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オラリオは今日も平和です

作者:かずもん
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僕の出張日記

 &月!日 諦めたらそこで大雨

 
 今日はアイズちゃんの担当アドバイザーとして、【ゴブニュ・ファミリア】にアイズちゃんと一緒に訪れた。て言うか、アイズちゃんに引っ張られた。
 何でも、”怪物祭”のときに、借り物であるレイピアを壊してしまったらしく、その弁償をしなければならないそうだ。

 【ゴブニュ・ファミリア】の。しかも、アイズちゃん愛用の”デスペレート”に匹敵する剣となると、どれほどの値段がするのだろう?
 となると、アイズちゃんが僕を連れてきたのは、恐らく僕に払わせるつもりなのだろう。まあ、【ロキ・ファミリア】には、命を助けてもらった恩があるので、一億ヴァリスくらいまでなら、肩代わりするつもりだ。流石にそれ以上になると厳しいなぁ……と思いつつ、いざ店に到着してみると、意外にも四千万ヴァリスだった。

 四千万ヴァリス。
 確かに大金だが、払えないことはない。ギルドの給料やボーナスは、それなりにいいのだ。そのおかげで割りといい家に住めてたりもする。

 それにしても、神ゴブニュから金額を聞かされたときのアイズちゃんは、飼い主に見捨てられた猫のような瞳で僕を見てきた。普通に可愛かったです、はい。
 
 まあ、元から僕が払うつもりだったし、予定通り僕が小切手で神ゴブニュにお金を払った。
 しかし、ここで何故かアイズちゃんが酷く驚いた顔をしていた。え、君僕に払わせるつもりだったんでしょ?なんで驚いてるの?
 見れば神ゴブニュも瞳を丸くしていた。え、なに、どうしたの?

 僕が状況についていけず、「どうしたんですか?」と尋ねると、神ゴブニュに「なんでお前が払うんだ?」と聴かれた。
 え、だって僕アイズちゃんの担当アドバイザーだし、【ロキ・ファミリア】に命助けられたし、当然じゃないの?

 そう思って「僕はアイズちゃんの担当アドバイザーですし、返せないほどの恩があるので」と言うと、二人はますます驚いていた。だからなんで驚くのさ……………。

 「それに、アドバイザーが冒険者を助けるのは当然ですよね?」と尋ねると、神ゴブニュは「お、おう」と返してくれた。ほれ見ろ、やっぱり僕が正しいんじゃないか。

 「それじゃあ帰ろうか」とアイズちゃんに話しかけるが、彼女は固まったままだった。なぜに?

 ボーッとしているアイズちゃんは新鮮……………でもないな。いつも天然っぷりを発揮してるし。
 でもいつまでも此処にいるわけには行かないので、パンッとアイズちゃんの顔の前で手を叩く。すると、肩をビクッとさせて、短い悲鳴も上げていた。なにこの可愛い生き物。

 「取り合えず店から出よう」と言うと、何故か僕の手を握ってきた。え、ちょマジで勘弁してください。萌え死してしまいます。

 力を入れて振りほどこうとしても、Lv.5であるアイズちゃんに敵う筈もなく、ギュっと握られた手は振りほどくことはできない。
 別に嫌ではないし、むしろバッチコイな状況なので、手を離すのは諦め、アイズちゃんの手を引いて歩いていく。うん、周りから見たら兄妹かな?僕とアイズちゃん同じ金髪だし。

 アイズちゃんに「僕達周りからは兄妹に見えるかな?」って聴いてみたところ、頬をぷくーっと膨らませた直後、左手を握りつぶされた。

 比喩でも何でもなく、多分指が1、2本折れた。あの、そんなに僕と兄妹って嫌なの?

