことは、【アレルヤ】か?」

「お、よく分かったな」

「アホ。これでもお前との付き合いは長いんや。そんくらいわかる」

ほれ、貸せ、と背中の短槍を渡すよう催促する士に、ほい、と短槍を渡した。
手に持った短槍の具合を確かめるように数回ほど振るった。

「アカン。完全に中がイカれとる。表面には出てへんけど、かなり罅とかいっとるわ。……何したらこないなことなるんや?」

ジトーとした目でこちらに視線を送る士に、俺は少々いたたまれなくなり、目を反らす。

「さ、流石士。そのバンダナの下の禿げが今日も冴え渡っているな」

「禿げやない! これはスキンヘッドや!!」

バッ、たバンダナを取り払い、自分の頭を指差して叫ぶ士。
キラーンッ、と士の叫びに同調するかのように頭も煌めいた。

「……きゅ、キュートだぜ?」

「心にも思っとらんこと言うなボケ。鍛治仕事は暑いからこうしてるだけや。……で、話戻すぞ。何をどうしたらこうなんのや?」

グッ、と目の前に突き出された【アレルヤ】

「その、あれだ。【剣姫】と手合わせをして……な?」

「な? やないねん、な? や。で? その時にこうなったと?」

「……おう」

ふむ、と俺の答えを聞いた士は【アレルヤ】に視線を動かすと暫しの間考えるようにして黙り込む。
すると士は何故かニヤリと笑った。

「ま、それなら仕方あらへんな。【剣姫】の武器は不壊属性(デュランダル)っちゅー話や。お前の魔法で強化はされたんやろうけど、それでも耐えたんやったら俺も満足やで」

「助かる。今回も頼んでいいか?」

「任しとけ。……と言いたいところやけど、こいつはもうアカン。新しいの作ったほうがええわ。何か、希望とかあるか?」

「いや、いつも通りでたのむよ。けど、最高のものを頼む」

「あいよ。一週間したら取りに来い」

士に別れを告げ、工房を出る。
陽はまだそれほど高くない。今日はお昼は各自で取ることになっているため、ホームに戻る必要もない、か……

「よし、行くか」


ーーーーーーーーーー


で、やって来たのはご存知『豊饒の女主人』
今日はここでお昼を取るのだ。
もたろん、本音ではリューさんに会いたいと、ただそれだけなのだが。


「こんにちは~」

「あれ、式さん? どうしましたか?」

「いや、お昼でも食べようかと思ってね。とりあえず注文頼むよ」

かしこまりました、と注文を取るシルさんから視線を外し、俺は店内を見回した。
くつろいでいるのは女の人が中心。主婦っぽい人やその子供たちが皿に盛られた果物を口にしているその様子を眺める。


「あ~! 【秘剣(トランプ)】だ~!!」

「ほんとだぁ~!!」

「式ぃ~!!」

この店には昼でもよく来るため、中には顔見知りもいたりする。
で、だ。こんなんでも、俺は第一級冒険者だ。つまり、それは有名人と同義。当然街の人たちも知っている。
だからなのか、こうやってよく子供達がよってくるのだ。
あれだな、前世でいうと憧れのヒーローに集る子供達ってとこだな

「おう! どうした、お前ら」

わぁわぁとよってくる子供たちを相手に、ダンジョンのこととか色々話をしてやる。
子供たちはこういう話が好きなようで、目を輝かせて聞き入っている。
ごめんなさいね、式くん。というお母さん方に大丈夫ですよ、と返しつつ、おれは注文の品が来るのを待った。

「子供に慣れているんですね、式」

「あ、リューさん! ほれ、お前ら。そろそろ席にもどれよ。話なら、また今度してやる」

はぁ~い!と元気よく返事をした子供たちが元の席に戻ったのを見届け、体勢をもとに戻した。
目の前にはお昼として頼んだパンケーキと果物。
俺には少々足りないため、このあと屋台とかで歩き食いをするが、まぁ今は関係ない。
もちろん、リューさんの首もとにはプレゼントした翡翠色のチョーカー。
スゴく可愛いです

「遠征に行ってたと聞いてます。お疲れさまでした」

どうぞ、とパンケーキと果物を目の前に置いたリューさんはそのまま俺のとなりに座った。
今はゆっくりできるそうで、シルさんやアーニャさんたちに行ってこいと言われたそうだ。
ナイスである

「まぁウダイオスとバトッてましたからね。あと、【剣姫】とも」

「何故そのようなことになったのかは分かりませんが、式だからと納得しておきます」

はぁ、と息をつくリューさん。
どうでもいいが、今日こうやって会話をした人みんな溜め息ついてるんだけど……
俺は幸せを逃がす才能でもあるのか?

