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真田十勇士

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巻ノ四 海野六郎その四

 四人は参加を申し出た、その時だった。
 勇ましい顔でやけに大きな身体を持つ僧侶が出て来た、その僧侶も参加を申し出たが。
 受付の侍はその僧侶を見上げてだ、驚いて言った。
「何と、御主もか」
「出る」
 笑ってだ、こう言った僧侶だった。
「そして優勝するぞ」
「そうか、またか」
「そうじゃ、またじゃ」
 男は笑ったまま言う。
「そして餅は貰うぞ」
「全く、去年も出たではないか」
「そして今年もじゃ」
「他の者をことごとく投げ飛ばしてか」
「餅は貰うぞ」
「もう一つ貰うものがあるな」
 侍は僧侶にむっとして言った。
「そうじゃな」
「ははは、酒じゃな」
「般若湯と呼べ、せめて」
 男は僧侶にむっとした顔のまま返した。
「そこでは」
「しかし飲むと酔うではないか」
「仮にも坊主が酒と堂々と言ってよいのか」
「わしは嘘は嫌いじゃ」
 僧侶はこのことは胸を張って言い切った。
「だから酒は酒と呼ぶ」
「全く、そしてじゃな」
「今年もわしが勝つぞ」
「やれやれじゃな」
 男は僧侶を咎める目で見つつ返した、しかし。
 それでも僧侶が大会に出ることは認めた、そのやり取りを見てだ、
 海野は首をやや傾げさせてだ、こう言った。
「面白い坊主じゃな」
「うむ、あそこまで堂々と酒を飲みたいという坊主はな」
「流石にそうはおらぬぞ」
 穴山と由利も海野に応えた。
「しかもやけに大きくな」
「力があるな」
「あれで他にも術があるか」
「そうした感じじゃな」
「そうじゃな、あの身のこなし忍のものじゃな」
 海野も言う。
「我等と同じじゃ」
「うむ、拙者もそう思う」
 幸村も三人に応えて述べた。
「あの僧侶は只の僧侶ではない」
「忍術も備えていますな」
「そして非常に強いですな」
「ただの力持ちではない」
「その様ですな」
「うむ、あの者が出るとなると」
 どうかとだ、幸村はまた言った。
「この大会、我等の誰かが優勝することはな」
「いやいや、拙者が勝ちます」
「拙者こそが」
「拙者にお任せ下さい」 
 三人は幸村の今の言葉にはこぞって意気込んで応えた、そしてだった。
 四人も大会に出た、すると。
 幸村の名前を聞いてだ、男は唸って言った。
「何と、あの真田家の」
「拙者のことを知っているのか」
「真田といえば有名ではないですか」
 これが男の返事だった。
「武田家の下で智勇を共に備えた」
「それでか」
「はい、その真田家の方となると」
「美濃でも知られているのか」
「いや、天下に」
 美濃だけでなくというのだ。
「その真田家の方まで参加されるとは」
「わしもじゃ」
「わしも参加するぞ」
「わしもそうするぞ」
 穴山達も応えてだ、そしてだった。
 四人揃って参加した、そのうえで相撲用の褌に履き替えて控えの場に赴くと。そこにあの僧侶がいた。海野がその僧侶に声をかけた。 
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