 
 その後、何故か怒りっぱなしのアイズちゃんに、ジャガ丸くんを30個ほど奢らされた。




 &月☆日 雨がなければ、水を浴びればいいじゃない


 今日はアイズちゃんやティオナちゃん、フィンさんやリヴェリアさん、あとレフィーヤちゃんがギルドを訪れてきて、一週間ほどダンジョンに潜る趣旨を伝えられた。なんでも、久々に冒険をしたくなったそうだ。
 僕はいつも通り「気をつけて行ってらっしゃいませ」と決まり文句を言ってから、フィンさんたちを見送った。

 その後は、昼過ぎくらいまでに自分の仕事を終え、他の人の仕事を手伝っていたのだが、ふとクーラーの調子が悪かったことを思い出し、ギルド内にある全てのクーラーの手入れをした。

 ギルドの受付内やロビーは勿論、関係者専用の部屋や、ウラノス様の祭壇へと続く地下階段まで、隅々と手入れをした。
 一番最後に、ウラノス様がいる祭壇のクーラーを手入れしようと思い、軽くノックしてから部屋に入ると、【ロキ・ファミリア】の主神・ロキがいた。

 僕が部屋に入ると、酷く驚いた様子で、「自分いつ来たん!?」と驚かれたが、普通にノックしましたよね?失礼しまーす!と大声を出しましたよね?
 え、そんな音と声は聞こえなかった?そげな馬鹿な。

 ウラノス様は何故か満足そうに笑っていたけど、なんでだろう?まあ、神様の意図を理解できるとは思わないけどさ。
 
 神ロキとは、一言二言交わし、クーラーの手入れをした。手入れしている途中に「やっぱり自分、家のファミリアに改宗せえへん?」と聴かれた。え、やっぱりってどういうことですか?僕以前誘われましたっけ?
 まあ、冗談のつもりで言ったんだろうと予測をつけ、『もし行くことになったら、その時はよろしくお願いします』と僕も冗談で返しておいた。 

 ウラノス様が珍しくうろたえていた。だから冗談ですってば。




 &月×日 大雨だと思う


 今日はギルドの仕事で、オラリオの外にある、”土竜族”が住む地下都市に出張した。
 馬車で一時間ほどの距離なのだが、運悪くこの日は馬車がもう無くなっていたので、歩きで行くことになった。

 ギルドの制服を着たまま、一人旅とか寂しすぎる。と内心でロイマンさんを恨みながらも、歩を進めていく。
 歩き始めてから三十分ほどした頃だろうか?お昼を取ろうと、近くの岩に腰掛けたのだが、岩に座ると同時に、カチッと音がなった。

 なんだろう?と首を傾げるが、次の瞬間。僕が座っていた岩が一人でに震え始め、大きな音を立てながら横にスライドしたのだ。
 なんということでしょう!岩があった場所には、地下へと下りる階段があったのです。

 一体何処へ続くのだろう?と再度首を傾げるが、すぐにピンと来た。これは”土竜族”が住む地下都市への入口なのだ。
 いやぁ、今日の僕は冴えてるなぁ、等とと思いつつ、僕は階段を降り始めた。

 何故こんなに分かりにくい入口を?と思ったが、実は僕は”土竜族”の文化については、珍しいペットを飼っているということくらいしか知らないので、もしかしたら”土竜族”が住む地下都市の入口は全部こういうものなのかもしれない。
 でも、僕は三十分ほどしか歩いてないので、予定していた道ではないのだろう。

 まあ、そんなことはお構いなしにそこから入っていったが。

 それにしても、長い階段だった。5時間くらい降り続けていたと思う。足がパンパンだ。
 1泊するつもりだったので、遅くなる分には構わないのだが、途中で”土竜族”のペットに会えたのは嬉しかった。

 モンスターすらも見たことがない僕には、そのペットは大変珍しく思えた。二足歩行する牛など見たことはあるだろうか?僕はない。
 あまりに珍しかったので、笑顔で近づいていったら、凄い勢いで逃げられた。え、なんでそんな”命の危機!”みたいに必死の形相で逃げるの?君、いくらペットとは言え、僕よりも大きいよね?なんでそんなに怖がるの?

 僕は心に軽い傷を負った上、その日は都市に着けず、少し空間があった横穴で野宿した。

 ハア……正規のルートで行けば、こんなことにはならなかったんだろうな。
 
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