「しかし、そうなるとLvアップもしたんじゃないですか?」

でも大丈夫! リューさんは俺が幸せにするから!
とか、一人でリューさんとの新婚生活についての云々を考えていると、そんなことを言われた。

「あー、【ステイタス】の更新は今日の夜ってことになってますんで」

「……そうですか。ですが、あまり無理はしないでくださいね」

「っ! リューさん、それって……!」

「し、失礼します」

慌てるように席を立ち、厨房の方へと戻っていくリューさんの後ろ姿を俺は目で折っていた。
今、心配してくれたよな……
すっげぇ嬉しいわこれ

それだけでご飯を三杯はいけるが、目の前にあるのは半分になったパンケーキとまだ手をつけていない果物だけ。
俺はそれを完食するとリューさんに一言挨拶してから店を出た。

途中、バケット片手に急いでいるクラネル君を発見したのだが、急いでるときに話しかけるのは迷惑かなと思いそのまま声をかけることはなかった。


「さて、なに食べようか……」



ーーーーーーーーーー


すっかり陽が落ち、ホームに戻ると、すぐに夕食となった。
そして、夕食が終わると続いて待ちに待った【ステイタス】の更新である。

団員全員がリビングに待機し、二階のバルドル様の自室に一人一人呼ばれるのだ。


「今回は、どれだけ伸びるっすかね~」

「さぁな。ただ、普通とはかけ離れた伸び方をするんだろうよ」

「……」コクリ

「お、俺も伸びますかね」

「スウィードはとくに、だよ。まだ、Lv1だし、よく伸びるはずだ」

それぞれが思い思いに話をする。
今回の遠征では、ハーチェスさんとエイモンドさんを除く七人が活躍したため、その七人の伸びがすごそうだ。

そして、俺を残した他の全員の更新が完了する。
全員の共通語(コイネー)で【ステイタス】の書かれた羊皮紙を見せてもらったが、その結果が以下だ。







ハーチェス・ザイル

Lv4

力 E 485→D 508 耐久 E 413→E 445 器用 F 321→F 343 敏捷 F 339→F 363 魔力 D 531→D 550





エイモンド・エイナルド

Lv4

力 H 137→H 146 耐久 G 201→G 218 器用 D 541→D 570 敏捷 D 538→D 558 魔力 C 639→C 689



デルガ・ドル

Lv3

力 C 601→C 653 耐久 D 589→C 614 器用 D 500→D 541 敏捷 F 321→F 353 魔力 I 0→I 0




パディ・ウェスト

Lv2

力 E 421→E 489 耐久 F 381→E 440 器用 B 781→A 812 敏捷 C 613→C 681 魔力 C 611→C 644




ヒル・ハンド

Lv3

力 E 467→E 490 耐久 E 435→E 455 器用 D 524→D 568 敏捷 C 634→C 692 魔力 I 0→I 0





リリア・エミルカ

Lv3

力 G 211→G 228 耐久 H 147→H 178 器用 D 524→D 563 敏捷 H 131→H 171 魔力 C 685→B 719





アルドア・ウォルド

Lv3

力 H 125→H 193 耐久 H 137→H 199 器用 E 421→E 483 敏捷 F 389→E 424 魔力 G 243→G 294






スウィード・バルクマン

Lv1

力 H 111→G 200 耐久 H 121→G 210 器用 H 103→G 203 敏捷 H 103→H 189 魔力 I 0→I 0








「……いつも思うけど、かなり伸びてるねぇ……」


「特にスウィードだな。もう評価Gにまで上がってやがる」

「お、俺もビックリしてますよ……」

結果を見て、全員が全員の顔を見回した。
そして、その全員の視線が俺に向く。

「次は俺ですね」

「だね。驚く準備をして待っておくよ」

ハーチェスさんの後ろで、皆がうんうんと頷いた。


部屋まで行くと、バルドル様が待っていた。
早速、バルドル様の前に用意された椅子に座り、上を脱ぐ。


「さて、君がどうなっているのか、僕は驚く準備万端だよ」

「さっき、ハーチェスさんたちにも同じこと言われましたよ……」

そうだろうね、とバルドル様は笑いながらも更新を済ませていく。
すると、突然

ピタリとバルドル様の手が止まった。


「? バルドル様、どうしました?」

「……君、いったい遠征で何したの?」

「えっと、ウダイオスを【剣姫】と倒して、そのあとは知っての通り【剣姫】と手合わせを……」

そかまでいうと、バルドル様はそうかい、といって【ステイタス】の更新を済ませる。
最後に神聖文字(ヒエログリフ)を羊皮紙に共通語(コイネー)に書き直して俺に手渡して一言

「……Lv6到達、おめでとう……」

ハイライトの消えた眼差しで言われた。

「は、はい……ありがとうございます……」

また神会(デナトゥス)で疑いが……ハハハハ、と少し壊れかけているバルドル様を他所に、俺は手元の羊皮紙を読む


スキル、魔法の欄は前回と変わらないため、あまり気にせずアビリティを見る。




ナンバ・式

Lv5

力 C 698→B 743 耐久 D 528→D 582 器用 B 703→B 751 敏捷 A 825→A 893 魔力 A 801→S 900


これが最終【ステイタス】だ。



ナンバ・式

Lv6

力 I 0→I 0 耐久 I 0→I 0 器用 I 0→I 0 敏捷 I 0→I 0 魔力 I 0→I 0


で、これが今の【ステイタス】
別に前のアビリティが消えたわけではない。Lv5の時のアビリティもちゃんと反映されているのだ。


上を着て、バルドル様にお礼を言ってから部屋を出る。
リビングにで待ち構えていたハーチェスさんたちはまぁ、そりゃそうだと呆れながらも祝ってくれた。
このあと、目が虚ろなバルドル様が登場して、団員一同大騒ぎになるのだが、それはまた別の話で(あるかわからんけどな!)







 
 

 
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